魔王軍立志伝―仕事を辞めたら魔物になりました― ハーメルン版 作:ヨシMAX
ウェルニーの解放から一晩が明けた。
街の至る所から今でも黒煙が立ち上り建物は崩れ道路は抉れている。
まあ、あれだけの攻防戦があったのだ。
いかに堅牢なこの街でも相当な被害が出たのだろう。
そう言えば住人達だが街の地下に張り巡らされている下水道に隠れていた様だ。
領主やハインツ達の決死の時間稼ぎのおかげだ。
今は少しずつ住民が地下から戻ってきて街の復興を始めている。
俺も仲間のゴブリン軍団と話し合い住人達に手伝いの提案を出してみた。
提案はすんなり受け入れられ俺達に割り当てられた仕事は平民街の建て直しと修復だった。
ウェルニーの一般的な家はレンガ造りなので倉庫からレンガを運び図面と比べ組み上げる。
なんか元の世界にこんなゲームがあった様な気もするな。
それにしてもウェルニーの戦いは厳しかった。
ロマリアスを始めとして手下共も強かったなあ。
そもそもアルシーとリリアのお陰で俺自身はほぼ戦闘らしい戦闘をしていない。
ロマリアスの出したスケルトン軍団に袋叩きにされただけだ。
スキルの力でなんとか粘っていたらアルシー達が奴の手下を撤退に追い込んでくれたのだ。
ロマリアスが退いたので、てっきり手下が全滅したのかと最初は思った。
アルシーとリリア。
さすがに強力な2人ではあるが疲弊しきっていた為、手下を倒しきるのは無理だったらしい。
「イナバ様、身体は平気ばい?」
黙々とレンガを積み直していた俺にアルシーが話しかけてきた。
「ああ、身体はもう治ったよ。心配かけてすまない」
あれからアルシーは散々事ある毎に俺の事を心配してくる。
そりゃあそうだろう。
魔王軍の期待の新星が敵魔王候補にあそこまでボコボコにされたら心配のひとつもするだろう。
だが俺はまだゴブリンだ、伸び代は無限大である、きっとそうだ。
「よかばい、まさか魔王の資格ばもつロマリアスが出てくるとは思わんやったしばり強かったなあ……あ、ばってん、イナバ様もきっと強うなるばい! ゴブリンでもこげん強かっちゃけん」
うん、強くなるよ、強くなる、強くなる。
そうそう、大きなアルシーだが戦闘が終わると元の幼女サイズになり口調も戻ってしまった。
あの姿は一時的に戦力が大幅にアップするが身体の負担が大きくて長時間保てないそうだ。
身につけている服は魔法の品で等身が変わっても同じ様に身につけていられる優れものらしい。
なかなか凛々しくて好きだったんだけどな。
そもそも、アルシーは大きいのが正解なのか、小さいのが正解なのか……。
アルシーは今俺達が潜入時に壊した通用門と城壁門の修繕を手がけていた。
……と言うかアルシーの方から積極的に修繕班に入り込んで手伝い始めた。
そしてアッと言う間に班の中心人物として場を仕切っている。
それを見た時にアルシーはコミュニケーションお化けだと思った。
ただ、アルシーは昨夜から頑張りすぎだと思うのだ。
ほぼ、壊滅していたギルドの片付けでリリアと街中を駆け回ったり、街を守る為に犠牲になった守備隊やギルドの職員達の埋葬や供養をしたり、家や家族を失った住民とギルドとの橋渡し役で保証の話し合いに出席したり……、神経すり減らす仕事ばかりだ。
正直、元の世界でブラック社畜社員だった俺でも少し引いたわ。
「アルシーこそ大丈夫なのか? 街を解放してからも一晩中働いていたろ。ヒルベルダ様が好意でギルドに休憩用の部屋を用意してくれたそうだからそこで休んだらどうだ?」
「あはは、私は頑丈やけん、だい……じょう……ぶ」
アルシーは城壁門の方に歩き始めたがその歩みは拙く足がもつれて俺の方に倒れてきた。
「あ、危ない! アルシー、大丈夫じゃないだろう。さあ、ギルドに行くぞ」
「いやいや、少のうとも城壁門だけでん修繕ば終わらせな次の襲撃で間違いなくこん街は落ちてしまうばい。今回も危なか所やったし……」
そう言うとアルシーは尚も作業に戻ろうとするが俺はその手をとって引き寄せた。
「確かに街の修繕は直ぐにでも対応しなくてはならないけど……魔王軍からもその道の専門家が派遣されてると聞いてるよ。ここでこれ以上無理をするのは賛成できない。それにそれこそ次の襲撃にアルシーがいないと俺達の勝率は更に下がるはずだ。なので失礼するよ」
俺はサッとアルシーを持ち上げ肩車でギルドに向かって歩き始めた。
「ちょーっ! ちょちょちょっ! 毎度毎度、こん運び方に物申したかっちゃけどもーっ!」
仕方がないではないか、俺の等身ではアルシーはこの運び方しかできないのだ。
その後にギルドの休憩部屋に用意されたベッドにアルシーを寝かせるとそれまで散々文句を言っていたのだが相当疲れていたのか直ぐにすーすーと寝息を立てて寝てしまった。
ウェルニー到着からあの激戦と復興の激務をこなしていたのだから無理もない。
俺の訓練にも付き合ってくれていたのだ、彼女には少し休んでもらいたい。
「イナバ殿、ちょっと良いか?」
ギルドの部屋を出るとヒルベルダ様とリリアに呼び止められた。
なんだろう、二人共、街の復興に忙しく動き回っていたはずだが何かあったのだろうか。
「どうしたんですか? 二人共」
「少し長くなるかもしれないので会議室をとっておいた。話はそこでいいかな?」
「わかりました」
リリアも既に話は聞いているのか若干強ばった顔で俺達についてきた。
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