セックスが禁じられた世界で俺の精子が狙われている 作:夜狩景士
光司はベッドに仰向けに寝て、豊満で円い尻が目の前で揺れているのを見ている。
キミコが光司の陰茎を咥え込んで尻を振っている。割れ目から薄茶色の菊門と鮮やかなピンクの陰唇が覗く。
シックスナインの姿勢だが、光司はキミコの股間に舌を伸ばさない。
温かい口と舌の滑りに包まれた肉棒の根元から、うずうずとした射精欲が湧いてきた。
「キミコ。こっち向いて乗っかって」
光司が言うとキミコは陰茎から唇を抜き、腰を回して光司と向き合った。
唾液で濡れた唇で微笑みながら、光司を愛おしそうな瞳で見下ろしている。
張りのある巨乳を揺らせながら、キミコは腰を浮かせて右手で光司の肉棒を掴む。
亀頭を陰唇にはめ、角度を合わせて徐々に腰を落としていった。
「ああっ……ふううんっ!」
キミコの尻が光司の腰にぺたんと落ちる。ずっぽりと膣襞の滑りに包まれた肉棒が心地良い。
「キミコ、動いて」
光司の言葉にキミコは腰を浮かせて、再び落とす。
「あっ……あんっ!」
眼を閉じて眉を歪めながら切なげな息を漏らすキミコ。
徐々に腰を振る速度を上げたキミコが上体のバランスを崩した。
光司は咄嗟にキミコの両手を掴み、倒れそうな上体を支える。
姿勢が安定したキミコが腰の振りを強め、ぱちん、ぱちん、と肉が当たる音が響いた。
重そうな質感の巨乳が上下にたぷんたぷんと振れている。
「あっ、あっ、あっ、ああんっ!」
結合部から愛液が溢れ、ぬちっ、ぬちっ、と水音が漏れてきた。
「あんっ……光ちゃんのっ、チンポっ、凄いのっ!」
薄目を開けてキミコが喘ぐ。
じんわりと射精欲が湧いているが、光司はまだ快楽の頂点には届いていない。
キミコは懸命に腰を振って、光司を追いつめにかかった。
「光ちゃん、光ちゃんっ……好きっ!」
甘い言葉を漏らすキミコ。
光司は腰をぐん、と突き上げる。
「ひゃんっ!」
キミコが短い悲鳴を上げた。
彼女を追い込むように腰を激しく突き上げる。
後ろに倒れそうになるキミコを光司は繋いだ両手で引き寄せた。
勢いでキミコが光司の胸に倒れこんできた。巨乳が光司の胸板でつぶれる。
両手でキミコの尻肉をぐわしっ、と掴み光司は赤黒い陰茎をミルクのように白い尻にずぽずぽと抜き差しした。
「あんっ、ああんっ! いっ、いいっ!」
耳元にキミコの叫びと荒い息がかかる。
「イ、イクっ、イクうううっ!」
キミコが腰を痙攣させて絶頂に達した。
光司はかまわず腰を突き上げ続ける。
「あんっ……やあんっ! イってるのにいいっ!」
容赦ない光司の責めに、キミコが悲鳴をあげた。
光司の射精欲は陰茎の根元で渦を巻いている。
「おっ、おっ、おおおんっ!」
キミコの喘ぎが動物的な響きを帯びてきた。
腰を振るのに疲れてきた光司は、このタイミングで射精欲を解き放つ。
「おうっ、おうっ、おおおんっ!」
ずん、と腰を振り上げ最奥に肉棒を突きさしたまま、光司の剛直が爆ぜた。
びゅるっ、びゅるるるっ、びゅくううっ、と尿道を駆け上がった精液が次々とキミコの子宮に注がれていく。
「キミコ。喉が渇いた。コーラ持ってきてくれ」
光司が言うと、胸板にに頬を寄せ深い息を吐いていたキミコが素早く身体を起こし、ベッドから降りた。
キッチンに向かうキミコの尻の肉がぷりっ、と左右に揺れているのを光司は眼で追った。
射精後の心地良い脱力感を感じながら、光司は人差し指を弾いてアイリンクを起動した。
眼の前の空中にメニューが表示されている。
「動画表示」
光司が言うと、画面が広がった。適当なところで指を弾く。
ついさっきキミコと裸になってベッドに倒れ込んだところから再生を開始した。
指で画角を調整し、二人の結合部が見やすい位置にする。
キッチンからコーラを持って来たキミコがベッドサイドに立った。
「服着ていいぞ」
飲み物を受け取った光司が言うと、キミコは床に雑然と落ちている下着を拾った。
光司は入り口のドアを指さした。
ひとりにしてくれ、という合図だ。
キミコは頷くと裸で服を持ったまま黙って外に出た。
生身の人間の女を抱いたのは、いったい何年前になるだろう?
先ほどのキミコと裸で絡んでいる映像を再生しながら、光司は記憶を辿る。
人類がパンデミックによって
妻が亡くなったのはその前年だから、二十一年か。
いや、妻とはセックスレスだったので、四半世紀は人間の女とセックスしていない。
最後にした妻とのセックスはどんな感じだったろう?
光司はもう思い出せなくなっていた。
さっきまで肉体を絡ませていたキミコは
個々の人間に専用の私空間が与えられると同時に支給された汎用アンドロイドだ。
配偶機は、所有する人間のために食事の用意や掃除洗濯などの家事や話し相手、そして性欲の処理まで、あらゆることをこなす。
ルックスや体型は、個人の好みで設定できるようになっている。
キミコは亡き妻の貴美子から取った名前の配偶機で、顔立ちや体型は二十代で彼女と知り合った頃を再現している。
既に五十歳を過ぎている光司のような中年男が、このような若い女を抱く機会は、パンデミック以前ではほとんど考えられなかっただろう。
このところ、毎日キミコとセックスしている。
二十年前、初めて配偶機を支給された時、亡き妻の面影を持つキミコと狂ったようにセックスした。
配偶機とのセックスは、男根を挿入したときの膣の滑りや、絶頂を超えたときの肉体の反応など、よく再現しているとは思う。
だが、貴美子とセックスしていたときに感じたような一体感は湧いてこない。
ピアノに例えるなら、木でできた本物のピアノと、プラスチックでできた電子ピアノのような違いがある。
本物のピアノは、音とともに指先に触れた鍵盤からヴァイブレーションが伝わって来る。
電子ピアノは、音は耳に届くが指先から何も伝わってこない。
配偶機とのセックスでは、光司は肉体的な反応はするが、相手からの愛情といったものは感じ取れない。
やがて一年もしないうちに、キミコとのセックスの頻度は減っていき、ここ十年は身体に触れることさえなくなっていた。
だが昨年あたりから、アイリンクにノイズとして一瞬、裸の女性が度々映ることが多くなってきた。
潜在意識が刺激されたのか、光司は十年ぶりにキミコを抱いた。
まるでセックスを覚えたての中学生のように、五十歳を過ぎてから性欲が亢進するとは光司は思わなかった。
だが、キミコを抱けば抱くほど、虚しさが募り、生身の人間との本当のセックスを渇望するようになった。
まだパンデミックが起こる前に撮られた旧人類時代のセックス動画を貪るように光司は観た。
このまま私空間で漫然と過ごして寿命を迎えると思うと、光司は絶望と共に気が狂いそうになる。
「死ぬ前に一度、人間の女を、抱きたい……」
光司は思わず声に出して呟いていた。
二十二年前、パンデミックが起き、人類はたった一年で半減してしまう。
人間同士の粘膜接触で劇症化するウイルスは、キス・セックス・フェラチオ・アナルセックスという愛情表現によってお互いの命を奪うことになった。
当初は学術的な名称があったこのウイルスは、死の接吻――Death-Kissを略してDKウィルスと呼ばれるようになる。
DKウィルスが蔓延する以前に、世界的な感染症の流行は何度もあったが、AIが迅速にワクチンと治療薬を開発して沈静化させていた。
だがこのDKウィルスに関してはAIの知性を持ってしても二十年過ぎた今でもワクチンも治療薬も開発されていない。
政府は緊急事態を宣言し、「防疫法」という時限立法で人間同士の接触を禁止することになった。
これは家族や恋人といえども、触れることもできず、ましてやセックスすることなど禁止されることを意味している。
人間には個人個人に
今まで人類は自らの生存のために労働しなければならなかったが、AIと政府のパンデミック対策によって、労働に従事することなく衣・食・住を保障されることになった。
私空間では、「メタフード」というどんな料理にも変換できる汎用的な人工食材が無償で提供される。
さらに「メタルーム」というメタバース空間が提供されることで、バーチャルな旅行やゲームなどの娯楽も与えられる。
そして、個人個人には専用の「
人々は働かずに日常を過ごすことが可能になり、実際そうする者が大多数だった。AIとロボットよる極限まで効率化した生産活動によって、人々の生活基盤は維持された。
だが、一番の問題は、セックスという生殖行為が禁止されることによって、人類という種が維持できなくなることだった。
これに関しては、人工授精に加え、「人工胎盤」が開発され、人間が生身の母体ではなく機械から生まれてくることが可能になることで補われた。
人工胎盤については倫理的な問題があり議論を呼んだが、DKウィルスに対するワクチンや治療薬の開発の目途が全く立たない現状を憂慮して、半ば見切り発車という形で人工分娩が開始された。
パンデミック前に産婦人科医として開業していた光司にとっては、人工胎盤の開発は失業を意味していた。
DKウィルスで出産の際に母子ともに発症してしまうため、人間の自然分娩が不可能になり、人工胎盤でしか人口を維持できない。
DKウィルスが沈静化すれば、以前のような人間同士が接触できる生活が戻るだろう、という希望を光司は思っていたが、さすがに二十年も経ってしまうとその思いよりも諦めの気持ちが強くなっていた。
ひとりの部屋で、人類の未来に想いを馳せてみる。
人間があくせく働かなくても、衣食住が保障されているパンデミック後の世界。
人々は生活のために自分に向いていない、やりたくもない仕事をすることなく、自由に自分のやりたいことだけすることができる。
実際、売れる売れないを気にせず、自分の「好き」を追究することで、人々は自由に創造性を発揮することができた。
そうやって自分がクリエイトした物で収入を得ている者が増えている。
実際は大多数の人間が、特に自分で何かを創り上げることなく、だらだらと食とエンタメを消費して漫然と生きていた。
人間同士が直接触れ合っていた頃を知っている「旧人類」が減っていき、人工胎盤から人工的に生まれ、個々の私空間に分離された生活が当たり前の「新人類」がやがて主導権を握る時代がやってくる。
そうなったとき、人類はどうなってしまうのだろうか?
DKウィルスは二十年を過ぎた今も猛威をふるっている。
人間同士の接触を禁じ、私空間に分離して生存を保障したことで、DKウィルスによる犠牲者は出なくなった。
だが、このまま分離された状態でテクノロジーに飼われている状態の人類に未来はあると言えるのだろうか?