「ピュアっとヒーラー」異世界からの孕ませ侵略者と戦ってエロで治療!? 作:白拍子
【035「ちとあせと」】
カオリは全裸になって、自室の巨大なベッドに倒れ込む。流血がシーツに染み込むが意に介さない。
「さあ……ミナミ、あなたの……戦いよ。そのためにコベニにも、護らせた」
ミナミは震えている、いまにも泣きそうだ。いや泣いている。
「そんな……ボクは…………ボクは…………」
まともに戦えない悔しさ、コベニに護られ温存されていた驚き、コベニの方を向くと、然りとコベニは頷く。
守るためにミナミを温存したという事実が、ミナミの胸に重くのしかかる。護られる側でいることの安堵と屈辱が同居し、彼の動悸は速くなる。
姉のように慕う存在が、あんなにも弱々しく横たわる姿を直視することはできない。胸の奥で、己の無力さが無能さが掻きむしる。
ボクは戦えない。あの時、盾にも剣にもなれず、ただ護られていただけだったという悔恨が、熱を帯びて押し寄せる。
「わたくしの傷を癒しなさい、ひーりんぐで」
ミナミを襲ったのは。ただの情けなさと重圧だった。周囲の期待と、姉を失うかもしれないという恐怖。
自分に課せられた役割の輪郭が、逃れられない鎖のように締まっていく。
言葉を発するかわりに、ミナミは振り払うように後ろへ一歩、また一歩と下がった。足は自然に廊下へ向かい、扉の外へと続く冷気が彼の背を押した。振り返ることもせず、彼は走り出す。足音は絨毯に吸われ、やがて遠ざかっていった。
ベッドの上でカオリは目を開け、最初はただ驚きと困惑がその顔を支配した。ミナミが去った事実が、胸の奥に亀裂を作る。
彼女はしばらく動けず、そしてゆっくりと息を吐いた。戦う理由も、強さの源泉も、誰かに寄りかかることで成り立っていたことを、初めて痛感するような沈黙が部屋を満たす。
その夜以来、カオリは戦いの先へ足を向けられなくなった。怒りでも悲しみでもない、決意を欠いた虚ろな沈黙が彼女を包み込み、かつての強さは棚上げされた。ミナミの遁走は、守るべき者と守られる者の輪郭を崩し、両者の動きを鈍らせた。豪奢な部屋の中で、静かにひび割れた信頼だけが残された。
「あ~あ、やっちまった。男として引いちゃいけない所で逃げちまった。まあ存分に可愛がられて過ごし、姉と慕った女とセックスしろっていうのもキツイ話だろうけど。性欲や愛欲よりも、崇拝と神聖化が心に固まりすぎで、触れちゃいけない存在になりすぎたっていうのは、カオリお嬢さんの甘やかしや女装させて引き連れて男の矜持を破壊していたってとこもあるんじゃねえの? そしてカオリ自身もミナミへの保護欲と自分よりも弱い存在を守るという気持ちを同一視してしまって、やる気をなくしてしまうのも、人間ろくでもない切欠で想いや心の在り方が変わっちまうことってありうるんだぜ」
【041「ほうこくふのう」】
コベニの目の前に、コックさんが立っています。
ええ、ハラマセーです。それも相当な手練れ。
ここは……一撃で倒す! 踏み込み刃を閃かせる。
しかしコベニとリパーシェフの力量は、天と地の差があった。
「ふむ、付け合わせには使えそうですね」
四肢が斬り飛び、頭から股間に真っ直ぐ真っ二つになって転がるコベニであったモノ。
シェフは予定外に手に入った食材を吟味し、触手に運ばせ城へと戻ってゆく。
コベニはカオリに報告不能となった。
「逃げずにシェフに向かっちまって、解体されちゃったか~まっ初見で相手の力量を正確に測れるわけないし、戦うって選択も確かに無しじゃないけど、焦りすぎってやつだな」
【043「あせり」】
触手城に囚われたリサを救い出すために急ぐアキラ達。触手の一団に襲われる女性に遭遇し一戦を交え撃退する。
拉致を免れた女性たちの安堵の声がまだ耳に残る中、ピュア達の身体には負傷と疲労が重くのしかかっていた。アキラが簡易なひーりんぐを施し、裂けた傷口は閉じられるものの、それは応急処置に過ぎず、痛みと消耗は癒えない。
時間と体力の消費。それを押して触手城に向かう、リサを早く助け出したいという焦りが判断を狂わせていた。
触手城の正面出入口、大きく広がるアトリウムの空間。そこへ現れたのは、ハラマセーの上級モンスタープリズン。無数のゾンビーと蠢く触手を従え、城門を守る番人のごとく立ちはだかり散々に挑発する。アヤとアスカは拳を構え、アキラは炎を閃かせ焼き払う。
戦いは熾烈を極め、触手が空を裂き、ゾンビーの群れが波のように押し寄せていった。
幾度も倒れかけながらも、ついにプリズンを討ち取り、ゾンビーの群れを壊滅させた。だが勝利の代償は大きく、連戦の疲労と傷はさらに深く刻まれていた。アキラとひーりんぐをこの場で行う余裕はない、また行っても疲労そのものは蓄積したままだ。
触手城の奥から次なる敵が繰り出されることを考えれば、この場で立ち止まることは死を意味する。
「……一旦退こう」
アキラの声は苦渋に満ちていた。アスカは頷き、アヤは唇を噛みしめる。
立て直さなければ突破は不可能。しかし、その決断は囚われたリサを取り戻すまでの時間を確実に伸ばすことになる。
その遅れは、リサにとって静かな残酷な刻を刻む。
彼女の心に闇が染み込んでいく。ヒトへと引き戻す声が届かなくなる。漆黒の決意へと変わりつつあった。
仲間たちの勝利と撤退が、同時にリサの心を闇ノ花嫁へと導く契機となっていた。
「オレ消滅してるぅぅぅぅぅぅぅ!! まあそんだけ一大決戦になっちまったんだな、うん。気を取り直して、無理して連戦したら余計に時間を食う事になってしまい、リサがハラマセーを受け入れ、セキュリオン様の妻となることを決意、アキラ達の声も届かなくなってしまう。決別を決意する時間を作ってしまっちまったてね。さらに無茶して触手城に押し入ろうとしたら、アスカが止めるだろうし。それさえも振り切るならば、アスカは手を引いてしまって、アキラとアヤは途中で討ち死にってバッドエンドだな」
【045「しょっぴんぐせんた」】
放課後のたまり場、ユウヤ、ケイ、ヒナタ、マリアの、ピュアとヒーラー達が集まり、触手城の検討を行いはじめる。少し噂を集めただけでも、問題の生々しさと不気味さが浮かび上がり、都市伝説的に犯罪的な未解決事件が粘つくおぞましさを醸し出していた。
集めた資料、証言、噂、顛末、事故、事件、さまざまな情報を吟味する。
「敵の戦力はまだ不明瞭だ。ゾンビーの群れと触手の配置は推測に過ぎない。突入しても、目標が定まらなければ消耗戦になるだけだ。」
「ん……でも、敵のボス……討ち取るのでしょ?」
「でもさぁ、無暗に突っ込んで全滅したら意味ないし」
「……街ヲ襲ウ、ハラマセーヲ放置スル危険。ソノ対処先スベキジャナイデスカ?」
タワー塔の頂上に触手城の主はいるはず、その算段で議論を交わし検討していたが、敵の兵力がどのくらいのものかはあくまでも予測でしかない。
ユウヤはまだ乏しい触手城の情報に躊躇を感じはじめていた。冷静な口調で言い添えるマリア。その言葉に、場の空気が少し張り詰める。
ユウヤは深く息を吐き、仲間たちを見渡す。彼の分析力は鋭いが、経験の浅さゆえに決断の重みが肩にのしかかっていた。
「確かに、突入はまだ早い。まず街の防衛を整える。情報を集めながら、触手城の核を特定するんだ。そうすれば、無駄な戦いをせずに済む」
「戦いながら情報を集める……時間かかっちゃうけど………無理しちゃだめだものね」
「……ふぅん。まあ、ユウヤがそう言うなら従うさ。勝ち目の見えない喧嘩はすべきじゃねえしな」
「ソレニ、シスターガコノ話、伝エタノハ危険カンジマシタ。挑ンデツブレロッテ」
もっと慎重に検討すべきではないかという結論で、今回は触手城に向かうのを見送りとする
こうして方針は定まった。街を守り、情報を集め、触手城の核を見極める。
未熟な会議は、しかし確かな一歩を刻んでいた。
「バッドエンドってわけじゃないけど、あえて慎重になったルートのユウヤたち側。これはこれで正しいってヤツだし、シスターから受けた情報で、なんであの時ノリノリで触手城に挑んでしまったかってね。まっ敵の本拠地が判ったら挑むべきと冷静な判断ができないほど慢心していたってとこだよなあ。それにまあ……ここで慎重な撃退戦を選んだらさあ、話としては面白くねえだろ~~」
【049「ここはまかせて」】
マウンテンの挨拶と、間延びした声と雰囲気の中に、どぎつい強さを感じ取り。アキラ、アヤ、アスカは構え。門前に立ちはだかる巨躯マウンテンと向かい合う。
「ここを通す気は、ないってことね!」
「ん~~~まっいっか、みんな~まとめてかかってくんなら~~そのほ~~が~楽だしぃ~」
アヤの声にマウンテンは間延びした声で答え。ピュアの二人、ヒーラーの一人を前にして、三人を同時に相手取るのを気にしないでいる。
「速攻で抜ける。リサを助けるぞ!」
アキラの炎が走るのをマウンテンが避ける。その避けた動きを捕らえた逃れられない拳をアヤは叩き込むが。
「効いてない!」
拳がまるで砂場に手を突っこんだように埋まり打撃にならない。アスカの蹴りも突き立った箇所ごと飲み込まれ、砂のうねりに消える。マウンテンは無言のまま腕を広げ、その質量が庭園の空気を歪めた。
「物理、通らないタイプだとお!!」
アキラが警告を飛ばすより早く、砂の腕が崩れ、地面と空から同時に襲う。
「くっ! 抜け出さなきゃ!!」
「わかってるけど、これ抜けないっしょ!!」
アヤの足が沈み、アスカの腰まで砂が巻き上がる。流砂化したマウンテンに逃れようと踏ん張るほど、身体は深く埋まり、喉に乾いた砂粒が触れる。砂は優しく、だからこそ残酷に絡みつく。呼吸の隙間さえ測るように、口元へ粒が集まってくる。胸がきしむ。肺が熱い。焦りが、音にならない悲鳴へ変わってゆく。
アキラは歯を食いしばり、炎の火力を極限まで上げ砂を焼き払おうとするが。
間に合わない。アヤとアスカを巻き込んでも砂を焼くだけだ。
「だめだ、これ以上は………」
マウンテンの顔が砂から浮かび、ニタァ~~といやらしく勝利を確信した笑いを叩きつける。
砂で捕らえた締め上げでピュア達の悲鳴が上がると、さらにニチャニチャとした笑みが追加されてゆく。
アキラはゆっくり両手を上げる。喉の奥で言葉を搾り、最後はただまっすぐに吐き出した。
「降伏する。アヤとアスカを解放しろ。俺たちは、ここで……止まる」
砂のうねりが静まり締め上げが止まる。救出までの距離は手を伸ばせば届くはずなのに、砂の海がアキラたちとリサを隔てていた。
「マウンテンに三人で挑んで完敗。まっ物理無効って対策なければ勝てないってヤツだよね。みんなで足を止めて戦うと、こういう結末もありってヤツだ。それにマウンテンの野郎も、アスカだけだからもっと舐めプな戦いをしてたってやつ。最初からガチなら流砂状態で埋め殺すってね。お~こわっ」
「さあて、触手城前半戦! まっ色々バッドエンドへの分岐がありそうだよなあ~まあまだ入り口ってところで。その挑みが正しかったのかどうか? 勝ち筋があったのかどうかってね~俺が消滅してバッドエンドもあるんかいっ!!」