魔王軍立志伝―仕事を辞めたら魔物になりました― ハーメルン版 作:ヨシMAX
ようやく戦いも一段落です。
第32話 ゴブのウェルニー奪還戦⑫
スケルトンソルジャーの攻撃を耐えて一体、また一体と殴り倒していく事に成功していた。
まあ、どんだけ傷つこうが鎧も俺も回復してしまうんだがな。
『主、スキルの力を過信してはいけません。あまりに一気にダメージを食らうと回復に全ソースを持って行かれて身体が動かなくなってしまいます。その隙をロマリアスに突かれてしまったらそれは悍ましい事になりますよ!』
そうだった!
奴はネクロマンサーだ。
正確にはまず死ぬ事はない俺だが半殺し状態にされたらどうなるかわからんぞ!
と、考えていた瞬間、俺は吹き飛ばされて大ホールの壁にめり込んでいた。
「ぐはっ……」
えっ?
何が起きたんだ?
『主! 無事ですか! ロマリアスからの攻撃です! またきます! 避けなさい!』
くそっ!
何がなんだかわからない混乱した頭を無理矢理にフル回転させて俺は壁から抜け出し見えない攻撃を避けるべく移動した。
すると俺を追いかけるかのように次々と大ホールの壁が破壊されていく。
そして俺の周りには続々とスケルトンソルジャーが近寄ってくるのが見えた。
うわぁああああっ!
やはりいくらチートゴブリンでも魔王候補と呼ばれる奴に挑もうなんて無謀だったのか。
ゲームの頃だってレベルや種族の差は超えられない壁だったじゃないか。
得意げに街を解放させるなんて言うんじゃなかった。
強くなんてなろうとしなきゃ良かった。
勇者にやられたみんなを取り戻そうなんて思うんじゃなかった。
こんなゲームやるんじゃなかった。
俺の人生、後悔ばかりだ……
何度目かの見えない衝撃波をモロに食らった俺は再び吹き飛ばされる。
ああ、ダメだ、ここで終わりか……。
なんかこの感じ、前もあったな。
確か俺は部屋でゲームをしてて……、
あれ? それっていつの記憶だ? 誰の……記憶だ?
『……じ! ……るじ! しっかりしなさい!』
「えっ? うお!」
俺は目の前に迫った柱を避けるべく強引に身体をひねり柱を蹴って床を転がる。
幸いにもスケルトンソルジャーの群れからは少し離れる事ができた。
『主! ここは撤退するのです! 街を解放する為に主が死んだら元も子もありません! 撤退を!』
「シャルル!? ……と言ってもこの状況じゃ逃げる事も……」
と、不意にロマリアスの攻撃の手が止みスケルトンソルジャーも動きを止めた。
「……ふむ、ミルティナとガルドもやられたとなると……潮時か」
奴は杖を振るうとまだまだ沢山いたスケルトンソルジャーが地面に吸い込まれるように消えた。
ミルティナとガルドって……アルシーとリリアとゴブリン軍団が戦っていた相手じゃないか。
アイツ等、勝ったのか? 凄いな。
それなのに俺ときたら……、やはりまだまだ雑魚ゴブリンなのか、俺は……。
「ゴブリン、貴様、名は何という?」
「……イナバだ」
「イナバ、どうやら我の部下はみな貴様等にやられたようだ。まあ回収してまだまだ駒として働いてもらうつもりだが……気が変わったら我の元に来るがよい。我は強き者には寛容ゆえ……、また会う事もあるだろう」
そう言うとロマリアスは後方の闇に溶け込む様にスーっと消えていった。
凄いな、あっと言う間にあれ程に強烈だった気配が一切感じられなくなった。
『主、運が良かったですね。正直言うと私もロマリアスがあれ程の存在と思っていませんでした。しかもあれで奴はほとんど本気を出していないでしょう』
「まじか……。もっと強くならないとな」
『経緯はともかく街は解放されました。これで種族進化が可能です。強化のスピードは今までの比ではありませんよ』
ああ、そうか、街が解放されてギルドが復活したらそれも可能になるんだな。
進化して強くなって先代魔王マルファスの魔界統一の力にならないといけない。
そしてマルファスと共に魔界の力を高めて未来に起こる勇者一行の大虐殺を防がなければ。
言ってしまえば別に俺なんかが魔王にならなくてもマルファスの方が勇者といい戦いができるのではないかとさえ俺は思っている。
元々のゲームでも俺は先代魔王マルファスがあと一歩まで迫った魔界統一の総仕上げをしただけだ。
激しい戦いの最中、惜しくもマルファス軍は戦争で敗れてしまったがそのお陰で俺は通常よりも早く成り上がる事が出来たのだ。
マルファスが生き残る可能性があるなら俺は別に序列1位でなくても構わない。
そもそもそんな柄じゃないしな。
「あ、イナバさん!」
考え事をしていると大ホールの扉からリリアが顔を出した。
「お―っ、リリア、無事だったの……」
「イナバ様ぁ――っ!!!」
「ぶっふぉお!!」
リリアの無事を労っていると大ホールの扉から弾丸の様な何かが飛んできて俺の腹に突き刺さった。
もんどりうって後ろ向きに倒れる俺。
イッタア――っ……。
「よがっだぁ! よがっだぁよぉ! イダバさばぁ! いぎでふだだびあえどぅとは―っ!」
「くぉらあっ! アルシー! 落ちつ! もうだいじょう……ぶだか……ら……」
飛んできたのはまたもやアルシーだった。
彼女は泣きながら俺にしがみつき涙と鼻水でぐちゃぐちゃになっていた。
今のアルシーは発育のいいお姉さんの姿なのでそんな姿でしがみつかれたらドキドキしてしまう……
いや、そんな事はどうでもよくて……俺の胸がグシャグシャのとんでもない事になっているのを見ているとアルシーが仄かに光り始めた。
そしてグングン、グングンと彼女の姿は縮んでいきこの街についた頃の大きさで落ち着いた。
相変わらず彼女は俺の胸で泣き崩れているのだが俺がゴブリンなのでサイズ的にちょうど良くなった。
「イナバ様! ようぞご無事で! 勢いで先に行けなんて言うてしもうたがよう考えたら相手はあんロマリアスやけん、城壁ん時は私も側におったが今回はイナバ様お一人……、私はもう心配で心配で……。やけん、生きとってよがっだぁ――っ!!」
アルシーがこんなに泣いて心配してくれるなんて本当にやばい相手だったんだな。
強くならなきゃ……強くならなきゃな。
「ほらほら、アルシーさん。イナバさんが困ってるにゃ、これで顔を拭いて早く離れるんだにゃ」
リリアは近寄ってきてアルシーの顔をタオルで拭くと脇に手をいれて抱き上げるように俺から彼女を引き離してくれた。
アルシーには有難いと思いつつ離れてくれてホッと息を吐く。
「どぅわああああ――っ!! 油断しましたぁ!!」
「わあ! びっくりした!」
気を抜いていると瓦礫の下から少女が出てきた。
「あぁ――っ!! ゴブリン! いた! ゴブリン! 倒す!!」
『いけないっ! 主! 逃げてっ!』
「うわぁ――っ!! だから、君は、落ち着けぇ――っ!」
出てきた時には素手だったのに、どこから出したのか少女は剣を手に俺に再び襲いかかってきた。
気を失い瓦礫に埋まってたとは思えない程のスピードで鬼気迫る表情を浮かべ斬りかかってくる少女は何とも言えない迫力を感じた。
目にも止まらない剣筋を紙一重で躱していると視界の端を黒い影が通り過ぎて行き少女の剣を止めた。
「いまにゃっ!!」
「止まりんさいっ!」
「うっ! な、何を……」
少女の動きが止まって崩れ落ちた。
リリアが少女の剣を止めアルシーが魔法で動きを止めてくれたようだ。
「ふぅ――っ、ようやく落ち着いた、全く……君は何なんだ?」
俺は少女に問いつめる。
少女は床に伏せながら苦しげに答える、麻痺状態にでもされているのだろう。
「わ、私は……ま、魔王……マルファスの……娘です……」
「……はっ?」
少女がとんでもない事を言った。
ここまで読んでくださり有難うございます。
長くなりましたがこの1話でまとめた方が良いかと思いました。
宜しければ評価いただけると嬉しいです(*´▽`*)