魔王軍立志伝―仕事を辞めたら魔物になりました― ハーメルン版 作:ヨシMAX
「そ……それは……」
そんな彼女に俺はどう話すべきか迷っていた。
まさか未来の世界で勇者に負けたので逃げてきましたとは言えないよな。
魔王軍を再編し鍛え直しに来た! って言って信じてくれるかな。
だけど俺にはそう説明するしか……。
『リーザロッテ、リーザ』
この状況にどうするか迷っている間に寝かされていたベット脇に置かれていたシャルルが空中に浮き俺達の話に入ってきた。
「えっ?! 何ですの? 誰が話してるんですの?」
『シャルルと言います。主に仕えるインテリジェンスウェポンです』
「えっ? 武器が……喋ってる」
シャルルが部屋の隅にリーザを誘導し何やら話をしているらしい。
リーザは驚きながらもシャルルの話に耳を傾けている。
こんな込み入った話をどう納得させるつもりなのか。
「ふむ……、……ええっ?! ……くっ、……そんな」
かなり長い時間を2人は話していた。
ただ話が続くにつれ彼女は合点がいった、納得したと言う表情になっていった。
どれ位の時間が経っただろうか。
ようやくリーザがこちらに戻ってきた時には緩やかに陽が傾いていた。
「にわかには信じられないですが……あなたが未来の魔王で私はその四天王で……ある時、最凶の勇者に敗れてしまいこの時代まで戻ってきた……と」
リーザロッテの語った事は概ね今まで俺が経験してきた事と一致していた。
シャルル、凄いな、喋る武器と言うだけでも訝しいのに事実を寸分なく話して納得までさせるなんてどんなコミュニケーション能力してるんだ。
その後は俺も加わり現状までの事を話した。
「魔王マルファス様がベルリーザ帝国で敗れたっていう話は私も聞いております。彼は本当に……死んだんですの?」
「それは……本当です。はぐれてしまいましたが俺の戦友で素晴らしい斥候が居たのですが……間違いない情報らしいです。それに……先ほど夢を見ました」
「夢……?」
「魔王マルファスが……俺に後を頼む……と。いつも……見守っていると……」
「……」
「こうなっては隠しても仕方ないので……魔王マルファスは俺の近縁者です。最後の挨拶に来てくれたのかと……」
「それは……追悼の意を……」
「感謝します」
「あの……姫の行先に心当たりは……」
「申し訳ないです。私はサンダルファン王国に向かえと、既に国内が荒れている場合はエルンヘイムを目指せ、と指示は出しましたがその後については……」
「そう……ですの」
部屋を沈黙が包み込む。
こんこんこん。
不意に扉を叩く音がして2人とも我に返る。
「なにか」
「リーザロッテ様、イナバ様の同僚の老ゴブリン殿が目を覚まされました。如何いたしますか」
「ああ、私達があなたと一緒に救助しておりましたの。良かった、目が覚めたんですのね」
「ジータン?! ジータンは生きているのか?」
「ええ、非常に生命力が弱まっておりましたが、何とか持ち直したようですわね。……きっと応急手当が効いたのですわ……まあ、無理やり生命力をつぎ込んだ様な乱暴な治療の仕方だったのですが……身体は限界をむかえてましたが結果的にそれが彼の命を繋ぎ止めたと思いますの」
そうか、ジータン、生きていたのか。
あの時、回復を諦めずに施しておいて良かった。
「ジータンに……、ジータンに会えますか?」
「申し訳ありません。気が付いたばかりなので、もう少し安静にして容体を痛いと思います」
すまなそうな顔でリーザの部下の人が伝えてくれた。
そうだな、あんな激戦の後にようやく気が付いて起きたばかりなんだ。
まだ、休ませてやりたい。
「そう言えば……名乗り忘れていましたわね。私はサンダルファン王国第3遊撃部隊隊長、リーザロッテ・レスケンスですの。以後お見知りおきを……ってご存じだったですわね、確か」
「ああ、そうですね。俺は……イナバです。姓はないですね」
「知っておりますわ。未来の世界で魔王様なのですのよね。今は良いですが時期に姓も名乗った方が良いと思いますわよ」
「あ、そうだったですね。……姓か」
姓か……ってイナバが姓なんだけどな、なんて名乗ろうか考えておくか。
「あと、私があなたの軍の四天王になるという事ですけど……今現在私はサンダルファン王国に所属しておりますの。未来は分かりませんが今の所、あなたに仕える事は出来ませんの」
そうか、そうだよな。
リーザロッテ程の剣士なら浪人のまま在野にいるはずがないな。
するとシャルルがまた俺達に話しかけてきた。
「主様、サンダルファン王国の反乱首謀者に心当たりがある事も伝えなければ」
「ああ、そうだったな。」
彼女はサンダルファン王国所属だという。
なにか助言や力を借りる事も出来るかもしれない。
俺がシャルルに促されてリーザロッテに話そうとした所、シャルルの声は彼女にも聞こえたらしく驚いた表情で目を見開き声を上げた。
「サンダルファン王国に反乱の兆しがあるというのは先ほど聞きましたわ。その首謀者に心当たりが有ると言うのは本当ですの?」
「……本当です。私共は貴国のセレル王女が国外に連れ出されんとした所を救い出し保護した事は先ほど、お話した通りです。そして彼女に聞いた情報からニルス王子に反乱の兆し有りと判断、審議を確認するべく貴国に旅立ったのです」
俺は先ほどの話の中で伝え忘れていたセレル様をさらった黒幕をセレル様の話とサンダルファン王国の現状を加味しニルス王子が最有力候補だという事を伝えた。
また彼女を保護した後も所属不明の刺客に襲われ挙句の果てに馬車を一軍に襲われた末、姫を含め仲間が全員散り散りになった事を改めて伝えた。
俺の言葉を聞きリーザは嫌悪に顔を歪ませ部下の子は座り込んでしまった。
「シャルル殿にも聞いていたのですが……セレル様が行方不明になった裏に……あの男……やはり……許さない……」
「私はサンダルファン王国に仲間と姫様を探しに向かいます。助けて頂いて本当に有難う、この恩はいつか必ず……」
「私も行きますわ」
「へっ?!」
「私は王女の捜索の任に就いておりましたの。まさか身内に黒幕が居たなんて。王女様達がサンダルファン王国に向かったのなら危険です。何としても王女様を探し出さねば……。私もあなた方に助力いたしますわ」
「あ、有難う……」
「私が仕えたのは現国王様、ニルスのバカ王子では無いですの」
リーザロッテが殺気を醸し出しながら言い放った。
……怖い。
そう言えば彼女は怒らせるとメチャクチャ怖いんだった。
これから同行してくれるのは幸運だったがくれぐれも気を付けるとしよう。
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