魔王軍立志伝―仕事を辞めたら魔物になりました― ハーメルン版 作:ヨシMAX
エルンヘイムを出発した俺達はサンダルファン王国への道中で所属不明の数千の軍団に囲まれ強襲された。
アドナエルとサンダネルを失った俺達は散り散りになり俺と行動を共にしてくれたジータンは敵の攻撃の前に力尽き倒れた。
俺は我を忘れ潜在する魔力の全てを開放し包囲した敵軍を全て倒した……本当に全てを殲滅した。
せめてもの俺の意地だ……。
その代わりと言っては代償が大きかったが全魔力を使い切り再生スキルの限界を超えてしまった俺は抜け殻の様になり意識を失った。
☆★☆★☆★
「確か……この辺りに……」
「……隊長っ?! これは……」
「なんですの、この惨状。こんな広い場所に草一本生えていないなんて……。どれだけ強い魔法を使ったですの……」
「隊長! あそこに誰か倒れています」
「年老いたゴブリンと……これはオークなのですの?!」
「今は枯渇していますが凄い勢いで魔力が回復しています……異常ですね……」
「これでは……まるで魔王じゃないですの……」
「如何いたしますか? 隊長」
「とりあえずその2人を助けなければ。乗り心地は悪いですけれども馬車の荷台に乗せてくださる?」
「了解っ!」
☆★☆★☆★
はっ?!
ここはどこだ?
暗い、何も見えない、俺は……どうなったんだっけ?
異世界転移した時は何も見えない位に真っ白だったけど今度は真っ暗だ。
自分の手の先すら見えない。
それにしても……疲れたな。
もう休みたいな。
なんだか気も張れないし身体も物凄く重い。
何をしてたかも思い出せない。
とてつもなく大事な事を忘れてしまった様な気がする。
でももう良いだろう。
よく分からないが俺はよく頑張ったと思う、何となくだが。
――そこを忘れてもらっては困るな、誠広。
なっ?! 誰だ?!
誰かいるのか?!
――叔父さんの声を聞き忘れたのか? お前、冷たいなー。
……叔父さん、叔父さんっ?!
無事だったのか?! ベルリーザ帝国の奴らにやられたって言うから俺は心配で心配で……まあ、そりゃそうだよな、叔父さんが死ぬわけないもんな!
――いやぁー、ドジっちまった。完全に油断した。最強の魔王が聞いてあきれるぜ。くっそっ! あのじじい、卑怯なんだよなー。
な、何を言ってるんだ……? 叔父さん。
冗談を言ってる場合じゃないし……悪質だぜ、笑えないぞ。
――わりぃが現実を見てくれ、誠広。俺は死んだんだ。済まないが後は頼んだぞ。
そんな……叔父さんが居なくなったらこの後、どうすればいいんだよっ!
――大丈夫だ、俺も……姉さんもお前をいつも見守ってる。お前の仲間も……無事ではある。大丈夫だ、お前は……やれる。
えっ、仲間は無事なのか?
――そうだぜぇ、俺と違ってみんなしぶといぜ。
良かった、アルシー、無事なのか。
――むっ、アルシーか、アルシーなぁ……
どうしたんだよ、叔父さん。
アルシーに何かあったのか?
何があったんだよ?!
――大丈夫だ、落ち着け、誠広。アルシーは困難にぶち当たっているが……お前達は必ずまた会える。そしてまた力を合わせて進んでいける、必ずな。
そうなのか……、なら良いけど叔父さんは本当に死んだのか?
――そうだ、それは本当にすまない。
わかったよ、俺にどこまでできるか分からないけど……頑張るよ。
――頼む、……それとアルシーの事を……頼む……。
叔父さん……それは……一体、どういう事なんだ……?
――そろ……ろ、お別……だ。……広。しっ……り、がん……よ。
急速に叔父さんの声が掠れて聞こえなくなっていく。
叔父さん! 叔父さん!
まだ聞きたい事が……
ベルリーザ帝国で一体何が起きたんだよ!
叔父さん! 叔父……、……、……、
☆★☆★☆★
「叔父さぁ――んっ!!!」
「ふ、ふわぁぁぁぁあああぁぁぁぁあっ?!」
俺は叔父さんを後ろから抱き留める。
叔父さん、とても柔らかくて温かいんだな。
それに大分小さくなった様な……。
「オークッ! このっ! オークッ! 離れなさい! この私《わたくし》にエロい事をしようと言うんですの?! くっころですの?! くっころなのですの?!」
「た、隊長……落ち着いてください」
「起きなさい! このっ! このっ!」
べちん、べちん
なんかほっぺたを叩かれてる気がする。
「う、うーん……」
「起きましたか、ほら、隊長を離して」
「ふーっ、ふーっ、ようやく目を覚ましましたの」
「……ん、あんたは……」
目の前に見えた顔には見覚えがあった。
俺にがっちりとホールドされて目を白黒させているがこの顔は……間違いない。
「リーザ、……ロッテ?」
「な、なんで私の名前を……」
彼女の名前はリーザロッテ・レスケンス。
俺の組織した魔王軍四天王であり悪魔剣士団団長の天才剣士だ。
覚えている彼女よりかは大分幼い感じがするが俺が間違えるはずがない。
「リィィィイイザァァァアアア――っ!! 生きとったんかぁ――っ!!」
「ふべべべべべべべべっ!!」
「あーあーあー」
再びがっちりとホールドされ俺にガクガクと揺さぶられるリーザ。
それを見て彼女の部下がため息をつきながら呆れている。
☆★☆★☆★
「……で、あなたは何者でなぜ私の事を知っていたんですの?」
ようやく俺が落ち着き彼女を離したのは更に30分程が過ぎた頃だった。
俺を助けてくれたのは俺の前世の部下、リーザロッテだ。
今、俺はベットの上に寝かされており近くの椅子にリーザが座っている。
聞かれたくない事もあるだろうと先ほどあんな事があったにも関わらずリーザは人払いをしてくれ部屋には俺と彼女だけだ。
本当に優しい気の遣える良い娘だ。
「そ……それは……」
そんな彼女に俺はどう話すべきか迷っていた。
ここまで読んでくださり有難うございます。
宜しければ評価いただけると嬉しいです(*´▽`*)