魔王軍立志伝―仕事を辞めたら魔物になりました― ハーメルン版 作:ヨシMAX
何とかレスター達を退けた俺達は門を抜け魔王軍ギルドの建物目指して走った。
敵であるはずのレスターが殲滅してくれたお陰で皮肉にも俺達の行く手を阻むものはない。
相棒のアルシーは俺達の前方を飛んでおり、この街で出会ったリリアは俺の隣を走っている。
アルシーの回復魔法の甲斐もありリリアは全快とはいかないまでも同程度まで回復していた。
全身に黒装束をまとっているが丈が短く程よく引き締まったお尻から太もものラインがとても美しい。
リリアは猫の亜人であるが耳と尻尾と手足の爪を除けば人間の女性に限りなく近い、いやほぼ同じであると言っても良い。
現在ゴブリンであるが元人間の俺がその美しさに目を奪われてしまうのも仕方ないだろう。
それはそうと……、
「おーい、アルシー! そんなに飛ばして大丈夫なのか?」
俺が戦場のど真ん中でこんな如何わしい事を考えられるのは前方を飛んでいる彼女のお陰だ。
敵軍が殲滅されたとは言えそれでも街が占拠されているので時たま魔物に見つかる事がある。
そんな時には彼女が魔法で爆破処理してくれてるのだが……、彼女の魔力は底が見えないほどに無尽蔵なのはわかっているのだが流石にこのペースで魔法を行使していたら直ぐにガス欠になってしまうのではないか。
「大丈夫やわ、この程度で音を上げる程、私はやわやなかとよ!」
彼女を心配して声がけしたのだが振り向いたその目はなんか……ガン決まりで少し怖かった。
「心配なか、イナバ様! 私は魔法の発動時にしか自分ん魔力ば使わんスキルば持っとるけん。残りは空気中に漂う魔素ば利用できるばい、私に戦いば挑むなど愚ん骨頂ちゅう事やけん、それより先を急ぐと!」
なにそれ、凄い!
彼女の言葉が真実なら驚いた事にアルシーは大気に漂う魔力を使って魔法を発動できると言う。
わかりやすくすると着火のみ自力で行えばその後の燃焼にエネルギーはいらないという事だ。
つくづく燃費が良い、彼女が敵でなくて良かったと思う。
そんな思いで見ていると何やらアルシーの状態に変化が起こった。
小柄のはずの彼女の身長はどんどん大きくなり、四肢もそれに伴い伸びていき、出る所はでて引っ込む所は引っ込み、とても良いスタイル……げふんげふん……すっかり大人のお姉さんになったアルシーの身体が発光し彼女は長い詠唱が始める。
一体何をするつもりなのか……。
あぁ、わかった、わかった、直ぐにわかった!
い、岩が! いや、小さな隕石が空から落ちてきてる!
あれはファイナルメテオ……、
いいなぁ、俺も使いたい。
それにしても……
ちょっと! 大丈夫なの!? 街が壊滅するよ!
それに何!? アルシーさん、身体大きくなってるけど!?
……なんで服までおおきくなるの?
落下してきた隕石があちらこちらで敵軍を殲滅している。
――だけなら言いのだが案の定、その破壊力は街をも巻き込み敵兵が逃げ惑う姿は阿鼻叫喚の地獄絵図のようだ。
「中途半端よりも思い切って徹底的に打ちのめした方が良いでしょう。住人には当てませんし街も後で直します!」
アルシーが訛ってない! 新鮮!
いやいやいや、それよりも街にも気を遣って!
そう指摘しようとした俺だったがアルシーの目がますます狂気の色に染まり始めている事にビビってしまった。
諸々の事は落ち着いてから確認する事にしよう、うん、そうしよう。
ただでさえ少ない敵の抵抗をアルシーが徹底的に潰して俺達は進んでいく。
グングンと近づいてくるギルドの建物を見て俺は一瞬だけ油断してしまった。
一瞬、ギルドの建物の入口辺りが煌めいたかと思ったら視界が一面真っ白になる程の魔法の攻撃がこちらに向かってきた。
やばい、俺、死んだかも……。
『主様! 諦めるんじゃありません!』
そう言うとシャルルも強烈な光を放ち懸命に結界を張ろうとする。
頑張れ! 相棒!
『くっ、間に合わない、油断しました、こんな所で土に還るとは……』
「シャルルっ! お前も諦めんなよっ!」
今から躱そうにも俺だけ避けたらアルシーやリリアが……。
あれ? そう言えばアルシーはどこ行った?
そう思った瞬間、俺達と魔法の射線上に誰かが飛び込んできた。
「これ位の攻撃で何を狼狽えてるんです」
射線上に飛び込んできたのはアルシーだった。
「アルシー!? よけろ!」
「アルシーさん!?」
俺とリリアの驚愕を他所に彼女は左手を前に出すと何やら呪文を唱え始めた。
「古えの風精霊に告げる 数多の悪意や……、えーい! 面倒くさい! 風よ、跳ね返せ!」
え!? そんな適当で良いの?
いよいよ光に包まれそうになった俺は不覚にも目を閉じてしまった。
さすがのアルシーもこの攻撃を跳ね返せないだろう。
来るはずの魔法の衝撃に備え全身に力を入れる……と、いつまで待ってもそれは来なかった。
目を開けるとそこには服の裾をはためかせ左手一本で強力な魔法を防いでいるアルシーが居た。
なに、この娘、凛々しい。
「風の精霊よ、二人にも加護を……」
「「えっ?」」
アルシーが右手を俺達にかざしてそう唱えると俺とリリアの身体が七色の光に包まれた。
どうやらかなり高い階位の防御魔法の様だ。
いや、精霊と言っていたし精霊魔法か。
「さあ! 早く行きなさい! 建物に辿り着くまでは保つでしょう。側面から回り込むのです! リリア、イナバ様を頼みます!」
「そんな! この魔法攻撃はやばいレベルだ! いくらアルシーでも一人ではうわあっ!!」
そう言いかけた俺は突然強い力で引っ張られた。
リリアが俺を小脇に抱えて全力で走りだしたのだ。
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