そんな折、妖怪の研究所から実験参加の依頼が来ます。
そこには杜崎莉音と東雲沙月、
そして研究所の所長が待っていて……?
Skebにてご依頼を受け、執筆した作品です。
お楽しみいただければ幸いです!
【前編】黒髪の三巫女、牛鬼の交配実験に参加する
嵐山いぶきはひとり、拠点の居間でだらりと横になっていた。
「う~~。ヒマやぁ……」
長い黒髪と巫女装束が乱れることも構わず、ごろごろと寝転がる。白衣越しにもわかる巨乳が、忙しなく形を変えていった。
仰向けに戻った時、いぶきはようやく動きを止める。そしてひとりごちた。
「なっちゃん、はよ帰ってこんかなぁ」
雷道なずなの顔を思いだす。彼女は今、自身が所属している霞ノ杜神社に戻っている。炎岳神社周辺で起こった異変と、その終結を報告するためだ。
妖怪が急増した原因を探り、その元を断つ。なずなが受けた依頼であったが、いぶきも調査に参加した。
(あれ……けっこう強い妖怪やったな)
異変の原因は牛鬼だった。紛れもない剛妖である。
今回ばかりはいぶきも不覚を取った。なずなと分断され、蜘蛛糸の牢獄に囚われ……犯されてしまった。
強牡に相応しい太さと大きさを持った逸物で、たっぷりと邪悦を摺りこまれた。
(本気でやったのにヤられるのなんて、どのくらいぶりやろ)
いぶきは熟練の退魔巫女である。妖怪に敗北するなど、本当に久方ぶりの出来事だった。
湯治で身体を癒したものの、その奥はまだ淫焔が燻っていた。思いだすと火勢が増す。揺るがされた胎と耕された膣が、ふつふつと湧きだした。
「ん、んん……」
まだ生々しい記憶を再生すると、右手が自然に伸びていた。緋袴の内に挿しいれる。
ひとさし指の先で陰核をちょんとつついた。女芽はそれだけでむくむくと育ち、包皮を脱ぎすてる。
「はっ、はぁっ」
次いで中指も参加させる。姿を見せた敏感なクリトリスを二指で挟みこむ。そのままくりくりと抓みあげた。
「んんっ! ふぅぅ……!」
少女らしからぬ豊満な身に、悦電が走りぬける。いぶきの性感は開発されきっている。簡単にオルガスムスへ至ることができた。
しかし。
「はぁぁっ……、はぁ」
少女は過激な体験を何度も積んできたのだ。手抜きの指戯で満たされるはずもない。
そして軽い絶頂がとうとう、身体に火を点けてしまった。
(……旦那さまに会いにいこかな)
いぶきの頭に浮かんだのは、霊山の麓に立つ研究所だ。そこは、巫女たちに安全な妖怪姦と異種出産を提供する……保養所でもある。
彼女はそこの常連だ。鬼や天狗といった強妖と期間限定の婚姻関係を結び、その仔を産む。そんなコースにすっかりハマっていた。
「んっ……はぁっ……」
婚姻を結んだ妖怪たちの顔と、逞しい逸物が思いだされる。
ひくひくと蠢く陰唇からとろりと愛蜜が垂れた。赤仔にしゃぶって欲しいとばかりに、乳首もツンと勃つ。
(なっちゃんにはちょっと、悪い気ぃするけど……)
研究所を訪問する際は、なずなと連れだって行く恒例だった。しかしもう我慢できない。抜け駆けのような形になるが、弁明は後で考えることにしよう。
「!」
ちゃぶ台に置いたスマートフォンが鳴った。いぶきが起きあがったところを見計らったようなタイミングだった。
慌てて応答する。
「は、はい! あっ。研究所の……」
折よいことに発信元は件の施設だった。電話口にいるのは、もはや顔なじみとなった職員巫女である。
眼鏡をかけて、巫女装束の上から白衣を羽織って……。ちょっと胡散臭い風体の女性だ。
「いぶきさん。牛鬼の調伏、お疲れさまでした」
「えっ!? なんで知っとうの?」
異変の原因だった妖怪。その名をずばり挙げられ、いぶきは仰天する。研究所にいるはずの彼女がどうして知っているのだろうか。
職員巫女は質問に答えない。代わりにいぶきに対し、提案をしてみせた。
「実はいぶきさんに、実験の協力をお願いしたくて」
「そうなん? ええよ」
どのような実験を行うのか。いぶきはそれを問うことすらなかった。即断即決する。
彼女はヒーローを目指している。ならば依頼は断れない。そんな信念はもちろんある。
「それでいつ行けばええの? ウチは、今すぐでもかまへんで……」
しかしその花貌には淫蕩な笑みが浮かんでいた。桃唇からは舌さえも覗いている。純真な美少女に似つかわしくない顔だった。
それも致し方ない。いぶきはよく知っているのだ。この研究所で行われる全てのことは凄悦に通じている。新たな妖怪姦への期待が、身体と表情を沸かせていた。
◇
数日後。いぶきは件の研究所を訪れていた。
「嵐山いぶきさま、お待ちしておりました。応接室へどうぞ」
「おおきに~」
彼女はここの常連である。受付もほぼ顔パスで通過した。勝手知ったるといった歩調で通路を進み、奥へ向かう。
応接室の場所もすでに記憶している。重厚な無垢材のドアを押しあけた。
「……あれ?」
そこには先客がふたりいた。
「あっ、こんにちは!」
「こんにちは」
ともに長い黒髪をした巫女である。立ちあがるといぶきに挨拶と自己紹介をした。
小さな赤いリボンをつけたのは杜崎莉音。後方にふたつ、髪で輪をつくっているのは、東雲沙月と名乗った。
「ウチは嵐山いぶき! よろしくな!」
観察眼、というほどのものではない。彼女らは独り立ちしたばかりだ。ふたりの座り方を見て、いぶきはそれがわかった。
重心の移動や霊力の揺らぎ。日常のちょっとした動作は時に、なにより雄弁に退魔巫女のキャリアを物語る。
「なぁなぁ。りっちゃんとさっちゃんは、なんでここに来たん?」
「り、りっちゃん……」
ソファに腰を下ろすと、いぶきはさっそくふたりに話しかけた。あまりの気安さに莉音はちょっと引いたようだ。しかし沙月が返答する。
「討伐で不覚を取って、妖怪に、その……。それで淫の気が高まってしまったんです」
「わ、私もです。発散しないと、妖怪になっちゃうんですよね?」
「うん。最悪、そうなるなぁ」
あっさりした肯定に、ふたりはごくりと唾を飲みくだした。
今回のいぶきだってそうだ。いかに腕を磨こうと、退魔巫女は妖怪姦から逃れがたい。淫の気をいかにして晴らすか。それはしっかり考えねばならない。
「ほんなら、解消のために勧められて来たんやね?」
「はい。でも、それだけじゃなくて……」
莉音は真っ直ぐな瞳を向けてきた。
「この実験では、退魔巫女が強くなる方法も研究すると聞いたんです」
とある村の事件を解決した莉音は、その後に花火大会へ招待された。そこで人々の笑顔のため、さらに精進しなければと思ったそうだ。
沙月もまた、贈られた感謝の言葉に強く感じ入ったらしい。
(うんうん。ええ娘たちやなぁ)
いぶきは内心で何度も頷いた。人のために力を身に着けようとする。退魔巫女としての心構えが素晴らしい。
「それに……」
「それに?」
「報酬が良いと聞いたので」
沙月はさらりと答えた。莉音もこっそり頷いてみせる。
退魔巫女の多くは、総本山からの指令で調伏に向かう。探索の際に見つけた武具は自分のものにできるのだが……。良い装備に巡りあえる機会など稀だ。
ならば支給品を鍛えようにも、とんでもない費用がかかる。
武具と金銭。この研究所からの依頼は、これらの問題を一挙に解決できる。新人であるなら魅力的だろう。
(こういうのでも釣っとんねんなぁ……)
妖怪姦の虜となった者に、安全な交歓を提供する。そんな面のみで巫女を集めているわけではないらしい。
いぶきはふと考えた。ここまでして実験を続ける理由はなんなのだろうか。
「ん……?」
思索は深いところに向かわなかった。莉音と沙月の様子が目についたからだ。彼女らは身を硬くして、息も少し浅い。
退魔巫女としてだけでない。ふたりは研究所の参加者としても新人である。不安を抱えていても不思議はない。
(まぁ、しゃあないよなぁ……)
妖怪と交わり、その仔を成す。強力な霊地であるここでは、そんな穢行をしてもリスクはない。説明は充分にされているだろう。しかし言葉だけでは拭いきれまい。
いぶきはふたりに向かって笑顔をつくった。
「ウチはこっちもベテランやからな。ド~ンと頼ってくれてええで!」
「は、はい!」
「よろしくお願いします」
それから胸を叩く。ボリュームある双房がぶるりと揺れた。おどけた仕草に、莉音も沙月もわずかに心が緩んだようだった。
応接室のドアがノックされた。それから職員が入室してくる。
「お待たせいたしました」
「あれ? いつものヒトやないんやね」
眼鏡をかけて、巫女装束の上から白衣を羽織っている。特徴的な姿をした職員巫女ではなかった。
電話を掛けてきたので、今回も彼女が対応すると思っていたのだが……。
「はい。彼女は実験場におります。烏丸も一緒ですので」
「烏丸?」
聞きなれぬ言葉だった。いぶきはそのままくり返す。職員は小さく頷いた。
「烏丸千景。弊所の所長です」
◇
研究所の裏には霊山がそびえている。広大な土地で交歓相手の妖怪を探すのが、ここの定番コースである。しかし今回は違った。
職員は敷地の外れに三人を案内する。東端のそこにはコンクリート造りの小屋があった。厳重な施錠を解く。鉛張りされた内部の中央には、下り階段が口を開けていた。
「…………」
今、職員と三人の参加者は、どこまでも続くような段を踏んでいる。
頭上と足元に照明があるが……不穏な気配である。新人のふたりはすっかり黙りこんでしまった。いぶきは場を和まそうと頭を捻るが、どうにも言葉が浮かばない。
彼女自身も思索に囚われているからだ。
(そういや、ここの所長さんと会うのも初めてやなぁ……)
いぶきは研究所の常連である。しかし所長と出会うのは初めてのことだった。
巫女たちに妖怪姦を提供する施設の長。いったいどんな人物なのか、想像が尽きない。
「到着しました」
長い下り階段が終わると、大きな鉄扉があった。職員は短く詠唱する。すると音を立てて、重いドアがゆっくりと開いた。
「わ……!」
「す、すごいところやな……」
莉音といぶきは感嘆の声を漏らす。
そこは地下とは思えぬほど広い空間だった。天井は高く、照明も空調も作動している。天然の岩壁を利用しつつも、人の手が相当に入っていた。
扉を入ってすぐの場所は広間になっている。そこから向かって正面と左右に、いくつかの区画がある。その境は鉄格子によって成されていた。その様はまるで……。
「牢獄のようですね」
沙月の言葉どおりだった。いぶきは頷き、莉音はぶるりと震える。
そんな時、聞きなじみのある声がかけられた。眼鏡の職員巫女のものだ。
「いぶきさん。お待ちしておりましたよ」
「え!? ど、どうしたん……?」
彼女の姿は常と異なっていた。
白衣も巫女装束もなく、全裸を晒している。普段は厚着でわからなかったが、意外に肉付きが良い。
そんな肢体の、柔らかな部分……すなわち胸乳や女陰には、白濁汁がべったりとへばりついている。
「所長の調伏に付き合ってまして。ご案内しますね」
職員巫女は裸足のまま、いぶきたちを先導する。ぺたぺたと足音が鳴った。ここの床は充分なクッション性があるようだ。そう。寝転がっても身体が痛くならないほどの。
彼女の足は奥の一角で止まった。そこでは思いもよらぬ光景が広がっていた。
「!? う、ウチらがやっつけた牛鬼……!?」
いぶきは驚愕した。そこにいるのは確かに、自分となずなが調伏した牛鬼だったからだ。
己を弄んだ剛妖。その巨体は今、ぐるりとひっくり返されていた。大角も鉤爪の先も、揃って天を指している。
目を凝らせば、巨躯の周囲には結界が張られてあるのがわかった。これで彼奴の逃走を封じているのだろう。
「そうです。捕獲も縛法も、全て所長がなさったんですよ」
絡め手は不得意ないぶきである。しかし敷かれた結界が非常に高度で洗練されているとわかった。
そんなことを考えていると気がついた。牛鬼の腹の上で、何者かが跳ねている。
いぶきは直感する。長い銀髪をきらめかせる彼女こそが、ここの所長その人なのだ。
(そういえば、所長って……)
彼女はとんでもない実力者である。いぶきは期間限定の夫妖から、褥の中で聞かされた話を思いだした。
「いぶきも強いが……あやつも強いぞ! くやしいが、俺は敵わん!」
そんな言葉を聞いたが、半信半疑だった。
施設の運営に協力する妖怪は大抵、高い知能を持っている。ゆえに己の利益を理解し、契約を結んでいるのだと思っていた。
鬼、天狗、鵺。そんな強妖どもを力でねじ伏せている。そう考えるよりずっと現実的なのだから。
「所長! 御三方が到着しました!」
眼鏡の職員巫女は声を張りあげる。呼びかけは聞こえたらしい。六脚の異形の上で跳ねていた裸体が止まった。
ずぢゅンッ!
抜去の粘水音は、離れたいぶきの耳にも届くほどだった。牛鬼の精臭さえ立ちのぼる。
妖怪姦の痕跡はあまりに生々しい。背後のふたりが半歩さがったのがわかった。
「…………」
ふわりと新雪が舞いおりるように。所長……烏丸千景は、三人の前に立った。
脚は長く、腰の位置が高い。長身の女性だった。胸房と尻たぶはみっしりと重たげで、悩ましいカーブを描いている。それなのに腰は蜂のごとく細い。
触れることさえ躊躇われそうな美女であるが……。彼女の全身は穢されていた。
怜悧な美貌にも長い銀髪にも、牛鬼が放った白濁汁にまみれている。そして汚辱の証は体外だけに留まらない。
「あ、あの……おなかが……」
莉音の指摘どおり、千景の腹はぽっこりと突きでていた。子宮に多量の精液を溜めこんだから、ではない。その膨らみ方は紛れもなく、形あるものを宿している。
「あぁ……。孕んだだけです。ご心配には及びません」
しかし千景に気にした様子は全くない。ロングヘアを無造作にかき上げ、顔形を露わにする。すぅっと細い顎と、切れ長の瞳がよく見えた。冴えた雰囲気はますます強まった。
「皆様、ご足労ありがとうございます」
常人離れした存在感の持ち主である。しかし千景は参加者たちに、深々と頭を下げた。いぶきたちも慌てて応じる。
銀髪の美女はさっそく、説明に入った。
「すでにお気づきかと思いますが……。今回の実験に用いるのは、この牛鬼です。皆様には出来るだけ多く、この妖怪の仔を産んでいただきます」
◇
「っ……!」
自分だけでない。隣の沙月も息を呑んでいた。当然だ。これと向かいあうどころか……交わらなければならない。そう言われたのだから。
新人巫女の内心など、所長にはお見通しなのだろう。千景はまず懸念を取りのぞきにかかった。
「もちろん念入りに弱らせてあります。危害を加えられる心配はほとんどないでしょう」
「ほ、ほとんど、ですか……」
ほっと息を吐いた莉音だが、沙月の言葉で再び顔がこわばる。
相手は妖怪。しかも強豪だ。人間の言うことを素直に聞くなんて、やはりどうしても思えない……。
「心配せんでええで! いざとなったらウチが助けたるからな!」
いぶきのフォローを受けて、気持ちが少し和らぐ。
ベテランの彼女は次に、千景に目を向ける。
「牛鬼をたくさん産んで、なんかええことあるんですか?」
「はい」
研究所の長はすぐさま答えた。
「発生と成長のサンプルが多く揃えば、その応用で使役が実用化できるかもしれません」
牛鬼は古来より、各地に伝承が残る妖怪である。もしも退魔巫女の味方となるのなら、頼りになるのは間違いない。
「鬼や鵺といった大妖怪も、捕獲と召喚が可能でしょう? あれはこの研究所の成果なのですよ」
「!」
自分だけでなく沙月にも思いあたる節があるようだ。まだ未熟な新人でも、小さなコストで味方を増やせる。その理由はここにあったらしい。
この実験の意義は大きい。それは充分にわかった。千景はさらに要望を加える。
「それと……半妖も産んでいただきたいのです」
妖怪に種付けを受け、不幸にも受精した場合。女が胎で育て産みおとすのは、妖怪そのものだ。相手が餓鬼や油すましのようなヒト型であってもそれは変わらない。
しかしどういう巡り合わせなのか。人間の特徴も受け継ぐ、半妖として生を受けることがある。
「で、でも、半妖を狙って産むことなんて、出来るんですか?」
莉音は当然の疑問を口にした。
「それは不可能です。現状、多く産んでいただく以外に方法はありませんね」
千景が提示した手法はシンプルだった。数を打てばいずれ当てる。力技である。いっつもとそんな感じやねと、いぶきだけは苦笑していた。
「なんで半妖をつくりたいのか……聞いても、大丈夫ですか?」
「もちろんです」
沙月の言葉に千景は頷いた。相手が新人……、いや。どんな立場の者であっても、彼女は対応を変えることはない。莉音はそれがなんとなくわかった。
「データが必要なのです。可能な限り早急に。……貴重な存在ですからね」
ほんの少しだけ。莉音は違和感を抱いた。千景の言葉にウソ偽りはないだろう。しかし彼女は今、なにかをごまかしたような……。
莉音が疑問を呈する前に、話題は別のところへ移る。
「この実験ではたくさんの牛鬼が産まれると思いますが……。人間のまま妖怪を産みつづけていると、霊力が上がる。この仮説も検証したいのです」
「あっ。それ、ウチも気になっとった」
妖怪と交わりすぎると妖怪になってしまう。仔を何度も成すほど犯されれば、その末路は不可避だ。
しかしここは極まった霊地である。原則は逆転し、産めば産むほど巫女の身は清められる。それだけでなくさらに、霊力も増加するというのだ。
この実感はいぶきをはじめ、多くの退魔巫女から報告している。
「強くなる方法って、これかぁ……。ええこと尽くめやね!」
「は、はい……」
いぶきは振りかえると、新人たちに笑顔を向ける。しかし莉音も沙月も、ちょっと顔を引き攣らせていた。
「それでも、淫乱化は避けられませんけどね」
千景はぽつりと呟いた。莉音は思わず彼女の顔を見るが、職員巫女が割りこんできた。
「実験にご参加いただけるなら、承諾書にサインをお願いいたします」
彼女は恭しく書類を差しだす。内容を読んだ。期間は数か月と長いが、総本山と所属神社には修行と報告される。そして報酬は……莉音の目がくらくらするほど、豪勢だった。
真っ先にペンを取ったのは、いぶきだった。
「ウチはやるで。やるって決めてきたからな」
そしてさらさらと署名する。すさまじい即断即決である。莉音の視線はつい、いぶきの顔へ吸いよせられる。
「!」
彼女とは出会ったばかりだ。それでも優しくて頼もしい先輩だとよくわかった。そんな彼女の頬には薄っすらと朱が浮かんでいる。
「…………」
初めて妖怪に犯された時。とてつもない恐怖と屈辱を感じた。しかしそこには同時に……悦楽も、間違いなくあった。
妖怪姦と異種出産への期待。それだけでここまで焦がされるものなのか。
気づけば、沙月も署名を終えていた。残るは莉音のみである。
「わ、私も……」
彼女もまたペンを取った。そして震える字で、己の名前を書き記すのだった。
◇
明くる日。四人が参加する実験は、いよいよ始まった。
岩壁の地下窟には紅白衣装の美女と美少女が集う。その一角だけ、ぱっと華が咲いたようだ。
「さっそく始めましょうか。お願いいたします」
千景の青瞳が黒髪の巫女たちをぐるりと見回す。莉音と沙月は身体を固くするばかりだった。
初めての実験参加で、しかも相手は剛妖だ。身が縮んで当然といえる。
「よっしゃ! それじゃ、まずはウチがやるで!」
ゆえにいぶきは真っ先に名乗りをあげた。千景は頷く。
熟練の巫女はすたすたと、まるで散歩のように結界内に入る。そして牛鬼の尾部に近づいた。
いぶきが一番槍を名乗りでた理由。それは新人たちを助けるためであったが……。自分のためでもあった。
体奥を淫火で焙られつづけたところに、精悍な強牡が現れたのだ。彼女の我慢は限界に達していた。
「なぁ……。ウチのこと、覚えとうやろ?」
そそり立つ巨根越しに、いぶきは牛鬼に問いかける。
彼奴は剛妖であるが、言葉は用いない。しかし意はきちんと通じている。いぶきにはそれがわかった。
「あの時……。よくも、いじめてくれたなぁ」
白魚のような細い指が、節くれだった牡性器を握った。径は太い。少女の手では輪を作れなかった。
柔らかな掌に包まれると脈が強まっていく。熱も高まり、精臭が撒きちらされた。
「ふふ……」
いぶきの頬に淫笑が浮かんだ。
桃唇から伸ばした舌で、魔羅の表面をなぞる。牛鬼が射した精液が染みこんでいて、凄まじい味が口腔で炸裂する。
しかしいぶきは舐撫をやめない。
「れろ、れろ……。んんっ」
舌体で汚濁を拭い、桃唇で接吻を送りこむ。その度に牛鬼の巨体は面白いように反応した。六本の大脚は天を掴むように縮み、人面から野太い喘ぎが漏れる。牡性器の先端に掲げた亀頭も、淫血を巡らせてつやつやと輝いた。
いぶきは次に、顎が外れるほど大きく口を開く。
「んん、んぶぅ……」
鼻から息を吐きながら、妖怪の巨根を唇内に収めていく。牡性器を巡る熱が粘膜を炙り、砲丸のような塊肉が喉奥を突く。それでもいぶきは呑みこみを続ける。
「んむ……むふぅ……」
やがて妖怪の魔羅は全て、少女の唇内に収められた。
口腔は塞がれた。鼻で息をするしかない。精臭が強くせり上がってきた。それは今のいぶきにとって、淫動を続ける燃料そのものだ。
じゅぽっ、じゅぷっ、ぶぽっ。
美少女は首を動かし、フェラチオを見舞いだす。
気がつけば巫女装束も乱れだしていた。白衣の襟は緩み、細い鎖骨がちらりと覗く。緋袴の帯も解けはじめる。
清廉の象徴が堕ちるのも構わず、いぶきは口唇奉仕を続けた。
じゅっぽ、ぢゅぼっ、ぐぽっ!
巫女は自ら呼吸器を塞ぎ、過敏な喉奥の粘膜さえ擦りたてる。息苦しさだけでなく、吐き気さえこみ上げてくる。額の縦ジワが深く刻まれた。それでもなお……いや。いぶきのフェラチオはますます激しさを増す。
「ウォ、ォォォオッ!」
先に音を上げたのは妖物の方だった。その巨体から至叫と精液を炸裂させる。
どくっ! どくんっ! どくっ! どくんっ!
「む、おお゛っ! お、おぐっ、むぐっ……!」
いぶきが奥まで咥えこんだ瞬間のことだった。淫朱が浮く花貌が膨らむ。小さな口腔に収まる量ではない。白濁液は逆流し、鼻孔からたらりと垂れる。
強く粘った汁は唾液で溶かさねば喉を通らない。半固形の胤を何度も舌上で転がす。
「はぁっ、はぁ……」
精の味をたっぷり味わってから、いぶきは精飲を終えた。
妖怪の特性か、はたまた研究所の技術か。放欲した直後だというのに、牡性器は勃起を維持したままだった。
「ふふふ……」
いぶきはちろりと舌を出した。緋袴も落とす。そして牛鬼の上にまたがった。
ずぶぶぶぶっ!
「ふぅっ……あぁぁっ!」
強牡の精を取りこんだいぶきの身体は、準備をすっかり整えていた。長大な鬼魔羅を膣腔は一気に咥えこむ。
剛槍は実にあっさり、子宮口を串刺しにした。巫女の頬にさらに深い淫笑が刻まれていく。
ぱちゅっ、ぷちゅっ、ぶぢゅっ!
豊満な肢体を跳ねさせ、いぶきは性動を開始した。
結合部から響く水音はひどく粘っている。彼女の興奮と快楽は耳でもわかった。
(これ……やっぱり、気持ちいい……!)
妖怪の生殖器は理外の悦を約束してくれる。立場が逆転した今もそれは変わらない。
牛鬼の魔羅は早くもひくつきだした。至悦を知った巫女は思いきり腰を落とす。
どくんっ! どくっ! どぴゅっ!
「ふぅっ……! あ……あ、はぁぁぁあ゛……っ!」
いぶきの膣内で剛妖の精が放たれる。快楽を求める胎は悦びを持続させようと試みる。きゅぅっと締まり、次はふっと緩む。ウシの乳搾りに似た動作をくり返す。
どくんっ、どくんっ、どく……。
放悦を長引かされた牡性器は、痙攣にも似た動作を始めた。この辺りでいぶきは許してやった。腰をあげ、長魔羅を引きぬく。
止めた理由はもうひとつある。この一射で孕んだことが、経験豊富ないぶきにはわかったからだ。
胎に牛鬼との受精卵を宿し、いぶきは三人の元へ戻る。
◇
「ッ……!」
杜崎莉音と東雲沙月。ふたりの巫女は目の前で繰りひろげられた淫宴を、瞬きもせずに見入っていた。
「はぁっ……めっちゃ、よかった……」
その主役を務めた嵐山いぶきは、艶息を吐きながら歩いてくる。
白肌には汗が浮き、豊満な輪郭をなぞっている。同性の目にも美しく見えた。
しかし彼女が長い脚を動かすたびに、その付け根からは汚濁がぼとぼとと垂れおちる。それを今から、己のナカにも注がれないといけない……。
「つ、次は私がやります!」
名乗りを上げたのは莉音だった。
莉音も沙月も雉杜神社の出身だ。ともに新人の身だが、わずかに莉音の方が先輩である。それゆえの決断だった。
いぶきと入れ替わり、牛鬼の前に立つ。
(こ、この妖怪……すごく強い……!)
巨体はひっくり返され、腹と魔羅が丸見えになっている。情けない体勢だ。しかしそれでもなお、己では勝てるかわからない。その存在感に気圧された。
妖怪に対する弱気は、退魔巫女の大敵である。
ぶふぅっ!
「あっ!?」
逆さになった牛鬼の口からなにかが噴きでた。辺り一面を覆い、莉緒はまともに吸いこんでしまう。妙な臭いが鼻腔に染みこんだ。
「は、あ……あぁぁっ……!」
次の瞬間、莉音はがくりと膝をつく。
粘膜と肺腑に取りこまれたそれは速やかに血液に溶け、全身の隅々まで運ばれた。頬も心臓も、指先までも熱くなる。
牛鬼が放ったものは言うまでもあるまい。女体を狂わす媚毒だった。
「りっちゃん!」
思わぬ反撃である。いぶきは割ってはいろうとした。それを押しとどめたのは、千景だった。
「まだ安全な範囲です。手出しは無用に願います」
淫毒に冒されながらも、莉音はその言葉を聞いていた。助けは来ない。へたり込んだまま、それを理解した。
牛鬼はゆっくりと身を起こす。平時と見る影もない鈍重さだ。しかし確実に、巫女へ近づいていった。
びりっ! びっ!
「は……あぁ……」
そして脚先の鉤爪で紅白装束を剥いだ。莉音の肢体が露わになる。
大きな胸乳が揺れながらまろび出た。白い膨らみの先はすでに硬く尖っている。曇りのない薄桃色は、牡の興味を強く惹いた。
べちょっ、べろ……、べちょっ。
人面から長い舌が伸ばされた。唾液で濡れた赤肉が莉緒の乳首を這いまわりだす。強い嫌悪が少女の全身に鳥肌を立たせた。
「あっ、はぁっ、あぁっ!」
妖怪の唾液が塗りひろげられていく。異臭が鼻にまで届いた。それなのに莉音はびくり、びくりと反応する。
手で掬いきれぬほどの巨房。莉音は取り分け、そこで感じやすい。彼女の心はだんだんと、邪悦に流されだす。
べろんっ! べろんっ! べろぉっ!
「あ、あぁぁっ!」
中ほどから先まで使った大きなストロークで、べろりと舐めあげられた。豊胸が大きく弾む。その動きさえも乳悦につながった。乳首がピンと硬く勃つ。
それは準備が整ったことの、はっきりとした証だった。後脚が緋袴を裂く。莉音の下半身が露わになった。
ずぶぶぶぶっ!
「はっ……あぁっ!」
次の瞬間、醜怪な巨妖に真正面から貫かれた。
卒業試験でも初仕事でも、莉音は不覚を取ってしまった。少女の純潔はすでに奪われている。
しかし牛鬼の牡性器は、これまでに味わったことのない圧力があった。
(く、くるしぃ……!)
瑞孔を拡げるような太さ、体奥を容易に押す長さ。そして焼けた鉄のごとくに、熱くて硬い。
膣腔は身体を守るため、愛蜜をしとどに分泌させた。それは莉音と牛鬼、双方の興奮につながる。
ずちゅっ! ずぶっ! ぶちっ! ぢゅっ!
「あっ、はぁっ! や、やだっ……ああ゛!」
牛鬼は巨体を弾ませると、激しい抽送を見舞いだす。捕獲され、搾精され、実験材料にされた。この研究所で浴びた鬱憤を晴らすかのような激動だった。
ごつっ! ごづっ!
「あぐっ、ああ゛! うぅぅん゛っ!」
莉音の胎内からは鈍い音が響きだす。ポルチオを何度も叩かれているのだ。
荒々しいノックにより、子宮への門はすでに陥落していた。窄口は許しを乞うがごとくに開く。
(は、はやく出して……終わってぇっ……!)
経緯はどうあれ、莉音は種付けを強く望んだ。それは胎内にも反映される。
腹筋が強張り、膣腔がぎゅっと締まる。少女孔からの奉仕は牛鬼の棒肉も緩ませた。
どくっ! どくっ! どくっ!
「あ゛ぁっ!? は、あぁッ!」
女肉に埋められた魔羅が拍動する。その度に子宮に熱さと重さが追加されていく。腰骨にまで沈みこみ、融かされる。そんな突飛な連想さえ現実になりそうだ。
剛妖の力強い種付けは、新人巫女にとある確信を抱かせた。
(ダメ……これ、絶対……)
妖怪の仔を妊娠してしまった。それがはっきりとわかった。
「りっちゃん!」
膣内射精まで見届けて、所長の許可が降りたのだろうか。いぶきが駆けよってきた。
同じ黒髪でも、彼女は怖いのだろう。牛鬼はそそくさと隅に逃げる。その隙に莉音は肩を貸され、種付けの場から退散するのだった。
◇
「…………」
いぶきにも莉音にも、牛鬼の精が注がれた。
残ったのはひとり。東雲沙月だ。言うまでもなく、次は彼女の番である。
「はぁっ、はぁっ、はぁっ!」
種付けを受けたばかりの莉音の様は、凄絶としか言えなかった。
瞳は蕩け、息は荒い。豊満な肢体は妖怪の体液でどろどろだった。巨房は唾液で濡れ、淫裂からは胤汁がこぼれ落ちている。内腿と尻は白濁で汚されきっていた。
(これから……私も……)
目の前でここまでの性虐が繰りひろげられたのだ。新人であるなら萎縮してもおかしくはない。しかし彼女は憑かれたように真っ直ぐ進む。
「はぁっ、はぁっ」
その頬はすっかり上気していた。歩みよりながら巫女装束を脱ぐ。清廉の衣装は乱雑に落とされた。肌の白さも肉の円さも露わとなる。
いぶきや莉音が傍にいると、わかりづらいかもしれない。しかし彼女の胸乳も大きい。進みに合わせて柔らかく跳ねる。
(身体、おかしい……どうして……?)
その理由は、牛鬼が吐きだした息にあった。
沙月は前回の依頼で大百足と戦った。彼奴も女体を狂わせる毒を用いた。その作用がまだ、彼女の体内に残っていたのだ。
異なる妖怪が放った媚毒は相互に作用し、その効力を増していた。
「! あ、あぁ……」
いつの間にか全裸になっていた。沙月はそんな自分自身が信じられない。しかし己の内の肉欲は、彼女をさらに賤動に駆りたてる。
牛鬼の領域に入る。そしてすぐさま掌と膝を着いた。四つん這いの格好で妖根を待つ。
(こんなの……ダメなのに……)
研究所の参加者としても、沙月はまだ新人だ。妖怪の前でかしずく。そんな行いに退魔巫女の矜持と理性が非難を浴びせかけてくる。
しかし身体と本能は淫焔に焦がされていた。そんな言葉を無視してしまう。
しゅるる……!
「!」
巨体はのしかかってこなかった。代わりに牛鬼は糸を噴きかけてくる。沙月の肢体に絡みつきだした。
「あ、あぁぁ……っ」
地面に着いた掌と脚。それらが固定されていく。雌穴を晒した格好のまま、身動きが取れない。その実感がさらなる興奮を煽る。
沙月の心身はついに一致した。
「お、お願いします……。あなたのオチンチンを、私に……」
卑語を用いたおねだりを発する。牛鬼と目が合った。いやらしく曲げられた双眸を見た時。ふわふわと浮いていた心が、ずんと落ちた。
どすっ!
「!」
尻に直接、剛妖の重さが乗る。骨身が軋んだ。媚毒が回った脳さえ危険信号を発する。しかしもう遅すぎた。蜘蛛糸で縛られた沙月に抵抗の手段はない。
ずぶぶぶっ!
「あっ! あぁぁっ!」
ゆえに呆気なく、異種の牡性器が侵入してきた。
淫口は限界まで押しひらかれ、膣腔からみちみちと音が鳴る。デリケートな性粘膜は引きさかれそうだ。
ずぶっ! ずぢゅっ! ずぶっ!
「うう゛っ!? あ、あぁぁあ゛!」
それでも妖怪に容赦なはい。沙月の尻で弾みをつけると、抽送を開始する。
すでにふたりの退魔巫女へ種付けを見舞ったのに。牛鬼の性動に衰えは窺えなかった。
「はぁっ、あぁぁぁあっ!」
許容量以上の快楽を送りこまれ、沙月はすぐさま絶頂に達した。耳の中でなにかが爆ぜる音が、ぱちぱちと聞こえる。脳が焼け焦げているのだとわかった。
ずぶっ! ずぶんっ!
「あぅぅうッ!?」
それでもなお、牛鬼の魔羅は沙月の膣内を掻きまわす。悦感の信号を処理しきれない。骨身も神経も、少女の身体は限界に近づいていた。
「や、やめ……もうやめてぇ……」
新人はすっかり、妖酔から醒めていた。首だけなんとか振りむかせ、弱々しく訴える。牛鬼は当然、そんなもので心動かされることはない。
ぐぢゅンッ!
「ひぃぐッ……! あ、あぁぁあ゛ッ!」
ひときわ強い突き込みが、沙月の子宮に直撃した。退魔巫女は望まぬ絶頂へ押しあげられる。
膣内がうねり、子宮口は胤を媚びるように鈴口を吸う。しかし蜘蛛糸で縛られた身体は全く動かない。
(やっぱり、妖怪って……)
最初の任務でも味わった……つもりだった。それは片鱗に過ぎなかった。
妖怪による本当の性虐が、沙月の内外を壊しにかかる。
どくっ! どくっ! どくんっ……!
「ふっ、ふぅっ、うふぅっ……」
幸い、心身が限界を迎える前に、牛鬼の射精が始まった。強牡が見舞う種付け。その味をまざまざと味わう。
意識はぼんやりとしだしていた。そんな中、耳は微かに誰かの声を捉える。
「さっちゃんも助けてええやろ?!」
「はい。万一、全員の身動きが取れなくなったら危険ですから」
いぶきと千景である。自分とは比較にならぬ実力者だ。牛鬼は今回もそそくさと退いた。ふたりは蜘蛛糸を剥がしにかかる。
「んぐぐ……!」
いぶきは力づくで断ち切ろうとした。しかしさすがにうまくいかない。千景は静かに印を結んだ。
「あ……」
まるで鋭刃を当てられたかのごとく、妖糸はぷつりぷつりと切れだした。
呪符も武具も使わず、霊力を武器化する。そして沙月の身体には一筋の傷さえ残さない。凄まじい技量だとわかった。
「立てますか?」
「は、はい……」
千景が差しだした手を取る。沙月はなんとか立ちあがった。下を向いた淫口から、ぼたぼたと重液が垂れおちた。
その粘度と熱量が否応なく沙月に告げる。おまえの胎はもう、牛鬼の仔に征されてしまった、と……。
◇
実験が開始されて、まだそれほど時間は経っていない。しかし黒髪の巫女たちは牛鬼と交わり、膣内射精を受けた。
莉音たちはいったん妖物から離れる。千景の指示だった。彼女は天頂青色の瞳で、参加者たちの下腹を軽く観察する。
「皆様、無事に妊娠されたようですね。とても助かります」
ぞくりとしたものが新人巫女の背に駆けぬけた。妖怪の仔を孕んでしまった。その実感が鳥肌を立たせる。
しかしその理由は怖気や嫌悪ではない。
妖怪の仔を身籠る。それは異常なことだ。それなのに千景の目はあまりに平静だった。その落ち着きがかえって、新人の心を騒めかせていた。
快楽の期待に流され、実験に参加したが……。こんなことをしていて本当に良いのだろうか。莉音は千景に問いかけようとした。
「!」
「お、そんなんもおったんや」
しかしそれは言葉にはならなかった。まるでタイミングを見計らったように、別の妖怪どもが現れたからだ。
六脚で歩き、サソリのような尾を生やし、人面の頭部と大角を掲げる。ミニチュアの牛鬼だった。
「私が産んだ牛鬼です」
体長は一メートルほど。クモとして見れば驚くほどの巨大さだが、剛妖としてはまだ未熟も未熟だ。
この若牡どもも先ほどの痴態を見ていたのだろう。魔羅をいきり立たせていることが、漂う精臭からわかった。
「なぁ、所長さん。孕んだから、エッチしたらあかんってことは……」
いぶきは舌なめずりせんばかりだった。仔牛鬼どもに視線を向けたまま千景に問いかける。
「ありません。むしろ、別個体の精液が原因で変異が起こるかもしれませんので……。妊娠した後も是非、交尾なさってください」
その返答に、彼女の笑みはさらに深まった。そして妖怪どもの前に歩みでる。
豊満な女体だけでない。いぶきが発するフェロモンは、莉音の目にも映るようだ。妖怪どもが惹かれぬわけがなかった。
ぶちゅっ! ぐちゅっ!
「はぁっ、あぁっ!」
六脚が力強く跳ねた。いぶきに向かって飛びかかる。
血気に逸る若いオスどもは、巫女の身体を犯しにかかった。すでに孕んでいるのにお構いなしだ。自分の精で上書きしてやる。そんな気概さえ窺えた。
「!? きゃあっ!」
あぶれたものは当然、他の参加者たちに向かう。沙月だけでない。莉音の方にもやって来た。
「はぁっ、あ、あぁぁぁ……!」
妖怪姦初心者は咄嗟に抵抗しようとした。しかし牡どもはそれを許さない。力尽くで抑え込んでくる。
紛れもない蛮行なのに。莉音の下腹がきゅんと疼き、膣口から蜜を吐きだしたことがわかった。
初めて参加する、研究所の実験。莉音はそこに疑問と不安を抱いていたが……。溺れるほどの邪悦を浴びて、だんだんとそれらを忘れていってしまった。