魔王軍立志伝―仕事を辞めたら魔物になりました― ハーメルン版 作:ヨシMAX
手前味噌ですが本日私の誕生日です♡
見とれている場合ではない、俺達も手筈通りやらなければ。
魔王、力を貸してくれるか?
(ようやく俺の出番か、魔法だろ、行けるぞ)
よしっ! いくぞ!
「冥界に眠るシバルバーの門を開き来たれ 2柱の支配神と10柱神に数多の罪は裁かれる 病み、飢え、怖れ、
魔法の効果は絶大だった。
魔物や魔族達は病気になり、飢えでやせ細り、恐慌に陥り、気力や体力を貧し、全ての苦痛にのたうち回り絶命していった。
丘陵地帯に閉じ込められた敵軍はその命の価値に関係なく死んだ。
およそ60%から70%の敵軍は屠れただろうか。
仕留めそこなった敵軍はまだそこそこいたがリーザやリリア、そして俺の傍で戦っているセレル隊によってドンドン、その数を減らしていった。
敵軍の士気はもはやどん底レベルまで落ちたであろう。
自分で撃った魔法ながらその破壊力や悍ましさに俺も少し引いた。
もちろん味方も微妙な顔をしている。
魔王、魔法のチョイスはお前だろう。
この魔法は破壊力もさる事ながら絶命への過程が悲惨すぎる事から準禁呪扱いされてたはずだ。お前は禁呪や古代魔術にも精通してるんだな。
(元々魔王だったお前が何を生ぬるい事を言ってるんだ。それにこの魔法ならお前も魔王時代に使ってたはずだが……記憶でも失くしたか?)
んっ?
俺はそんな大それた魔法は知らんよ。
ここまでの魔法が使えたら勇者に負けてるもんか。
(うむ、……まあいいか。粗方片付いたろ? 俺は眠るからな、何かあった……ら知ら……せろ)
魔王の声は聞こえなくなった。
全く、また気になる事を言い残して去りやがった。
周囲を見ると確かに「もう終わった」と言っていい状況だった。
辺りに立っている魔族や魔物はもう見えず味方の部隊が集結しつつあった。
各隊はそれぞれで急ぎ損耗確認を始めた。
これだけの大軍を退けたのだから追撃はあり得ないとは思いたいが……念には念を入れて早急に実情を確認しないとだな。
その後、急に野原の真ん中でリーザ騎士団のお姉様方が鎧を外し身体を拭き始めたので俺とゴブリン部隊(♂のみ)がセレル様から暗闇魔法をかけられたのはそれはそれは悲しいお話……うそです。
とにかく俺達は生き延びた。
休憩をはさんでウェルニーに急がなければ。
俺達はウェルニー撤退の最中に強襲してきたニルスの追撃隊を完膚なきまで叩きのめした。
それはもう完全にだ。
……とは言えリーザ隊にも100名強の死傷者を出してしまったのは痛恨の極みだ。
皆は彼我の戦力差を見た時にこれ位の犠牲で済んだのだから寧ろ誇れと言ってくれるが、俺は元々が平和ボケの日本人なのだ。
気にするなと言うのは少々酷な話である。
俺の作戦に従い命を失った勇者達を俺達は草を乗せて魔法で焼いた。
敵も味方も区別なく作業の様に次々に焼いていった。
お墓の一つも作ってやる事も出来ず装備品以外の遺品は何もない。
この世に生きた最後の証は生き残った者達の記憶以外に……何もないのだ。
俺がそんな事をウジウジと考えていたら誰かから声をかけられた。
「イナバ様、如何されましたか?」
「ああ、セレル様。……いや先ほどの戦闘の反省会をしておりました」
微笑みながら言ったつもりだったが、きっとこの時の俺は力なくヘラッとした頼りない笑顔をしていた事だろう。
だからセレル様にも気持ちを読まれてしまう。
「イナバ様、確かに先の戦闘で少なくはない犠牲が出た事は間違い様の無い事実でございます。中には私やリーザの顔なじみも混じっていたとの事です」
「う……」
セレル様の言葉が俺の心にズシリと重く伸し掛かる。
「ですがイナバ様、思い違いをされてはいけません。彼女達はあなたの指示に盲目的に従い傷つき死んでいった訳ではありません。あなたの人となりを知り、あなたの作戦に納得し、戦場での勇姿に安心し、例え自分の命運が尽き、ここで死ぬ事になろうとも、この国はイナバ様に任せておけば大丈夫だ。そう確信して未来への礎となったのでございます」
俺は顔を上げて静かにセレル様の言葉に聞き入る。
この顔もさぞかし不安に溢れた顔であろう。
「敢えて言葉を選ばずに申し上げます。そんな彼女達の死に、もしも申し訳ないと感じているのなら……それはイナバ様、
俺は驚いて目を見開いた。
烏滸がましい……俺が?
「イナバ様は人を率いるには優しいお方……この後も様々な戦地に赴き傷ついて倒れる仲間を目にしてはお心を痛められる事でしょう。その事自体は私は非難いたしません。私も可能であるならば当然、犠牲者は出したくありません。ただ火の粉が周囲から降りかかってくるのなら誰かが振り払わなければいけない」
強いな。
やはりセレル様の方が指揮官に向いているのでは……。
「そんな理不尽な中、共に死んでくれと言える人物と言うのは仲間が倒れる度に悩み、涙して苦悩する。そんな人物だと私は思うのです。私やリーザはここがダメなのです。私は王家、リーザは騎士なので悲しい事に慣れてしまっているのです」
慣れる?!
人の死に慣れてしまっている?
「引かれましたか? ……ふふ、当然ですね。でも事実なのですよ。私達の様な人種は仲間の死に慣れてしまい、下手をすれば共に……ではなく率先して先に死んでくれと言っているのと同じ意味の采配を取り始めます。もちろん私もリーザも戦地に行くからには自らも死ぬ覚悟はできていますが、時に王族やリーザの様な人種は死んではならない、死ねない状況と言うのも出てくるのです」
……。
王族と言うのも大変なのだな、当然だけど……。
リーザロッテ遊撃部隊 損耗122名 残り878名
サンダルファン王国軍 10,000名 壊滅(逃亡兵多数)
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