※この作品はR-18です。

魔王軍立志伝―仕事を辞めたら魔物になりました― ハーメルン版   作:ヨシMAX

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魔王立志伝ワールドにようこそ(`・ω・´)


第86話 オーク軍 VS ニルス暫定王軍①

 

 

 俺達はエルンヘイムへの撤退中、故郷の砦とウェルニーの間でサンダルファン王国第一王子……今は暫定王ニルスの軍隊に追いつかれてしまった。

 その直前で俺は何とサンダルファン王国第一王女セレル様の配下リーザ部隊の指揮権を引き継いでしまった。

 つまり俺がこの撤退戦の指揮を執る事になったのだ。

 

 ウェルニーまで続く道で開けた盆地に俺達は部隊を4つに分けて布陣した。

 布陣と言っても実際にこの場所にいるのは俺とセレル様だけだ。

 

 リーザの隊は伏兵、リリアの隊は神出鬼没に動いてもらい敵軍を翻弄してもらう。

 今回の作戦の肝は俺達中央の部隊がどこまで持ちこたえるかだ。

 だから中央の俺とセレル様に各300、リーザとリリアは200ずつの計1,000だ。

 

 寡兵のリリア隊には無理はさせない。

 ただしリーザ隊は申し訳ないが決死の突撃をしてもらわなければいけない。 

 

 どこもかしこもリスクだらけ。

 今回の作戦が一見、メチャクチャなのは分かっているし実際に無謀だ。

 ただ負ける訳にはいかないしむしろ今回は勝つのだ。

 

 

 「前方1,000 敵軍10,000来ました!」

 

 

 来たか!!

 

 

 「よしっ! 左翼! 右翼! 両端の隊に弓矢、ってぇ――っ!!」

 

 

 俺の号令の下、統率の取れた動きで弓矢隊が左右に弓矢を撃ちかける。

 盾や魔法で逸らされるが幾つかは命中して敵兵を倒した。

 同時に中央から俺とセレル様が突撃し敵を浮足立たせる。

 

 まさか10倍の相手に真正面から立ち向かうとは思っていなかったのか敵軍は意表を突かれたようだ。

 矢を射かけられた両端の部隊は狙いを避けようと左右に若干広がり中央の軍は俺達の突撃を受けてこちらも左右に少し広がる。

 俺の目論見通りに部隊の密度が一時的に薄くなった。

 博打の様な作戦だったが俺は持ってるな。

 

 

 「セレル様! 今だ!」

 

 「はいっ! 身体強化っ!!」

 

 

 セレル様は戦闘に関しては天才だった。

 なんとこの姫様は一度に300人位魔法をかける事が出来るという。

 これは指揮権を譲られた時に打ち明けられた。

 この事もありニルス王子は自軍に引き込めないならセレルを他国への貢ぎ物にしようと考えたのだそうだ。

 

 中央の部隊で身体強化をかけられた300人が更に敵軍に突っ込む。

 浮足立った敵軍にならば寡兵の俺達でも少しの間押し返せる。

 

 

 「ここだ!」

 

 

 俺は他から見たら頭がおかしくなったと思われかねない行動に出る。

 なんと一騎駆けを実行したのだ。

 大軍の中に鋭く突き刺さる楔の一撃、それが俺だ。

 

 シャルルに魔力を流し群がる敵兵をなぎ倒す。

 次から次へと湧き出る敵兵にウンザリしながらどの位の間戦っただろう。

 急に敵の反撃が弱まった一瞬があった。

 

 

 「リリア、いいタイミングだ」

 

 

 リリアの部隊が後方から襲い掛かったのだ。

 10,000の大軍とは言え半分が魔物で助かった。

 これが全部魔族だったら強烈な反撃を喰らって早々に壊滅させられていた。

 

 魔物は1頭の能力は魔族に比べるとかなり劣る。

 例え上位の魔物が出てきたとしても魔族に匹敵しない。

 なぜならそんな魔物は地上で制御できないからだ。

 

 魔物を支配下に置く能力を持っているのは一般にティマ―と呼ばれる職だ。

 この世界では普通、地上の森や山に住み着いている魔物を支配下に置く。

 ダンジョンに住んでいる魔物は魔素の吸収率が強すぎてほぼ制御はできない。

 無理に支配下に置こうとしても暴れられて自分達の被害の方が多くなってしまう。

 

 おまけにティマ―自体が絶対数が少なく戦争に駆り出せる魔物の数も自ずと限られてくるという仕組みだ。

 ゲームの中ではティマ―は殆どがプレイヤーでNPCは少ないのだ。

 

 そんな訳で魔物の大軍が上位の魔物だけで編成されていると言う状況はまずないと思ってよい。

 

 今回もその仕組みが功を奏した。

 むしろ、出来すぎている位で少しの失敗が全てを崩壊させそうで怖いな。

 いや、今はこんな事は考えてはいかん。

 リリアの強襲も時間が経てば全て覆されてしまうからだ。

 

 こちらも呼応する様に少しづつ退くぞ。

 セレル様はっ?! と思って辺りを見回すと泥だらけになったセレル様が周りを鼓舞しながら既に後退を始めていた。

 そんな王女に呼応する様に周りの騎士達も戦闘中と思えない規則正しい動きで前後を入れ替わりながら絶妙な感じに後退を始めていた。

 リーザとセレル様は意外と似たもの同士なのかもな。

 

 だが……。

 何とか皆の尽力で敵軍を丘陵に囲まれた平地に呼び込む事が出来た。

 慌ててはいけない、完全に中まで引きこまないと……。

 もう少し……もう少し……、今だっ!!

 

 

 「リーザっ! 今だっ! 仕上げろ!」

 

 「……っ! 分かりました! お任せください!」

 

 

 突如、丘陵に茂る背の高い草に火がかけられた。

 これで包囲を抜け出す事はかなりハードルが上がった。

 そして唯一の包囲の切れ目から満を持しリーザ隊が敵軍の側面から襲い掛かる。

 

 リーザ部隊の突撃は凄まじく味方の俺達ですら畏怖してしまう程だった。

 僅か200の兵で10,000の部隊に突っ込むのだ。

 勇気があるとかそういう問題ではない。

 狂気と言って良いのではないだろうか。

 しかも騎馬が足りず全てが騎馬隊と言う訳ではなく歩兵や弓兵が混じっている。

 

 それでもリーザ隊は敵軍に遅れる事なく対応できている。

 騎馬隊で突撃を繰り返し歩兵は主に第一撃で仕留めそこなった敵に止めを刺す。

 中には歩兵でも敵を蹴散らしている剛の者も見受けられる。

 弓兵の中に魔法で敵をけん制したり仲間にバフをかけたりする者もいた。

 

 次々と敵軍が討ち取られていきリーザ隊は返り血で汚れていく。

 全員の技量が高すぎるぞ。

 全く、……恐れ入るぞ。

 味方で良かったな。

 




ここまで読んでくださり有難うございます。
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