「ピュアっとヒーラー」異世界からの孕ませ侵略者と戦ってエロで治療!? 作:白拍子
【送迎待ち】
病院の玄関前。
診察や検査、そしてカウンセリングまで終えた後の独特の疲労と解放感が漂っている。
冬の冷たい空気が頬を撫でる中、ピュアとヒーラーたちは送迎してくれるというバスを待っていた。この後、カオリから話があるので、今しばらく時間をいただくとの事だ。
「ふぁ〜〜……終わったぁ……!」
アキラは大きく背伸びをし、肩をぐるりと回した。緊張が抜けたのか、いつもの明るさが戻っている。
「ほんと、長かったね。でも……なんか、スッキリした気もする」
アヤも同じように背伸びをしながら、少し照れたように笑う。
アキラはアヤの横顔を見て、にやりと笑う。
「お前、講義の途中ちょっと泣きそうだったろ」
「う、うるさいっ……でも、まあ……聞いてもらえてよかったよね」
二人の会話は軽く、どこか安心しきった空気がただよう。互いの存在が、緊張の後の柔らかいクッションになっているのはまさに夫婦がごとくである。
「うふふふふふふふ………さすが、わたしのアキラとアヤ……」
「あんたもブレないわねぇ~一緒に混じればいいのに」
「それはそれ、これはこれ」
リサが二人を鑑賞する姿に、諦めつつもアスカは突っ込みを入れる。関係性はもう間に入ろうが、傍ですりすりしようが、驚かれる事も邪険にされる事もないはずだが。これはこれでと楽しみとして行っている事に、アスカは呆れるしかない。
一方、そのアスカはバス停の標識にもたれ、腕を組んで空を見上げている。ギャルメイクを落とした大人びた表情は、どこか沈思黙考の色を帯びているのにアキラは気づいて声をかける。
「アスカ、どうした? 疲れたか?」
「んー……まあ。ちょっと……考え事してただけ」
アスカは軽く笑ってみせたが、その目の奥にはまだ整理しきれていない感情が揺れている。
自分の強さ、弱さ、守りたいもの。カウンセリングで触れたそれらが、まだ胸の中で静かに渦を巻いている。
しかし、仲間たちの姿を見て、少しだけ肩の力を抜いた。
「……ま、帰ったらゆっくり考える」
「そっか、必要なら俺がカウンセリングを」
「あんたはされる方でしょ!」
「それは……確かに………」
「はい……」
アキラの軽口に対し、アヤとリサの双つっこみにあっさりと小さくなるアキラ。
その日常な風景にアスカは安堵した笑みを浮かべた。
「ふぁぁ~~なんか、あたまぐるぐる~って……悩んでるんじゃないなぁってだけど……整理できない……」
「無理もねえよ、今日だけで一週間分の気力を使ったんじゃねえか?」
ケイはベンチに腰を下ろし、背中を丸めて深く息を吐く。肉体の疲れもある、それよりも精神の疲労が色濃く表情に出てしまう。
ヒナタがどかっと隣に腰を下ろし、ぎゅっと肩を抱く。その遠慮ない距離感にケイは安堵し、小さく頷くと指先をきゅっと握りしめる。
「うん……でもね……いろいろ話せてよかった………」
「そんで十分ってやつさ。疲れてんなら寝ちまいな、あたしが起こしてやんからよ」
「うん……それより……おなかすいてきたかな……」
「へっ、腹の虫の方が先ってやつかよ」
「ふぇぇ…………くす」
ケイは呻きを上げつつ、ヒナタの調子に小さく笑う。
少し離れた場所で、ユウヤは腕を組みながら空を見上げる。表情はいつもの無表情だが、頭の中では今日の出来事を順に整理している。
診察……検査……講義……カウンセリング……みんな、それぞれに抱えてるものがある………本当に勝っている内はどうでもよくても、一度負けるとそれが痕となる。
自分のこともだが、仲間の心の状態が気になって仕方がない。
特に──
ロータリーの端、街路樹のそばにマリアが立っている。肩を抱くように腕を組み、視線は彼方に向けていて、ピュアとヒーラーの集団を向いていない。
誰とも話さず、ただ静かに立っているその姿は、どこか物憂げで、孤独の影をまとっているようにユウヤは見えた。
カウンセリングを受けていた時間も異様に短かった。それは不要なのではなく……ユウヤはマリアに声をかけようと歩み出した、その瞬間──
「お、バスが来たぜ」
アキラの声が響き、ロータリーにバスのヘッドライトが差し込む。エンジン音が近づき、停車する音が空気を震わせる。
マリアはすでにバスの方へ歩き出していて。ユウヤは声をかけるタイミングを、失なってしまった。
【迎え】
ロータリーに停まったマイクロバスのドアが、プシューッと音を立てて開くと、その影から、メイド服に身を包んだコベニが姿を現す。
仕事モードのきびきびした動きで、よどみなく一礼し一行に告げる。
「みなさまお疲れさまでした、これから寮の方にご案内いたします」
小さく会釈しながら告げるコベニ。しかし、その言葉を聞いた一行は
「……寮?」
「え? 寮って?」
「うちの学校、寮ってあったっけ?」
と、ほぼ同時に首をかしげるのも当然だ、通っている学校に寮があるとは、いままで聞いたことも見たこともない。
しかもマイクロバスには『サクラ寮行き』と行き先まで張り付けている。
「寮? お屋敷とかそんなんじゃなくて?」
「寮って……え? いつの間にそんな話?」
「寮………今日からもう入寮かしら?」
「寮って、聞いてないんだけどさ~」
わけもわからずアキラは首を傾げ、その隣で同じ角度に首を傾けるアヤ。そんな話は聞いていないが、ありうるかと受け入れようと落ち着いた声のリサ。腕を組み眉を顰めるが興味も混じるアスカ。
「寮か……話に聞いていないのだけど、ようするにカオリさんはそこに集まってほしい、そう言う事か」
「……りょ、寮……? え……えぇ……?」
「はぁ? 寮ってなんだ? そんなん聞いてねえぞ」
「……寮………?」
冷静に受け止めつつも、内心唐突だなと思うユウヤ。ベンチから立ち上がれず固まり、混乱しているケイ。聞いてない今後に憤るヒナタ。静かに疑問だけを口にするマリア。
「主様であるカオリお嬢様は、みなさまとの共闘のため、生活を共にし活動する拠点として『寮』を用意なされました。お疲れのところですがご案内させてもらった上で、主様との会見を願います」
一行は顔を見合わせ
「「「「「「……えぇぇぇぇぇ……」」」」」」
と、揃って首をかしげたまま固まった。
【ようこそ、サクラ寮へ】
広い、無駄に広い学校の敷地。
その奥まった一角に、寮が建設されているのは、いつの間にとしか思えない。
五階建ての堂々とした佇まいは。
「寮というより、高級マンションじゃないかこれ?」
「マンションにしては規模は小さいけど、お金かかってる感じはするわ」
普通なご家庭の庶民である、アキラとアヤの率直な感想がそのままである。
「入寮者は電子キーにもなっているアプリを利用願います。セーフハウスの利用に使われていたものを、アップデートいたしますので、今回はゲストパスを発行いたします。寮利用のさまざまなサポートが機能とするアプリとなります。初期計画案に従い、アプリ名は『ドミトリー・システム』と、捻りのない名称になっているのをご了承ください」
コベニが古風な感じを押さえ、用意でもしてあったかのような、流れるような案内の言葉は。住宅展示場のモデルハウスを案内するようであり、それは館内の案内でも発揮されるのであった。