※この作品はR-18です。

魔王軍立志伝―仕事を辞めたら魔物になりました― ハーメルン版   作:ヨシMAX

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魔王立志伝ワールドにようこそ(`・ω・´)


第66話 ゴブとギルドマスター 

 

 

 やっと……やっとここまで辿り着いたな。

 

 

 「どうしましたか?」

 

 

 受付の女性が呆けている俺に対してにっこり笑う。

 

 

 「ああ、すまない。種族進化をしたいのだが」

 

 

 俺は受付嬢が、なんのモンスターなのか気になりながら目的を告げる。

 

 

 「凄い! 種族進化ですね、おめでとうございます! では、ステータスプレートを拝見してよろしいですか?」

 

 

 俺は言われた通りにステータスプレートを差し出す。

 

 

 「ん? イナバ……、ゴブリン……、もしかして魔王様から指示のあったゴブリンと言うのは……」

 

「ああ、多分、俺ですね。そうそうウェルニーギルドの推薦状もありますよ」

 

 

 俺がそう答えるとカウンター周辺の空気が変わった。

 受付嬢がワナワナしている。

 お腹でも空いたのだろうか。

 

 

 「し! 失礼しました! 少々お待ちください!」

 

 

 受付嬢が直立不動になり軍人の様な綺麗なフォームで奥の扉に入っていった。

 

 

 「なんだ、どうしたんだ……」

 

 

 俺が戸惑っていると何かあったのかとアルシー達が近づいてくる。

 

 

 「どうしたと?イナバ」

 

 「いや……、よく分からないのだが俺のステータスプレートを見た途端、受付嬢が奥に引っ込んでしまった」

 

 

 アルシーは少し考えて何かに思い当たったのか、少し微笑んだ。

 

 

 「うん、大丈夫ばい、イナバ様。おおかた、魔王様直々ん指示て言う事が重要なんやろう。魔王様は現代日本じゃ考えられん位、そん……コンプラが……、な」

 

 

 ん?

 コンプラ……、ああ、そういう事か。

 魔王様直々の最重要案件が訪ねてきたんだ。

 緊張の一つもするし失敗できないと気負うだろう。

 

 魔王様《おじさん》よ、あまり厳しくすると訴えられちゃうよ。

 ……まあ、この世界は魔王が法なのか。

 

 俺達がそんな話をしていると先ほどの受付嬢が一人の男を引きずって現れた。

 

 

 「ほら! マスター! 例のゴブが現れたんです、シャキっとしてください」

 

 「こら、レニー、僕は徹夜続きで、ようやく仮眠の時間がきたんだぞ! 何をもって僕の安眠を妨害する――」

 

 

 先程の受付嬢――レニーと呼ばれていたか――が連れてきたのが、マスター?

 あれがギルドマスターか?

 ……見えないな、失礼ながら。

 

 見た目は魔族だが顔色はひどく青白い。

 光り輝く銀髪は綺麗だがボサボサだ。

 これだけ見ると顔色の悪さも相まってまるでリビングデッドだ。

 

 グルグル眼鏡をかけており無精ヒゲで清潔感にかける。

 着衣は寝巻きなのだろうか、麻のシャツにズボンを紺の帯で留めている。

 足元はツッカケだ。

 

 

 「お待たせしました! イナバ様! こちらが当ギルドのマスターですよ」

 

 

 レニーが引っ張ってきたマスターがこちらを見る。

 グルグル眼鏡なので目線は良くわからないが。

 

 

 「うんうん、君がイナバ君だね。魔王様から聞いているよ。レニー、君は自己紹介したのかい?」

 

 「あ! ……申し遅れました、私は受付をしてます水龍族のレニーと申します」

 

 

 水龍だった。

 超強力なモンスターじゃないか……。

 龍が受付してるって、さすが魔王軍ギルドだ。

 

 

 「ああ、どうぞよろしく。……で、種族進化をしに来たんですが」

 

 「うんうん、それも聞いてますよ。クラスが伴なってないけど凄いゴブリンなんだと。そうですね、ここ本部では実績無視して種族進化が可能ですが昇任試験に受かる必要があります。イナバ君、私と一戦しませんか?」

 

 

 は? なんで?

 ここに来れば種族進化できるんでないの?

 ギルマスと戦わなきゃいかんなんて聞いてないが。

 

 

 「はっはっはっ!」

 

 

 よほど、俺がポカーンとした顔をしていたのかマスターは高笑いした。

 

 

 「うんうん、悪いね、種族進化をするには必要な事なんだ。誰も彼も種族進化をする訳にはいかないのでね、今回は僕が担当しようと思ってる」

 

 

 ふむ、なるほど。

 試験か、まーそうだろうね。

 その試験が滅多になくギルマス自ら対応するとは大事だよな。

 確かに、誰でも種族進化させてたらそれを悪用する人物や組織ができてもおかしくないし。

 

 そう言えば随分前にアルシーが試験があるという事も言っていた気がする。

 マスター直々にというのが少し気になるけど受けなきゃいけないなら全力を尽くすのみだ。

 

 

 「わかりました、対戦よろしくお願いします」

 

 

 そう答えた俺を見たマスターは嬉しそうに微笑んだ。

 

 

 「うんうん、よろしく頼むよ、イナバ君」

 

 「では、イナバ様。こちらにどうぞ」

 

 

 レニーの先導で俺の後にセレル様とアルシー、リリアとヒルベルダ様、そして最後にマスターがぞろぞろと続いて歩く。

 

 ギルドの中央ホールを抜けて頑丈な両開きの扉を抜けるともう一つ同じ様な頑丈な扉があった。

 扉を抜けるとそこは観客席の様な場所で中心が下がっており中央には闘技場っぽい形状をした広場があった。

 

 

 「うんうん、イナバ君の武器はそのメイスで良いんだね。キリキリと始めようか」

 

 

 そう言ってマスターは中央広場に跳躍しながら降り立った。

 そして腰に帯びている刀を抜き放ち俺を待っている。

 

 

 「あー、マスター待ってください! 今回は私が仕切るんですから」

 

 

 水龍レニーもマスターの後を追い、中央広場に立った。

 

 

 「イナバ! 頑張るたい!」

 

 「イナバ様! 頑張ってくださいね」

 

 

 アルシーとセレル様が声援を送ってくれる。

 リリアも近づいてきたので応援してくれるのかと思ったが、俺に耳打ちをする。

 

 

 「イナバさん、マスター、相当にゃ強者にゃん。底がしれにゃ、ご注意を……」

 

 

 ほう、リリアが警戒を促してきた。

 

 

 「わかったよ、有難う」

 

 

 冴えないマスターだと思ったがリリアは手ごわいという。

 危ない、油断する所だったぜ。

 隠密部隊の目は信頼できるしな。

 

 俺も階段を降り闘技場に足を踏み入れる。

 シャルルを背から取り外し戦闘試験開始に備えた。

 

 マスターは刀を抜き放ったままニコニコしてこちらを見ている。

 はっきり言って一見、隙だらけだ。

 

 

 「イナバ君、どこからでもいいですよ。始めましょう。あ、あくまで試験なので僕は峰で戦いましょうか」

 

 

 なんだと……。それは少し馬鹿にしすぎじゃないか?

 よく見ればマスターは俺の本来の年齢よりも若そうじゃないか。

 いいぜ、大人げないと言われても全力でやってやる。

 リリアにも言われたし油断はしないぞ。

 

 レニーが俺達の間に入り、右手を上げる。

 

 

 「では、始めます! 試合開始!」

 

 

 手を振り下ろしウロコのしっぽを振りながら、急いで観客席に戻っていく。

 

 さあ、行くぞ!

 俺は先制を取るべく地面を蹴り、マスターに向けシャルルを振りかぶる。

 

 マスターも刀を中段に構え刃を返す。

 峰打ちの形で刃身から闘気の様なオーラが立ち上る。

 

 俺の種族進化をかけた試験が始まる。

 

 

 

 




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