※この作品はR-18です。

魔王軍立志伝―仕事を辞めたら魔物になりました― ハーメルン版   作:ヨシMAX

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魔王立志伝ワールドにようこそ(`・ω・´)


第2話 ゴブの消失

 

 

 ゲームとしては致命傷に近いアンバランスさだ。

 だが俺は理不尽さとその後に待っている万能感に惚れ込んでトコトンまでハマった。

 

 それがこのゲーム「魔王立志伝(まおうりっしでん)」だ。

 

 だが、このままではゲームが続けられず失踪扱いになってしまう。

 今日も面接に進んだ会社に行ってきたのだがあちら様の想定と違ったのか適当にあしらわれた。

 不景気は変わらず物価高が庶民の懐をモロにヒットするこの昨今。

 最近、仲間達がゲームに来なくなっているが、このまま無職だと俺までそうなる。

 

 

 くそっ! 気を抜くと思考が後ろ向きになってしまう。

 今日は金曜日、明日から休日の会社も多いし求人広告の更新も週末はほぼない。

 気分が沈む日は、ゲームにどっぷり浸かってやろうと思いコンビニで酒とつまみを買い込んできたのだ、週末は家から一歩も出ない所存だ!

 

 

 「よーし! レベルアップしまくって今度こそ勇者達を倒きのめしてやる」

 

 

 昨日新しく配信された新DLC「暗黒勇者と理不尽な仲間達」。

 今回のDLCは今までに輪をかけて勇者共が強すぎる。

 もう一度、みんなを集めて作戦を立て直す必要があるな……。

 誰か、良い情報でも掴んでれば助かるんだけど。

 

 自室の窓際で腰痛防止のゲーム用座椅子に座った俺はVRゴーグルを被りゲームを再開した。

 

 

 タバコは吸わず、酒も嗜む程度。

 服や装飾品は適当に手に入れた物を後生大事に使い続ける。

 俺の感覚としては着れたら良い、動けば良いのレベルだ。

 

 この通り、物欲は殆どないので結果、金はそこそこ有る。

 お蔭で失職中でもゲームだけは楽しめている。

 

 

 目の前で幾つかのロゴが浮かんでは消え、タイトルウインドウが表示される。

 ――と、画面の下部に【通知】という文字が点滅していた。

 

 これはメーカーから更新やイベントの知らせ、不具合等の連絡等が届くシステムだ。

 さっきは何も届いていなかったはずだが……、俺は少し迷い、その通知にタッチし開封した。

 すると目の前に新たにウインドウが出て文章が現れた。

 

 

 【魔王軍再建のお願い】

 

 拝啓、魔王様

 酷寒の候、ますますご健勝にお過ごしのことと存じます。

 我ら魔王軍はご存知の通り、勇者達の強襲に遭い壊滅の憂き目と相成りました。

 魔王様におきましても致命傷を負われ大変難儀な事と愚考いたします。

 つきましてはこの様な事態を予め予測し魔王城全体に魔王様復活の呪文を施させて頂きました。

 ご多忙の折、恐縮でございますが魔王様の次回ログインがその発動条件となっております。

 魔王軍四天王一同、魔王様の再ログインと軍再建へのご尽力お待ちしております。

 末筆となり囁かではございますがレアスキルと魔王様の手足となる最高のナビゲーターを随伴させて頂きます。

 魔王様のゴブ運をお祈りしております。

                            敬具

            悪魔剣士団団長      リーザロッテ・レスケンス

            竜人重装歩兵団団長    ガンダルフ・フィリーノート

            ダークエルフ弓矢兵団団長 クライン・マリユーグ

            妖魔魔法兵団団長     グリッシュ・L・アーチバッガー

 

 

 ……なんだ、これ?

 季節の挨拶状じゃねーんだから。

 しかしそんな馬鹿な……。

 百歩譲ってゲーム内なら、まだ分かるがなぜこんなメッセージが?

 魔王軍四天王の連名で……。

 そして先ほどのゲーム展開を踏まえた上で俺を名指しで!?

 魔法の発動条件? 魔王軍再建って

 ……あいつ等が俺を呼んでるというのか?

 

 

 ……ってそんな訳ないか。

 転職活動が思わしくないからか考え方が突拍子もなくなってるな。

 早く寝た方が良いのだろうか。

 

 いや! 気にせず、ゲームを続けよう。

 俺はその画面を閉じてタイトル画面から【ロード】をしようとした。

 ――すると、突然、画面が光り出して部屋中を包み込んだ。

 

 

 「な、なんだ!」

 

 

 目がくらむ光に耐えられず電源を切ろうとゴーグルを頭から外した。

 ところがその光はゴーグルから発せられたのではなく部屋全体を包み込んでいた。

 テーブルに置いたはずの酒の缶もおつまみも何も見えない。

 手さぐりで探しても何もつかめない。

 ……部屋全体が白一色になってしまった。

 

 まさか、本当にゲームの世界に、異世界に転移するというのか!?

 確かに俺も一軍を率いて勇者に挑戦する程度の泡沫魔王にはなったけど……。

 それでも異世界に転移して戦うなんて無理だ!

 

 ――いやいやいや……、そもそも転移させられるなんて常識的に考えられない!

 挨拶状を開いたからか!?

 了承もしてないのに!?

 ……こんなもの回避不可能じゃないか。

 

 オタオタしている間にも全てが……目の前にあるはずの俺の指先さえ光に飲まれ見えなくなる。

 部屋から飛び出して逃げ出そうにも周りが全く見えないし、足がピクリとも動かない。

 

 

 くっ、くそ――っ!

 なんでだよ! なんで……俺がこんな目に……。

 

 

 俺は白い空間でガクリとヒザをついて呆然とする。

 足は前に動かないがヒザはつく事が出来た。

 異世界に転移するなんて……一体どうすればいいんだよ。

 

 

 いや……、もしも……本当に……、

 ――本当に異世界に転移するなら、どんな汚い手を使ってでも生きて……生き延びて勇者共をぶちのめしてやる!

 ブラック企業で鍛えたメンタルと微課金中級ゲーマーの執念をなめるなよ!

 俺の率いる魔王軍を再建して、もう一度鍛え直せば、それなりに戦えるはずだ。

 あの四天王さえ、四天王さえいれば、きっと……。

 

 

 浮遊感と眩暈が続き、落下しているとも浮いているとも分からない感覚の中、俺の意識は目の前の一面白い景色に溶け込む様に薄れていく。

 あれほど眩しかった視界はいつの間にか真っ暗になり、そのまま、ゆっくりと俺は気を失っていった。

 

 

 




ここまで読んでくださり有難うございます。
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