「ピュアっとヒーラー」異世界からの孕ませ侵略者と戦ってエロで治療!? 作:白拍子
「ピュアっとヒーラー」第二章を、全裸正座で開幕いたします
081「せいざ:そのいち」
【宴の後】
セーフハウスに静寂が降臨していた。
カオリは苛立つ熊のごとく行ったり来たりと歩みを繰り返す。実際に苛立っていた。足音が響くたびに、場の空気はさらに張り詰め圧迫感を増してゆく。
カオリの後方に控えるミナミとコベニ。
ミナミは小さな体を縮め、怯えながらも必死に記録を取ろうと準備する。震える指先で画面を追いながら、怯えた視線は何度もカオリへと寄せられる。
コベニは無言のまま、護衛の位置に立ち続ける。表情は乏しく、ただ主の安全を最優先にする姿勢を崩さない。
カオリの前に家具を片付け空間を確保し。いままで乱痴気騒ぎをしていた者たちが静かに並び座る。
正面前列に、アヤ、アキラ、ユウヤの正座
後列には、リサ、アスカ、ケイ、ヒナタもそれぞれ正座し。
さらにその後ろに、マリアが窮屈そうに正座している。
これはいったい、どういうことなのか?
カオリの疑問は当然の物であり、その返答を待ち構えるにも大人しくできず、カオリは歩みを止めない。
そろそろ誰かが声を上げなければと、アキラが挙手する。
【アキラ】
「あの、まず、本当にすみませんでした。俺の判断が甘くて、準備も足りないのを承知で突っ込んで。結果、リサを助け出すことはできたけど、アヤを死の危険に追い込んで……動揺して、慌てて、勝てない敵と戦って。ヒーラーとして、仲間として恥ずかしい限りで。私情ですませようとした自分もいました。情けないし悔しい。だけど……だけど!」
アキラは一度顔を上げ、仲間一人ひとりの目を見ていく。そこには照れ臭さと、真っ直ぐな気持ちが宿る。
「今日ここで命が失われなかった。一人も欠けることなく生きてる。それは俺達が生きようとしたからだ。俺が癒やすべきだった傷、俺たちみんなで抱えた。だからこそ、ここで腐らせるわけにはいかない。恥もくそも、また立ち上がって勝ちに行く。次は俺が守るだけじゃなく、ちゃんと戦えて挑めるようしてみせる! 支援だって遠慮はさせない。まずは俺たちがそれに値するように血と泥にまみれてでも強くなる!!」
言い切った後、アキラは軽く笑い、いつものお調子者めいた仕草で場の緊張を和らげる。だがその声には揺るがない響きがある。
「で、その~ですね……なんとか生きて帰って嬉しすぎての浮かれっぱなしだったのは、今回は勘弁してくださいっ!!」
すっぱりとした土下座は、潔すぎた。
カオリは静かに額に浮かんだ汗を掌で拭う。その視線は冷たく、だがどこか揺れている。しかし抑制された落ち着きを含ませて。
「次は勝つという言葉は確かに大事ですわ。わたくしもまだ実戦の理解が遠く、あなた方が厳しい戦いから帰ってこれたのに、それも一人として欠けることなくなのに。わたくしは怒鳴ってしまいましたわ。許して欲しいとは思いませんけれど。ただその、分かってほしいですの」
カオリはアキラの前で立ち止まる。怒りの熱をどこかで含みつつ、声が少しだけ柔らかくなる。
「わたくしはあなたたちを仲間だと思っていますわ。今までの観測も慎重さも、全てはわたくしのやり方。わたくしの慎重さが足枷にさせてしまったらのなら、それはわたくしの失敗ですもの。支援は部屋や道具だけでなく、タイミングと信頼が必要でしたの。あなたが今ここで次は勝つと言うならば、わたくしはその言葉を信じたい。だけど約束してほしいの。わたくしの手を借りるときも対等に。命のやり取りをしている人間同士として、誇りを持って共に戦いましょう」
カオリは視線を場の全員に巡らせる。厳しさの奥にある期待と脆さが滲む。
「それと、宴にはその……驚きましてよ………」
なるほど、こういう砕けたパーティーというのも参考にですわね。と、ズレた感じを受け取っていた。
【アヤ】
アヤは静かに正座していた。顔色はまだ血色が悪く、右肩から左脇腹にかけての傷痕は塞がったにしても痛々しい。表情はいつもの強気だが、目元には冷静さが宿っている。
「あのね……騒ぎすぎ。戦いの後にそれが許される瞬間があるのはわかるけど、限度ってものがあるわ」
アヤは視線をじっとアキラに向け、言葉を続ける。声は低く、ツンとした口調だが、そこに隠れた配慮が混ざっている。
「でも、全部を否定するつもりはないわ。私たちが一旦壊れたのは事実だし、笑いあうことでつながりを取り戻す必要があるのも分かってる。アキラ、感謝はちゃんとしてるわよ、だからこれから私達で責任を取る覚悟があるって意味にしてよね」
アヤは少しだけ顔を赤らめながら。カオリに向き直る。
「それとね、アキラも騒いで盛り上げてくれたのは、私たちのためってわかってるから私も変な言い訳はしない。ちゃんと反省してまた戦えるようにってね!」
カオリはアヤの言葉を静かに聞き、目を細めてから微かに笑みを作る。冷静さと威厳を兼ね備えた声で応じる。
「あなたの言う通り。慰めや逃避だけならば、わたくしのしてきたことも意味を失ってしまいますわ。今日の騒ぎ、心の揺らぎを鎮めるに大事で、危うい気持ちをアキラさんが鼓舞してくれた事もその……確かにですけど、あまりにも唐突で非常識でしたので、わたくしもつい声を荒げてしまいましたもの」
カオリはアヤに向きなおり、言葉に優しさを滲ませる。
「あなたが引き締めてくださるのを自覚なさってるからこそ、その覚悟お見せなさい。仲間のために声を上げ、行き過ぎた蛮行には掣肘を入れる。厳しいでしょうけど」
アヤは一瞬カオリを目を合わせ、だがどこか満足げに唇を噛む。
「それでも! それでも私もリサを救い出すために無理をして無茶をして、触手城で右肩から脇腹まで斬られて死ぬはずだったわ。アキラが必死にひーりんぐしてくれて、ここまで逃げ込めたけど、それだけじゃ足りなかった。セーフハウスでユウヤと協力して、ようやく傷が安定したの。だから今こうして話せてる……私だけでなく、もっと冷静に、お互いに、だけどまだ悔しいけど足りないという事が判ったわ……死なないで、よかった……」
その言葉に、カオリの瞳が揺れアヤの傷痕をなぞり強い動揺が走る。仲間の命が辛うじて繋がっていた事実に触れ、複雑な色を帯び沈黙し……回想する、もっと数多の傷痕を刻んだ肌を。
そして自らも含め自分達の未熟を認識しなければとの焦りが強く帯びてゆく。
【リサ】
リサはいつもの落ち着いた佇まいで正座し、薄く微笑み言葉を紡いだ。
「カオリさん……まず医療と施設の手配ありがとうございます。セーフハウスの設備も潤沢でしたし、アヤを含めみんなのケアが行き渡りました」
声は知的で穏やかだが硬く濁ったものが混じる。
「ただ……今日の騒ぎを一方的に否定するのは違うと思う。触手城での恐怖を経験した者にとって、短い狂騒は自己保存の反応……慰めと結束がなければ、逆に崩れる。確かに反省は必要……けど同時に感情の処理も尊重してほしいの」
リサはアキラとアヤをちらりと見て、怯えの混じった声で付け加える。
「わたしは……不覚と不遜のため囚われになりみんなに迷惑をかけたから………それで助けられて、どれだけ謝っても足りない、アヤを死に追い込む事にもなった。それでいいと思ってしまう考えがあった自分も。おぞましく身勝手な考え。二人の気持ちを突き放して独りで勝手に沈み込んでいた。その手をまた引っ張り上げられて………わたしは、なぜ信じていなかったのか恥ずかしい。そしてセーフハウスに辿り着いた時、アヤの死が迫った時の恐さ………忘れられない」
囚われから、身も心も救ってくれた事。親友を自分の身勝手で失う恐怖を語った。
カオリはリサの冷静さと、囚われから救われ友を失いかけた恐怖に頷く。
「だれだって……助けの手が必要な時がありますわ。貴女はその手をしっかり取って戻ってきたのでしょう。ですけど厳しく言わせてもらいますわ。感情を理由に行動の責務を曖昧にしてみんなを窮地に追い込むのでしたら、それは許せませんことよ。今回は確かに上手く逃げおおせましたけど、それこそ潰滅も十分あり得たとの事。反省はなさってくださいね」
指摘をしつつ、カオリの瞳はリサの口元に精液の残滓が残っているのを見逃せない。
落ち着きを払いつつも、それをどう捉えてよいのか動揺は隠している。
【アスカ】
「まあウチはね、アキラの言うことガチで効いたし、アヤとリサの言い分も分かってるって感じ。今の騒ぎって、やりすぎはやりすぎ。でもさ、あれって生き延びた反動っしょ? それもまあ事実だし」
アスカの砕けたギャルの物言いの中に、カオリを見上げつつぶつかる視線は対等と語っている。
「そうね、ここからが本番ってやつ。出資者で支援者のカオリさん、そして別チームのユウヤ、ケイ、ヒナタ、マリア。みんな役割はハラマセーと戦う正義のヒーロー、ピュアとヒーラー。でもね、正直いまさっき会ったばっかだし中身は知らないでしょ? カオリさんも含めてね。ウチとしては、まず互いをちゃんと知る時間、絶対要るって思う。これからさ、手を組むなりなんなりするにしても、どういう距離なのってね。戦力、性格、得意、苦手、連携。そこちゃんと知り合って、信頼積み上げなきゃって? ウチのほうでもアキラとはノリ合うし、アヤとリサとはいい刺激し合える仲だけど。それでもウチが入ってきた当初は、ど~しても不安だらけ。ひーりんぐするのも先輩後輩っていうより、正妻達と愛人ってねぇ~まっそこおいといて、せっかく集まれたんだし一息いれてこれからどうするかってね」
急がず、そして間に言葉を挟ませずのアスカの語りに、アキラとアヤは驚き。ユウヤは感心したかのようにアスカの揺れるピンクのツインテールを見る。ギャルの見た目と口調での先入観を払拭するには十分だった。
「合理的ですわ。わたくしも相互理解を優先したいですもの。良好な人間関係を築くのが、ハラマセーと戦う姿勢を揃える大事な部分ですもの。ぜひ皆様と……まずはゆっくりと話し合いたい、それはわたくしの望みですわ」
カオリは短く頷き、アスカの言葉をくみ取って返す。まだなにも始まってはいないのだ。