オリシューとISヒロイン(ry 作:user
「君が五反田弾、かな? 一夏から聞いていると思うが、今日はよろしく頼むよ」
「は、はい。どうも、よろしく、です」
何がどうしてこうなった。
弾は、人種と言うか次元と言うか、そもそも同じ人間なのか疑問すら湧いてくる男を前にして、緊張の極地に置かれていた。
ことは先日、友人の一夏と連絡を取ったことから始まった。
男性でありながらISを起動してしまった友人を、弾は事あるごとに気にかけていた。
短いやり取りの中であっても、大変な毎日を送っているのが容易に感じ取れたが、思ったよりも元気そうで安心させられた。
余裕が出来次第、また一緒に遊ぼうと約束した。
そんな一夏から、頼まれたことがあった。
街を案内して欲しい人がいる。
理由はわからないが案内人は一夏ではダメとのこと。
目立つ人なのですぐわかるらしい。
一夏の現状を思えば、おそらくはIS学園の生徒。
IS学園と言えば、世界中から優秀な少女が集まり、切磋琢磨す秘密の花園。
内心では、どんな美少女がやってくるのか、と胸をときめかせていた弾である。
やってきたのは、オーラすら見えそうな美男子だった。
友人の一夏のことを、口には出さないもののイケメンだと思っているが、こちらはなんだか次元が違う。
頭にキャップを被り、目にはサングラスで顔もろくにわからないと言うのに、何かしら滲み出るものがあった。
(おにぃおにぃ! なにこの超イケメンさん!? なんで!? 一夏さんが来るんじゃなかったの!)
(俺だって知らねえよ! だいたい一夏は来ないって何度も言っただろうが!)
ガチガチに緊張し、腕と足が連動しそうな弾を現世に呼び戻したのは、弾の妹である蘭だ。
弾は、ちょっと出てくる、と言って家を出ただけなのに、何をどう感づいたのか、妹の蘭がついて来た。一夏と待ち合わせしている、と勘繰ったらしい。
一夏自身は知らないでいるが、蘭もまた、一夏へと想いを寄せているのだ。
その想いを、砕きかねない男がここに。
「君は美形の条件ってのを知ってるかな?」
「はいっ!? わ、わたしですか!!!」
「そうだよ。俺の事を褒めてくれたようだけど、人間の美醜と言うのは個々のパーツよりも、左右対称であるかどうかが重要なんだ。右目がパッチリしていても、左目がずんぐりしてたらおかしいだろ?」
「は、は、……はい…………」
「そこへいくと、俺はこうだ」
と言って、サングラスを外した。
現れたのは赤と青のヘテロクロミア。
「はう…………きれい、です」
「ありがとう。俺は目からしてこうだからね、左右対称って条件からはいきなり外れるんだ。それでも綺麗って思ってくれたのは、君の遺伝子が俺を認めたってことになる」
神秘的でさえある赤青の異色虹彩だが、左右非対称であることから気味が悪いと忌避する人がいるのは事実。
「いでんしですか……」
「君の遺伝子が、俺の遺伝子と合わさってもいいって言ってるのさ。遺伝子のサインは他にもあって、匂いがかなり重要なんだよ」
蘭の頭に顔を寄せ、すん、と鼻で吸った。
「いい匂いだ」
「あ………………」
間近に迫った美麗な顔に、蘭は逆上せるを通り越して何もかもを忘れ去った忘我の有様。
このままではお持ち帰りされて、なるようになってしまう直前である。
しかし、この場にはもう一人の人間がいた。
自分の目の前で、愛しい妹が取って食われるのを許さないお兄ちゃんがいた。
「おい! ……じゃなくて、ちょっと! 街だろ! 案内するから早く行こうぜ!!」
「そうだな。今日は一日よろしく頼むよ、弾」
あっさりと。
食って掛かる弾の肩に腕を回し、蘭を一人残して歩き始めた。
「こんなこと言いたくないんすけど。妹には他に好きな奴がいるんです。からかわないでください」
「からかったりなんてしないさ。女性を褒めるのはマナーだよ。……もしかして、彼女が好きなのって一夏か?」
「げ…………、って、そーいや一夏を知ってるんですよね」
「なんだ、当たりか。彼女には悪いが、一夏には一押しの子がいるんだ。俺はその子を応援してる。弾と俺とで競争になるな?」
「そんなの俺がめっちゃ不利じゃないですか!」
「はっはっは! 世の中ってそんなもんだよ」
「はぁ………………」
「遅れたが、俺はリーシュ=オリオールだ。よろしくな。リーシュでもオリオールでもどっちでもいい」
「五反田弾です。俺のこともどっちでもいいです」
「じゃ、弾。早速頼む」
「いいですけど、案内ってどこへなんですか? 一夏じゃダメだったんですか?」
「ああ。一夏には少し毒なところなんでね」
「ここ、くらいしか知らないんですけどマジですか?」
辿り着くまでに、5回はマジですか? を繰り返していた。
二の足を踏む弾を尻目に、リーシュはさっさと入店してしまう。どうやらマジであるらしい。弾は遅れじと慌てて後を追った。
この類の店は、大抵が三種類に分けられる。
一つが、ライトでポップなカジュアルな店。後ろめたいことなんて何もない。明るく健全にみんな楽しく、と言っている。
一つが、通常の何の変哲もない店舗の中に隠れ潜んでいる。突然現れる垂れ布の向こうに広がっている。隠れ潜んでいるだけあって、どこか後ろめたく、隠れ潜んでいるので人知れずに入店できる。
最後の一つは、堂々としている。堂々としている反動か、狭く深く、底の知れない恐ろしさを。ここは外とは違うんだぞ、と言外に主張している。
二人が入店したのは最後のタイプだった。
弾の名誉のために断っておくが、弾がこの店をよく知っているわけではない。入ったこともない。ならば何故知っているかと言えば、目立つからだ。
ショッキングピンクで描かれた看板は、ここにいるぞと強く主張している。
たまたま見かけたことがある看板が、たまたま弾の記憶に残っただけである。
と言うか、15歳の弾には敷居が高すぎる。
興味はあっても、恐ろしくて入れない店なのだ。
弾の葛藤を知ってか知らずか、リーシュは構わずに入店して、早速商品を物色している。
恐る恐るついていった弾は、比喩ではなく眩暈がした。
目の毒、と言うか、目に痛い。
赤、ピンク、オレンジなどなど。どぎつい色がそこかしこに散らばっている。
電子媒体が主流のこの時代に、何かこだわりでもあるものか、紙媒体のものがたくさん積まれている。
俗に言うアダルトショップ。大人の玩具屋であった。
リーシュがサングラスを外し、商品の一つ一つを手にとって物色しているのは、眩暈がすると言うか、レベルが高すぎると言うか、弾にはとてもとても出来そうにないことだった。
一夏に案内を頼めないわけである。
「弾のってこれくらい?」
「いや、これくらいありますよ」
「じゃ、これにしとこうかな」
「って、うぉい!! 俺のはそんなちっちゃくないですよ!」
「初心者が使うんだから、これくらいでいいんだよ」
「…………初心者、……ですか」
「使うのは、IS学園の誰か、とだけ言っておこう」
「ありがとうございます!」
やはり男はバカである。
未成年であるため、初めこそ戸惑っていた弾だが、仲間がいれば心強い。あっという間に馴染んでしまった。
「ディルドのパッケージは外して、無地のフェイスタオルがあったらそれで包んでください。ローションもラベルを剥がして。矢印を描いてください。固いのは太く短く、緩いのは長く。スキンはどうしようかな……。中身だけ幾つかもらっていきます」
学園寮にディルドのパッケージやローションのラベルがあったら、まずいことこの上ない。ディルドは隠し通さねばならないが、ローションならばラベルを剥いでしまえば、中身に触れても何であるかに気づかれにくい。
ディルドは形を模しただけで、モーターが仕込まれて動くのがバイブであるというのは常識である。
堂々とアダルトショップに入店し、堂々と商品を物色し、レジでは堂々と包装に注文をつける始末。
弾がリーシュを見る目には、尊敬が込められ始めていた。
「オリオールさん! 先生と呼ばせてください!」
「ふっ……。高いよ? 俺の授業料は」
やはり男はバカなのである。
『あの人とかどうですか?』
『あの手の女性は自尊心が強すぎる。男は便利な道具か、自分を盛り立てる付属品くらいにしか思ってないタイプだ。やめとけ』
『じゃ、あっちのは?』
『関係が深まるのは早いだろうが、依存されるぞ。後が怖い、ってやつだね。むしろ向こうの彼女がかなりいいね』
『マジっすか? なんかめちゃくちゃ遊んでそうなんですけど』
『そんなの当の本人もわかってやってるんだよ。人からどう思われようと自分を貫く。よし、行くぞ』
『マジですか!』
魅惑のアイテムと素敵なアイテムを入手し、道行く人を眺め、2対2でお茶をして、連絡先もきっちり入手し、授業料代わりに弾の実家である五反田食堂で舌鼓を打ったリーシュであった。
その夜、五反田家では、
『おにいおにい! 昼間の人だれ!? おにぃの知り合い?』
『あぁ、結構面白い人だったよ。てか、あの人は止めとけ。お前なんか相手にされないって』
『そんなのわかってるもん。すごく遊んでそうだったし。でもかっこよかったなー』
『一夏の知り合いで、リーシュ=オリオールって人らしい』
『げ…………。それマジ?』
『なんだよ、知ってるのか?』
『知らないおにぃがおかしいんだよ!』
リーシュの来歴を知り、遅まきながら驚愕する弾であった。
後の話、と言うほどでもない先のこと。
声をかけた女性と交換した連絡先を、リーシュは手抜かりなく有効活用した。
日本で営利法人を立ち上げる際、彼女らを引き抜き雇ったのだ。
雇われた二人は、今までとは全く違う分野にしてハードな仕事を与えられたが、給与は5割り増し。福利厚生は完璧なものを与えられ、実質で言えば前社の三倍以上の恩恵を受けることになる。
また、リーシュが見抜いたとおりに芯が強く、粘り強い仕事で評価も高かった。
彼女らが、スイスから出向してきた男性社員と恋に落ち、国際結婚をしてめでたしめでたし、になるかまではさすがにわからないことである。
このあたりは字数がまだまだ少なくて手ごろだった