まぁ、しばらく情事は無いですが……お楽しみください。
「ねえ、いっしょにあそばない?」
「…………いい」
彼ら2人の物語は彼……幼き織斑一夏が同じく幼い本を読んでいる鉄装結華に初夏の幼稚園にて話しかけたのが始まりだったのだろう。
「どうして?」
「……うるさいのすきじゃない」
「えー……たのしいじゃん。あそぼうよ」
結華はその後、一夏に話しかけられてもその一切を無視した。
だが、一夏は無視されるのにもめげずに結華に話しかけた。
「ねぇ、すなあそびしようよ」
「すべりだいであそぼ?」
「ブランコにのろう?ぼくがおすからさ」
「つみきしよ?」
ある日、一夏の連日のしつこさに結局結華は折れて一夏と遊ぶことにした。
「わかった。いっしょにあそぶ……なにするの?」
「ほんをよもう!!」
「……いいの?それで」
「だってほんよむのすきなんでしょ?」
「…………うん」
「じゃあ、よもう」
一夏は結華の手を取って本が置いてある部屋へと向かう。
「え……あ……ちょっ…………」
「~~♪~~~♪~♪~~~~♪」
一夏は結華と遊べるのがとても嬉しいのか鼻歌まで歌っていて結華の声など聞こえてないようだった。
結華は溜息を吐いて一夏と一緒に本を読む事にした。心の中ですこし毛嫌いしつつも……
・―・―・―・―・―・―・―・
とある日のこと……
「ねぇ、ゆいかちゃん」
「……なに?蛆虫にも劣る馬鹿」
結華は一夏の掛けた声に並みの幼稚園児に言っても分からないあだ名を言いながらも返事をした。
「う……うじ?……まぁ、いいや。きょういっしょにかえろうよ。いえで、いっしょにあそぼ?」
「う…………わかった」
結華には断ることも出来た、突っぱねることが出来た……だが、なぜか一夏を毛嫌いしていようとも一夏の誘いを断ることが出来なかった。
本能的に、反りが合わないとは思っていた、自分とは関わりの無いやつだと思っていたのに一夏はそれをやすやすと超えて結華に触れてきた。賑やかなものを好む一夏が静かな自分に合わせるのはなぜなのかと結華は疑問に思い、そして彼はなぜ真逆にしっかりと順応しているのかと思いつつ……そしてそこを嫌いながら……。
「ほんと!?やった!!」
そして帰り道……一夏の後ろを結華は歩いていた。
「ねぇ、ゆいかちゃん。あれなにかな……」
一夏が指差していたのは空の大きな雲だった。
「あれはせきらんうん……ゆうだちとかをふらせるくもよ」
「へぇー……よくしってるね」
「ずかんみればわかるでしょ」
「そうかなぁ……」
暫く一夏が質問し結華がそれに答えていると家が見えてきた。
「あそこ!あそこがぼくのいえなんだ」
「え…………」
結華の戸惑ったようすに一夏は聞いた。
「どうしたの?」
「そのとなり……わたしのいえ……」
「へぇー!!おとなりさんだったんだ!!なら、これからまいにちあそべるね!」
一夏の無邪気な笑顔……そのまっすぐさがそのときの結華には空からさんさんと地を照らす太陽よりも眩しく見えたような気がした。
一夏はそのまま結華をつれて自分の家に上がった。
「おかーさん、ただいま!ともだちをつれてきたよ!!」
「あら、珍しい……こんにちわ、お名前は?」
リビングから出てきた一夏の母にそう聞かれた結華は自己紹介をする。
「てっそう ゆいかです。いちかくんとはおなじあさがおぐみの……」
「あ!!いまぼくのこといちかってよんだ!」
一夏は結華に名前でようやく呼んで貰えてはしゃいだ。
「あら、そんなにはしゃぐことなの?」
「うん!いつもは……えっと……う……うじ……なんだっけ?まぁ、いいや!名前では読んでくれないけどいまはよんでくれた!」
「そう良かったわね……てっそうさん……もしかして隣の?」
「はい」
「そう……なら、挨拶に行かないとね」
一夏の母はサンダルを履いて一夏と共に隣の結華の家へと向かう。
一夏も結華も一夏の母についていく。
「すみませーん」
一夏の母は玄関のインターホンを鳴らしながらそう言った。結華の母はすぐに玄関から出てきた。
「こんにちわ……あら結華じゃない……ええと、そちらは?」
「ともだちのいちかくんのおかあさん。となりのいえにすんでる」
「ああ、よく結華の話す……こんにちわ。結華の母の刃奈(はな)ともうします」
刃奈はペコリと頭を下げて挨拶をした。
「お、おかあさんそんなこといわなくてもいいの!」
「あら、友達が出来たって自慢してたのに?」
「いいったらいいの!」
「そうね……今更遅いものね」
「あ…………!」
結華は刃奈との会話で一夏に秘密にしていたことが伝わってしまったのに気付き、家の中に走りだす。
「あらあら……あんなに顔真っ赤にして……ずいぶんと恥ずかしかったのね」
「一夏くん、どうやってあの子を籠絡したの?」
「ろーらく?」
「一夏くんにはまだ分からないことよね……ほら、結華追い掛けたら?」
「おじゃまします」
一夏はそう言いながら結華の家に上がり、しっかりと自分の靴と結華が履き捨てていった靴の向きを揃えて結華のことを追った。
「結華もいい子を見つけたわね」
「一夏もイロモノを好きになったわねぇ……」
「確かにイロモノよね……珍しい子もいるのね」
一夏の母親と刃奈は玄関先で世間話を始めた。