魔王軍立志伝―仕事を辞めたら魔物になりました― ハーメルン版 作:ヨシMAX
さてと、俺は今とてつもない修羅場の真っただ中にいる。
リリアとクラリスは俺が守っている、いろいろなものからな。
現在、絶賛クラインがブチ切れ中である。
俺とクラインが話をしている最中に爆弾を放り投げてクラリスをさらおうとした人間族相手に大立ち回り中だ。
弓矢に爆発系のエンチャントをかけ奴らを殲滅している。
クラインが弓矢を放つ度に人間族があちらこちらに吹き飛んでいる。
だからそういう風景は俺のツボなんだよ、ぶふふふっ。
あっという間に辺りの地面はクレータだらけになってしまった。
いつの間にか俺達の周りにはクラインの取り巻きが近づいて来た。
彼等の顔にはいつもの事なのだろうか、呆れと疲れの表情が滲んでいた。
「あれ、止められないか?」
「族長がああなると、ひとしきり殲滅させないと後が厄介なのだ」
だよね。
知ってたよ。
☆★☆★☆★
「すまない。取り乱した」
クラインはようやく落ち着きを取り戻しクラリスにこっ酷く怒られていた。
久しぶりに大人が少女に怒られてるのを見たよ。
それにしても族長が妹にあれだけ絞られてたら威厳に影響出るんじゃないの?
彼の取り巻き達が特に無反応で見守っていたのが結構シュールだった。
「ではイナバ殿。私は妹と負傷者や非戦闘員を里に送った後に君に合流しようと思う。部隊としてはまずは400名の戦士を連れてくる。エルンヘイムで良いのだな?」
「とりあえずそうだな。もしもエルンヘイムに長期で滞在できない事態になったらここにいるリリアを君に接触させる」
「よろしくにゃ。クライン族長様」
「わかった。ではまた会おう」
クラインはそう言うと部隊を率いて里へ戻っていった。
クラリスは何度も俺達の方を向いて手を振っていた。
クラリスはゲーム内でもトップクラスに可愛いキャラなのだけど何故か人気はそんなにない。
何故なのかはわかるだろうからここでは言わない。
あれからクラインとは打ち合わせを重ねて一度みんなで里に戻らせる事にした。
それでクラリスと負傷者を残し、まずは400名を率いて俺達と合流する。
その後エルンヘイムが安定度合により残りの一族も呼び寄せ定住する予定だ。
「よし、俺達も部隊に戻ろう」
「わかったにゃ。それではエルンヘイムに向かおうにゃん」
俺とリリアはセレル様達が待っている部隊に合流するべく来た道を戻っていった。
☆★☆★☆★
「イナバ様、リリア様、ご無事で何よりでした。クラリス様は無事にエルフと合流できたのですか?」
「ああ、クラインと合流できたし説得も成功した。里での準備が済み次第、彼等も部隊を率いてエルンヘイムに向かう予定なのでそこで合流だな」
「分かりました。では早速エルンヘイムに向かいましょう」
なんかようやっと本来の目的通りに行動できる様になった気がする。
表現はおかしいかもしれないがやる事やったのでもう良いだろと言う感じだ。
俺は全体に行軍開始の指示を出し久しぶりに馬上の人となった。
「イナバ様、私、エルンヘイムは初めてでございます。どんな街なのですか?」
セレル様は俺がクラインを追いかけて森の中に入ってしばらく帰らなかった為、少し寂しかったのか俺が部隊に戻ってからはずっと隣に居る。
エルンヘイムかぁ。
前に行った時は種族進化をしなければいけないという事で頭が一杯で街を楽しむ事なんてできなかったな。
まあ、覚えてるのは魔王軍ギルドと魔王城だ。
魔王軍ギルドは年季の入った雰囲気の良い古い建物だったな。
魔王城は俺が一目ぼれしてゲーム内で自分の城を作る時にモデルにした位に気に入った造形美だった。
その2つの思い出と街を歩いた記憶を頼りに良い感じで彼女に話して聞かせた。
「エルンヘイムは古さと新しさがバランスよく混ざり合った雰囲気の良い街でしたね。街の中に敵が入り込んだ事を想定してひかれた石畳は不規則で高低差もありますがそのアンバランスさが逆に国民には愛されていますね。そして街の中央には国の象徴である魔王城があります。外観は黒を基調とした石造りでとても美しいです。主に間接照明が各所に設置されて平時であれば観光名所にもなる位ですよ」
おっと、溢れる愛で少しばかり早口になってしまったぜ。
セレル様はそんな俺の様子も全く気にせず温かい微笑みを浮かべている。
「それはとても楽しみでございますね。首都が美しい国は強いと言いますが、まさにエルンヘイムはその最たるものだと聞いています。さぞかし魔王マルファス様がご尽力されたのでしょうね」
「そうですね。前にエルンヘイムを発ってから色々な事が起こり過ぎて……。エルンヘイムで出会った人達が無事ならいいのですか」
そこから更に数時間ほど行軍し漸く遠くにエルンヘイムが見えてきた。
これだけ遠くても相変わらず美しい街並みと言う事は分かるし見た限りだと黒煙や建物の崩壊もなく平穏無事に見えるが……。
「さてと……ここまでは近付けたけど街の中の様子は流石に入ってみないと分からんか」
「イナバさん、私見てくるにゃん?」
「そうだな、ここはまずは本職に任せて情報を集めるべきだな」
「わかったにゃ」
そう言うが速いかリリアの姿は掻き消えて気配もなくなった。
相変わらず彼女が優れた斥候である事は間違いない。
本来であれば斥候は危険な役割なのだが彼女であればスキルも高く何より凄いのは「自分に任せろ」と言えるだけの準備を
我々は、では頼むと言って仕事が終わるのを待っていればいい。
良い人材が溢れる軍と言うのを俺は少し思い出して懐かしく感じていた。
ここまで読んでくださり有難うございます。
宜しければ評価いただけると嬉しいです(*´▽`*)