※この作品はR-18です。

魔王軍立志伝―仕事を辞めたら魔物になりました― ハーメルン版   作:ヨシMAX

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魔王軍立志伝ワールドにようこそ(`・ω・´)


第103話 オークと最後の四天王①

 『私で……アルシー様の心臓を突き刺してください。そうすれば彼女は呪縛から放たれる事が出来ます』

 

 

 シャルルは衝撃の提案をしてきた。

 俺はその内容が言葉として認識できず……と言うか、したくなかった。

 呼吸がし辛くなって頭痛がしてくる。

 

 

 「えっ?! アルシーを助けるんじゃないのか? それじゃあ、こ、殺してしまうじゃないか?!」

 

 

 俺は思わず語気を荒げてシャルルに食い下がってしまう。

 

 

 『主様、落ち着いてください。……謎かけの様になってしまい申し訳ないのですが、私でアルシー様を刺せば彼女という存在は消えてしまうかもしれません。但し彼女の意思は存続するでしょう』

 

 「……存在は消えて、意思は続く? どういう事なのかね」

 

 

 ヒルベルダ様がアルシー達の攻撃を躱しながらこちらに駆けてきた。

 そして当然な疑問をシャルルに投げかけてくる。

 

 

 『詳しく説明している暇はありませんが……言った通りですよ。アルシー様の存在は消えますが、アルシー様の意思……魂は存続します。彼女を救う手立てを今、この時に私はこれしか思いつきません。……どうしますか?』

 

 「どうしたもこうしたもぉ! どちらでも良いけどぉまた来るよっ!!」

 

 

 俺達めがけて突っ込んできたアルシーの攻撃をヒルベルダ様が光の剣で受け止め辛うじてその勢いを食い止める。

 

 

 「早く! 打開策があるなら! 試してみるんだ!」

 

 「そうは言ってもぉ!!」

 

 

 存在が消えるのに魂が存続するなんて、そんな事が可能なのか?

 それはやはり死を……意味するんじゃないのか。

 

 やばっ!

 なんやかんやしていたらロマリアスに魔法で狙われていた。

 それはそうだろう、こんなに隙を見せていたらこうなるのは当然だ。

 しかも狙われているその魔法がなんとも邪悪で強力なのだ。

 

 かわすか、受けるか、早く決めないと!

 

 

 『主様! このままではどうやってもジリ貧です! 撤退をしないのなら私のいう事を……』

 

 「アルシーを! 失うリスクは取れない! もう2度と……」

 

 『……そうですか、主様。アルシー様を大事にして頂いて有難うございます』

 

 「あ、ああ」

 

 

 よく分からないがお礼を言われた。

 俺と離れてアルシーはこんな事になってしまった。

 何とかしたい、何とか……。

 絶対に何か方法はあるはずだ。

 

 

☆★☆★☆★

 

 

~時は少し遡る~

 

 

 身体中が痛い。

 状況に酔いしれて意気揚々と街から離脱してきたまでは良かったが魔力枯渇でついにブーストが切れてしまった。

 

 ダメだ……ここで座ってしまったら私はもう立ち上がる事はおろか目を覚ます事も無いかもしれない。

 

 アルシーさんとの戦闘で血を流し過ぎてしまったみたい。

 魔法で吹き飛ばされた時に頭も打って血が流れてきている。

 しばらく抑えて止まりかけてたけど、ここまでの過程で傷口が開いてしまった。

 

 左目に血が流れてくるので何度も拭うのだがとめどない。

 お陰で左の視力も弱くなってきた気がする。

 夜目が効くはずの猫人なのに周りが見えないなんて……。

 

 くぅ~~っ。

 なんだか涙が流れて止まらないよ。

 なんで私達は平和に暮らす事すら出来ないんだろう。

 誰か……助けてよ……もう、歩けないよぉ。

 

 

 「にゃあ~~~、にゃあ、にゃあ、にゃあ~~~」

 

 

 私はとうとうへたり込んでさめざめと泣きだしてしまった。

 体力も残り少ないのに……泣いている場合じゃないのに……。

 

 

 「リリア様? リリア様ですか?」

 

 「――っ?!」

 

 

 私は自分の名前が呼ばれたのが信じられなく辺りを必死で見回す。

 

 んも――っ!

 左目が良く見えないし辺りも夜で暗い。

 でも、目の前にいる人は分かる。

 

 

 「セレル様ぁ――っ! どこですかぁ――っ! っと、ああこちらでしたの。おや? あなたは……」

 

 

 セレル様とリーザさんだっ!!

 

 

 「ふぎゃぐらぁああああ――――っ!!」

 

 「あらあら、まあまあ」

 

 「ふわぁぁぁあああ――――っ?! なんですのぉ! なんですのぉ!」

 

 

 私は恥も外聞も無しにセレル様とリーザ様に抱き着いて号泣した。

 緊急事態で時間もない中、それでもお二人は私の背中を撫でながら泣き止むのをひたすら待ってくれた。

 

 やがて私が落ち着くと森の暗闇から続々とイナバ隊の騎士達が姿を現した。

 撤退戦の損耗からガンダルフ隊を補充した1,000名余りの部隊だ。

 

 

 「セレル様、どうしてこんな所にいたにゃ? 合流地点はもっと森の奥の筈……」

 

 「それは……この子のお陰ですね」

 

 

 私の問いにセレル様は優しく微笑み両手に包んだ小さな仲間を見せてくれた。

 

 

 「シラヴェルッ?! シラヴェルにゃ?!」

 

 「この子が命懸けで混乱する戦地を駆け抜け私達の元まであなたの報告を持ち帰ってくれたのですよ」

 

 

 セレル様の掌に乗っているのは紛れもなく密偵リスのシラヴェルだった。

 身体中に包帯を巻いて痛々しい姿であったが元気に木の実を食べていた。

 

 涙は全て流し切ったと思ったのだが嬉しい時に流す涙は良いものだ。

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 ~現在~

 

 

 「ぐわっ!」

 

 「イナバ殿!」

 

 

 俺はアルシーの重い連続攻撃に耐え切れず尻もちを付く。

 そこに馬乗りで乗られてしまい絶体絶命だ!

 

 ダメだっ!

 ロマリアスの魔法は何とか躱す事に成功したが次の瞬間からアルシーの本気のラッシュが始まって今現在この様である。

 

 

 ここまでか、とそう思った時、シャルルが発光し始める。

 不意をつかれたアルシーの動きが一瞬止まる。

 

 

 『主様! 今だけっ! 私を信じてください! 今回だけでいいですから!』

 

 「く、くっそぉ――っ!!」

 

 

 グサリッ!

 

 

 「うぐっ」

 

 

 俺はシャルルを両手で握り力の限りアルシーの胸に突き立てた。

 アルシーは目を見開き深紅の唇の端から血を流す。

 

 自分では気づいていなかったがどうやら俺は号泣していたらしい。

 不甲斐ない、俺は大切な人を守れなかったのだから。

 

 俺はせめて死にゆく相棒を抱き留めようと地面に大の字になりアルシーが倒れてくるのを待った。

 

 するとシャルルを中心としてアルシーごと光に包まれていく。

 とても温かい光に俺の身体まで癒されていく様だ。

 

 不意にアルシーが口を開いた。

 

 

 「兄様、それで良いのです。後は私にお任せください」

 

 

 

 




ここまで読んでくださり有難うございます。
ちょっと引っ張り過ぎましたかね。ようやく登場です。
回想シーンを別にするなら60話かかりましたか。

宜しければ評価いただけると嬉しいです(*´▽`*)
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