「ピュアっとヒーラー」異世界からの孕ませ侵略者と戦ってエロで治療!? 作:白拍子
【静謐なる監視】
柔らかなカーテンが揺れる豪奢な部屋。燭台の淡い光が室内を優しく照らし、静謐な空気を漂わせる。
深紅のソファに身を沈めた令嬢は、繊細なティーカップを指先で弄びながら、目の前に跪く小柄なメイドに視線を落とした。
令嬢のドレスは、淡いクリーム色に金糸の刺繍が施された優美な一着。
布地が流れるように揺れ、深い漆黒の髪は丁寧に巻かれて、ゆるやかなウェーブを描く。
前髪は瞳の美しさを引き立てる絶妙なラインで整えられ、サイドには繊細な編み込みが施されている。
その手間暇が、彼女の気品を一層際立たせていた。
傲慢さと優雅さが融合した微笑みは、見る者を圧倒するほどの迫力を持っていた。
小柄なメイドは、白い手袋をはめた指で、慎重に報告書を差し出した。
その声は事務的でありながら、微かな緊張を帯びていた。
「第一のチーム、第二のチーム、共に情報を収集の報告でござる」
令嬢は穏やかに息をつき、ティーカップを受け皿に戻した。
メイドの報告を吟味するように視線を巡らせ。
傍らに控えるもう一人の小柄な───可愛らしいミニドレス姿の付き人───に目を向ける。
付き人はその視線に応じ、端末を素早く操作する。
壁の巨大なモニターに、分割表示されたピュアとヒーラーたちの姿が映し出された。
「そう……問題は?」
令嬢の声は落ち着いていたが、どこか試すような響きがあった。
「治癒行為……いわゆる『ひーりんぐ』に難儀しているかと……」
メイドが答えると同時に、モニターの映像が切り替わる。
人目を忍んで行われる性行為の数々が映し出され、ミニドレス姿の付き人が「ひっ」と小さくかわいい悲鳴を上げる。
令嬢は困ったように首をかしげる。
「戦えば傷を負う。傷を癒すには……ひーりんぐが必要よね?」
「は、はい……そう、です、よね……」
令嬢の言葉は独り言のようだったが。
ミニドレス姿の付き人は恥ずかしそうに、ぎこちなく頷いた。
令嬢は再び微笑みを浮かべ、報告を続けるメイドに耳を傾けた。
「少なくとも、ピュアやヒーラーたちが力を悪用している様子はありません」
「ヒーラーが治癒を盾にピュアに服従を強いることもなく、ピュアたちも自らの暴力に理性的です」
「ファミリーレストランでの話し合いでも、彼らの力の確認や、ハラマセーに対抗する意思が明確に見て取れます」
「人格的にも、性格的にも問題はなさそうね……ただ、どれだけでも慎重にならなければ」
メイドの報告は淡々と、だが的確に続いた。
令嬢の声には、深い思慮が滲んでいた。
「接触……いたしますか?」
「そうね………………セーフハウスの使用許可を。街の各所に、避難や休養、ひーりんぐのために利用できる部屋を用意しているわ。いくつか確保できているわよね?」
メイドが静かに問うと、令嬢は少しの間考え込み答える。
「コベニさん……彼らを案内してください、利用用の電子キーを渡せば、いつでも利用可能です」
「コベニ、次は彼らに接触して案内と最低限の説明を」
ミニドレス姿の付き人が端末を操作し、次々にセーフハウスの位置を表示する。
令嬢の指示に、コベニと呼ばれたメイドは恭しく一礼し、静かに部屋から姿を消した。
令嬢は再びティーカップを手に取り、優雅に紅茶を啜った。
その表情には余裕が漂うが、内心は焦りながらの慎重での判断の保留。
単なる手駒が欲しいのではない。
長期的に支え合える存在かどうか、ともに歩む意思があるかどうか軽率な判断は許されない。
まだ時間が必要だ。施設と理由を整える準備も、整然と進めなければならない。
彼女の傍らには、ファイルが置かれていた。
その名は───『ドミトリー・システム』
「似合ってるわ、そのドレス」
「恥ずかしいです、姉様……」
令嬢の言葉に、ミニドレス姿の付き人は顔を赤らめ、恥ずかしそうに呟いた。
【闇に蠢く企み】
別の場所。
明るく広い研究室では、柔らかな蛍光灯の光が実験装置を照らし、数人の研究者が忙しく立ち働いていた。
そんな中、背広姿の恰幅の良い中年の男が現れる。
鋭い眼光と洗練された振る舞い。
スーツは一切の皺なく完璧に仕立てられ、腕時計は派手さはないが、一目でその価値が分かる精巧な逸品だった。
彼が入るだけで、研究室の空気が一変した。
彼はただの企業の幹部ではない。
企業の「企画」そのもの───その存在自体が、企ての核心だった。
研究室の責任者と思しき、初老の白衣の男が彼に気づき、近寄る。
「進捗はどうだ? 予定より遅れていると聞いているが」
「ふむ、初期試験では期待通りの結果が出ている」
「しかし、完全な制御にはまだ課題が残る。想定よりも適応速度が速すぎるのじゃ」
「適応が速い? それは問題なのか? むしろ有利に働くのでは?」
幹部の声は低く、威圧感を帯びていた。
白衣の男が答えると、強化ガラスケースの中で蠢く触手が映し出される。
幹部が眉を上げると、白衣の男は慎重に言葉を選んだ。
「場合による。適応を管理できなければ、拡散のリスクが増し、必要のない被害を引き起こす。余計な予算を食うだじゃ」
「我々が意図したターゲットにのみ影響を及ぼす保証がまだない」
モニターには、苗床として監禁された女性が嬌声を上げ、触手やゾンビーを出産する様子が映し出されていた。
「予測よりも時間はかかる。安全性の検証は……まあ、言うまでもないだろう」
白衣の男が続ける。幹部は苛立たしげに舌打ちした。
「仕方ない。せっかちな連中にまた突き上げられるな」
触手やゾンビーの解剖解析、粘液の媚薬成分、生殖による増殖――研究はまだ初期段階で、試行錯誤の日々が続いていた。
「ピュアとヒーラーか……社会も世界も知らない若者に何ができるというのだ」
「ハラマセーの力を完全に掌握するには、さらにデータが必要だ」
「ふむ……ピュアやヒーラーと事を構えるかもしれない段階は、まだまだ時期尚早と判断だな」
白衣の男は頷き、付け加えて語る。
「助かるよ。記録は取っているがね……個人の認識を阻害する不思議な現象がある」
「どのようにデータベースを探っても、該当者が洗い出せないときている」
「化学では魔法に太刀打ちできない、ということか? やつらのハラマセーの感知能力――通称『ハラマセンサー』の対抗策はできているのか?」
白衣の男がモニターに新たな画像を映し出す。
そこには、ゾンビーの上位種である「モンスター」が、休眠状態で捕獲されている姿があった。
「ハラマセーのエナジー活動から発生する波動に対し、このモンスター種はそれを打ち消す波動を発している」
「だからピュアたちのハラマセンサーから探知されにくい。このジャマーとしての波動を解析済じゃ」
「ほう。それで、この地下研究室にその機器を設置し、彼らの目をごまかしているわけか」
「さよう。早くに発見したおかげで、やつらにここを見つけられるリスクは大きく減った」
幹部の声に、賞賛が混じり。
白衣の男は胸を張る。
「それにしても……若いというのは、いいものだな」
幹部がニヤリと下卑た笑いをもらす。
モニターには、ピュアとヒーラーのヒーリングの様子が再生されていた。
白衣の男も白い髭を撫で、同じくと笑った。
笑い声が響く中、研究室のモニターには、不気味な有機体の成長を示すデータが映し出されていた。
闇に蠢く企みは、静かに、だが確実に進行していた。
励みになりますので、感想評価お願いいたします。