※この作品はR-18です。

魔王軍立志伝―仕事を辞めたら魔物になりました― ハーメルン版   作:ヨシMAX

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魔王軍立志伝ワールドにようこそ(`・ω・´)


第34話 ゴブは魔王と知り合いだった

 

 

 友達も身内もいない俺を名前呼びする人物は……。

 

 

 (そうだ、誠広。お前の目の前にいる魔王様がお前の叔父さんだよー)

 

 

 確かにその声は俺の叔父の声だった。

 俺の母親を名前呼びして姉さんと言った。

 驚きのあまり目を見開いて見上げる俺をしてやったりと見つめる魔王マルファス。

 

 俺の両親は俺の高校卒業と共に離婚しており、母親に引き取られた俺はその弟、叔父の援助を受け何とか生きてきた。

 就職についても小さな土木会社の社長だった叔父に紹介してもらい、入社した後も取引先である叔父に恩返しをするつもりで裁量権の許す限り、仕事を選んでは割り当てて一緒に働いていた。

 もちろん叔父さんは仕事に関してはプロだ。

 俺が贔屓していると思われない為にも見事な仕事をこなしてくれた。

 

 だが、ある日突然、その叔父が失踪した。

 

 当然、俺は捜索願を出したのだが捜査の結果、叔父の失踪に事件性が無いという事で自主的な失踪と警察は判断し捜索は打ち切られた。

 当時の俺はもちろんその後もしばらくの間、掛け合ったが無駄だった。

 

 そうか、叔父もこの魔王軍立志伝をプレイしていたな……。

 俺よりも重課金の廃人寸前プレイヤーだったが、まさか――

 

 

 (母さんは1か月前に亡くなったよ、叔父さん)

 

 (なっ! そ、そうなのか!?)

 

 

 そうなのだ。

 俺の母親は元々身体が弱く、叔父の……母にとって弟の失踪が止めとなり完全に身体を壊した。

 叔父が居なくなって気落ちした実家の母を俺は懸命に支えた。

 東京にきて一緒に暮らそう、病院に通って身体のケアもしよう。

 そう説得を続けたが結局母は首を縦に振らなかった。

 それどころか俺が自分の看病に明け暮れるのを母はとても嫌がっていた。

 優しいが頑固だった母にとって息子の負担になりっぱなしなのが我慢ならなかったのだろう。

 

 叔父が失踪し母が亡くなり半ばどうでも良くなった俺はブラック企業を退職して新しいスタートを切ろうと考えていたのだ。

 

 

 (叔父さん!? 本当に叔父さんなのか?)

 

 (ああ、心配かけたな、誠広。その……姉さんの事は俺もショックだが……苦労をかけすまなかった……)

 

 (いや、それはいいよ。俺の中で整理がついてる……、それより叔父さん、なんでこんな所で魔王なんて……、まさか……)

 

 (ああ、俺の廃課金っぷりは知ってると思うが、ある時、季節の挨拶文みたいなのが画面に出て呆気に取られているうちに、この世界に引きずり込まれた。最初は混乱し戸惑っていたが元の世界には無い実力だけがものをいうルールがここにはあった。幸い廃課金の力は使えたのですぐに幹部から魔王候補と成り上がって最終的に魔王にまでなれた、すげぇだろ)

 

 

 なんと、本当に叔父さんは魔王だった。

 いい大人で、小さいながら一企業の社長までやってた人が何をやっているんだか。

 

 今の話を聞く限り、導入は俺と全く同じ……という事は叔父さんも為す術なくこの世界に引き込まれたという事か。しかし課金の力が使えたのはズルい。

 

 まあ、当時は俺の人生オワタと思ったが……、今更叔父さんを責める気にはなれなかった。

 

 

 「お父……魔王様?」

 

 

 おっと、ヒルベルダ様から声がかかった。

 それはそうか、傍から見れば俺と魔王様は見つめ合い微動だにしないのだ。

 おかしいと思うのも当然だろう。

 

 

 「うむ、大丈夫だ。イナバの褒美を何にしたものかと思案していたのだ」

 

 「そうでしたか、失礼いたしました。ですが、本日はもう遅いですし皆様方には本日はこの駐屯地にてお休み頂き明日改められては如何でしょうか?」

 

 「……そうだな、そうするとしよう。」

 

 

 ヒルベルダ様の鶴の一声で今日の解散が決まった。

 疲労がピークだったであろう仲間達からホッとした雰囲気を感じた。

 魔王様の指示を受けたヒルベルダ様の案内で仲間達が来客用のテントに案内されていく。

 

 

 「イナバよ、そなたにはもう少し話がある。残ってくれ」

 

 (誠広、もう少し話しがしたいのだが……、付き合ってもらってもいいか? 酒もあるぞ!)

 

 (酒はともかく……良いよ)

 

 

 自分も残ると渋るアルシーをリリアが引きずってテントから出ていく。

 俺と叔父さんだけになると途端にテントの中は静かになった。

 

 俺は叔父さんにこれまでの経緯を話した。

 叔父さんが失踪してから――母が亡くなり――勢いで無職になり――

 ゲーム内で勇者にコテンパンにされ――この世界に引き込まれて――

 アルシーと出会い修行して――ウェルニーに来てリリアに会い街を解放した。

 

 

 「誠広も俺と同じか……、謎メッセが画面に出てその後に部屋中が白光して……気付いたらこちらの世界に、という事か」

 

 「まあ、そうだな。ただ俺は最初からアルシーが付いてくれたから大分楽だったよ。魔王……叔父さんが受け取った……と言うか送りつけられてきたメッセージはどんな内容だったんだ?」

 

 「ああ、俺は勇者じゃなくて敵の魔王との戦争中に死んでゲームオーバーになった。その後に過去に戻って魔王になり仲間の到着を待て、と言う内容だったと記憶している。まあ最初は戸惑ったし悲嘆にくれた。治安国家日本の常識なんざ通用しないし信じられない位の悪い奴もいる。……相当ひどい目にあったな。ただ、良い奴らにも出会えたんだ。奴らのお陰で俺はこの世界で生き延びる術を得られたと言っても過言でなかった。いつしか俺は仲間達が安心して暮らせる国を作ろうと思い始めた。それには魔王になるのが一番近道だったんだ。まさか待ち望んだ仲間がお前だったとはな、頼もしいよ、ふふっ」

 

 

 そう言った魔王の横顔は一瞬だが叔父さんそのものに見えた。

 

 まだまだ不安定だがそれでもエルロア島を半分以上統一の状態まで持ってきたのは叔父さんの努力の結果だ。色々とあったんだろうな。

 

 

 「叔父さ……、魔王様。俺も手伝うよ」

 

 「えっ?」

 

 「現状、この世界から出る方法は不明だ。それなら本来のゲームのクリア条件を突き詰める為にも一緒に頂点を目指すのも良いかもしれない。もちろん俺はまだ弱いので種族進化を目指す」

 

 「まあ、お前はゴブリンにしちゃそこそこ強いぞ。……わかった、俺の目標にお前が加勢してくれるなら頼もしいな。ただ確かに今のままゴブリンだと側近に加える訳にもいかない。しばらくは別行動で自身の強化に努めてくれ。人材やアイテムが欲しければある程度は都合するから言ってくれ」

 

 

 アイテムはアルシーが四次元ポケットの如く出してくれるから心配ないな。

 なら仲間か……現在のパーティ……と言っても俺とアルシー以外固定メンバーはいない。

 リリアには後で今後どうしていくか尋ねてみよう。

 

 もし彼女が残ってくれた場合、リリアは明らかに中衛の遊撃担当だ。

 アルシーは後衛の魔導師、重要なダメージソースになるだろう。

 そして俺だが……、なんとも中途半端な状態だ。

 前に出て前衛になるにも中衛で遊撃に回るにも決め手に欠ける。

 今後の種族進化で状況は変わっていくだろうが可能であれば前衛と後衛が一人ずつ欲しい。

 

 

 俺は現状の希望を魔王様に伝えると仲間の待つテントに向かう事にした。

 

 




ここまで読んでくださり有難うございます。
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