オリシューとISヒロイン(ry 作:user
リーシュはふんふんふーんと風呂に入っていた。
鼻唄が飛び出すほど機嫌が良いのは、久しぶりの一人風呂が嬉しい、のではない。良いことがあったからだ。
寮長から、大浴場の男子解禁を検討する、との言葉を引き出せた。
リーシュ自身としては女生徒と一緒に大浴場を利用するのは大歓迎であるが、そんなことを寮長の耳に入れようものならIS用ブレードで真っ二つにされるのが目に見えている。寮長はブリュンヒルデなのだから。
ならば男子だけが利用できる時間を、と、一夏と共に寮長へ訴え続け、ようやく実ったところなのだ。
検討を始めた段階であり予定は未定状態だが、織斑千冬が言葉を違えるとは思えない。そう遠くない内に大浴場を満喫できる日がやって来ることだろう。
風呂好きとして、機嫌が良くなるのは無理もなかった。
風呂から出ると顔の水気だけを手で拭い、バスローブに腕を通す。
バスローブは入学後、最初の休日に購入したものだ。
以来、入浴後はそれ一枚で過ごしている。
さすがは準裸族である。
そしてそのまま部屋に戻る。体の水気はバスローブが吸い取るに任せ、髪からは水が滴り落ちている。
「オリオール。邪魔してい……る…………ぞ………………」
部屋着姿の箒がいた。
丈の短いキャミソールを重ね着し、下半身はデニムのホットパンツ。長く伸びる足は艶かしいを通り越し、いっそつややかですらあった。攻撃力が高い反面、防御力が低い装備である。
一夏との同居生活で慣れたのか、本音による英才教育の賜物か、それとも一度きりではあったが致命的な経験によるものか。バスローブ一枚のリーシュを見て悲鳴を上げることも、頬を赤らめることもなかった。
その代わり、視線が冷たい。
「こんばんは、箒さん。来てくれて嬉しいよ。本音さんは留守をしているけれど、俺に相手をさせてもらえないかな?」
箒と本音は依然親しく、互いの部屋を行き来する間柄となっている。
その本音は、今夜は簪の部屋へ遊びに行っている。
「オリオール…………、風呂から出たなら髪くらい拭いたらどうなんだ?」
箒の視線には呆れが混じり始めていた。
「それは違うよ、箒さん。俺はあえて苛酷な環境に身を置いて鍛えているんだ。彼のアムンセンは体を鍛えるため、冬季でも窓を開けて眠ったと言う逸話が――」
「黙れ。私が拭いてやるからそこに座れ」
「はい…………」
リーシュが素直に椅子へ座ると、頭の上にバスタオルが被せられ視界を奪われた。
箒の勢いから、乱暴に拭かれると思って身構えていたリーシュだったが、思いの外、丁寧に髪の水気を吸い取ってくれている。
「本音に頼まれたときは何事かと思ったがこういうことか………………。まさかお前、いつも本音にさせているのか?」
「それは違うよ、箒さん。俺があえてしないことにより、そこに需要が生まれ、雇用に繋がっていく。この世には比較優位と言うものがあって――」
「黙れ。大人しく拭かれていろ」
「はい…………」
タオルで水気を吸い取ると、今度はドライヤーが用意された。
箒は手櫛でリーシュの髪を整えながら、やはり丁寧に乾かしていく。
自身の髪が長いことから、髪の扱いには殊更に丁寧になるのかも知れない。
「…………なんでも卒なくこなすと思っていたが、意外とダメな男なんだな」
「意外と思ってもらえて嬉しいね。箒さんのようにしっかりした女性から、そんな評価をもらえるなんて」
「………………口の減らない奴め」
苦笑し、乾かし続ける。
その間、談笑を続けた。
箒が部屋を訪れたのは本音に会いに来たのではなく、本音からリーシュの世話を頼まれたからであるらしい。聞いたときは怪訝に思ったが、一人で髪の毛すら乾かせないリーシュを見て激しく納得していた。
一夏への愚痴が少しだけ。
周囲の噂には触れなかった。
乾かし終え、箒はリーシュの髪をしばし楽しんだ。
白とは違う銀色の髪は、明かりを反射してキラキラと輝いている。男にしてはやや長い。指を入れれば、固い見た目に反して柔らかい。
ほう、と。
唇で触れたくなる誘惑を振り払い、離れた。
「ありがとう、箒さん。お礼代わりに箒さんの髪を梳かせてもらえないかな?」
「いや、私は……」
「箒さんの綺麗な髪がどうやって保たれているのか知りたいんだ。迷惑じゃなければお願いしたい」
「……それでは礼になってないじゃないか」
「双方に利益があるなんて最高だろう?」
「…………本当に口の減らない奴め……」
箒が椅子に座り、攻守交替。
リーシュは未使用のコームを取り出し、箒のポニーテールを作るリボンを外して腰まで届く長い髪を持ち上げた。
毛先から少しずつ梳いていく。
何度か繰り返し、全く引っかからないことに気付くと、大胆に梳いていく。
箒の髪は長く黒く、滑らかだ。
指を這わせれば乾いた砂のように流れていく。
微かに湿り気があり、入浴後と窺い知れた。
やがてコームを置き、手櫛を入れていく。
髪に触れ、持ち上げ、鼻につけ、唇で触れる。
箒はリーシュの好きなようにさせていた。
リーシュがしていることを知ってさせているのではなく、思考に没入して気付かないでいた。
綺麗だ、手触りも最高だ、と。リーシュが褒める言葉も耳に入らない。
箒は、リーシュと関わり続けるなら、一つ、避けて通れないことがあった。
リーシュがそれを非常に気に掛けていることは、今までの言動から知れる。
自分には関係のないこと。
今まではそうと公言してきたし、その通りだと思っている。
だが、目の前にあるものを直視せずにいられるほど、箒は潔くない性格ではなかった。
今、リーシュが見えないところにいるのも手伝った。
箒は、覚悟を決めた。
「………………………………一つ、訊きたいことがある」
「なにかな? 箒さんが興味ありそうなことだと、本音さんと俺との関係とか」
「茶化すな! ………………………姉さんのことだ」
リーシュの手が止まった。
瞬間、箒の背筋が粟立ち、消えた。
一瞬だけ生じた冷気が、世界の有様を変えてしまったように錯覚した。
「箒さんのお姉さん、ね。実の姉妹である箒さんの方が詳しいと思うよ」
「そうじゃない。姉さんがお前に、一体何をしたのか。私はそれを知らなければならない。そんな気がする」
「………………そう……」
髪から手が離れ、肩に置かれた。
首を締められる。
箒は反射的にそう思ったが、リーシュの手は優しく置かれたまま。
「あのウサビッチが俺に何をしたか。箒さんはそれを知りたい、ってことだね?」
「あ…………、あぁ……」
リーシュの声音はいつもと同じで柔らかいまま。
それがどうしてこうも恐ろしいのか、箒にはわからなかった。
「色々あるけれど………………、直近ではサイバーテロだね。社のネットワークをハッキングされ、情報を抜かれた上で欲しくもない情報を置いていかれたことが数度ある」
「………………どんな情報だったんだ?」
「企業買収の情報だ。俺が仕掛けようとしていた企業と、時期と、規模と、それらについて全て抜かれた。そして、有り難くもないことに対象企業の極秘情報を置いていってくれたんだよ」
「……極秘情報をもらったのなら、良いことじゃないのか?」
「そんな情報が使えると思ってるのかな、箒さんは。入手手段を明らかに出来ないということは、幾らでもこじつけることが出来るってこと。向こうは法の正義を掲げる国だ。不正と見られれば容赦なく制裁される。そうでなくても俺の資産を狙っているんだ。隙を見せれば毟り取られる」
国家とは、国家の名において搾取するものなのだ。
例え金の卵を生もうとも、金の鳥であればすぐさま解体される。
「そんな……。不正ではないと主張すればいいじゃないか」
「あのね、箒さん。主張しても証明する手段がなければ全くの無駄なんだよ。あの世で閻魔様に無罪を言い渡されても、意味がないってことくらいわかるだろ?」
「…………………………」
「何度か繰り返され、最後の最後に役に立つ新技術を置いていったが…………、それを開発途中だった科学者・技術者連中のことを思うと、良かったのか悪かったのかわからないね」
置き土産は、社のネットワークと、リーシュが普段から身につけているバングルに利用されている。
「結果、買収はどれも立ち消えた。知っていることを知らないと通すことは俺でも難しい。知っていると、必ずどこかに出るんだよ。ねぇ、箒さん。あのウサビッチのせいで、いったいどれだけの損害があったか知りたくはないかな?」
「いや! …………いい。私には、わからない、ことだし」
「そう言わずに………………」
肩に置かれたリーシュの手が伸び、箒は、ほとんど後ろから抱きしめられる形になった。
頬に、耳にかかる髪を掻き上げられると、温かく湿り気ある吐息を感じた。
箒の耳にリーシュの唇が触れ、囁かれた。
金額を聞き、箒の顔が青くなっていく。
箒が知りうる最高給の職業について尚、人生を千回やり直しても届かない額だった。
「箒さんは、お姉さんの仕出かしたことの責任をとろうとは思わないかい?」
「わ、私には関係……、ない…………」
リーシュの腕が、キャミソールの裾に届いた。
立てばへそすら見えるキャミソールは、扇情的だった。
リーシュの指が肌に触れても、箒は気付けない。
耳元で、箒を責める言葉が続いている。
姉妹、家族、薄情、責任、義務。
リーシュの手が上がっていく。服の下に入り込み、舐めるように上がっていく。
「だから、私は……関係、…………………………あぅっ!」
リーシュの手が、箒の豊かな乳房を鷲掴みにしていた。
優しい触れ方ではない。荒々しく、乳房が形を変えるほどに強く。
ブラジャーのホックはいつの間にか外されていた。
リーシュの手が、箒の乳房へ直に触れている。
「何を――――!!」
何をする、と、一喝するはずだった。
遮られた。
首筋に噛み付かれた。
痕が残るほど強くはない。柔らかな甘噛みに過ぎない。それでも、硬く鋭いものが触れていると感じる程度には強く。
喰われる、と箒は思った。
捕食者と、被捕食者の関係があった。
箒の抵抗が止むと、リーシュはそのまま唇を這わせた。
首筋から頬へ、頬から耳へ。耳たぶを唇で挟み、軽く舐め上げる。
手の動きも止まない。
甚振るように乳房を掴み、指を沈め、引っ張り、焦らすことなく乳首にも触れた。
弄られ興奮したのか、体が自然と反応したのか、摘み易いよう、既に尖っていた。
箒が痛みに声を上げるのも構わず、強く摘み、弄ぶ。
刺激を受けて、箒の乳首は弾けそうなほど固く立っていく。よく反応し、楽しませる。
「やめ……………………」
箒には、いつもの凛とした姿はどこにもなかった。
弱弱しく懇願するだけの少女がいた。
「こんな時間に男の部屋に来たんだ。箒さんはそのつもりだったんだろう?」
「本音に……頼まれただけ、だ。……そんなつもりは………………いっ……」
否定の言葉は許されなかった。
強く摘まれ爪を立てられ、甘く鋭い痛みに耐える。
「そんな格好をして。俺を誘うつもりだったんだね」
「これは…………、動き易いから、気に入って………………あぁっ!」
箒の服装は、一夏へアピールするため、と。リーシュと本音で考えたものだ。
ひどく扇情的で、ひどく劣情を誘った。
リーシュの指がホットパンツのボタンを外し、ジッパーを下ろし、中に入っていく。
パンツの上から、などと悠長なことはしない。
中に手指を滑り込ませ、箒に触れようと侵入していく。
触れられる。
羞恥か恐怖かそれ以外の何ものか。
箒の体に一瞬だけ力が戻った。
リーシュの手を押さえようと手を伸ばし、その手はリーシュのもう一方の手に押さえられた。
触れられた。
「――!」
ぬかるんでいた。
荒々しく蹂躙するリーシュを感じ、濡れていた。
紛れようもない羞恥に、嗚咽の声が漏れる。
指は止まることなく進み続け、入っていった。
きつい抵抗を押し退け、第二間接まで入り込んだ。
箒の手は、リーシュの手に重なっている。
止めようとしているのか、導こうとしているのか、どちらともとれた。
「やめ……、て…………。わたしには、い――」
緩やかになった動きに、箒は懇願した。
リーシュの目を見て訴えれば、きっと聞いてもらえる。
そうと信じ、振り返ろうとしたところ、
あの日、捧げられなかった唇を、箒はこの日、奪われた。
箒リベンジ回になる予定でした。