※この作品はR-18です。

魔王軍立志伝―仕事を辞めたら魔物になりました― ハーメルン版   作:ヨシMAX

106 / 114
魔王立志伝ワールドにようこそ(`・ω・´)


第105話 オークと最後の四天王③

 

 

 「アルシーに仮初の命を吹き込み私とは別個体でありながら私の身代わりと言うべき存在を作り出し、私はある武器に自分の意識を封じ込めたのです」

 

 

 俺はグリッシュの言葉を何とか理解しようとする。

 アルシーは作られた存在なのか。

 え、あんなに人間らしいのに嘘だろ。

 

 先ほどまで戦場であったはずが周囲は静まり返っており仲間の息を飲む音すらも聞こえてきた。

 

 

 「私は自分が作り出した分身であるアルシーにタイムリープの主人公を任せ自分はシャルルと言う武器に意識を移しこの状況を打開できる偉大なる魔王が召喚される年代、時間、場所の詳細を引き続き研究してきました。未来で研究するよりも現地で調べる研究はとても捗りましたが、それでも湯水の様に時間は流れていきました」

 

 

 まさか、シャルルがグリッシュだったとは。

 伝説級のインテリジェンスウェポンだから強いのかと思ってたよ。

 グリッシュが封印されていたのならあの力も納得だ。

 

 それにしても叔父さんだけでなくシャルルも魔王の召喚を研究していたとは。

 

 

 「そんな時に数回前の周回でイナバ様の叔父様がこの世界に召喚されました。彼は有能で見る見るうちに魔王軍内の競争に打ち勝ち魔王になりました。そんな彼に私は全てを話しイナバ様の召喚に対する研究に協力して頂きました」

 

 「それで俺を見つける事が出来た……と」

 

 「そうですね。イナバ様……あなたを見つけた時には流石に私も身体中の力が抜けました……が、あんなにも醜悪なゴブリンになってしまうとは思いませんでした。ウケるwww」

 

 「お前……、紛れもなくシャルルだな。でも待ってくれ、アルシーはグリッシュ、君のクローンなのか?」

 

 「クローン……ではありませんね。近いものではありますがアルシーの人格は私が一から作り上げたものですよ。もちろんそこかしこに私の性格を織り交ぜてありますが……」

 

 

 なんとなくしっくりくる。

 アルシーはグリッシュであり、そうではないのだろう。

 

 

 「そうか、……それでこれを尋ねるのは勇気がいるが……アルシーはどうなったんだ?」

 

 「……アルシーの精神はここにあります……が、彼女の意識は個としてはもう存在しません。私の意識と融合されました。元々、そういう風に仕掛けておきましたので。」

 

 

 ぐっ……。

 分かっていたが、ショックである。

 グリッシュの苦難も痛い程によく分かる、が、アルシーの扱いが酷すぎやしないか……彼女だって感情のある一人の魔族であったわけで。

 

 俺と仲良くしてくれた彼女も、俺をしばいて回る彼女も、俺が九死に一生を得た時に顔面グシャグシャにして無事を喜んでくれた彼女も……もういない。

 

 俺が自分の想像以上に落ち込んでいるとグリッシュが冷たい表情を崩しニッコリと笑って言った。

 

 

 「イナバ様、アナタと過ごしちょった時間は本当に楽しかったばい。私はグリッシュ様と一体化しちしもうたけど元気でおるけん安心してくれん。私はグリッシュ様とアナタを支ゆるけんよろしゅうお願いするたい」

 

 「えっ?! アルシーなのか?」

 

 「そうと。やけん、いつも私が外に出ちょらるる訳やないっちゃよ。私が外に出ちょるとグリッシュ様に負担がかかるばい。精神的に大魔法ば連発した後位には疲弊するとです。やけども私は完全に消えた訳ではないので落ちこまんでほしいとです」

 

 

 グリッシュ(アルシー)はフウッと大きく息を付き座り込んでしまった。

 グリッシュは普段冷静沈着で顔の表情も変わったりしないのだが明らかに疲れており額に汗も浮かんでいた。

 

 この世界に来て初めて出来た相棒だし……喪失感は拭えないけども。

 でも……アルシーがこう言っているしな。

 

 グリッシュはアルシーの代わりではないし反対もあり得ない。

 だけどグリッシュが俺の元に帰ってきてくれた。

 これは本当に大きい加入だと思っている。

 

 

 「そうですね。私が加入したからには魔王様の軍はこの世界随一の強さを手に入れたと言っても過言ではないでしょう。……私はアルシーを身代わりにしようと思った訳ではありませんが、結果的にそうなってしまった事は否定いたしませんし言い訳も有りません。アルシーは私の中に存在はしますが個人としての彼女はもういないのです。……私は未来を見通せるわけではありません。私の知識は今までお話しした通り、何度も何度も時を繰り返しトライアンドエラーの中で得た偶然の賜物なのですよ……」

 

 「グリッシュ……」

 

 「……グリッシュ様とお呼びすればよいですか? イナバ様のお味方で間違いないのですよね」

 

 部隊に待機の指示を出していたのか俺達に遅れて合流したセレル様がグリッシュに丁寧に尋ねた。

 ヒルベルダ様とリリアやリーザ、ガンダルフも近くに寄ってきて話を聞いている。

 

 

 「私は永遠にイナバ様の味方です。どんなに時を繰り返そうとも……です」

 

 「それではこれからどうぞよろしくお願いします。グリッシュ様。アルシー様が無事に戻らなかったのは残念でしたが……それはロマリアスやイナバ様に悪意を向ける何者かの所為と私は認識する事にします。お話を聞く限りグリッシュ様もご苦労されたご様子。そんなに罪の意識を背負う事はおやめください」

 

 

 セレル様がグリッシュをフォローしてくれたようだ。

 ……とは言えそれは建前なのは明らかだ。

 

 グリッシュが未来で勇者に討たれ、アルシーに意識を移して勇者に対抗できる魔王を見つける為に過去に飛ぶ。

 その道中でどうしてもアルシーがグリッシュに戻るのはどうやらどの時間軸でも避けられない事実の様だ。

 でなければ時間の流れはおかしくなり未来にグリッシュは存在せず俺も彼女に会えなくなってしまう。

 

 つまりアルシーはグリッシュを補填するもう一つの彼女の身体の持ち主だ。 

 悪く言ってしまえばアルシーはただ、それだけの存在なのだ。

 

 これは延々に繰り返す時間の中でアルシーとグリッシュが辿り着いた一つの答えなのかもしれない。

 もちろん、正解と言う訳ではないと思いたいけどな。

 

 

 




長い長い夏休みと単純にこの話が難産で時間がかかってしまいました。
どう言い訳をしたところでグリッシュはアルシーの身体があればそれで良いのです。
どれだけグリッシュを悪者にしない為に悩みました。
宜しければ評価いただけると大変うれしく思います。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。