魔王軍立志伝―仕事を辞めたら魔物になりました― ハーメルン版 作:ヨシMAX
ここが大ホールか。
俺は強大な魔力の反応に引かれて大ホールの扉前まで来た。
ずずぅぅぅうううんっ!!
グラグラグラ……、
「ううっ……、くそっ」
地響きと共に建物が揺れてホコリが天井から落ちてくる。
なんとか壁に手をついて足元を確認して扉に手を掛けた。
「そりゃあ!」
勢いよく左右に扉を開け放つ。
目の前に現れたのは……尻!
大きな尻がぁああああ!!
「ぶふぇっ!!!」
跳んできた尻にまんまと潰された俺はガマガエルの様な声を出して倒れた。
そして仰向けに倒れた俺の顔面に今現在も尻が乗っていて息ががが……。
咄嗟に反射的にバンバン尻を叩いてしまっても仕方がないと思うんだ。
挙句の果てにガッチリと尻を掴んでしまうのも致し方ないと思うのだ。
「きゃああああああっ!!」
「あばばばばばっ!!」
尻は立ち上がると俺の顔面にガンガンとストンピングを浴びせてきた。
「てぃっ!」
「ぐぶぉあっ!」
最後に馬の様に後ろ蹴りを俺にぶち込むと大ホールの中に戻っていった。
『主様、生きてますか? 息してますか?』
「あ……ああ、回復力だけはあるからな、俺。……しかし、今のはなんだ?? イテテテっ……」
『どうやら魔族の女性らしいですね。完全武装でこの部屋の中の何者かと戦闘中の様です』
俺は早くも腫れの引いてきた頬を摩りながら扉に寄りかかる様にして大ホールの中を見た。
するとそこには魔道士風でありながら2メートルはある長身の男とそれに立ち向かう様に女の子が対峙していた。
「……ゴブリン? ほう、お前が……」
「!? ゴブリン追ってきたのか!? て、敵が増えたな……」
地底から響く様な男の声と凛としているが可愛らしい少女の声が大ホールに響く。
男の口調は柔らかであるが声自体に威圧の魔力が篭っておりビリビリとした圧力を感じる。
少女のそれには……まあ、なにも感じられなかった。
『主様、気をつけてください。あの者は……恐らくロマリアス本人です』
んっ? ロマリアス? 誰だっけ?
俺は頭を捻って考えるが思い出せない。
『城壁で戦ったレスターと言う魔法戦士の主とされてる人物ですよ、主の首の上に乗っているのは南瓜か何かですか?』
うるさいな。
俺は覚えておきたいものだけ記憶に留めておきたいんだよ。
ロマリアスか、確か魔王候補の一人という事か。
そんなのがボスキャラで待ち構えてるなんて全く俺も運がない。
「こんのぉおおおおおっ!」
「うわあああああっ!」
俺が自分の不運さを嘆いていると先程の少女が剣を上段に構えて振り抜いてきた。
間一髪で避けたかと思ったが左頬から血が滴り落ちた。
この世界に来て丈夫になった俺だが流石に背筋に冷たい汗が流れるのを感じた。
「ちょ、ちょっと待て! 多分だがお互いの立場を鑑みるに俺と君は敵では……うぇえええいっ!」
今度は少女が剣を横薙ぎに払ってきた。
うぉぉぉお! 切れた! 伝説の鎧が切れた! なんで?
「待ちなさーいっ! 止まれっ! やめれっ! うぉおおい! ……ふんっがぁっ!!」
「ふべっ!」
紙一重で避けてるはずがドンドン鎧が切れていくのを見て思わず少女に廻し蹴りを食らわす。
『主様、少女相手に容赦ないですね』
だってよーっ! 仕方ないじゃん!
あいつ、全然俺の話聞かないじゃん!
殺気ましましで俺に斬りかかってきたじゃん!
「ふむっ、レスターは倒されたか。まあ、あれしきの雑魚なりに粘った方だな。……ミルティナとガルドは生きているか」
巨大な魔導師風の男が杖を構えながら近づいてくる。
なぜか奴は俺達がレスターを倒した事を知っていた。
ミルティナとガルド?
『恐らくアルシーとリリアが戦っている敵でしょう』
ああ、なるほどな。
決着はまだついていないのか、
と言うかゴブリン小隊も戦っているはずなんだが頭数に入っていないのかな?
まあ、きっと皆は勝って俺に追いついてくるさ、絶対にだ!
「ゴブリン……、マルファスなんぞに付かず我に従え」
「お前、俺の事知っている風なのに重要な事は知らないんだな」
「何っ?」
俺はシャルルを構え直してロマリアスに答える。
「俺は魔王マルファスの下で成り上がる予定のゴブリンだ」
「……ほう、……面白い冗談だ、だが我は冗談は嫌いでな」
ロマリアスの持つ杖に膨大な魔力が集まっていく。
こりゃ、あかんで、死ぬぞ。
「じょ、冗談ではないのだが……、一応」
俺はロマリアスに気圧され冷や汗をかきながら後ずさる。
「冗談ではないのなら我の下には付かないと言う事だな」
「そ、そうとも、い、言い切れんだろう! はな、話し合おうじゃないくぁ」
『落ち着きなさい! 話が通じる相手じゃありません、油断しない様に!』
焦りの余り、噛んでしまった俺にシャルルが必死に声をかけてくれた。
お陰で一呼吸置けた気はするが状況は依然緊迫している。
「我に付かないのであれば将来の驚異は今の内に摘み取るのみだ」
そう言うとロマリアスはパチンと指を鳴らした。
すると奴の周りの地面から多数のスケルトンソルジャー達がせり上がってきた。
目視の限りでざっと50体以上だ。
こいつらは普通のスケルトンと違い高レベル、且つ、剣と鎧で武装している。
一気に攻められたら幾らチートゴブリンの俺でもタコ殴りにされるのがオチだ。
「さて……、会えたばかりで残念だがお別れの時間だ」
ロマリアスが杖を持った手を振るうと一斉にスケルトンソルジャーがこちらに向かってきた。
殺気がない分、どの様に動くのか分からない厄介な相手だ。
『焦らず敵をよく見て! くっ、この様な無勢でなければ魔力を私に流させて一網打尽にできるのに。時間さえあれば……』
シャルルが珍しく泣き言を言っているがそれでも俺は四方八方から繰り出される剣を避けたりシャルルで受け流したりで何とか凌いでいた。
ロマリアスが指パッチン一つで作り出したスケルトンソルジャーだったがこいつら強い!
そして速い! こんなのやられるやんけ。
360度全方位から同時に振り下ろされる剣をシャルルを振り回し全て弾き返す。
が、その間断を縫って更に剣が繰り出される。
こいつら連携が良すぎんか!?
さっきは謎の少女に切りかかられて鎧がどんどん切れていったが今度はスケルトンソルジャーに切りかかられ鎧が傷んでいく。
傷だらけになり血しぶきと血反吐を吐きながらもシャルルの助言と俺自身のスピードでスケルトンソルジャーの攻撃を耐えて一体、また一体と殴り倒していく事に成功していた。
まあ、どんだけ傷つこうが鎧も俺も回復してしまうんだがな。
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