「ピュアっとヒーラー」異世界からの孕ませ侵略者と戦ってエロで治療!? 作:白拍子
【令嬢正対】
「あら、遅かったわね。寮は十分に鑑賞できましたの?」
湯船の縁に悠然と腰掛け、熱い湯に身を沈めたカオリが、一行を待ち構えていた。
二体の優美で淫靡な像の間に位置し、堂々とした佇まい。
湯気が彼女の輪郭を柔らかくぼかし、滴る水珠が豊満な曲線をなぞるように滑り落ちる。
全裸の肉体を惜しげもなく晒しながらも、その気品と圧倒的な存在感は微塵も損なわれていない。
むしろ、湯の熱と裸体の妖艶さが相まって、まるで神話の女神が降臨したかのような威圧感を放っていた。
ミナミは一行の到着と同時に湯に沈み込み、華奢な肩まで隠して恥じらう。その初々しい反応が、逆に新鮮で愛らしく映る。
ここまで案内を務めてきたコベニは、静かに移動し、カオリの背後に護衛の位置を取った。
カオリの問いに、ピュアとヒーラーたちは目を見合わると。
「え、えっと……広くて、設備もすごくて……」
「正直、あそこまで整ってるとは思わなかった。費用度外視の豪華さですね」
「黒服さんやメイドさんたち……徹底している……設備の安全性は十分かと……」
「寮というよりも秘密基地じゃね?」
「ゲストルーム……早く試してみたいわ………うふふふふ」
「ラウンジの設備は、緊急出動用リフトも含め、完璧ね」
「そこまで用意してさ、断られるという選択をされねえって自信はすげえよ」
口々に素直な感想と言うより、歯に衣着せない遠慮無しな言葉に、カオリは満足げに頷く。
「そうですわね。あなた方の行動は、ずっと見ておりましたわ。わたくしの決断も長くかかってしまい、迂遠とも臆病とも慎重すぎるとも思いましたけれど……それが価値ある慎重さだと、わたくしは確信しましたわ。だからこそ、この寮を準備し、戦いに臨む者たちの安息と備えの場としたのですもの」
一旦言葉を止め、皆が湯に落ち着くのを待つ。
湯気が立ち込める中、カオリは再び口を開いた。
「あなた方が、ピュアとヒーラーとして得た力を私利私欲に使わず、ハラマセーと戦う姿勢を崩さなかったこと───わたくしは、ずっと感じておりましたわ。戦いも、人を救うことも、誰かに命じられたわけではなく、あなた方は自ら選んで行ってきた。その行動、その魂の在り方こそが、共に戦うに相応しい証ですわ」
カオリは湯の縁に手を置き、ゆっくりと立ち上がる。
湯気が彼女の裸体を淡く包み、滴りが乳房の谷間を伝い、腹部を滑り、太腿の内側を濡らす。
まるで舞台の幕が上がる瞬間のような、計算された───いや、計算など必要ない自然な演出。
傍らのミナミとコベニは、それが彼女の気質ゆえだと知っているが、他の者たちには判断のしようがない。
「──本題に入りますわ」
「わたくしは、あなた方に入寮していただきたい。そして、共にハラマセーに対抗する組織として動くべきだと考えておりますの。このサクラ寮は、そのための拠点。あなた方が安心して暮らし、休み、備え、そして───共に戦うための場所ですわ。どうかしら。わたくしたちと手を携え、ハラマセーと戦っていただけませんこと?」
ハラマセーの脅威に対し力を合わせる。
寮の案内で見せつけたそのために支援する用意。
直接戦えなくとも、バックアップしサポートする人員と設備。
財閥の令嬢というだけで、これほど莫大なコストを動かせるはずがない。それだけ本気さが伝わってくる。
そして語りはじめる、なぜ力を合わせるべきかを。
【災害の真実】
カオリがポンと手を叩くと、防水仕様の巨大モニターがメイド達の手によって運び込まれ、手早く設営される。当然とばかりに全裸で。
メイドたちに視線が行ってしまうアキラに、ジロジロ見るなとアヤの拳が炸裂している。
そんな一幕の後、カオリの説明がはじまる。
それは、桜市の隠された真実だった。
「──桜市は、かつて一度、焼かれましたわ。大規模な火災そして理性を無くした人々の暴動。街の歴史に巨大な傷として残る惨状。この街で暮らす人々なら一度は耳にする災害の記録ですわ。しかし───」
モニターにに映る惨状、当時の街を大きく焼いた火災。パニックに陥った人々が起こす暴動。
古い映像であるが、ニュースや歴史資料などで使われたものではなく。生々しく凄惨な剥き出しの被害。火災で燃え崩れる建築物、焼死体や暴動の犠牲者。
そして──ハラマセーが人を街を破壊し暴れ。モンスター、そしてゾンビーや触手の群れと戦う当時のピュアとヒーラーたち。
眼を覆う惨状の記録に、ピュアとヒーラーたちも表情が凍り付き。まだ思考に余裕のある者は、カオリに視線で説明を求める。
「大規模な火災と暴動。あれは事故でも自然発生でも市民の暴走でもありませんわ。ハラマセーと……………………………………当時のピュアとヒーラーが引き起こした災害ですの」
カオリの表情は硬く、怯えさえ浮かぶ。
「当時のピュアとヒーラーたちは……敵と恐怖の中で戦いましたわ。死者も出ました。それでも彼らは戦い抜き、今の安寧を勝ち取ったのですけど───」
湯の温度は変わらないのに、場の空気だけがひどく冷たく感じてしまう。
「ピュアとヒーラーは、人々に脅威を知らせ理解を求めましたわ。確かにそれを正しく解釈してもらい、助けを受け、協力の絆も生まれていたとのこと──しかし身勝手や自己保身、利己心に付け込まれ──小さな火種から、街は業火に包まれ、人々の狂乱が地獄を産み出したのですわ」
「その原因は、当時のピュアとヒーラーにもあったと──伝えられました────人の持つ善性を信じすぎたと」
「ですが──だからこそ、その苦悩を、わたくしたちは繰り返すべきではありませんもの」
「そのための拠点としての寮を整えましたの。私達が休める場所、備えられる場所、そして情報を集め、共有し、ハラマセーの侵食を未然に防ぐ組織力を持つために」
「脅威を一般市民に知らしめれば、パニックが起きますわ。だからこそ、わたくしたちが先に動く必要があるのです。焼かれる前に守ればいいのですわ、敵の侵食より早く」
「そして希望を示し、胸を張りますわ。わたくしたち──人類の中に戦える意志があると証明し続ければ、人は変わっていきますいくはずですわ。理解してくれる方々も、必ず現れますもの──」
地続きの歴史の真実。
災害がもたらし続けている問題。都市の荒廃し続ける傷痕。廃墟が広がる地域、スラム化し不法に住み着く住人。それが引き起こす犯罪と、それを利用し利益を貪り搾取する存在。さらにハラマセーがうねり潜んでいる。
自分達はそれに触れる事の無かった、恵まれた存在だということを、痛感する。
カオリが回りくどくであるが、戦う環境の用意を万全に目指すのを語るのは。
先例とこれからの脅威に対する備えに、表情には余裕は見て取れないのを、湯気の中で感じさせた。
話せることは話したと、カオリは大きく一息吐き───そして、暫しの時間を空け、先ずリサから質問が飛ばしはじめた。
【質疑応答】
「……なぜ最初から顔を合わせての話しを行わなかったか………慎重なのは理解……お互いに見ず知らずだから……」
「わたくしが最初から姿を見せれば、かえって警戒を強めたはず。まずは行動を見て、あなた方が自ら選ぶ力を持っているか確かめたかった。わたくしも、あなた方も、互いに正体不明の存在でしたもの。だからこそ、焦らず、観察し、信頼を積み重ねる必要がありましたの。今こうして話せているのは、その結果ですわ──正直、触手城からの敗走は、慎重が過ぎたと後悔いたしましたわ」
リサの問いに、慎重さと安全を得る時間が、どれだけ消化しにくいかを示す。
「てかさ、こんだけ投資してさ〜……ぶっちゃけ、あんたら的にどんなメリットあんの?」
「利益──そうですわね。強いて言うなら、この世界がこの街が壊れないこと。ハラマセーが蔓延すれば、日々を生きる人々はすべて失われますもの。あなた方を支えることで、何も知らず犠牲になる人々、それを守るのが最大の利益ですわね」
アスカのやや挑発的な問いに、正義の建前を堂々と正面に立てる。
さて、その真意はいかにとも思うが……今は口にはしないで納得はしておく。災害の真実を知ったからには、軽々しく探るべきではないと。
「ここで……返事を………しなきゃいけない?」
「そんなことはありませんわ。むしろ、即答する方が危ういですもの。あなた方の人生がかかっているのですから、納得して、腹を決めてからで構いませんこと。ただ──寮はいつでも受け入れる準備が整っておりますわ。わたくしとしてはなるべく早くにと……焦りはあるのは正直な気持ちですけど」
ケイの不安、診察・検査・講義から、寮の案内からの共闘の申し出が連なり。入ってくる情報が多すぎた。
整理し考える時間の欲求に。この場でとは言わないが、カオリも早めには返答が欲しいと、正直に急く気持ちを表す。
「共にに戦うってのはいいぜ。でもよ……利用されるってのははごめんだぜ」
「利用するつもりなら、こんな回りくどいことはいたしませんわ。あなた方の力は、命令で動かせるものではない。自分の意思で戦う者だけが、ハラマセーに対抗できますの。だからこそ、あなた方を尊重し、選択を委ねているのですわ」
「わたくしは、あなた方を駒ではなく仲間として迎えたい。そのために寮を整え、環境を整え、あなた方の行動を見守ってきましたの。どうか誤解なさらないで」
ヒナタの懸念に、誠実さと共闘を前面に。
金を出す立場の強みは拭えない。耳障りのよい言葉と環境で支配するならば──考えはあると反骨なヒナタの瞳は語り、カオリもそれを受け止めている。
「言いたいこと伝えたい事は、充分にわかった。力は合わせるべきだ。俺はこれからもハラマセーと戦う。ただし他のみんな、特にピュアたちは疲れ果て、大きく傷も受けている。仲間と言ってくれるなら、今は焦らない応えを待ってほしい」
「今までもセーフハウスなどの支援ありがたく思う。これからの共闘も確かに納得だ。ただ本格的な戦いに向かい合う前に、もう一度しっかりとピュア達と話し合いたい」
アキラとユウヤの、ヒーラーとしての決意と。ピュアたちを背にする思い。カオリはゆっくりと頷く。
「あなた方の覚悟は、わたくしが求めていた仲間そのものですわ」
「もちろん、仲間と言うからには、あなた方の傷や心の揺らぎを無視するつもりはありません。一度に色々なことを説明してしまいましたもの、その回復と理解に時間は必要ですわね──」
「焦らせるつもりは、毛頭ございませんわ。あなた方が自分の足で立てると感じた時に、その答えを聞かせてほしいですもの」
「一応────期日は設けますわ。それは答えを出す区切り。その答えを聞ける日を、入寮日のその時を。わたくしは心から楽しみにしておりますわ」
「肝心なことを聞かなきゃいけないわ……………………」
アヤは真剣な鋭い眼差しでカオリを見つめて、問う。
「寮費はいくらのなのかしら?」
ざっぱ~~~~~ん!!
アヤ以外の全員が湯舟に突っ伏し、盛大な水柱が上がった。
「なっなによ! 大事な事でしょ!?」
「こっここまで用意して寮費を取ろうなんて、わたくし吝嗇ではありませんことよ!!」
「あっあとで請求されたら困るじゃない! こういう事ははっきりしないと!」
カオリが湯舟から立ち上がり、顔を真っ赤にしながら言い返し、暫くの間低次元な言い合いが続き。
「こほん……先にコベニを通じて明言すべきでしたわね、ごめんあそばせ」
カオリが一歩引くという感じで収め。湯舟もほんわかと温もりを取り戻す。
「一つ質問、会談の場所をこの浴場に設定した意図は? 普通こういう話はラウンジなり貴女の部屋なりで行うでしょう」
ユウヤが探るかのように疑問を投げかける。
「ふむ、ここが一番正しいと感じたからかしら。服を纏い役割や立場、いろいろな仮面を被るのは付き合いには必須。それを脱ぎ捨て、ただの人として向き合える場所。裸であれば、精神的にも肉体的にも嘘がつけない状態でしてよ。ここならば、余計な強がりを持ち込めず、本音で胸も腹も開いて話し合える。仲間同士の信頼も、戦う時の背中を預けるだけではなく。こういう、心の鎧も外して向き合う時があってこそ、わたくしは本当の意味で強くなれると思うの」
「まさしく裸の付き合いですわね」
「な、なるほど……忌憚なく意見を交わせる………場か……」
『裸の付き合い』という解釈が、場所と心理精神的なものと混ぜ過ぎな解釈にだが。直球すぎる説得力もあって、カオリの器が大きいのか常人には測れない感覚なのか、判断しづらいが。納得してしまう部分もある───
『『『『『いやいや絶対、なにか勘違いしてるだろ、コレ』』』』』
みんな一斉に思ったが、口には出さなかった。
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