それは彼女らが、妖怪に犯されたくてたまらないからでした。
共存派に属するいぶきは、その望みを叶える施設に心当たりがあるみたいで……?
Skebにてご依頼を受け、執筆した作品です。
お楽しみいただければ幸いです!
なずなといぶき、蝦蟇と交歓を愉しむ
本赤樫同士がぶつかる音が高く響く。続いて道場の床に硬い物が落ちた。
「あっ……!」
「あ、あれ……?」
打ちこみを受けきれず、木製の薙刀は主の手から叩きおとされる。退魔巫女同士の模擬戦は呆気ない幕切れを迎えた。
「えっと……ウチの勝ち……?」
勝利したのは長い黒髪が艶やかな少女だった。しかしその翠瞳にも関西弁にも戸惑いが浮かんでいる。
対手である金髪碧眼の少女はその理由を知っている。先ほどの一撃は柄の握りが不十分だった。腑抜けた一撃だったというのに、それすら受けられなかったのだ。
「なっちゃん……やっぱ、ちょっと具合わるい?」
「うん……そうみたいね。ごめんなさい、いぶき」
ふたりの名は嵐山いぶきと、雷道なずなという。
紅白の装束に身を包み、玉鋼の刃で武装し、人々を脅かす妖怪を調伏する。彼女らはともに、退魔巫女と呼ばれる存在である。
おっとりとした性格で、妖怪との共存も視野に入れるいぶき。他人にも己にも厳しく、妖怪は殲滅すべきという考えのなずな。ふたりは性格も信条も真逆だ。
しかし彼女らはなにかと縁があった。現在も同じ神社を拠点とし、退魔巫女の活動を行っている。
「ウチもなんか調子イマイチやから……今日はもう上がらへん?」
「えぇ。そうしましょうか」
訓練を切りあげたふたりは並んでシャワーを浴びる。熱い湯で汗を流しても心はすっきりとしない。なずなの薄い胸の中には依然、もやもやとしたものがわだかまっている。
「ふぅ……」
「なぁ、なっちゃん。なっちゃんの悩み、当てたろか」
溜息をついていると、隣のいぶきが話しかけてきた。シャワーを止めた彼女は大きな乳房を揺らしながら続ける。性格と信条だけでなく、彼女らは体型も真逆なのだ。
「ずばり……妖怪とエッチしたい! やろ?」
「は……? あ、はぁぁあっ!!?」
思いもよらぬ発言だった。なずなはしばし、ぽかんとしていたが……。顔をみるみる間に赤く染めると、慌てて反論を試みる。
「な、あ、アンタ、なに言って……」
「ウチもそうやねん」
いぶきは急にトーンを落とした。翠瞳と声音に冗談や揶揄の色はない。彼女の言葉は真実であるとわかった。
「う、うん……」
その様子に毒気を抜かれ、なずなも首肯した。
訓練に集中できない理由。それはいぶきが口にした言葉と寸分たがわない。すなわちなずなは、妖怪に犯されたくてたまらないのだ。
なずなもいぶきも歴戦の退魔巫女である。大賀温泉郷の神隠しに、七ツ橋学園の七不思議に。彼女らが解決した事件は数多い。
魑魅魍魎の攻勢に膝を折った苦い過去もあるが……ふたりはそれも糧とし、単独で大妖怪を討伐できる業前すら身につけた。
経験と実力。双方を備えるがゆえ、今さら不覚を取ることなどあり得ない。
ゆえに彼女らはもう長いこと妖怪姦……すなわち人外がもたらす快楽から、遠ざかっていた。
「ウチら、ふたりとも欲求不満ってことやね」
「もっとオブラートに包みなさいよ……」
妖怪から人々を守る退魔巫女なれば、わざと負けるなんて選択肢はない。決して叶わぬ願いをこれからも抱えつづけねばならないのだ。
そんな暗い展望を思うと、相棒の言葉に入れるツッコミにも覇気がない。肩を落としたままのなずなに対し、いぶきがぽつりと呟いた。
「実は、なんとかできるかもしれへんねんけど……」
「ほ、ほんとうっ!?」
なずなは思わず身を乗りだしていた。その勢いにいぶきも思わずのけぞる。己の行動を恥じいったなずなは、ひとつ咳払いをした。
「じゃあ、続きはお風呂あがってから……」
「う、うん」
いったいどんな話が聞けるのだろうか。なずなは金のロングヘアを乾かすのももどかしく、着衣を整える。
◇
ふたりは居間で向かいあう。いぶきの解説はこのようなものだった。
とある退魔巫女の一派が、妖怪の研究施設を運営している。そこでは生態の観察や使役の実験が行われているのだとか。
それは表向きの顔で、違う一面もある。
妖怪と戦う退魔巫女は大抵、敗北により純潔を奪われる。そんな悲劇は一度で終わらず、二度三度となることもしばしばだ。
治療により妖気は浄化できる。しかし繰りかえされた妖怪姦により、その身体に快楽を刻みこまれた者もいる。
そう。ちょうど今の、なずなといぶきのように。
そんな巫女たちの望みを叶える……つまりは安全に妖怪姦を愉しめる、保養所としての側面もあるとのことだ。
いぶきは妖怪共存派の、灘杜神社出身である。ゆえにそんな施設の話も耳に入ってきたらしい。
なずなは先輩の顔を思いうかべる。霞ノ杜神社の面々がそんな話を聞いたら、すぐさま殴りこみをかけるに違いない。殲滅派は絶対に聞けぬ情報だった。
加えてその施設の利用には、義務がひとつだけ発生する。
「よ、妖怪の仔を産む……!?」
若く健康な退魔巫女が母体となって産まれた仔。それは研究対象として非常に重要らしい。
しかしその見返りとして、強力な武具や貴重な呪符も譲ってもらえるのだとか。
「赤ちゃんはそのまま施設が世話してくれるから、野良妖怪にもならへん。安心やろ?」
「うん……」
聞けば聞くほど悪くない、いや。魅力的すぎる話だった。
あの快楽を再び味わえて、装備まで整えられる。それだけに留まらない。その先にある未知の邪悦さえも体験できるというのなら……。
なずなはいつの間にか溢れだした唾液を、ごくりと飲みくだした。
「ウチ、先輩から誘われとってん。なっちゃんも一緒やったら、心強いんやけど……」
そう言いながら、いぶきはそっと手を差しのべた。逡巡しながらも……なずなはその手を取る。相棒とともに行くことが、決断への強い後押しとなった。
いぶきの白肌は熱くなっていた。しかしそれは自分だって変わらない。妖怪を調伏すべき退魔巫女たちは早くも、異種姦への期待と興奮に焦がされている。
◇
明くる日。ふたりはさっそく妖怪の研究施設にして、退魔巫女の慰安所を訪れた。共存派であり、すでに勧誘を受けていたいぶきが同行しているゆえ、話は早かった。
ここの山々一帯が丸ごと、研究所の土地になっているという。ふたりの退魔巫女は緩やかな坂を進んでいく。
(やっぱり、落ち着かない……)
なずなは愛槍どころか符の一枚も帯びていない。いぶきも同様に丸腰だ。ふたりはなんの加護もない巫女服だけを身にまとい、広大な敷地を歩く。
不安にさせる要素は、それだけでなかった。
「じーっと……見てるなぁ」
いぶきはぽつりと呟く。その気配はもちろん、なずなも気がついている。
多くの妖怪がこちらを窺っている。しかし殺気や害意はない。退魔巫女が自分たちのテリトリーに入る理由を、彼奴らもよく知っているのだろう。
(もう……来るなら早く来なさいよ……)
性欲旺盛な視線がいくつも突きささる。種を注ぐに値するメスかどうか、品定めされているのだ。
じっとりした熱を含むそれは少女の肌を……いや。今も疼く胎をさらに焦がすようだった。ナカが滴る感覚が、下腹からはっきりと湧きあがる。
ふたりともここの新顔で、しかも歴戦の退魔巫女だ。それゆえか、彼女らを襲おうというものはまだ現れない。
ついに川べりに辿りついた。水底まで透かすような透明度の清流である。なずなといぶきはそこでしばし、休憩することにした。
「う~ん! 美味しいなぁ!」
「ほんと、綺麗な水ね」
たおやかな手で掬い、ふたりは喉の渇きを癒す。散策に戻ろうとした時。ついに巫女たちの前に、待ちのぞんでいたものが姿を見せた。
ざば……。
水音とともに現れたもの。それは人間ほどの体躯を持つ妖蛙……蝦蟇だった。
その形状は清水に生息している生物とは思えなかった。灰緑と紫黒が斑になった体表には、無数の肉疣と妖光の粘液が浮かんでいる。丸目の瞳孔は暗く濁り、美少女たちをじっとりと見据えた。
痘痕を連想させる醜形はぞろぞろと現れ、なずなといぶきを取り囲む。
「ゲッ、ゲェロッ!」
咽喉を震わせ大口から発せられた蛙声は、ふたりの背を跳ねさせた。彼女らはここが初めてではあるが……彼奴が主張するここの流儀は、よくわかった。
蝦蟇どもはふんぞり返るように立ちあがる。白く丸い腹を見せた。その下部にはスリットがある。そこからみるみる間に、肉茸がそびえ立っていく。
「う……」
粘液をまとう、妖蛙の生殖器が露わとなった。蝦蟇のそこもまた、凹凸に富んだ形状をしている。多量の水分でふやけきった、硬肉のなれ果てのようなペニスだった。
イボも性器も、彼奴の身体はどこもいやらしい粘液に覆われている。もし、あんな醜いものに犯されたら……。そんな考えを抱いたなずなの内腿がぶるりと震える。
風に乗って甘い匂いが鼻に届いた。それを認識した途端、子宮が切なく蠕動した。
(……!)
「は、はぁ……」
ふと隣を見る。いぶきの頬は紅潮し、翠瞳は潤み。半開きとなった桃唇からは、吐息にも似た声が漏れていた。お調子者の彼女が見せる媚態……。それは妙に蠱惑的で、同性であるなずなも思わず息を飲む。
ゆえに行動はいぶきの方が早かった。
「?!」
なずなが近くにいるにも関わらず。いぶきは白衣から、ゆっくりと袖を抜いた。鎖骨が浮く白いデコルテと、豊かな膨らみがまろび出る。
食べた分だけおっぱいとお尻に肉がつく。そう豪語していたとおり、彼女の胸乳はまた一段と成長したようだ。
しかし巨房に型崩れはなく、その先端も美しい薄桃色で飾られている。ツンと前方に張りだした膨らみもまた、なずなの碧眼を強く惹きつけた。
(アタシも……)
いぶきの行動に見惚れてばかりもいられない。なずなも彼女に倣いはじめた。紅袴の帯を解く。着衣を地面に落とすと、ほっそりとした太腿が露わとなった。その付け根には肉付きの薄い、きゅっと持ちあがった小尻がある。
(み、見られてる……)
強烈な視線を感じ、背筋に寒気が走る。間違いない。蝦蟇どもは自分の股間に注目している。
一本の産毛も生えぬそこは見るからに未成熟だ。しかしその陰唇からは早くも愛液が滴りおちる。まるでご馳走を前に、涎を垂らしているようだ。
「なっちゃん……」
「いぶき……。う、うん……」
少女たちは視線を交わしあう。ふたりはそれだけで同じ動作を取った。
地面にぺったり尻肉と足裏をつける。両膝は離され、太腿の付け根が露わとなった。内腿の筋に引っ張られた秘唇はわずかに開く。
M字の中央はすでに濡れひかっていた。くちりという音が耳に届き、なずなは赤面をこらえきれない。
オスに種付けを乞う媚姿である。なずなもいぶきも退魔巫女の使命を帯びている。しかしメスの本能はそれよりも深い芯奥に刻まれていた。彼女らはちゃんと、作法に則ることができた。
「も、もう、我慢できないの……っ」
「ウチらのこと……好きにしてください……」
いぶきの言葉が合図となった。大口と穢皮の蝦蟇たちは、白い裸体を晒す退魔巫女たちに群がりだす。
「きゃ……!」
強靭な後足での跳躍が、なずなの身体にぶつけられた。蝦蟇の皮フは当然、濡れ湿っている。川に潜んでいたからではない。いやらしい粘液は蛙肉の内側から、常に分泌されているのだ。
べちょりという水音を聞くよりも前に、なずなは全身に鳥肌を浮かせていた。
(き、きもちわるい……!)
待ちこがれた妖怪姦である。しかしその相手はもう少し、吟味した方が良かったのかもしれない。文字どおり冷水を浴びせかけられたなずなは、そんなことを考えてしまう。
蝦蟇の貌や姿だけでない。醜形を覆う体液は粘着質にまとわりつき、甘ったるい異臭さえ放っている。
腐肉と接するような感覚は、生理的な忌避感をどうしようもなく掻きたてた。
べろっ、べちゃ……っ。
「ひっ!」
しかし蝦蟇の方は違う。白く、きめ細やかで、暖かい退魔巫女の肌。それをいたく気に入ったようだ。頬どころか全身を擦りつけて、粘液を塗りひろげていく。
同じ妖怪ではある。しかし彼奴の容姿も行動も、鎌鼬のポチとは比べるべくもない醜さだ。
「はぁっ、はぁっ」
だからこそなずなの欲情を煽った。殲滅派として厳しい訓練を積んできたのに。妖怪に屈服させられ、性欲と種汁を注がれる。身も心も蹂躙される未来がついに迫っている。
粘液がもたらす嫌悪感は、マゾ的快楽を燃えた立たせる絶好の糧となった。淫火に内側から焙られている証拠のように、なずなの頬は朱に染まる。
ぐいっ!
「きゃ……!」
なずなの正面に陣取る蝦蟇は、さらに密着を強くした。全身を使い、小柄な退魔巫女に覆いかぶさる。それだけでは終わらない。
ぐぢゅっ!
「!!?」
開いた唇になにかが飛びこんできた。咄嗟に口を閉じようとするもすでに遅い。弾力のある太肉が顎を固定していた。
なずなはようやく理解する。今、自分は妖蛙にディープキスを受けているのだ。被虐の悦に転がりそうだった彼女だが、その花貌には再び青みが差す。
「んんっ! んっ! ん゛ぅーーッ!!」
火照りはじめていた身体も、芯から冷やされつつあった。なずなは碧眼から涙を浮かべ、必死に首を振る。当然、蝦蟇はそんなことで獲物を逃がしはしない。
健気な抵抗が肉食獣を昂らせたのか。長舌を差しいれる妖蛙はますます興奮し、濁った黒目にさえ欲情の色を浮かばせる。
(やだっ、いやっ! いや……なのに……)
痘痕の皮フを擦りつけられ、穢涎を流しこまれ。なずなは汚辱の限りを尽くされる。
しかし身体の奥底から湧いてくるのはじわりとした淫熱と……それより高温の期待だった。
体液をたっぷりと馳走された。だがオスはまだ、メスを満足させようとする。なずなの要望どおり、妖蛙は次に肉を食らわそうとしていた。
ずずず……っ!
「あ……! あぁっ!」
柔い先端が瑞孔に宛がわれたと思うと、ずぶずぶと沈みだす。
暖められた胎内には潤滑液が満ちていた。溶け腐ったような蛙根だが、抵抗することはできない。なずなの身体は蝦蟇に割りひらかれていく。
◇
ずちゅっ、ずぢゅっ、ずちゅっ、ずぢゅっ。
「んぢゅ……んんっ、む、うぅっ」
なずなが妖蛙に懊悩させられている頃。いぶきも全く同じ呵責を受けていた。
豊かな肢体は正面から蝦蟇の醜身で押しつぶされ、すでに女性器内も征服されている。白い丸腹がぶつけられる度、冷たい肉が体温を下げていく。
「むぉ……、お、おぉぉ……っ」
眉間には深い縦シワが寄る。苦悶のような、官能のような……。いぶきらしからぬ表情だった。
グラマー体型を犯す蝦蟇は一匹ではない。別固体は交歓のサイドに陣取り、退魔巫女の桃唇を味わっていた。ゆえに彼女もいぶきと同じく、くぐもった声しか上げられない。
(や、やっぱり、いやかも……っ)
いぶきはカエルが苦手である。大賀温泉郷の異変でも蝦蟇と相対する場面があった。あの時は気力を振りしぼり、なんとか刀を振るったものだ。
そんな存在に組みふせられ、粘液を塗りひろげられ、挿入を許したばかりでない。フェラチオまがいのキスまで強要されている。
「んん、んぉっ、お……っ」
蛙舌は長く、器用に動く。いぶきの舌は根元から先端まで巻きつかれていた。そのまま上下に撫でこすられる。味蕾をこそげ落とすような、唾液をなすりつけるような……そんな粘着質な性動だった。
「おぉ……お゛っ!」
いぶきの口中には妖蛙の涎が溢れだす。喉を通ったそれは胃の腑に溜まっていく。津液は冷たいはずなのに、身体は逆に火照らされていった。
妖怪の体液は女を発情させる作用を持つものが多い。蝦蟇のそれも媚毒の類と判断して間違いあるまい。
ぬるぅぅ……っ。
「む゛ぅんっ!?」
女体に実った、たわわな果実。いかにも美味そうなそれが見逃されることはない。
挿入を見舞う蝦蟇は白い腹を押しつけ、さらに強くのしかかる。そして伸ばした手がいぶきの巨乳を掴んでいた。
むにゅっ、ぬるっ、ぬるぅ……。
「ふうっ、うう゛っ、うッ……!」
カエルの掌もまた、ぬるぬるとした粘液で覆われている。不器用な五指による揉みこみだが、ローションにまみれているなら話は別だ。
白肌には冷たいものが触れているのに、乳内には熱いものが溢れだす。相反する感覚は悦楽をよく育てていった。
「お゛ッ!」
ぬるついた指が乳首を弾いたその時。ついにいぶきの全身がびくりと跳ねた。絶頂により、膣内が強張る。腐肉のごとき蛙根をきゅぅっと強く包みこんだ。粘体がヒダの隙間に潜りこみ、いつまでも残ってしまう……。そんな連想さえ抱かせた。
(い、いや……やのにぃ……)
しかしオルガスムスに至った少女のナカは、ひとりでに緊縮しつづける。抱擁を解くことができない。
食いちぎらんばかりの強締はも妖蛙も追いつめ、忍耐の限界を迎えさせた。
どくっ、どくっ、どくっ、どくっ……!
「むぁ……あ、あ、あ゛っ!」
カエルに体温はない。その内部で作られる精液にも当然、温度はなかった。生を遠ざけるような冷たさなのに、それはいぶきの中に生を宿そうとしている。
妖怪らしい不気味な種付けに、退魔巫女は翠瞳を震わせるしかない。
◇
どくっ、どくっ、どくんっ……!
「あぁぁ……、は、あ……ッ!」
放たれた蛙精にいぶきが震える、そのすぐ隣。なずなもまた、種付けの冷たさを味わっていた。
無熱の胤はその分、異物感をより強調させていた。粘棒の拍動とともに、それは子宮に大きく広く侵食していく。
妖怪に犯され、穢された。その現実がいよいよなずなの認識に迫ってくる。しかし。
「はぁッ……! あ、あぁッ……!」
彼女の背筋に這うものは悪寒と嫌悪だけではない。桃唇から確かに、悦楽の熱息が吐きだされていた。
ついに願望が充足された。なずなの心に昏い悦びが注ぎこまれていく。
しかしメスが満ちたりたからといって、淫宴は終わりではない。可憐な退魔巫女たちの周りには、まだ蝦蟇どもが群がっている。彼奴らを無視して下山することなど不可能だ。
ぱんっ!
「あっ!」
水かき付きの手で薄い尻を叩かれた。なずなは無理やり体位を変えられる。金髪碧眼の美少女は四つん這いの姿勢となった。屈辱的な格好だ。
正常位の異種姦により、小柄な彼女の全身はすでに粘液でどろどろだった。長い金髪にも絡みつき、ひとつの房のようになって背中から垂れおちる。
ずずず……っ!
「あっ……!? や、いやぁっ……!」
当然の権利のごとく、蝦蟇はなずなを後ろから貫いた。四足獣が交尾を行うような体位である。だからこそ妖蛙は本領を発揮できるのか。堂に入った腰振りをなずなに見舞いだす。
ぱんっ、ぱちゅっ、ぱんっ、ぶちゅっ!
「はぁっ、はぁっ、あぁっ!」
ぶよぶよとした冷棒がナカに突きいれられると、丸々と太った腹で尻たぶを叩かれる。高い水音が結合部から響きだした。
野天ということもあり、乙女の羞恥をことさら煽られている。しかしそんな人間的な考えなど、すぐさま吹きとばされてしまう。
ぶちゅぅっ!
「む゛ぅ……っ、ふ、ぅぅう……っ!」
美少女の桃唇は再び、蝦蟇の大口で塞がれた。媚毒と窒息が脳を冒していく。
どろどろの唾液に溶かされたがごとく。なずなはだんだんと、妖蛙と演じる交歓しか考えられなくなっていく。
「あ、あぁ……っ! あん、あ、あぁっ!」
ふと横を見る。いぶきも全く同じ体位、同じ犯り方で蝦蟇に穢されていた。
くびれたウェストにも、抽送の度に揺れる巨乳にも、いやらしい蛙手が伸びている。円い柔肉が粘液で濡れひかる様は煽情的で、なずなの胎をも暖めた。
◇
(なっちゃん……こっち見とる……)
相棒の視線はいぶきも承知していた。後背位で抽送を受けるたび、大きな乳房がぶるん、ぶるんっと揺れる。そんな動きはなずなの興味だけでなく、肉食獣の本能もどうしようもなくくすぐる。不器用な五指に捕らえられ、揉みくちゃにされ、乳腺の中にまた淫火が宿される。
(なんか……ヘンなきもち……)
妖怪に犯されるだけではない。その様子を親友に視姦されている。そんな状況は異様な興奮を煽りたてた。
射精を受けた肉壺はさらにぬめりとうるみを増している。そんな様ではいくら締めつけても、粘液でできた蛙根を捕まえることはできまい。しかしいぶきの内腔はなおもひとりでに、蝦蟇の生殖器を慰撫する。
「ゲッ! ゲ、ゲロッ!」
淫熱を伴う媚動は、オスに効果的だった。妖蛙は早くも種付けを見舞う。
溶肉の拍動とともに、冷胤が子宮内に広がっていく。絶頂へ至るに充分な快楽はすでに受けとっていた。身体を芯から震わせながら、人妖は揃ってオルガスムスに達する。
「んんっ! んおっ、おお゛……ッ!」
目の前も頭の中も、真っ白闇に包まれる。そんな中にあるからだろうか。聴覚は冴え、隣からあがる籠声がよく聞こえた。
常は凛としたなずなの声は今、カエルの鳴き声のように無様だった。まともな言葉になっていないが、いぶきはその意を正確に読みとる。
(なっちゃんも、出されたんやね……)
同じタイミングで、同じ妖怪から種付けを味わっている。それはやはりいぶきから奇妙な安堵と……快楽を引きだした。
蛙舌に捕らえられたふたりの桃唇は、艶叫をあげることすらできない。
夜が更け、次に夜が明け、蝦蟇どもがねぐらに帰るまで、退魔巫女たちは冷精を注がれることとなった。
◇
退魔巫女の保養所に赴き、たっぷりと交歓を満喫してから。二週間ほどが経った。ふたりはまだ同じ神社を拠点にしている。今日はなずなに調伏の依頼があったのだが……。
「はい、申し訳ありません……。はい、それでは……」
丁寧な謝罪の後、なずなは携帯電話の通話を切る。そして小さく溜息をついた。
神社の玄関から居間に戻ってきたいぶきが、心配そうに話しかける。
「仕事の依頼、断ったん?」
「えぇ。ちょっと身体の調子が悪くて……」
最近のなずなは微妙な体調不良に悩まされている。軽い吐気やだるさ、胸の張りといったものだ。
以前のなずななら多少の不調があっても、妖怪退治に向かっていたはずだ。しかし今の彼女は消極的な選択をする。
その理由は自身の身体に重大な変化が起こっているからだなのだが……。なずなは無意識の内に、それから目を反らそうとしていた。
「そうそう。あの施設からこんなんが送られてきたで」
いぶきが出したのは妊娠検査薬だった。棒状のキットで先端には採尿部がある。もし仔がデキていたら判定窓に線が二本、浮きでてくる。一般的なものと同じ仕様だ。
しかし彼女らはそれをまだ知らない。孕妖確認用の検査キットが、初めての使用となる。
「これにおしっこかけるんやな」
「そうみたいね」
同封されていた説明書を読む。使用法も判別法も簡便で、検査に不安はない。
「……いっしょに調べるん?」
「んなわけないでしょ!」
なずなはいぶきの背を押すと、先にトイレへ突っ込んだ。
◇
判定が出た。結果はもちろん、ふたりとも陽性だった。
「やっぱり、妊娠ってたなぁ……」
「なによ、“ボテった”って」
いぶきの妙な業界用語にツッコミをいれるが、なずなの内心を穏やかではない。
予想はしていたことだった。しかし改めて突きつけられると……多少なりともショックを受けてしまう。
(初めて産むのが……妖怪の仔だなんて)
刃を振るい術を携え、退魔巫女は勇猛に戦う。とはいえまだまだ乙女である。恋した男とロマンチックな営みをして……なんて夢想を抱くことだってある。
しかしそんな未来は自分から捨ててしまった。子宮に宿し、産道を通し、最初に膣口から招くのは……妖怪の赤仔なのだ。
見ればいぶきも黙りこんでしまっている。
(やっぱり、動揺するわよね)
いかに彼女がマイペースだとはいえ、平静ではいられまい。なずなはなにか言葉をかけようとした。しかしその前に、いぶきが大きな声をあげた。
「う~ん! 妊娠ったってわかると、なんかお腹へってきたわ!」
能天気な発言にひっくり返りそうになった。そんななずなにいぶきは、不思議そうな目を向ける。
「どしたん、なっちゃん」
「いえ……。アタシも、ごはん食べようかしら」
「うんうん。いっぱい食べて、赤ちゃんに栄養おくらんとな」
その言葉にも一理ある。仔を孕んだのは快楽と武具のためだ。納得ずくのことだった。ならば後はもう備えるしかない。なずなは開き直りにも似た心持ちになる。
宿っているものが妖怪の仔だからか。ふたりのお腹は日ごと夜ごとに膨れていく。そして間もなく、臨月を迎えることとなった。
◇
ふたりの妊娠期間もお見通しだったのか。その後すぐ、施設の巫女たちが迎えにきた。なずなといぶきは再び、研究所に足を踏みいれる。産場の準備が整うまで、控室に待機するよう指示された。
「よいしょっと」
「ん……」
出産に臨む前にふたりは全裸になる。長い付き合いとはいえ、ぼて腹を晒すのは初めてだ。互いに恥じらいがあるのか、ふたりは微妙に距離をとった。
「…………」
なずなは背が低い。ゆえにぽっこりと膨らんだお腹がよく目立った。彼女は己の身体を恨めしそうに見る。その碧眼が向けられるのは膨らんだ腹部ではなく、胸乳だった。
(妊娠したのに、なんでサイズが変わらないのよっ……)
小柄な身体に沿うように、なずなの膨らみも小ぶりだった。妊娠したら大きくなるのでは? そんな期待をちらりともしなかったというと、ウソになる。
隣を盗み見る。黒髪の少女はらしくない無言で、巫女装束を畳んでいた。いぶきは相変わらずグラマー体型だ。仔を宿した下腹部もどこかしっくりと来る。
「……なっちゃん?」
さりげなく視線をやったつもりだったのに、気がつけば凝視してしまっていた。当然、いぶきも勘づく。彼女は照れ隠しなのか、子どもっぽいじゃれ合いを仕掛けてきた。
「え~と……。ほ、ほれ。うりうり~~」
「ちょ……っ、やめなさいよ!」
己のぼて腹を、同じく膨らんだなずなの腹に押しつけた。それからすりすりと擦りあわせる。張りつめた肌からはいぶきの体温と、なめらかな感触が伝わってきた。
それだけではない。彼女の腹を内側から膨らませているもの……すなわち蝦蟇の胎児の鼓動と息遣いも、確かに感じとれた。
どくんっ。
「んっ……」
それは我が仔も同じだったのか。なずなのナカで妖怪の仔が、ぴくりと反応する。
子宮を揺らされることはすでに、深い快楽へとつながっていた。膣道がじゅんと潤う。腰が砕けそうになり、思わずいぶきの身体を抱きしめてしまう。
彼女の白肌はしっとりと汗ばみはじめていた。見上げればいぶきの翠瞳は、とろんと蕩けだしている。
「なっちゃん……。なっちゃんのナカにも、ウチとおんなじのが入っとるんよな……」
「あ、当たり前じゃない……アタシたち、いっしょだったんだから……」
どうしてだろう。いぶきと自身の発言は胸内を暖め、胎中をさらに疼かせた。いつしかなずなも、己のぼて腹をいぶきに擦りつけていた。身体と感情の昂りに合わせ、ふたりはさらに密着していく。
ふたりの指は絡みあい、引きよせあい、互いの吐息がかかるまで顔が近づく。
開きはじめたふたりの唇が接しそうになった時……。
「いぶきさん、なずなさん。そろそろこちらにいらしてくださ~い」
戸外から名を呼びかけられた。出産担当者の言葉で、ふたりは正気に戻る。
退魔巫女たちは慌てて視線を切ると、そそくさと分娩室へ向かうのだった。
◇
そのまま分娩台に昇る……という段取りではなかった。ふたりはぼて腹を晒した姿で、カメラの前に立つことになる。出産のデータを残すためと説明されたが、その真偽を確かめる手段はふたりにはない。
「こ、これ、本当に言わなきゃいけないの……?」
「あはは……恥ずかしいな……」
なずなは戸惑い、いぶきは照れ笑いを浮かべる。しかし担当者はごまかされない。一糸まとわぬ退魔巫女にじっとカメラを向けて、彼女らの言葉を待っている。
意を決したのはやはり、いぶきの方が早かった。
「あ、嵐山いぶきです! 華の十七歳やで!」
「ら、雷道なずな……。いぶきと同じで、十七……」
その後に続くように、なずなも名前と年齢をカメラの前で開示する。撮影機器を構えた巫女は、落ち着いた口調で質問を重ねる。
「いぶきさんとなずなさんですね。おふたりはなんの妖怪に孕まされたんですか?」
「蝦蟇……大きい、カエルの妖怪……」
「ウチも……なっちゃんと一緒や」
腹の仔を宿した時のことが、否が応でも思いだされる。重くなった子宮は膣腔を上から圧迫し、蜜を搾りだした。内腿につぅ……と、愛液が垂れたことがわかる。なずなは赤面をこらえきれない。
「おふたりは何度目の妊娠ですか?」
「!? そ、そんなの、初めてに決まってるじゃない!」
予想外の質問になずなは、頬をさらに朱に染めて叫んだ。しかし記録係の巫女は顔色ひとつ変えず、いぶきの方に視線を移す。
「いぶきさんは?」
「う、ウチも、はじめて……です……」
マイペースな彼女にも恥辱の火が回りはじめたらしい。もじもじと太腿を擦りあわせている。確認するまでもない。彼女の内肌にも、蜜液の痕が伝っているはずだ。
「なるほどなるほど。親友同士、初めての妊娠なんですね。ところで、本当に妖怪の仔を妊娠してるんですか? その証拠を見せてください」
研究施設に赴く際、妊娠検査薬も持ってくるように指示された。その時は理由がわからなかったが……この映像のためだったようだ。
「はい……」
「こ、これでええの?」
「もっと高く。おふたりの顔と同じところまで掲げてください」
記録員の注文に、もはや抗う気も起きない。なずなもいぶきも二本線が刻まれた妊娠検査キットを、顔のすぐ横に持ちあげた。
このビデオを見れば誰であろうと、彼女らが妖怪の仔を妊娠したとわかるだろう。
「……?」
カメラの画角が変わった。今はなずなだけにピントが合わされている。
「なずなさん。霞ノ杜神社は確か、殲滅派でしたよね? それでもなずなさんは、妖怪の赤ちゃんを産んでくれるんですか?」
「も、もう、そうするしかないでしょ……」
視線を床に落とし、もごもごとした口調で返答する。なずならしくない話し方である。殲滅派という所属を改めて突きつけられ、自身の行いを恥じいってしまったのだ。
もちろんそれでは、記録係は納得しない。
「え? そうするって、なにをするんですか?」
「っ……! う、産むわよ! 妖怪の仔ども、産んでやるわよ!」
ヤケクソな発言であるが、立派な言質である。彼女はうんうんと頷く。カメラのピントはようやく、なずなから離された。
「いぶきさんはどうですか? 妖怪の仔、産んでくれますか?」
「ウチも、ちゃんと産みます……。なっちゃんといっしょに……」
いぶきからも了承を得て、インタビューはようやく終わった。そして同時に、ふたりに強烈な陣痛が襲いかかる。いよいよ出産が始まろうとしていた。
係員たちの作業は早かった。なずなもいぶきもロクに動けないというのに、あっという間に分娩台に乗せられる。
「ちょ、ちょっと!?」
なずなは大きな声をあげた。開脚は器具により固定され、秘部を大きく晒している。その正面にはまだ、大きなレンズがこちらに向けられているのだ。
インタビューだけでない。ふたりが仔を産む様子さえ、記録されようとしている。
「うっ!」
しかしもう遅い。腿だけでなく手首も抑えられ、もう動くことはできない。それに妖怪の仔はすでに揺り籠の戸をほぐしきり、産道へ降りようとしていた。
ごりっ。
「!? あ、あぁッ!」
妖怪の魔羅は大きく長い。子宮口を激しく突かれることも珍しくはない。しかし自分の内側……すなわち胎の中からそこを刺激されるのは、初めてのことだった。
ここに至って、未体験の邪悦がなずなを灼く。それに焦がされているのはもちろん、彼女だけではなかった。
「ふぅッ……! あ、がぁぁあっ!」
おっとりとしたいぶきが獣じみた声をあげる。異種出産の衝撃はそれほどまでに大きい。彼女と同じ状況にあるなずなは当然、それを承知している。
いや。いぶきより小柄な彼女はより、分娩の痛苦を強く覚えていた。
我が仔はまだ、子宮口を潜りきっていない。窄口はなおも拡張されていた。ぐりぐりと頭をねじこまれる度、腹が灼けるような感覚が脊髄を駆けのぼってくる。
ぐぢっ!
「あ゛あ゛っ!」
ひときわ大きな刺激がヘソの下から発生した。波紋のように広がるそれは、肉はおろか骨にも浸透していく。全身が蕩かされそうだった。
そしてその融感はまだ続く。なぜなら彼女の仔はまだ、膣腔へ降りきってさえいないからだ。
(ま、まだなの……? もう、アタシ……!)
初めての出産は果てしなかった。骨盤にはなおも重さが食いこみ、無理やり拡げられた子宮口は途方もなく痛む。しかしなずなを最も追いつめるものは……快楽だった。
我が仔は胎内の窄門を突破しようと、頭をめりこませ尻を振る。その動作は全てポルチオが感知する。
「はぁっ、あんっ、あ、あ゛ぁぁあッ!」
今もカメラのレンズに、股間を大写しにされている。しかしなずなはもはや、そんなことに気を回すこともできない。
初めての分娩である。しかも産みおとそうというのは、妖怪の仔だ。なずなの脳内にもかつて分泌されたことのない快楽物質が溢れだす。
意識と思考を司る神経束は今、作りかえられつつある。そんな最中にあっても、彼女の知覚が捉えるものがあった。それは友の声だった。
「はぁっ、はぁっ、あ゛ぁっ! ……も、もういややぁ……ッ!」
彼女らしくない泣き言があがった。隣の分娩台を見る。大きく膨らんだ腹が蠕動する様を目の当たりにしては、非難する気になれない。
同じ苦痛と邪悦を共有する親友に対し、なずなの身体は勝手に動いていた。
「い……いぶきぃ……ッ」
助けようとしたのか、逆に助けを求めたのか。呼名とともに手を伸ばす。それはすぐさま応じられた。柔らかく、温かい。いぶきの手がしっかりと握りかえしてくる。
「なっちゃんっ……、だいじょうぶ、だいじょうぶやから……!」
自身も苦しいはずなのに。いぶきはそれでも友を励まそうとした。そんな姿になずなは勇気づけられる。
しかし妖怪の仔にして我が仔は、母の身を省みようとはしない。緩みはじめたポルチオに、なおも頭突きをめりこませる。
「が、がんばって……っ! アタシも、あ、あぁ、あ゛っ!」
「うん……! ウチも、産むからぁ……っ」
爪が白くなるほど手を強く握ったからだろうか。腹の痛みが少しマシになった気がした。母の緩みは仔に伝わった。胎児はラストスパートとばかりに勢いをつける。
ぐ、ぐぐぐぐ……っ! ぼぢゅンッ!!
「あ、あ……っ! も、もう……ッ!」
「イク……赤ちゃんで、イってまぅぅ……!」
ふたりの艶叫と、破裂したがごときの水音。それらは見事にシンクロした。
腹が全て吹きとんだのではないか。なずなはそんな考えさえ抱く。不明の知覚は徐々に痺れに変わり、痺れは子宮口から膣口まで貫く、邪悦に至った。
「はぁっ……、あ、は、あぁっ……!」
なずなは絶頂の余韻に震えている。か細い息を吐くしかできない。彼女の碧眼は涙で覆われ、物の輪郭を朧気にしか映せなかった。
しかし己の股の間に、新たに現れたもの……。その姿はなぜかはっきりと捉えることができた。
「ほら、ふたりとも。元気な赤ちゃんですよ」
そう言いながら、施設の職員は嬰児を抱きあげる。そして全裸の少女の胸元に置いた。
じっとりと濡れた身体は黒く、大きな頭のすぐ先には長い尾がついている。巨大なオタマジャクシだった。
自分とは似ても似つかぬ姿だ。しかしなずなはこれが己の血を引き、己の腹から出てきたものだと理解してしまう。
ふたりの退魔巫女は同時に、妖怪の母となった。
◇
蝦蟇の幼体、すなわちオタマジャクシは水中に住む。ふたりは産んだばかりの我が仔を抱いて、山中を流れる川へやってきた。
ここも施設の一部である。この仔が庇護から外れることはない。
「…………」
そうわかってはいても、なずなの心は落ち着かなかった。
妖怪の仔を産むくらいなら、死んだ方がマシ。
以前の自分は間違いなく、こんな考えを持っていた。それなのに今の自分は妖怪の仔に対し、母性と慈愛をはっきりと抱いているのだ。
そんな己自身がいまだに信じられない。
「元気に育つんやで」
いぶきは我が仔にひと声かけると、大頭の嬰児を川に浸した。そしてあっさりと手を放す。なずなもそれに倣おうとする。
「あ……」
なずなの仔は母の手に軽く頬擦りをしてから、清流に乗って泳ぎさっていく。その感触はいつまでも肌に残るようだった。
我が仔は胸のざわめきとともに、胎の疼きも取りさってくれた。ならばこれから行うことは、ひとつに決まっている。
「いぶき。帰ったらすぐ、鍛錬の続きよ」
なずなはすっくと立ちあがった。親友の言葉を聞き、いぶきはぽかんとした表情を浮かべる。しかしすぐさま意を得ると、微笑をもって返した。
「そうやな。スッキリしたし……ウチもまた頑張るで!」
「……もう大丈夫。二度とこんな、血迷ったマネはしないわ」
いぶきは高らかに、なずなは噛みしめるように。ふたりは退魔巫女として決心を新たにする。彼女らの瞳には少女らしい純粋な意志が間違いなく宿っていた。
しかし。
なずなもいぶきも味わってしまった。事故や不覚からではない。自ら望んで妖怪と交わり、その仔を産み、報酬さえ得るという禁断の悦楽を……。
これは退魔巫女として、いや。女として明らかに一線を越えたといえる。
現在、ふたりは肉も心も満たされている。だがそう遠くない内に再び、この施設を訪れることになる。
そんな未来をなずなもいぶきもまだ知らない。退魔巫女たちは今はただ、己の使命を真っすぐに見据えていた。