魔王軍立志伝―仕事を辞めたら魔物になりました― ハーメルン版 作:ヨシMAX
一夜明けて俺はアルシー達と合流してギルドの訓練場に来ていた。
俺のガバガバな魔力制御の是正と更なる出力アップを目的とした鍛錬を行う為だ。
所属進化を行う為にはギルドである程度の実績を残さなければいけない。
クエストを受ける前に事前に出来る限りの選択肢は手に入れておきたい。
「イナバ様、ステータスプレートば見せてくれん」
アルシーが俺に片手を差し出し言った。
「ああ、ほら」
アルシーにステータスプレートを渡す。
名前:イナバ(♂)
種族:ゴブリン将軍
称号:伝説のゴブリン大将軍Ⅳ
レベル:50
HP:677/677
MP:482/482
固有スキル:再生 LV7
:成長促進 LV8
:絶影 LV7
常時スキル:言語LV8、打撃武器LV7、体術LV4、
身体強化LV3、探索LV3
魔法スキル:【炎属性】ファイヤーボールLV10
:【風属性】ウインドウヒールLV10
「イナバ様は本当に強うなったね。凄かばい」
アルシーが素直に褒め湛えてくれると何か素直に嬉しい。
前の世界ではこんな風に褒めてくれる人はいなかったものな。
「伝説のゴブリン将軍Ⅳに到達したけん、早うノルマばこなして種族進化をせねばいけん」
アルシーの言葉に俺は種族進化の条件を思い出す。
俺達は事前にギルドに「伝説のゴブリン将軍」がゴブリンの上位称号である事とそれが種族進化に必要である事を確認していた。
「そうだな、ようやく上位称号を手に入れたぞ」
魔王立志伝では各種族の上位称号を手にいれるという事が次の種族に進化出来る条件の一つだった。
この称号を得た時は前の世界でも達成感がハンパなかった。
ただ不思議なのは「伝説のゴブリン将軍」などと言うふざけた称号はゲームには存在しなかった点だ。
俺の中に存在する魔王が記憶よりも強い事とあわせてこの世界のわからない事の一つである。
「そうやなあ。ここまで成長すりゃ早う次ん種族にならな強さば実感できんけん。まあ、同種族のうちに上限に達した勲功値と経験値は進化した後にしっかり加算さるけん無駄にはならんばい」
アルシーは笑顔で、そう教えてくれた。
種族進化時に余剰の経験値等はきちんと次の種族に繰り越されるという事だ。
「それは助かるよ。……次は何に進化するのかな?」
俺は淡い期待を込めて聞いてみた。
本当はもうアルシーに何回も聞いているしゲームの知識もあるのでわかりきっているのだが……。
それでも何かの奇跡でも起こるのではないかと聞いてみた。
「オークやなあ。猪人間ばい。体格もパワーも上がるけん、ちかっぱ戦力アップが望めるけん」
やっぱり、それか……。
人間としての尊厳を守る為にもご遠慮したかった。
だが、アルシーはオークを猪だといったな。
「オークって猪なのか? 豚じゃないのか?」
そこは大切な事なので俺は確認する。
「大丈夫ばい、猪ばい。豚でも見かけ上は余り変わらんて思うばってんね」
がっかり……。
聞き捨てならない事をアルシーはサラッと言ってくれる。
「違うぞ! アルシー、猪と豚は違うものだ!」
「同じばい。ゲノムDNAば調べると違う地域の猪同士、または豚同士よりも、それぞれの地域の猪と豚の方が系統的により近か関係にある、つまり「豚」っちゅうんは単に「家畜化した猪」ば指す呼称であって、豚ちゅう単一の系統が猪とは別に存在する訳やなかちゅう事ばい(諸説あります)」
むむっ、何のこっちゃ……、急に専門的な事を言い始めやがって……。
えーと、つまり、違う地域、例えばアジアと欧州の猪同士、またはアジアと欧州の豚同士よりも、アジアの猪と豚、欧州の猪と豚の方がDNA的に近いという事で……「猪」に対して「豚」という単独の種族はなく、「家畜化した猪」が「豚」という事か、ぐぬぬ……。
「イナバさん、次はオークになるにゃんね」
リリアは面白そうに俺の顔を眺めている。
「イナバ様、オークについてはよかね? 種族進化に備えてイナバ様の得意な炎魔法とあわせて対極の魔法も強化するたい」
アルシーはそう言って俺に本日の目標を告げる。
俺はオークの次の種族進化を全力で目指すぞ、ああ、絶対にだ!
それはそうと――
「対極の魔法?」
「そうばい。そうすりゃイナバの戦闘の幅も広がり、これまで以上に効率よう戦う事が出来るやろう」
対極……風魔法の事か。
しかし俺の魔力制御が上手くなるとは思えないが……。
細かい魔法を利用しての戦闘なんて俺にできるのかな。
「自分に制御出来るんかて思うとーと? 大丈夫ばい、私に策ばあるけん。それにこれ位の事ば出来んとこの先の戦いばキツうなるっちゃよ」
そう言うとアルシーはまたぞろクリスタルがはめ込まれたペンダントを俺の目の前に差し出した。
「アルシー、これは?」
「こりゃイナバ様の頭がオカシイ出力の魔力ば自動で調整する能力ば持ったペンダントばい。出力の調整さえ上手くいきゃあ敵へのダメージよりも周りの被害が大きか火炎魔法ば放ったり回復ば司るはずの風魔法が強すぎて被回復者が鼻血ば出して更なるダメージば負う様な事はのうなるよ」
……んっ?
なかなか刺を感じる物言いだった様な気がするが。
まあ、でも確かに俺の魔法が人並みに使えるようになれば色々と都合が良いな。
それにしても次から次へといろんなアイテムが出てくるな、
○ラえもんか、アルシーは。
「よくもそんな都合の良いアイテムがあったね」
「ギルドに問い合わせたら1個だけ在庫があったけん。どげんして手に入れたかは現魔王とヒルベルダ様のお名前ば少々拝借し安う手に入れたばい」
それ大丈夫?
後々に見つかって不敬罪やら詐欺罪とかで投獄なんてされないだろうね?
本当にアルシーはたまにこういう力技を披露する割に何がおかしいのという顔をするから困るのだよ。
全くもう、あれこれ、あれこれ……、ブツブツブツ……。
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