魔王軍立志伝―仕事を辞めたら魔物になりました― ハーメルン版 作:ヨシMAX
魔王城城下町のエルンヘイムの近くで敵に襲われた俺達であったが予想外の援軍が駆けつけてきてくれてどうにか助かった。
なんとエルンヘイム所属の魔王軍が俺達を助けてくれたのだ。
その後の戦いは完全な殲滅戦であった。
魔王軍の部隊は敵襲の一人だけを生け捕りにし他は殲滅した。
剣も魔法も自由自在に使うとは何て高い戦闘力だ。
しかもあんなに見通しの悪い森での戦闘で同士討ちを起こさないのは統率力も高い証拠だと思う、魔王軍の練度の高さを垣間見た瞬間だった。
そうしてようやく、本当にようやく俺達はエルンヘイムに到着した。
魔王軍部隊が引率してくれたお陰で街にもすぐに入れた。
ちなみに生け捕りした捕虜は尋問前に死んでしまった。
歯に仕込んであった毒をかみ砕いたらしい。
後をつけて襲撃するなんて仕事してる割に物凄いプロ意識を持ってたんだな。
真似は絶対にしたくないけどな……。
街に着いた俺達は魔王城の謁見控えの間に案内された。
こんなにいきなり来て大丈夫なのかとヒルベルダ様に聞いたが「父上なら気にしない」のだそうだ。
確かに魔王様ではあるが中身は叔父さんだもんな。
そして――
☆★☆★☆★
「なるほど……、あのじじいめ、なめやがって……」
俺は現在、魔王様に謁見の間にて今までの経緯を説明していた。
魔王様は今回の、言わば謀反ともいえる企みに怒り心頭だ。
「通商なんかの交渉に色よい返事を渋ったり同盟の中でも非協力的だからムカつくじじいだと思ってたんだがよりによって謀反かよ」
今、謁見の間には俺と魔王様だけだ。
魔王様が人払いをした際に側近からは不満が出たが魔王様が押し通した。
「……落ち着けよ、叔父さん。あんたも大概じじいだろ」
「なんだとぉ! 俺はまだ42だ! ルゼブナックの野郎は70近いんだぞ」
「そういう事を言ってるんじゃないよ、俺からみれば両方じじいだよ」
確かにサンダルファンのニルスは俺よりも若年でとてもじゃないが今回の事を首謀したとは思えない。やるとすればルゼブナックだろう。
……とは言え直接、軍団を率いて魔王様自ら出向くなんて悪手だ。
これは、あれだ。
敵方に魔王様《おじさん》の特性を完全に把握されてしまっているようだ。
叔父さんは所謂、頭に血が上りやすいタイプである。
熱くなると我を忘れてしまうのだ。
俺と仕事してる時にも現場でトラブルが起きると必ず叔父さんが絡んでいた。
俺達がこうして魔王様の元に訪れなかったらきっと無策でおびき出されただろう。
危ない所だったな。
俺は事前に5人で話し合った【手分けして攻略作戦】を叔父さんにも説明した。
叔父さんに付けるのがヒルベルダ様とアルシーの2人で共に脳筋タイプなのは聊か不安ではあるがルゼブナックの真意を明かしに行くのは魔王様に頼むしかない。
出来る限り避けなければいけないが……下手をすれば戦争案件だからだ。
戦力のない俺達だけでは始末がつかない。
そうそう、アルシーと別行動をする為の説得に骨は折れたが彼女にはどうにか納得してもらった。
離れて行動する条件として通信用の魔石を持たされたが、それはいいだろう。
「ふむ、さすがは誠広だな。わかったぜ、サンダルファンに持っていく書状は後程届けさせよう。あとは姫さんの護衛だな」
護衛か……。
そうだな、……全くセレル様も困ったものだ。
せっかく安全な方に割り振ろうと思っていたのに俺に着いて来ると言う。
まあ、仕方ないか、俺の未来の嫁さん……だもんな。
俺、ゴブリンなのに離れたくないと言ってくれたもんな。
有難いもんだ。
俺が守り切れたら良いんだけど……
人手がなぁ……、人手、人手かぁ……。
あるな、人手。
「うん、叔父さん、護衛は大丈夫だな。いたわ、護衛」
「んっ? いいのか? 腕の良いのがいるぞ」
「有難う、叔父さん。でも普段から鍛錬を続けてすぐに俺達とも連携の取れる人材を忘れてた」
アルノート率いるゴブリン小隊、俺の大事な部下達。
彼らにセレル様の護衛を頼もう。
☆★☆★☆★
俺は魔王様への報告を終えて、控えの間に待機していた皆と合流して魔王軍ギルドに向かった。
しかし、とうとうこの時を迎えた俺は一人感慨深いものを感じていた。
既に陽は傾いてきていたが一刻も早くこのイベントは済ませたい。
エルンヘイムの魔王軍ギルド。
俺の世界で例えるなら海外の古い銀行のようだ、あ、いや、建物の築年数は新しいがデザインが古いという事だ。
正面には両開きの扉があり両の柱にランタンで光源が施されている。
扉の上の看板には『魔王軍ギルド エルンへイム本部』と書かれているようだ。
俺が絵本で覚えた文字となんか違う気もするがまあ良いだろう。
扉を開け部屋に入ると夕方の為、クエスト帰りの冒険者パーティーが戦利品の換金や稼いだパーティーが酒盛りをしている。
大きな部屋の奥にはゲームによくある独特のギルドカウンターが並んでおり、手前には休憩や待ち合わせが出来る様なテーブルと椅子が沢山置いてある。
壁の掲示板にはこれまたギルドでよく見る依頼書がありギルド所属の冒険者はこれを取ってカウンターに行き依頼を受けるのだろう。
こちらも夕方なので貼ってある依頼書の数は少ない。
アルシー達は空いているテーブルに腰掛け、俺だけがカウンターに行き種族進化の手続きをする事になった。
空いているカウンターに歩いて近づく。
「遅くまでご苦労様です。本日はどの様な要件ですか?」
丸顔おっとり印象の受付嬢が対応してくれた。
キラキラと輝いている水色ロングのこめかみ付近に角が2本生えている。
瞳は髪と同じで美しい水色ではっきり言って超美人だ。
角が生えてるのは魔族の特徴なのだろうか。
すらりとした長身で服装は白いシャツに紺のスーツ、下も同じく紺のスカートだ。
但し少し気になるのが腰のあたりから水色のウロコをまとった爬虫類の様なしっぽがのぞいている事だ。
ウェルニーのアリアとは違った大人の女性だ。
さて……いよいよ種族進化の時間だ。
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