※この作品はR-18です。

魔王軍立志伝―仕事を辞めたら魔物になりました― ハーメルン版   作:ヨシMAX

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魔王軍立志伝ワールドにようこそ(`・ω・´)
都市攻防戦になります。
ゴブリンの活躍をお楽しみください♪


第21話 ゴブのウェルニー奪還戦①

 

 俺がこの世界に転移してようやく着いたウェルニーは敵軍と内乱により陥落寸前の状態だった。

 

 だが不幸中の幸いと言えるのか未だそこかしこで粘り強く抵抗が続いている事。

 自分達に対する敵の攻撃が思ったよりも激しくない事だろうか。

 そんな警戒の穴と陽が落ちた夕闇の隙をついて俺達は城壁の上から偵察する事が出来ていた。

 

 とはいえ、ここからではほぼ真っ暗で街中の様子はよく見えないのだが。

 皮肉にも燃え上がる赤い炎が辺りを仄かに照らしたお陰で辛うじて視界が確保できていた。

 

 ――と、次の瞬間、すぐ近くで起きた新たな爆発に煽られ体勢を崩して落ちそうになったアルシーの手を慌てて握る。

 

 

 「大丈夫か! アルシー!」

 

 「あ、危なかったけんねぇ~、有難う、イナバ様」

 

 

 倒れそうになったアルシーの手を引いて抱き寄せたので彼女を抱える様になってしまった。

 いい香りに鼻腔をくすぐられ少し頬が赤くなってしまった、ゴブリンなのに。

 

 

 「あん高うて頑丈な建物が魔王軍ギルドばい。あそこはこん街同様に相当な防御力ば持っとんでしぶとう抵抗ば続けとるね」

 

 

 動揺する俺の懐の中でアルシーが一際大きく目立つ建物を指差し説明してくれる。

 街中で頭一つ大きい魔王軍ギルドは城塞の様に堀と壁を備えており所謂篭城戦を展開していた。

 魔王軍ギルドといっても実はウェルニーの領主の館も兼ねている。

 それ故に普段であれば住人にとってなによりの自慢であり心の支えのシンボル的存在感なのだ。

 

 

 「陽が落ちるまで時間をかけてしまったがまだギルド、無事みたいだな」

 

 「そうやね、やけん、どんなに頑丈な建物でも油断はいけん。とにかく急ぐばい」

 

 

 そう言って急に城壁から飛び降りるとギルドの方角に向かって飛んでいった。

 ……なんだ、助ける必要なかったな、落ちてもあの人飛べるんじゃん。

 

 それにしてもこのウェルニー。

 ゲームの知識ではあるが小高い草原の丘に位置する交通の重要拠点である。

 ギルドを中心として白壁の城下町が広がり規則正しい石畳の道で繋がれている。

 

 城壁に沿って山からの雪解け水が流れ出す川や肥沃な大地が広がっており、ここが有数の穀物地帯と呼ばれる所以だ。古き良き時代の雰囲気を醸し出す俺の好きな都市だったんだ。

 アルシーを追いかけて走る俺の視界に崩れてしまった建物や爆発で抉れた石畳が入ってくる。

 

 所々から立ち上る黒煙で息苦しい。

 崩れた瓦礫に潰された住人の血があちらこちらに飛び散り、主を失った四肢が悲しげに転がっている凄惨な光景であった。

 

 住人は全滅してしまったのか、あるいは多少なりとも避難出来たのか。

 俺の今の探索スキルではどこに生き残りがいるかしかわからない。

 反応が味方なのか敵なのかはわからないのだ。

 

 しかしだ、俺も一応元々は人間だったし街が襲われたと知った時は敵とは言え同じ人間だから何とか交渉出来ればなんて思ってたし……あわよくば降伏してくれないかな……なんて甘く考えてた頃もあった。

 

 だが、この現状はどうだ。

 はたして、はたして、どうしてここまで酷い事が出来るのかねぇ。

 確かに魔物は人間を奴隷として扱い、酷い仕打ちをしたのだろう。

 もしも俺が人間のまま、この世界に来たのなら奴隷達に同意し組みしていたかもしれない。

 けど、今の俺はゴブリン、全く何の因果なのか……。

 

 ここはゲームではなく現実世界だ。

 確かに俺はこの世界をゲームで経験し勇者に仕留められたのも事実で二つはリンクしている。

 数ヶ月の間、この世界で嫌という程にそれを理解できた……つもりだった。

 

 来てしまったのだから仕方なし。

 やり直せるゲームみたいな、そんな軽いノリで魔王軍として働けばいいと漠然と考えていた。

 現実感がまるでなく敵をひたすら倒し魔王軍のヒーローとして成り上がろうなんて思ってた。

 ついでに俺がこの世界に入り込んでしまった原因を解明出来たらな……なんて思いながら、なんとなく、ここまで来た。

 

 だが、実際に意思を持つ者同士の戦い、殺し合いを間近で体感してしまった。

 普段は当然の様に仕事をし、団欒をし、会話をして、泣き、笑い、幸せを謳歌する街の住人達。

 捕虜となるまでは当たり前な日常を過ごしていたはずの人間達。

 その双方が己の正義を振りかざして相手が滅ぶまで殺し合う。

 俺のいた日本と比べてそんな殺し合いがいとも容易く起きてしまう。

 ……それが現在、俺のいる世界だ。

 

 何度も言うが俺はゴブリン。

 人間達から見れば魔王に率いられた邪悪な生き物だ。

 

 その俺が他種族と仲良く手を取り合って生きたいと言ったら皆、笑うだろうか。

 いや、最初から諦めてたらそこで終わりだ、転移する時に決意したじゃないか。

 

 どんなに生き汚くとも簡単に諦めて死んでなんてやるもんか。

 邪悪な弱者の話なんて誰も聞いてくれないと言うなら強くなろう。

 力を示して、対等だと認めさせて会話のテーブルに付いてもらう。

 ゲームの頃もそうやって俺は成り上がった。

 やるしかない、やってやろうじゃないか――。

 

 

 「イナバ様、ほんなこつ大丈夫と?」

 

 

 いつの間にかアルシーは俺の隣について飛んでいた。

 

 はい、全く、恥ずかしい限りです。

 格好よく決意した俺ですがオーガのおっさんを見送った後、街を探索中にその凄惨な状況を目にして嘔吐し気を失ったのだ。

 緑色の顔を青くして倒れた俺をアルシーは壊れた家の一つに運び込んでくれた。

 そこで完全に日没を待って城壁にのぼり街の様子を探っていたという訳だ。

 

 まあ、待っている間にも色々あった。

 アルシーというこの少女、手が速い割に武器や体術を使ったりしての戦闘はからっきしダメみたいだ。

 一方、魔法戦に関してはアホみたいに強い、それはそれは強い、軍団級の戦闘力を持っているといっても過言ではない。

 それに合わせて彼女は他にはない身体的特徴というかスキルを持っており大気中を漂う魔素を身体に取り込み自分の魔力を補充する事ができるのだ。

 法外な火力にプラスして補給いらずで半永久的に――もちろん疲労は感じるのだが――戦えるのだから強いわけである。

 

 ……それなら何故、会った当初の彼女は魔力切れ寸前で活動していたのか。

 

 




ここまで読んでくださり有難うございます。
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