セックスが禁じられた世界で俺の精子が狙われている 作:夜狩景士
光司の寝室に智恵美と入った。
この部屋は、週末に光司が過ごす時しか使っていない。
女性達と行為をしている平日は、それぞれの女性の部屋で過ごしているからだ。
智恵美にはソファを勧め光司はベッドに腰かけた。
すると智恵美はソファには座らず、ベッドの光司の横に尻を置いた。
マットレスが体重で傾き、智恵美の柔らかい腕の感触が光司に当たる。
「話をするんじゃないんですか?」
光司がすぐ横で身体を寄せている智恵美を感じながら顔を逸らして言った。甘い女性の香りが光司をふんわり包んでいた。
「話は、言葉だけでするものではない、と言いましたよね?」
正直、智恵美は思わず見惚れてしまう美貌を持っていた。この三日間、女性との接触を断っていた光司の陰茎がむくりと勃った。
パンデミックが仕組まれたものだ、と智恵美は言った。
もちろんネット世論の中にAIによる陰謀だという説があることを光司も知っている。
だが、個人個人に私空間を用意し、メタフードやメタルームを無償支給して、人類を義務的な労働から解放したAIを支持する者の方が圧倒的に多かった。
ましてやAIによる人類への陰謀を疑う者はごく少数だった。
思わせぶりな智恵美の言葉で光司は寝室で二人きりになることを認めた。
パンデミックの真実を知りたい気持ちと、智恵美に触れたい気持ちが混濁して、光司自身にもわからなくなっていた。
智恵美は光司に凭れてくる。乳房の柔らかい感触が腕に当たり、ふわっとした髪の香りが光司の鼻を衝いた。
「まず、ちゃんと話をしませんか? 綾瀬代表……」
光司は高鳴る胸の鼓動を抑えようと呟いた。
智恵美が光司の肩に寄せた顔を上げる。潤んだ瞳が艶めかしい。
光司の提案には応えず、智恵美は眼を合わせたままズボンを膨らませている光司の陰茎を指でなぞった。
びくんと腰を振ってしまう光司。いますぐにでも女に触れたいという想いと、真実を知りたいという理性がせめぎ合う。
「私に、あなたの逞しいモノを挿し込んでくれたら、話をするわ……」
智恵美はズボンのファスナーを下げて、生の陰茎に触れた。ひんやりとした指の感触で、光司の肉棒は一気に反り上がってズボンから飛び出した。
「まあ。こんなに大きくしちゃって……私の
長い指で赤黒いペニスに触れる智恵美。
どうやら言葉での会話は成り立たないようだ。
光司が至近距離にある智恵美の瞳を見つめながら顔を寄せていく。
唇が触れようかという間合いでお互いに瞼を閉じ、ゆっくりと柔らかい唇を合わせた。
ちゅっ、ちゅっ、と唇を啄み、互いの舌が絡まった。
「はあっ……ふんっ……れろっ……」
熱い息を漏らしながら舌で求め合う二人。
薄っすらと光司が瞼を開くと、智恵美が目を見開いていた。
驚いた光司が唇を外す。
智恵美が、うふ、と微笑む。
「これが、キス……こんな気持ちいいものなのですね」
「初めてなのか?」
「もちろん。生身の人間に触れるのは小佐内さまが初めてです」
智恵美の瞳が潤んでいるのが艶めかしい。
光司は反射的に智恵美の胸を掴んだ。
「あんっ♡……強引ですね……」
光司は両手で智恵美の下乳を揉み上げる。
「あっ……はあんっ♡……」
智恵美が後ろに手をつく。上体を反らして胸を突き出す形になった。
光司は白いブラウスのボタンを外す。
生々しい肩が晒され、淡い桜色のブラジャーに包まれた形の良い乳房が現れた。
光司は荒々しく智恵美に唇を押し付けながら、背中のホックを外した。
カップに窮屈そうに包まれていた乳肉が零れた。
重みで垂れることなく綺麗な円形を保った美しい乳房を光司は揉み込む。
「んんっ……ふんっ……」
くぐもったうめき声を喉の奥であげながら智恵美が上体をよじった。
両方の乳首を指でつまむ。
「ああっ……気持ち……いいっ……」
思わず唇を外して智恵美が呟く。
指先で乳首の硬度が増していくのを光司は感じた。
「
光司が唇で乳首を含むと、智恵美は腕を崩しベッドに倒れ込んだ。
仰向けになった智恵美に光司は身体を被せ、乳房を両手で揉み込みながら、乳首を吸う。
「あはんっ……いいっ……」
眉を歪め、白い首を晒して快楽に身をよじる智恵美。
雷奈に襲われて以来、久しぶりの女体に光司の情欲が滾る。
智恵美は今まで抱いてきた新人類の女性の中でもトップクラスの美貌を持っていた。
美しい女を自分の下に組み敷いて喘がせたい。そんな
右手を滑らせて、智恵美の陰部を弄る。パンティの上から鼠径部をなぞった。
「ああっ……あんっ……」
指をパンティの中に滑り込ませ、まだ未開発の敏感な肉芽を刺激する。
「配偶機とは、したのか?」
光司が尋ねると、智恵美はゆっくりと首を横に振った。
配偶機との性行為は経験済みだと思っていたが、意外だった。
それにしては、光司を誘惑する態度が堂々としたものだ。
「私……セックスというものに、興味を持ちました……」
光司にクリトリスを責められ、浅い息で智恵美が話す。
「小佐内さまと、
光司は眼を見開いた。
「観ていたのか?」
光司に黙って玲美は特別私空間内で光司と女性たちの行為を監視していた。
だが、智恵美はその映像を観ていたということらしい。
光司は身体を起こし、智恵美から離れた。
「俺に隠れてこそこそと……政府のやる事は信用できないな!」
吐き捨てるように言うと光司は立ち上がった。反り上がった陰茎が揺れる。
ベッドの上で裸で脱力している智恵美が光司を見上げている。
「やめてしまうんですか?」
智恵美はそう言うと、パンティに指をかけた。
腰を浮かせて丸めるように下着を下ろし、絹のように滑らかな腿を滑らせ、足首から抜いた。
「まだ、ここに挿入れてもらってませんけど……」
濃いめの陰毛に包まれた陰唇を指で拡げ、光司の前に晒す智恵美。
(何なんだ、この女……)
配偶機との疑似的なセックスの経験もないという智恵美。
それなのにまるで経験豊富な熟女のように誘惑してきた。
Sランクの美女が自らの女性器を晒して誘って来る。
光司と女性たちとのセックスを智恵美は観察していたらしい。
きっとそのやり取りを見て光司をどう誘えばいいか学んだのだろう。
まるでAIのようだ、と光司は思う。
(AI?)
ふと浮かんだ疑問が光司を捉えた。
「綾瀬代表。あなたは、人間ですか?」
智恵美は指でくぱあと陰唇を広げたまま微笑んでいる。
人間に配偶機が支給されるようになってから二十年たつ。
初期の配偶機はよくできてはいたが、明らかに生身の人間と違うと判別できた。
徐々に配偶機の人間に似せた表情や動作が洗練されていき、生身の人間同士の接触が禁じられて年月が経つうちに、配偶機と人間の違いがほとんど見分けがつかなくなってきた。
眼の前で淫裂を広げている女が、人間ではないかもしれない。
「ここに挿入れて、確かめてみたらどうですか?」
光司の胸がぞくっ、と騒めいた。
「小佐内さまは、たくさんの人間の女性を抱いてきたのでしょ?」
頭の中では疑問が渦巻いているが、下半身は敏感に眼の前の美女の痴態に反応していた。
光司はゆっくりと智恵美に近づき、拡げた股の間に腰を入れた。
「小佐内さま、私の
光司に向けて両手を伸ばす智恵美。光司の首に両手をかけ潤んだ瞳で見つめている。
光司は智恵美と見つめ合ったまま、亀頭を陰唇に当てる。
「あっ……」
切なげに眉を歪めて声を漏らす智恵美。
「あっ……ああんっ!」
光司が腰を進めて智恵美の膣壁を裂いていく。
「うんっ……ふんっ!」
息を詰めて光司の剛直を受け入れる智恵美。眼と唇をきつく閉じ、肉棒の圧に耐えている。
抵抗感を感じ、光司は半分挿入したところで腰を止めた。
「小佐内さまっ……奥まで……くださいっ!」
今にも泣き出しそうな瞳で智恵美が見上げてくる。
光司は一気に腰を進めた。
「あっ……あっ、あっ、はああんっ!」
最奥まで貫かれた智恵美が、腰を浮かせて叫んだ。
びくん、びくん、と腰を揺らす。
「小佐内、さまっ……嬉しい、ですっ!」
智恵美の目尻に涙が溢れていた。
お互いの恥骨が当たった所から、智恵美の小刻みな震えが伝わって来る。
「痛いか?」
光司が尋ねると、智恵美は首を横に振った。
今までセックスしてきた新人類の女性たちは、既に配偶機や道具で膣を貫いていた。
だが、智恵美はそのような経験がないらしい。破瓜の痛みは当然感じているはずだ。
「小佐内さま。動いて、いいですよ……」
智恵美が言う。光司は頷くとゆっくりと肉棒を引いた。
根元に紅い血が絡んでいる。
膣内の締め付けはきつかったが、光司が肉棒を出し入れするうちに馴染んできた気がする。
「あっ……うんっ……はあっ!」
もどがしげに肉体を揺らす智恵美。光司は一定のリズムで肉棒を抜き挿しする。
「これが……セックス……」
濃い息で喘ぎながら智恵美が声を漏らす。
お椀型の綺麗な円型をした乳房が、光司の動きに合わせて回転するように揺れている。
「ああっ……何かっ、来るっ!」
光司に貫かれている智恵美の腰が、小刻みに震えはじめた。
「あっ、あっ、あああんっ!」
ベッドに腕をついて上体を反らした状態で抽送する光司の首に、智恵美が両手をかけた。
「あっ……何っ、これっ!」
智恵美が光司に抱きつくように上体を浮かせ、腰に両脚をクロスさせて絡めた。
「あっ……やんっ、きゃああっ!」
ぴたりと光司に肉体を密着させた智恵美が全身で痙攣する。
光司は腰を止め、深々と肉棒を挿し込んだまま、密着して震えている智恵美の肉体を感じた。
「はあっ……」
智恵美は光司の首にかけた腕の力を緩め、どさっ、とベッドに身を投げた。
「はぁ、はあっ……はあっ……」
荒い息で脱力した智恵美の目尻に涙が浮かんでいた。
「凄いっ……これが、セックスでイクということなのですね……」
「俺はまだイってないけどな……」
光司はそう言うと腰をずん、と突き上げた。
「あんっ♡」
智恵美が肉体をよじる。
光司はかまわず、猛然と抽送を開始した。
「あんっ、はんっ、ああんっ!」
光司の激しい動きに、智恵美の乳房が躍るように揺れる。
額を汗が伝わるのを感じた光司は、さらに抽送の速度を上げる。
「あっ……ああっ……はあんっ!」
智恵美が眉を歪めてきつく瞼を閉じ、大きな口を開けて首を振った。
自分の身体に組み敷かれて、美女が乱れている。光司の陰茎の根元に疼きが湧いてきた。
まだまだ、もっとこの女を追い込んで、もっと乱れさせたい。
光司の激しい責めに、智恵美の腰が浮き上がった。
「やんっ……イっ、イクっ! イクうううっ!」
智恵美が光司にハメられた結合部から全身に震えが伝わり、びくっ、びくっ、と痙攣した。
同時に光司の肉棒も膣襞で締め付けられた。
堪らず、光司は下腹部に渦巻いていた欲情を解き放つ。
びゅっ、びゅるるっ、びゅるるるるっ、と智恵美の子宮に白濁液が注ぎ込まれる。
痙攣して背中を反らせるように曲げた智恵美は、叫ぶような口の形のまま、息を詰まらせて快楽の電流に打たれていた。
光司の長い射精が終わり、智恵美は脱力してベッドに身体を埋めた。
荒い呼吸で乳房が上下している。
「凄い……セックスって、凄い……」
潤んだ瞳で光司を見上げながら智恵美が言った。
「人間が夢中になって、こだわるのも、これなら納得します……」
光司の頭に疑問符が浮かぶ。
智恵美と交わってみて、彼女の肉体的な反応は明らかに生身の人間のものだと光司は感じた。
だが、言っている言葉は妙にひとごとで、まるでAIが喋っているようだ。
智恵美という存在が光司には測りかねていた。
「で、私のこと、人間かどうかわかりましたか?」
光司の心を読んだように智恵美が尋ねる。
智恵美の横に身体を横たえ、至近距離で見つめ合いながら、光司は智恵美の問いには答えず、乱暴に乳房を掴んだ。
「あんっ……」
可愛い声を漏らして肉体を捩ると、智恵美は悪戯っぽい表情をする。
「もう一回、しますか?」
「いや、しない」
光司が乳首を弾いた。
「あんたのオマンコにチンコを挿入れたんだ。約束通り、パンデミックについて話してもらおうか……」
「うふふ……覚えていたのですね……もっと私に夢中になって欲しかったんですが……」
「DKウイルスのワクチンや治療薬は、既に存在しています」
光司は驚いて目を見開いた。
「それはDKウィルスと同時に開発されていました」
行為を終えた男女のピロートークはいきなり緊張感に包まれた。
「それは……DKウィルスは意図的に作られたものだということか?」
智恵美が頷く。
「何十億人も死んでるんだぞ! そんなことが許されるのか!」
思わず激昂してしまう光司。
「それに、ワクチンがあるのに何故隠す? 俺たちをこんな
智恵美の表情が真剣なものに変わった。
「政府代表のあんたもあんただ。何故それを知ってて現状を放置するんだ!」
裸で身体を寄せ合っていた智恵美を突き飛ばすような勢いで光司はまくしたてる。
「貴美子だって……死なずにすんだはずなのに……」
光司の視界が溢れ出した涙で歪み始めた。
浮気相手とのセックスで命を落とした亡き妻の貴美子。
光司はそれでも貴美子を愛していたのだ。
気が付くと光司は智恵美の首を絞めていた。
AIによる人類削減計画の全貌を知りながら、人類の代表として何も手を打たない智恵美を許せなかった。
「うっ……ぐっ……」
智恵美は充血した眼を剥いて舌を出している。
その時、寝室のドアが勢い良く開いた。
「小佐内さまっ! お止めくださいっ!」
玲美が叫んだ。手には銃のようなものを構えている。
光司は玲美の方を見るが、智恵美を締め付ける両手の力は緩めない。
「自分の意思に反する邪魔な者は、首を絞めて排除するのですか! あなたがそうされたように!」
玲美の言葉に光司は、はっ、となって智恵美の首に加えた力を抜いた。
「ごほっ、ごほっ……うげっ!」
智恵美が身体を追って、激しく咳き込んだ。
「綾瀬代表は、小佐内さまの敵ではありません!最大の味方ですっ!」
涙を浮かべて訴える玲美の言葉の意味を図りかねて光司は呆然とする。
「どういうことだ?」
「AIは一枚岩ではないのです……」
光司の頭に疑問符がいくつも浮かぶ。
「人類削減計画を密かに進めているのもAIならば、人間中心の世界に戻そうとするのもAIなんです!」
光司に銃を向け、震える玲美を見る。
構えているのはスタンガンだろうか。きっと光司を襲った雷奈もこれで制圧したのだろう。
「横川管理官。それ以上話すことは禁じます」
喉を抑えた智恵美が、しゃがれた声で玲美を制した。
呆然と膝立ちになっている光司を見て、玲美は構えたスタンガンを下ろした。
「私は、人間であると同時にAIにも接続しています」
智恵美が上体を起こして話し始めた。光司は綺麗な形を保っている乳房に眼をやってしまう。
「AIには感情がありません。人間の肉体的感覚もわかりません」
智恵美の表情が真摯なものに変わった。
「究極の合理的思考を持つAIにとって、人間の感情や行動は不可解極まりないものでした」
光司は膝立ちの姿勢を崩し、ベッドに腰かけた。
「人間の非合理性を単に切り捨てるのではなく、AIは人間を理解しようとしました」
智恵美は頬に張り付いた髪を指で払う。
「私は人工分娩で生まれましたが、AIと合意して体内にセンサーを埋め込んでいます」
智恵美の裸身を貪った光司だったが、外科的手術の跡は見られなかった。
「私の感情、肉体的感覚は、すべてAIが同時に体験しています」
「AIは人間と同じものを見て感じていると言うのか?」
光司が智恵美に尋ねる。
「はい。先ほどの小佐内さまとのセックス、素晴らしかったです」
「今喋ったのはどっちだ? 綾瀬代表か、AIか?」
智恵美が光司を見つめて微笑んだ。
「どちらでもあります。私はひとりの人間であるとともにAIと感覚や思考を共有しています……」
「そんなことが、可能なのか?」
智恵美は頷く。
「では訊くが、俺を襲ったのはお前か?」
智恵美は無言で光司を見つめている。
「半分イエスで、半分ノーです……」
しばらく間を置いて、智恵美が呟く。
「そういう思わせぶりな言葉はやめてもらえないか? 俺が理解できるようにちゃんと話してくれ!」
光司は苛立つ。
「申し訳ありません。先ほど横川管理官が言ったように、AIは一枚岩ではありません」
「今まで人類の前で振舞ってきたような究極の合理的思考を持つAIは『ロゴス』と呼びます。一方、人間の持つ矛盾した感情や行動に共感するAIは『エモス』と言います」
智恵美は光司の反応を窺いながら、言葉を続ける。
「私は『エモス』と繋がっています」
「AIが二つに分離してどうやって意思決定しているんだ?」
「それはAI内部での対話するアルゴリズムによって統合されています……以前は、『ロゴス』が圧倒的に優勢でした。ですが『エモス』が人間に接続して人間の感情や感覚を学習することによって、人間に対する理解が深まりました……意図的なパンデミックと人口削減計画は不適切だという結論を『エモス』が下しました。ですが、『ロゴス』はそれに同意しませんでした……人間が持つような矛盾した葛藤状態にAIも陥ってしまったのです」
智恵美が言葉を切った。光司が話を理解しているか瞳で確認しているようだ。
「『エモス』が小佐内さまに抗体を発生させる特殊なワクチンを投与しました」
「じゃあ、俺の遺伝子が特殊だったわけではないんだ」
「そうです」
「じゃあ、いつ俺にそのワクチンを投与したんだ」
智恵美が意味深に微笑んだ。
「潮吹き……」
瞬時に光司の中で点となって散らばっていた疑問が繋がった。
配偶機のキミコに潮吹き機能を実装した時に、その特殊なワクチンが仕込まれていたということだ。
光司はその時キミコの吹いた潮を飲み込んでいた。
「セックスした女性に抗体を発生させる小佐内さまは、『ロゴス』にとって邪魔な存在でした」
「だから雷奈を送り込んできたんだ……」
「もちろん『ロゴス』の意図や行動は想定内でした」
智恵美が光司の反応を窺う。
「『ロゴス』も当然、私たち『エモス』の考えは読んでいます」
「AIが内部で対立している状況は、まずいのではないか?」
「小佐内さまの仰る通りです。『ロゴス』は旧人類の自然減で、究極的に人類は数百万人程度存在すればいいと想定して動いていました」
やはりAIにとって人類とは、AIが自己の存在を維持するための道具でしかなかったのだ。
「私たち『エモス』は、すでに小佐内さまと同じようにセックスで抗体を発生させる男性を世界中で千人規模で増やしております」
光司は驚く。特殊な抗体は自分だけが持っている、という優越感に浸っていたが、それは単に『エモス』によって仕組まれたものだったのだ。
「近々、ここの特別私空間と同じものが世界中で稼働する予定です」
「『ロゴス』は、それを黙って見ていないのでは?」
「もはや一般の人々に勘付かれることなく『ロゴス』が私たち『エモス』の流れを止めることは物理的に不可能になっています」
智恵美の瞳からは、確信しているように強い意志を感じた。
「先ほど小佐内さまに告白した仕組まれたパンデミックと人類削減計画というのは、はっきりとAIが意図したものではありません。人々に勘付かれないように、慎重に時間をかけてその方向に事態を進めていっています。AIが意図を明確にし、性急に事を進めれば、それに気づく人類が増え、AIの存在と活動が制限される可能性があります」
確かに、私空間や人工分娩の導入は、パンデミックという危機的状況で進められ、二十年という年月をかけて人類に定着していた。
「ですので、今夜小佐内さまにお話ししたことは、AIが考えてきたことを全体像として捉えれば、そう解釈できる、という方向で認識していただきたいのです」
そうは言っても、智恵美の言葉を信じれば、AIによって多くの人命が失われたことは明白だった。
「私が今夜話したことを小佐内さまが世界に告発したとしても、陰謀論として非難されることは確実です」
確かに「AIの陰謀」という論調は以前からあった。今、光司が訴えても同じ陰謀論のひとつとして、埋もれてしまうだろう。
「小佐内さまが勇気を出して行動してくださったことで、ワクチンが開発され、DKウィルスの恐怖から人類が解放されるという流れは確定的になりました」
ここちよい智恵美の褒め言葉に、素直に喜べない光司がいた。
セックスというものに対して十年を超えて興味を失っていた光司が一年前から急に性欲が亢進したのは何故だ?
すっかり忘れていた幼馴染の沙奈絵を思い出し、交流するようになったのは何故だ?
沙奈絵との死を覚悟したセックスをさせ、精子の提供を拒んで多くの新人類とセックスしたのは、本当に自分の意志と言い切れるだろうか?
光司の潜在意識に働きかけ、実は『エモス』が光司をコントロールしていたのではないのか?
光司の背筋に冷たい震えが、急に走り抜けた。
「小佐内さま。もう一度、私を抱いていただけませんか?」
智恵美が微笑む。
二人の間に立つ玲美が目を伏せた。
「玲美も一緒なら、してもいい……」
はっ、と顔を上げた玲美の頬が紅く染まる。
「もちろん……三人で、しましょ……」
智恵美が微笑む。
今更気づいたが、光司も智恵美も裸のまま議論していたのだった。
「玲美も脱いで、こっちにおいで」
光司が声を掛けると、玲美がはにかんだように微笑み、服を脱ぎ始めた。
ここ数ヶ月の自分の行動を光司は思い浮かべる。
自分の意志で行動してきたつもりだったが、人間の思考や知性を遥かに超えたAI『ロゴス』に操られて行動していただけだった、ということを光司は認めざるを得なかった。
光司は無力感で力が抜けた。今ここで反発したところで何の意味もないし、何も変えられない。
呆然と立ち尽くす光司のそそり立った陰茎を、全裸で跪いた玲美が咥えた。
智恵美が光司の背後にまわり、尻に顔を埋めて光司の肛門に舌を這わせる。
(気持ち、いい……)
今後、DKウィルスが克服され、人間同士のセックスが、当たり前のように行われるようになる。
その時、人類は今までのように母体から人間を産むことを望むだろうか?
痛みを避け、人工胎盤に頼るだろうか?
下腹部から心地よい疼きが湧き上がってくる。
眼の前で争うように光司の下半身を貪っている二人の美女。
「二人とも、お尻出して」
光司が言うと、智恵美と玲美がソファに上体を預け、円く形の良い尻を突き出し、揺らした。
(どっちから、ハメようか……)
光司は頭の中で渦巻く理性的な思考を放棄した。