※この作品はR-18です。

魔王軍立志伝―仕事を辞めたら魔物になりました― ハーメルン版   作:ヨシMAX

84 / 114
魔王立志伝ワールドにようこそ(`・ω・´)


第83話 オークとセレルとサンダルファン王国

 

 

 俺達が夜営の準備をしているととてもとても懐かしい聞き覚えのある声がした。

 

 

 「……イナバ様っ! このお声はっ!」

 

 「リリアッ!! リリアかっ?!」

 

 

 聞き覚えのある声に俺とセレル様は一斉に反応した。

 

 リーザに連れられた猫人の少女が目を見開く。

 その瞳は瞳孔が細くなり、大きくなり、忙しなく涙で溢れていった。

 

 

 「イナバさんっ! セレル様! やっぱり生きてたにゃ――っ!!」

 

 

 リリアは拘束を振りほどき俺めがけて抱き着いてきた。

 

 

 「リリア、リリア、良かった……一体これは?」

 

 

 俺はリリアの頭を撫でながら連れてきたリーザに経緯を尋ねた。

 

 

 「申し訳ございませんの、サンダルファンの方角から来たので他国への密偵かと思いまして……」

 「そうにゃん、サンダルファンはニルス王子のクーデターで既に落ちたにゃん。王と王妃は国外に脱出、側近は既に処刑されたにゃん」

 

 「……間違いないのか? リリア」

 

 「みんなとはぐれてから私はサンダルファンに向かい内部を調査して来たにゃ。私がこの目で……見て来たにゃ。……事実にゃん」

 

 

 セレル様が息を飲むのが気配で分かる。

 その小さい身体が細かく震えている様にも見える。

 

 

 「セレル様……王と王妃の行方を追いましょう」

 

 「いえ! ……大丈夫です、大丈夫……。事ここに至っては悪戯にサンダルファンに向かうのはリスクがあります。私は軍人ではありませんが……一刻も早くエルンヘイムに向かい旧魔王軍と合流すべきと愚考いたします」

 

 「セレル様、それでは……」

 

 

 痛ましい彼女の様子を見て俺だけではなくリーザも心配をする。

 

 

 「大丈夫ですよ。有難う、リーザ。……常々王は私に言い続けておりました。何かあればエルンヘイムのマルファス王を頼りなさい、と。私は……例えこれが今生の別れになるとしても……マルファス様の後継者イナバ様と共にあります」

 

 「セレル様……」

 

 

 俺達は彼女にどう言葉をかければよいか分からなかった。

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 リリア様からの報告は私に言い様の無いショックを与えました。

 今すぐ国に戻り二人の行方を追いたい衝動に駆られます。

 ですが私はサンダルファン王国第一王女です。

 

 ニルスとは違う道を歩み彼の悪意を避け生き延びなければなりません。

 王国と言うのは極論を言ってしまえば王の一族さえ無事ならば存続は可能。

 なので私はサンダルファンではなくエルンヘイムに命運をかけます。

 後の世で世間の人々が私を強者に靡いた悪女と評価したとしても構わない。

 サンダルファン王国の正当性は私が守ります。

 

 王から頼るべく指示のあった魔王マルファス様は既に亡くなりました。

 ならば私はその魔王様が全てを託したイナバ様に命運をかけます。

 

 できればもう一度会いたかった、お父様、お母様。

 来世で……会いましょう。

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 俺達は来たばかりの山脈を再度超えて砦に戻ってきた。

 そして休憩もそこそこに指令官用テントに集まり現状を確認しあった。

 

 ベルリーザ帝国にてマルファス王は奇襲を受けて討ち死。

 帯同していた第一王女ヒルベルダ様とアルシーが行方不明。

 魔王軍は指揮官を亡くし散開し撤退。 

 

 それに呼応する様にサンダルファン王国にてニルス第一王子によるクーデターが発生し王と王妃は国外に脱出。

 第一王女のセレル王女は王国遊撃隊リーザロッテ隊により保護。

 

 現在、主を失ったエルンヘイムがどうなっているかは……不明。

 

 ……こんな所か。

 全てにおいてクソったれだぜ。

 

 セレル様とリーザはエルンヘイムに向かい魔王軍と合流すべきと主張している。

 俺もそれに賛成だ。

 

 居なくなったのは魔王とその側近だろう。

 随行した部隊は散開したとはいえ精強なマルファス軍だ。

 全滅しているとは思えない。

 

 俺達はリーザ隊全てを率いてエルンヘイムに向かう事にした。

 この砦に籠っていても直にニルスかルゼブナックが軍を率いて鎮圧、もしくは従属を迫りに攻め込んでくるのは目に見えている。

 

 俺達は行軍速度は遅くなるが軍は分けない事にした。

 分かれて行動する様になった途端に現状のこの有様だ。

 それこそ追撃戦になった場合、少数の軍を分けたら個別にすり潰される。

 結論を得た俺達は準備もそこそこに砦を立ちエルンヘイムに出発した。

 

 騎馬隊が先頭に立ち次に歩兵、中央に俺達と周りを守られた補給部隊が進み後方にまた騎馬隊が続く。

 少数とはいえ軍は1,000名、補給がやられれば軍としての行動は無理だ。

 おのずと迅速な行軍は難しくなる。

 

 俺はリーザにスパルタで叩き込まれた騎乗スキルを駆使して乗馬して久々に穏やかな気分で空を眺めていた。

 しばらくすると騎乗したセレル様が俺の馬に近づいてきた。

 そしてセレル様は俺に小声で話しかけた。

 

 

 「イナバ様、ここしばらく十分にお休みも取れてない様子、大丈夫ですか?」

 

 「ああ、うん。大丈夫だよ、セレル。君こそ大丈夫か?」

 

 「私は大丈夫ですよ。……そんなに心配に見えるなら、この戦乱が鎮まったら島を巡りませんか?」

 

 「……いいね、2人で島を巡ろうか」

 

 「ふぇっ? ふ、2人で?!」

 

 「なんか、マズいかぃ?」

 

 「……いえ、是非お願いしますね」

 

 

 この戦乱が鎮まったら……か。

 いいね、ゲーム時代に隅から隅まで巡ったが嫁になる人と婚前旅行だな。

 前世では考えられない幸せな人生だ、……魔生かな。

 生き残らないとな、みんなで。

 

 




ここまで読んでくださり有難うございます。
宜しければ評価いただけると嬉しいです(*´▽`*)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。