「ピュアっとヒーラー」異世界からの孕ませ侵略者と戦ってエロで治療!? 作:白拍子
【触手城内】
チャペルでの集まりは解散となり、リオンとマーシェはショッピングセンターの荒れた通路を歩む。
微妙な静寂に二人とも口を開かず、ただ足音だけが響いていたが、その沈黙をリオンが破る。
「そういえばマーシェ……チャペルから出る前に、泥の塊を踏みつぶしていたよね?」
「見てた、ですか?」
マーシェの肩が跳ねて、おずおずとおっかなびっくりに聞き返す。
リオンはマーシェの、巨体に似合わない小動物的な反応を楽しみながら。
「変な事しているから……気にしちゃダメかな?」
「こんなこと、言われたんで……」
首を傾げ、マーシェの顔を覗くリオンの笑顔は、純粋さと執拗さを滲ませる。
マーシェは目を伏せ、ぽそりと語り出した。
命の尽きたマウンテンであった砂山から、小さな泥の固まりが未練がましく這い出てゆっくりと脈打つ。
まるで心臓のように、執念だけで鼓動している。
一塊の泥になってもまだ生きていたマウンテンは、目敏く自分の遺伝子を受け継いでいるマーシェを見つけ。
「ぅああぉっ~~お前ぇ~~おれのガキなんだなぁ~そう、そうなんだよぉ~~だからぁ~」
マーシェにしか聞こえない、掠れた粘った囁き。
「吸収しなよぉ~~おれをぉ~ぜぇんぶ~~意識も、記憶も、存在も~~明け渡してぇ~~そうすればぁ~~お前の身体でぇ~おれはぁ~生きられるぅ~~げひひ~~いいだろぉ~~お前のためにもぉ~~なるんだよぉ~おれがぁ~~~お前になるんだからぁ~~」
説得でも懇願でもなく、生きる事への執着と支配と欲望だけが満ち溢れていた。
「やなこった」
マーシェは泥塊を踏みつぶした。脈動が完全に停止し消滅する。
「それで?」
「おいら、むかついて踏んずけて、粉々にすり潰してやったです」
リオンの静かな問いかけ。
マーシェは肩をすくめ、唇を尖らせる。
「いいよね……たとえ親でも……理不尽なら超えていくしかないし……ぼくも……マーシェがマーシェでなくなるのは嫌だよ……」
「はあ、そうっすね」
リオンは正面を向き、楽しさと嬉しさを滲ませる。
マーシェはその言葉に、少しだけ目を見開き、そして静かに息を吐く。
リオンに対する恐れと嬉しさが、自分でも理解しがたい事を煩悶した。
【敷地外】
「よ~~~し! 撤収っ撤収!! いい絵は撮れまくったし、これ以上留まるのは危険って感じ~ハラマセー達と鉢合わせしたら、洒落になんないってかんじだから、さっさと逃げるって感じ!!」
自身もハセマセーであるのに、インフルヘイターは手をパンパンと叩き、クロノス社情報収集工作員達に撤収を促す。
トレーラーから展開された、撮影映像情報収集機材が手際よく収納されてゆく。
「カメラ触手放棄、自壊開始。まっよっぽどでなきゃ、向こうのハラマセーにはバレないかな? あいつらはあいつらで、結構ヤバイ連中って感じだし……」
触手城内に潜ませた、インフルヘイター独自に召喚できる、先端がカメラレンズになった偵察触手達が弾け、外部からの潜入と撮影での情報収集の痕跡を隠蔽する。
「いや、すっごい絵が撮影できましたね! 触手やゾンビー、モンスター級との死闘! ピュア達を凌辱し、出産させ続け辱めるっ! そしてその絶望的状況からの脱出劇!! 普通ではありえない角度での撮影、ドローンじゃこんなのできませんよ!! これまでの戦闘とエロシーンも含めて編集しまくれば、凄まじいアダルトビデオ作品を作成できます!!!」
「そうだろそうだろ! ぼくも編集頑張るし、地下広報も煽りまくって。どれだけピュアが、アクションとエロ大盛のコンテンツキャラなのか、ビンビンに煽り倒してやるって感じぃぃぃぃ!!! それにドローンはドローンで空中からのアングルとか、すっごく頑張ってくれたじゃないか。やっぱりお互い技術を使い合うって必要だよ、同志よ!」
クロノス社工作員の興奮した声が上がり、インフルヘイターを持ち上げほめちぎる。
インフルヘイターも、クロノス社の技術と工作員達の手際を褒めたたえる。
「しかし逃げているピュア達の姿って。ぷぷ、全裸で走り回りで。しかも大怪我したのは駅弁セックスしながら爆走って、もうギャグですよね!」
「だよなぁ! 滑稽なシーンとして使えるって感じ! ま、近くを走り抜けられた時は、ヤバいって感じだったけど」
逃げるピュア達との微妙なニアミスも、チャンスとカメラは回り続けた。
「燃えてますねっ! 萌えてますねっ! この勢いでいい作品を、どんどんリリースしていきましょうっ!!」
「はははっっ楽しみって感じいぃ~~~~~」
ハラマセー、モンスター級・インフルヘイター。
クロノス社と連携し、戦闘アクション無修正地下アダルトビデオ作製に夢中であった。
クロノス社のトレーラーは無事撤収に成功した。
【セーフハウス/合流】
触手城の影を遠ざけ、アキラたちは最寄りのセーフハウスに辿り着く。
空気が変わった、戦いも粘つく恐怖も届かない。
人間の世界に、扉の内側に逃げ込めた。
「つっ、着いた!」
「けほ………一息……つける」
「はああ~~ギリぽいけっど、ウチらがんばれた、がんばった~えらすぎっしょ」
アキラが息を吐きながら声を上げる。
リサは壁にもたれ、呼吸を整える。
アスカはその場にへたり込み、両手を広げて叫んだ。
その声には、命を繋ぎきった者の誇りと、張り詰めた感情の解放が滲んでいた。
アキラの腕の中で繋がりながら、アヤはくったりと身を預けていた。
顔色は悪く、唇は乾いている。
逃げ切れた安堵が、逆に彼女の体力を奪っていく。
「アキラ……アヤ危ないかも………助かった事で気持ちが緩んで、緊張感で気力と体力を維持していたのが……解けるのは……」
「より強いひーりんぐが、必用ってことだよな!」
リサの不安な声がアキラに届き、アキラはその言葉にすぐ反応する。
一歩遅れて、セーフハウスに辿り着いたユウヤ達が扉を開き、玄関先に雪崩れ込む。
「一番近いセーフハウス、着いた、これで一安心……!?」
「ようやく……ようやく……休める………うっひぐっ……え? なに?」
「はは、ヤバい状況からなんとか逃れられたし。ゆっくりひっくりかえりてぇ~~てっ!?」
「ソノ前ニ、オ風呂デス。カラダ中ぬるぬるデスシ。ひーりんぐスルニモ、オ湯ヲ浴ビテカ、ラ!?」
ユウヤが周囲を見渡し、思わず声を詰まらせる。
そこには、すでに同世代の男女達が、全裸の傷だらけで佇む姿。
ケイが涙交じりの安堵から、目の前の光景に戸惑いが散乱し。
ヒナタは腰を下ろすとアスカと目が合い、互いに驚き跳ねる。
マリアの風呂への欲求も、先客達の姿に言葉を止める。
互いに自分達以外のヒーラーとピュアには、謎の支援者の案内人であるコベニ以外には初めて出会う。
警戒と驚きが交錯するが、今はそれよりも、命を繋ぐことが先だ。
【トリアージ】
セーフハウス玄関先の空気は、安堵と緊張が入り混じる。
アヤの呼吸は浅く、アキラの腕の中で意識が揺れる。
肌は冷たく、唇は色を失っている。
「助けてくれ! おまえ、ヒーラーだろ? 俺だけじゃ足りない!」
「わかった!───ぁ」
アキラが助けを求める叫びが、空間を震わせるほどに切迫を訴えかける。
ユウヤはそれに即答した。
現在もひーりんぐし続けているピュア、アヤの負傷が深いのを見て言葉がすぐに出たが。
ケイ、ヒナタ、マリアが、断念、諦観、失望、落胆、割りきり、断腸、切迫、狼狽、動転、が入り混じる圧を、ユウヤの背に刺してしまう。
ケイは何か声に出してしまうのを、必死に噛み潰し堪え。
ヒナタは目を覆い、肩を震わせ俯く。
マリアは無言のまま、どんよりとした瞳でゆっくりと見まわす。
誰もが理解していた、今、ひーりんぐが最も必要なのが誰なのか。
それが判らないほど愚かではないが、自分達がこれから癒される期待を、横から奪われた不快感を圧し潰せる余裕が無い。
その空気を感じ、アスカも気まずく視線を逸らす。
「仕切り………………ます。トリアージ……します!」
リサは立ち上がり宣言する。空気がピシリと張り詰める。
「不満、文句、苦情、後で全部受ける……でも、いまを動かさなきゃ……だめ。そちらで亡くなったり、瀕死の方は?」
言葉は震えている、責を負うと宣言し、状況を確認する。
「こちらは、なんとか生還はしている。見たところ貴女は傷も少なく、精神も安定しているのと……医療関係的な判断力がありそうだ、僕は……従う。みんな、指示に従え!!」
ほんの短い言葉、態度。その観察でユウヤはリサに任せると判断した。
その決断が曇っていれば、それは自分の責任になる。
背後の今まで一緒に戦っていたピュア達、ケイもヒナタもマリアも、反論はしなかった。
納得はできなくとも、今は動くしかない。
だからユウヤは迷わなかった。問題が噴出しても、それは今は先送りにすると。
「アキラ! そちらのヒーラー……」
「ユウヤだ」
リサの言葉に震えが無くなる、理性的に効率的に指示を飛ばす。
「ユウヤと一緒に、アヤをベッドルームでひーりんぐを! アスカと……」
「ケイ……」「ヒナタだ」「マリア」
「四人は、先ずバスルームへ……これも、使って」
備品棚から携帯ビデの箱を取り出し、アスカに手渡す。身体の内外の洗浄が必用と判断。
「は〜いよってね。みんな、行っくっしょ! ついてきなってば〜!」
アスカは受け取り、努めて明るく声を張る。
「……うん」
「じっとしていても、どうにもならね~しね」
「頭ノ中、マトマリマセーン」
ケイが小さく頷き、ヒナタが顔を上げ、マリアも頭を振りながらアスカに続く。
誰もが傷つき、限界だった。
だが、今は動くしかない。
「給水と……ひーりんぐ以外でも、痛み止めになるものとか、紛らわせられるものを……」
リサは飲料水を並べ、医薬品の棚を探って、現状を改善できそうなものを探し続ける。
皮膚や粘膜に塗布する種類別の軟膏。
一時的にパニックを緩和する精神安定剤。
過敏な神経反応を抑える吸入スプレー等を取り揃えてゆく。
ひーりんぐは、はじまったばかりだ。
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