魔王軍立志伝―仕事を辞めたら魔物になりました― ハーメルン版 作:ヨシMAX
旅の途中で助けた方と襲っていた方が両方共、マルファスの同盟国だった。
俺自身何を言っているのか、と尋ねられてもよく分からない。
俺達は倒したリザードマン達とやられてしまったオーガ達、そして破損の激しいオーガが使っていた馬車に火を付けて燃やした。
地球で今、同じ事をしたら倫理的にどうなのよと非難を浴びそうであるがこの世界では日常の出来事であるらしい。
魔王候補がそれぞれで国を興し争っているこの世界は日本で言う所の戦国時代に近い感覚なのかもしれない。
オーガの姫、セレル様は最初こそ憔悴しきった表情を浮かべていたが今は大分落ち着き俺達の馬車で休んでいた。
ただ彼女がオーガ達の亡骸を荼毘に伏していた時にそんなに悲しそうな顔をしていない事に違和感を少し感じた。
どちらかというと感情の薄い冷たい表情というべきか……。
「セレル様、お話を聞いてもよろしいですか?」
ずっとセレル様の傍らにいて面倒を見ていたヒルベルダ様が彼女の様子を伺いながら慎重に声をかけた。
「……はい、大丈夫です。この度は助けていただいて本当に有難うございました」
「王女様、ご無礼を承知の上で……質問をさせていただいてもよろしいですか?」
ヒルベルダ様に俺やゴブリン軍団が味方だと話してもらいセレル様から俺達に向けられる警戒もこの頃にはすっかり解けていた。
俺はセレル様に話を聞こうと声をかけた。
「構いません、聞けばあなたはマルファス様と同郷であり、とても強いお味方で凄まじい戦果をすでにあげられたとか……」
急な賞賛がきた。
「いえ、それは私一人の力で成せたものではありません。ここにいる仲間達がいてこその結果でした」
「そうでしたか……。あ、お話の腰を折って申し訳ございません。どうぞ」
「恐れ入ります。……では、セレル様、戦争中ではないとはいえなぜ一国の王女である貴女がこんな所を移動されていたのでしょう」
「私にそこまでの価値はありません」
彼女は「一国の王女」という単語に反応し顔を強ばらせ強い口調で俺に答える。
初めて会った時とは比べ物にならない程に目に力が篭っている。
これは……恨みや憎しみの類か?
「なぜなら私は裏切り者達の交渉の手土産にされる予定だったからです」
「なんだって!? それは一体!?」
傍らにいたヒルベルダ様が思わず叫ぶ。
なるほど……そういう事か。
なんとなくわかったぞ。
俺が彼女に抱いていた違和感の正体がわかった。
彼女と外で戦っていたオーガ達はそもそも味方ではないのだ。
その後にセレル様から語られた話は俺の考えがほぼ正しいと裏付ける内容だった。
そして彼女から更に詳しく現況が明らかにされる。
マルファスと同盟は組んでいるが実はこの2国。
サンダルファン王国とベルリーザ皇国は必ずしもお互いに友好的ではない。
そしてサンダルファン王国はベルリーザ皇国に比べはっきり言って弱小だ。
弱小国サンダルファンから強国ベルリーザに拐われたセレル様は大方、国に不満を持つ勢力同士が合流する為の人柱の様なものか。
サンダルファンの勢力は後ろ盾が欲しくベルリーザの勢力は口実と手足の様に動かせるコマが欲しい。
思い通りに成らないお互いの国を転覆させ自分達の都合の良い国に作り変える。
もしかしたらその先、半グレ同士で手を組んで俺達マルファス軍にも対抗するつもりなのかもしれないが、そんな上辺だけの同盟に負ける訳にはいかない。
セレル様を乗せた馬車と共にいたのは護衛でも何でもなく国に叛意を持った裏切り者達だったのだ。
それならば彼女のあの冷たい表情もわかるというものだ。
俺はすっかりセレル様をこのまま保護しエルンへイムへ向かい魔王様に報告すれば良いと思い込んでいた。
その後にサンダルファン王国とベルリーザ皇国に遣いを出し両国が行う反乱軍の洗い出しに協力すれば良い、そう思っていた。
ただ事態はそんなに簡単なものではなかった。
彼女の言葉を聞いた俺は一瞬耳を疑った。
「今回の首謀者はサンダルファン王国の第一王子ニルスとベルリーザ皇国の……皇帝ルゼブナック=ベルリーザ……です」
……何という事だ。
両国とも反乱を企てているのが国の中枢だった。
サンダルファン後継者とベルリーザ皇帝が今回の首謀者?
違う、これはサンダルファンとベルリーザの2国間の問題ではなかった。
万一にもないと思っていたマルファスをも巻き込んだ最悪の大戦争に発展する可能性さえも出てきてしまった。
少なくともベルリーザには国に不満をもつ勢力等いない。
不満を持っているのはベルリーザ皇国自身。
そしてその不満をぶつけられているのが同盟関係にあるマルファス。
そこまでの考えに行き着いてから、あまりの展開に言葉を無くしている仲間達を見回し一息ついた後、俺はセレル様に尋ねた。
「ベルリーザ皇帝が今回の首謀者なのはなんとなく理解できました。しかし、王女、貴女の国のニルス王子。彼が今回の陰謀の片棒を担ぐとは思えません。そもそもそんな事をしなくとも彼は国の後継者ではないですか?」
「イ、イナバどの!?」
しまった!
さすがに後継について話題に上げるのは不敬だったか!
俺はヒルベルダ様から上がった声にハッとしてセレル様へ膝をおり謝罪した。
「不敬な事を申しました。謝罪いたします」
「構いませんよ、貴方がそう思っても仕方ない事です。……そう、貴方の言う通りなのです……ですが、ニルスの考えてる事の詳細は私にもわかりません。ただ兄にとって私は他国に協力を請う際の貢物でしかなかったという事です」
「セレル様……そんな……」
余りに強い自己否定の言葉に思わずヒルベルダ様が言葉を挟む。
彼女の気遣いにフッと微笑んでからセレル様は言葉を続ける。
ここまで読んでくださり有難うございます。
宜しければ評価いただけると嬉しいです(*´▽`*)