魔王軍立志伝―仕事を辞めたら魔物になりました― ハーメルン版 作:ヨシMAX
「ぐぬぅ」
ガンマルが魔族の武器を辛うじて自分の棍棒で防ぐ。
力比べをしている隙にアルノートと俺が時間差で攻撃を仕掛けるがガンマル諸共吹き飛ばされる。
ったく、何と言う馬鹿力だよ。
さっきからこの繰り返しでなかなか有効な一撃が奴に与える事が出来ない。
早くしないと潜入したリーザ……は大丈夫だろうけどセレル様とファルスが危険だ、あとリーザの部下達も気の毒だし……。
『主、神速を試してみましょう』
……と、シャルルが話しかけてきた。
神速か。
実はもう使っているんですが……、それは?
『そんな事はわかってます、全身に巡らせる魔力を増やしなさい。スピードが上がりますから』
……そういう事はもっと早く教えてもらえませんかね。
通常に発動させるよりも多くね、……この位かな。
瞬間、俺の姿が消えた。
いや、そんなの第3者から見ないと分からないよね。
言い過ぎた……訂正する。
悪魔は今アルノートとガンマルが全力でヘイトを取ってくれている。
その姿が俺にはスローモーションに見えたのだ。
これは凄い、悪魔め、第2ラウンドを始めるか。
☆★☆★☆★
潜入に成功した私達はこんなに小さな規模の砦にも関わらず沢山の敵に見つけられてしまいましたわ。
イナバ様が表門で陽動しているのにどうしてこちらに戦力が割けるのでしょう。
おかしいですわ、何かが。
「リーザ様! こちらに!」
違和感を感じて辺りを見回していますと部下の兵士から声がかかりました。
近づいてみると砦の床を指し示しております。
目を凝らして見ますが……。
「これが、何か?」
「見てください」
彼女は床を触りながら、ある1点で止めると今度はその周辺を叩き始めました。
「音が違いますの?」
彼女は床の隙間に剣先を突き立て一気に引き起こしました。
私は思いましたの、なぜ彼女はこんな事を知っているのか?
まあ、今はそれ所ではありませんね。
目の前には地下への階段が現れたので。
「降りますわよ」
私達が慎重に階段を降りるとそこは牢獄でした。
薄暗いですが私、実は夜目が効きますの。
廊下が奥に続いており左右に牢屋が並んでおります。
「誰か居ますのー?」
私は外に響かない程度に奥まで届く声で呼びかけました。
すると一番突き当りの牢屋から返答がありました。
「その声は……リーザロッテ?!」
「セレル様?! セレル様ですの?!」
「リーザ! 早く、早く手を貸して! この方を助けて!」
私は慌てて牢屋の前に行き鉄格子を斬魔刀で切り倒しましたわ。
この愛刀はどんな魔法をかけられた金属でも難なく切れるのです。
牢屋の奥を覗くと床に座り込むセレル様と横たわるゴブリンが居ました。
ゴブリンは見て分かる程に傷つき衰弱していました。
私は急いで部下に命じます。
「この方にヒールの魔法をっ!」
「はいっ!」
部下の兵士がヒール魔法を発動しゴブリンに手をかざすと淡く光り始め彼女を癒し始めました。
ゴブリンの呼吸は浅く速かったのですが徐々に落ち着き平時の状態に戻りました。
「彼女は……ファルス様ですわね」
「そうです。賊の暴力から私を守り……傷ついてしまいました」
「……わかりました。この報いは必ず。彼女を背負って運びますわよ、表側に周りイナバ様と合流しますわよ!」
「はいっ!」
☆★☆★☆★
神速スキルを強化して戦っているが人質がまだ救出できていないのでシャルルによる最大必殺技が使えない。
その為、一方的にはやられはしないが決め手がない。
アルノートやガンマルも隙を突いて攻撃を加えてくれているが魔族にはあまり効果がないようだ。
ダメージがほとんど入っていない、硬すぎだろ、こいつ。
『参りましたね……。ここまで強い個体がこんな砦にいたとは……』
「どうするか、シャルル」
『攻撃の手を緩めるわけにはいかないでしょう』
「そうだな」
俺はもう何度目になるか、魔族への攻撃を繰り返そうと身構える。
魔族へ一直線に走り今度は上段から渾身の力を込めてシャルルを振り下ろす。
魔族は俺の攻撃を武器で受けた。
しめた、そう思ってゴブリン2人の方を見ると思い通り魔族に向け追い打ちをかけようとしている。
やったと思ったその時、魔族が腰を落とし裂帛の気合いを発した。
そしてにやりと笑うとよけもせずにモロに2人の攻撃をその身に受ける。
「ぐわっ!」「ぐむっ!」
なんと武器を振るった2人の方が弾かれ飛ばされた。
なんて防御力してんだよ、オリハルコンかよ。
「うわっはっはっ! 将来有望なイナバとやらも大した事ないな! これで俺様が討ち取れば出世間違いなしだな、こんなクソみたいな任務ともおさらばだしいけすかんロマリアスの鼻もあかせるってもんだぜ!」
『びっくりですね、主』
「……そうだな、やはり黒幕はあの男か」
「ごちゃごちゃうるせぇ! これで俺も魔王候補だぁ!! 死ねぇ!」
そういうと魔族は口の奥を光らせブレス攻撃の準備をし始めた。
こいつ! あたおかな防御力の次はブレス吐くのかよ!
ドラゴンか、お前は! と突っ込みを入れる間もなくみるみるその光は大きくなっていく。
『まずいです! 主、あれを喰らったら如何に丈夫でも上半身位は吹き飛びます、避けてください! 主!』
「そ、そんな事言ったって……」
もはや離れて逃げる間もない位に状況は切迫しているのだ。
ゴブリンの2人も危機を感じたらしく連続攻撃を仕掛けているが既に魔族はものともしていない、これはやヴぁい。
俺は思わず目を瞑ってしまった。
情けない事にいつ来るともしれない痛みに怯んでしまったのだ。
……しかし、いつまで経ってもそれはこない。
恐る恐る目を開けると首のない魔族がゆっくりと後方に倒れるところだった。
どさっ!
「これは一体……」
「なんとか間に合いましたわね」
魔族が倒れた先に立っていたのは何と反対側から潜入したはずのリーザだった。
彼女は刀に突いた魔族の血を振るい落とし布で丁寧に刀身を拭いていた。
「セレル様とファルス様は無事助け出しましたわ、イナバ様。遅くなり申し訳ないですの」
格好良すぎんか……。
ここまで読んでくださり有難うございます。
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