※この作品はR-18です。

「ピュアっとヒーラー」異世界からの孕ませ侵略者と戦ってエロで治療!?   作:白拍子

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ドクター・クロオによる、講義が始まります



085「ほけんたいいく:そのいち」

【講義:医療の四原則】

 

ドクター・クロオは気難し気に、ドクター・キリコは穏やかな笑みを浮かべ会議室に入って来る。

既にモニターやホワイトボードが設置され、準備は万端である。

 

「起立! 礼! 着席」

 

リサの号令にピュアとヒーラー達は講師であるドクターに礼式を行う。無駄話がピタリと収まり整うのは、学業で叩き込まれる礼儀の基本、始まりと終わりに区切りを付け、調和と敬意を表す動作だ。

 

「かまわないからみんな楽にしてくれ。それなりに長い話になるからどうせダレてくる。最初から構えて疲れるよりマシだ。だが、寝るやつがいれば叩き起こすから覚悟はしておけ。基本的におまえらのひーりんぐに対し、医療に関する認識を叩き込む、心構えなくても聞いておけ。そうでないと困ることになってからでは済まないからな」

 

ドクター・クロオの容赦ない言葉に医師としての重みがある。ピュアとヒーラーたちは気持ちの襟を正し、傾聴の姿勢を見せる。

 

「ふん、とりあえず真面目に聞く姿勢だけは見せたな。まずは簡単にだが『医療の四原則』を説明しよう」

 

『医療の四原則』

自律/善行/無害/公正

ホワイトボードに書き込まれる。

 

「『自律』とは、患者が自分の体をどう扱うか、決めるのは本人だ。医者が勝手に切ったり縫ったりする権利はない。情報を渡し、納得させる。それができなきゃ治療じゃない。拒むなら尊重する。だが……命を守るために説得するのも医者の仕事だ」

 

「『善行』医者は患者の利益を最大にする義務がある。苦い薬を飲ませるのも、腹を切り開くのも、全ては病を癒すためだ。障害を減らし、生活を取り戻させる。それが医療の本質だ」

 

「『無害』まず害を与えちゃいけない。治すつもりで余計に傷を増やすなんて論外だ。リスクは最小限に抑える。治療の名で患者を苦しめるなら、それは医療じゃない」

 

「『公正』医療は正義だ。資源も機会も公平に分けなきゃならない。差別や気まぐれは許されない。現場でのトリアージも、冷酷に見えて公正の一部だ。医者はその重さを背負う」

 

「そしてこれを『ひーりんぐ』にあてはめると」

 

「『自律』治療だと言って性行為を強いるなら、まず情報を渡し、同意を得ろ。曖昧な合意は自律じゃない。患者が拒めば、それを尊重するのが筋だ」

 

「『善行』医者は患者の利益を増やす義務がある。だが『ひーりんぐ』は単発の事例にすぎん。毎回同じように救えるわけじゃない。前に助けられた者は次も縋る。できなければ悪と責められる。それが医療と呼べるか?」

 

「『無害』害を与えちゃいけない。治すためだと称して心身に傷を残すなら、それは医療じゃない。望まぬ性行為が伴えば強姦だ。助けたからいい、では済まされん」

 

「『公正』医療を特定の者だけが恩恵を受けるなら不公平だ。その上『性行為で治療』なんて広まれば、詐欺や悪用が横行する。混乱と被害の責任を背負えるのか? ヒーラーならその重さを考えろ」

 

ドクター・クロオのわかりやすく鋭い説明が、ピュアとヒーラー達に突き刺さる。

さらに講義は続く。

 

「仮定として語られているひーりんぐの仕組み。ヒーラーの精液や精子にエナジーが含まれ、それをピュアの子宮や膣が吸収して治癒が行われる。逆にピュアからヒーラーにも性行為を通じてエナジーを渡すことで回復が成立する。そういう理屈だろう。さらに、ハラマセーによる妊娠を堕胎させ、触手の侵蝕を解除する効果まであるとされている……だが、これらはすべて仮定に過ぎない! エナジーを観測する手段がない以上、医学的には証明できない。医者としては、ただの幻想に過ぎないと言わざるを得ん!」

 

クロオの声は強まりはじめ。

 

「私は医師だ。臓器を切り、血を止め、骨を繋ぎ、命を救う。それが医療だ。だがひーりんぐはどうだ? 性行為を伴う曖昧な行為で、責任の所在も不明瞭。合意が曖昧ならば、それは治療ではなく暴力だ! 医療の名を騙ることは許されん!」

 

ホワイトボードをパーンと掌で叩き! 声は更に熱を帯びる!!

 

「だが……だがだ! 現実に患者は生き延びている。臓器は修復され、骨は繋がり、血は再生されている。医療では説明できない現象が、目の前で起きているのだ! それをただ仮定と切り捨てるしかない現状に、私は憤りを覚える! ああそうだあの時から! ヒーラーの存在を知り! ひーりんぐを目の当たりにし、異端と呼ばれようとも理解と解析に心血を注ぎ! そしてまたひーりんぐと向かい合うという事をっ!! 私は医者だ。証明できぬものは医療とは呼べない。だが、救われた命を前にして、黙っていられるほど冷酷でも無理解でもない。だからこそ、私は憤るのだ。証明がつかぬ現象に、医者としての誇りが試されているのだ!!」

 

徐々に私情が剥き出しになってゆく狂気じみた情熱に、講義を聞いている面々は圧倒され声も出せない!

 

「医者はなんのためにあるんだ!!!!」

 

ピコッ!!!

 

「アッチョンブリケ!!!」

 

ドクター・クロオは、ドクター・キリコの巨大ピコピコハンマーでぶん殴られ床に倒れ伏す。

 

「ごめんなさいね~熱が入りすぎるとエキサイトが過ぎてしまうの」

 

キリコが穏やかに謝罪し。講義は小休止となる。

 

 

【小休止】

 

ホワイトボードの「自律/善行/無害/公正」の文字を前に、ピュアとヒーラーたちはそれぞれ複雑な表情を浮かべていた。クロオの鋭い言葉は、彼らの胸に重く刺さっていた。

 

「す、すごかったなさっきの先生」

「ええ、でも……わかりやすく説明してくれたと思う……」

「それに先生の熱意と誠実さはちゃんと伝わってくる」

 

アキラの独り言をリサが受け。確かにとアキラは頷く。

 

「先生の言うことは正しい。けど、俺がやってしまったのは、結局助けたいからなんだ。助けるためにやったことが、後から害だって言われるのは……正直、怖いよな………いや恐いと思ってる」

 

苗床化や孕ませられた女性達に、現場でのひーりんぐで侵蝕の阻止や堕胎を行った事をアキラは思い返し。その時はほぼ前後不覚な相手に行ったのは本当によかったのか? もし意識と意志があれば同意がとれる説明ができたのか? 同意があってもそれは正しいのか? 救った後に非難を受ける覚悟があったのか? それを……自分は恐れているのではないのか? ヒーラーとして仲間のピュアだけでなく、被害者を救うひーりんぐが本当に正しいのか。いままで漠然とした不安をこの講義で明確にされた気持ちだ。

 

「また暗い顔してる! 助けたことは誇りなさいよ。けど確かに考えていかなきゃいけないって、医者からの意見を聞けるんだから、ちゃんと聞きましょ。それでどうするかなんだから」

「そうだな……俺だけで考えて悩んでも答え出ないしな」

「そうそう、一人で抱え込むと、ろくなことがないっしょ」

「耳が痛いわ……」

 

アキラの胸の奥には、講義で突きつけられた倫理の問いが重く沈んでいた。救ったはずの行為が、果たして正しかったのか?

アヤが敏感にその悩む様子を感じ、彼女なりの励ましをぶつける。一人で背負うなとアスカが言葉は軽めながら思いを伝え。リサは独りで迷走した事を漏らす。

そのやり取りは、重苦しい空気を少しずつ和らげる。アキラはまだ迷いを抱えたままではあるが、仲間の存在がその迷いを孤独なものにしないことを感じた。呻くような不安の中に、温もりが差し込むそんな瞬間だった。

 

「ピュアとヒーラーの間でなら許容というか、戦い続けるのに必要な行為だけど。確かに一般の人を救うためにとなると……相手にとっては理解しがたいことになる」

「わたしたちの間でも……迷いがなかったわけじゃないし………責任とれないよね………」

「つーてもよ、せんせーの言う事わかっけど、実際やるか見捨てるかじゃねえか。どっち選ぶかってその時じゃねえか」

「ワタシハ救ワレタ………ケド、ソノ事実ニダレモガ、納得………………スルワケジャナイ」

 

ユウヤの冷静な分析、ケイのためらい、ヒナタの直情的な現実論、そしてマリアの静かな感想。ユウヤはマリアの言葉の中に曇りを感じを捕らえるが、今はまだ口に出さず講義に意識を向かわせる。

それらが交錯し、場の空気は一層張り詰めている。

誰もが「救う」という行為の正しさを信じたい。だが、その正しさは常に揺らぎ、時に他者からの非難や拒絶を招きかねない。仲間の間でさえ葛藤があるのなら、外の世界ではなおさらだろう。

ユウヤは仲間の声を聞きながら、自分の胸に巣食う不安が決して一人のものではないことを悟る。彼らもまた、同じ問いを抱えている。だからこそ、この沈黙は孤独ではなく、共に背負う重荷の証だった。

 

 

【ドクター・クロオのまとめ】

 

復活したドクター・クロオが立ち上がり講義を続ける。

 

「ひーりんぐを否定する気はない。おまえらがハラマセーと戦い、その傷を癒すために使うなら、それは個の選択だ。それに干渉するほど狭量でありたくない。だが医療と同じものだと思うな。過程が違いすぎる。性行為は同意がなければ成立しない。人間関係を壊す危険を孕んでいる。ピュアとヒーラーの内部ででも人間関係をおかしくしかねない事を事情を知らぬ者に施せばなおさら危うい。悪く解釈されれば治療どころか犯罪になる。また重ねて言うが、ひーりんぐを曲解し性行為による治療を間違った解釈で悪用される恐れがある」

 

先ほどのエキセントリックさは鳴りを潜め。改めて医療とひーりんぐの差異を、医療の四原則を知ってもらう事で改めて説明する。

 

「ハラマセーによる浸食や妊娠に対し対抗するためにひーりんぐを行うのは認めるしかない。俺も昔、苗床化や触手侵蝕を外科で止めたことがある。切除、洗浄、移植、縫合……そしてひーりんぐの浄化で悲劇を免れた例は数知れん。悔しいが事実だ。だからこそ、必要な場面では認めざるを得ない」

「だが………ひーりんぐは医療ではない」

 

かつてのハラマセーとの戦い。そして今侵略するハラマセー。苗床化による繁殖。侵蝕によるゾンビー化。その阻止浄化に必要なひーりんぐまではドクター・クロオは否定しない。暗にできうる限り確認を取れと言外に瞳が語る。

 

「ただこれだけは警告する『一般の怪我人にひーりんぐを行うな』それは死に瀕した者でも同じだ」

「そんな重傷者にも、ですか!?」

 

クロオの警告に、アキラが立ち上がり問う。

ドクター・クロオは大きく息を吐き宣言する。

 

「君たちは、医者じゃない」

 

静かに重くその言葉は響いた。

 




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