オリシューとISヒロイン(ry 作:user
ショックだった。
唇を奪われたことがそんなにもショックだったのか、蹂躙し始めた舌を、噛んでしまおうとすら思い浮かばなかった。
舌と唇が離れれば、呪詛のように囁かれる。
箒さんは悪くない、全部お姉さんが悪い、箒さんは悪くない、タイミングが悪かった、箒さんは悪くない…………。
ベッドに突き飛ばされ、衣服を剥ぎ取られる。
リーシュはバスローブの前を開き、箒に圧し掛かった。
腰の上に乗られ、腕を捕られ、箒に出来る抵抗は顔を背けることだけだった。
私は悪くない。全部あの人が、リーシュが、本音が、タイミングが…………。
呪詛が少しずつ染み込んでいき、諦念に支配される。
抵抗する気力は微塵も残されておらず、最後の一線まであと少し。
リーシュが箒に触れ、位置を定めた時、箒は何がショックだったのかに気付いた。
リーシュが、こんなことをする人間だとは思わなかった。
リーシュはいつだって理性的だった。
理不尽に襲われ怒っても、泣いてる少女を優先する男だった。
いつだって気障なほど優しい男だった。
泣いて嫌がる女を犯すとは、とても思えなかった。
恨みが深くても、対象の妹に当たるような男には思えなかった。
そんな男がこんな事を。
信じたいのか、信じているのか、勘なのか、願望なのか。
箒には、リーシュがこんな事をする男とは、やはり思えなかった。
背けた顔を戻し、間近に迫るリーシュを見詰める。
何かわけが、とは思わない。何故とも、どうして、とも思わない。
ただ、いつもの視線でリーシュを見詰めた。
談笑している時のように、不埒を戒める時のように、つい姿を探してしまう時のように。
そうして見れば、目の前にいるのはいつものリーシュだった。
暴力を振るう悦びはなく、女を犯す愉悦もなく、理不尽な恐ろしい男ではなく、厭味なほどに気障で優しいリーシュがいた。
箒の目を見て、リーシュは自身の失策を悟った。
「………………もう少し騙されてくれればよかったものを。……騙された振りをしようとは思わなかったのかな?」
「ふん……。私に芝居なんて出来るものか」
押し倒し、押し倒された者は、いつもの二人に戻っていた。
悲しみに淫する、という言葉がある。
人は悲劇に酔えるのだ。
傷を負おうとも、箒がそれで倒れるほど弱くないと、リーシュは知っていた。
心に陰が落ちようとも、箒は本音とは違う。むしろ美しさに凄みが加わるだろうと確信があった。
箒が、一夏と自身の間で揺れているのを知っていた。
箒が、二人を同時に愛せるほど器用ではないと知っていた。
箒が、本音から生々しい話を聞かされ、肉体を持て余していることを知っていた。一度だけの味を思い出すのかも知れない。
このまま犯し、いつか心がついてくるなら良いと思っていた。
一夏へ縋り、二人が結ばれるのも良いと思っていた。例え汚名を被ろうと、その程度を気にするリーシュではない。弾を裏切ることになるが、その時はスイスのアダルトグッズを送ってやろう。
揺れ動き、持て余し、箒が苦悩しているのをリーシュは知っていた。
箒のいずれかを満たし、前へ進めさせるため、女を力尽くで、と。面白くもないプレイで一芝居打ったわけだが、最後の最後で見抜かれた。
つくづく、思うようになってくれない姉妹である。
箒はそこまで見抜いたわけではない。
ただ、リーシュはそんなことをしない、と。確信を持っただけだ。
その確信は、的を射ていた。
リーシュは箒の腕を放し、離れていく。
今度は箒がリーシュを捕まえた。
「箒さん?」
「………………………………お前の、言う通りなのかも知れない」
本音が留守をすると聞いて、二人きりになれると思ったのかも知れない。
挑発的な服装で、手を出してもらえれば、と思ったのかも知れない。
自分は、リーシュとこうなりたかったのかも知れない。
一夏は、自分とリーシュの恋を応援している。全くと言っていいほど見込みがない。だから、リーシュに逃げているのかも知れない。
だけど、リーシュの姿を目で追ってしまう。
触れたいと思った。
声を聞きたいと思った。
抱きしめられたあの夜を、鮮やかに覚えている。
リーシュの胸の広さを覚えている。
溶けるような暖かさが身に沁みている。
今、リーシュと、あの時以上の近さで、触れ合っている。
「ここまでしたんだ……、最後まで責任をもて…………」
リーシュの首に腕を回し、強く抱きしめた。
「……優しくはしないよ?」
「の、望むところだ!」
箒の覚悟に揺らぎがない事を知ると、リーシュはふぅと息を吐いた。想定の一つではあるけれど、出来るならば辿りたくなかった道であるのだ。こうなってしまったと言うことは、リーシュの策が潰れたという事なのだから。
「……ディルドは使った?」
「あんなもの使うわけないだろう! とっくに本音へ返している!」
「あれは箒さんにプレゼントしたんだけど……。それなら箒さんの処女地は俺が初めて到達するわけだ」
「………………その言い方。……いやらしいぞ…………」
「箒さんをリラックスさせるため、と言って欲しいな。彼のアムンセン卿も未開の地に足を踏み入れるときはこんな気分だったのかもね」
ロアール・アムンセンは、人類史上初めて南極点に到達した探検家である。
「う~~~! さっきとは全然違うじゃないか……」
きゅう、と。箒はリーシュを強く抱きしめる。
この時、箒はリーシュの顔を見るべきであった。
唇の片端を釣り上げ、笑う様は正に邪笑。
「焦らすな……………………、――!!」
声にならない声が出た。
躊躇なく、一息で、奥まで、深々と、貫かれた。
貫き、裂かれる痛みが。
熱さが、固さが。
充足感が、幸福感が。
リーシュのそそり立った男根が、箒の秘唇を開き、膣口をこじ開け、処女膜を破り、膣の奥底へ、子宮にすら届こうと、貫いていた。
「箒さんの奥まで入ったよ」
「…………う、ん……」
「箒さんが、舐めてしゃぶった俺のものが、全部入ってるよ」
「い、いう、な……………………うぁっ!」
「箒さんが味わい飲み込んだ精液を、これから箒さんの中に放つんだ。俺の精液の味を覚えてる?」
「そ、んな、の………………あぁ……」
「すごく締め付けてくるよ。絶対に離さないって言ってるみたいだ」
「ちが………………ぁ……ぁっ……っぁ……」
囁き、腰を打ち付ける。
箒は引きずり込まれ、引き上げられ。
快楽に没入しようと、夢中になろうとすると、理性を刺激され我に戻される。
緊張と弛緩。
感情と理性。
心と体。
快楽と悦楽。
激しく振り回され、箒は耐えられなかった。楽な方を選んだ。体が、心が、勝手に選んでいた。
「リーシュのが…………入ってる……。そこが……ぁ……、いい…………」
中に出され、箒は幸せそうに下腹を撫でている。
不意に、股間に感触を感じ、目を向けた。
中に出された精液が逆流し、箒の股間を汚していた。それをリーシュが拭き取っている。
目が合い、お姫様がお目覚めかな、と気障なリーシュを反射的にベッドから突き落とした。
ぬるつく股間もあれだが、シーツを汚す血の跡に、箒の頭は機能停止するほどに茹ってしまった。
ベッドからシーツを剥ぎ取り、ついでに自分の濡れた下着や衣服も一緒に丸め、バスルームへ飛び込んだ。
リーシュは、やれやれ、と後を追った。
バスルームでは、
『だだだだだだダメだからな! ここでは絶対にダメだからな!!!』
と、激しい抵抗にあい、ことには及べなかった。
キスだけを交わし、要所だけを洗う箒と違って、リーシュはまたも湯に浸かっていた。
本日二度目だろうと三度目だろうと、風呂は何度入っても良いものなのだ。
箒は先に脱衣所へ上がり、リーシュにしっかり体を拭いてから出てくるように、と言付ける。
凄い男かもしれないが、ダメな男でもある。
これからは自分がしっかり面倒を見てやらないと、と。箒は使命感を胸に抱き始めていた。
ホットパンツは汚れていないが、下着は水洗いして脱衣所内に干してある。
上は無事だが、下をホットパンツだけにするのはあれだった。
少し考え、バスタオルを体に巻いて部屋に戻った。
「お邪魔している……わ…………よ……………………」
「誰だ貴様! こんな時間に男の部屋を訪れて…………!!」
「…………それはあなたもじゃないかしら?」
箒の見知らぬ女がいた。
部屋着姿のその女は、箒がしていた服装とよく似て、上はキャミソール一枚。下は股下指数本のミニスカート。
椅子に座り足を組み、挑発的な笑みを湛えていた。今やその笑みは凍り付いている。
言うまでもなく、更識楯無である。
「簪ちゃんに手を出したと思ったら他の女にも………………!」
嫉妬があった。
「簪!? …………本音、たっちゃんさん、それにこの女と簪………………!」
嫉妬があった。
た、たっちゃんさん…………、と呻く声は聞こえなかった。
無言で睨み合う二人。
箒は、最早リーシュの女になる事に何の抵抗もなかった。リーシュを支える女であろうと、決意していた。
そのためには、やはり女癖をどうにかしなくては、と考えていた。
その矢先に知らない女。知らない名前。
箒が知るだけでも、本音、たっちゃん、自分、簪、目の前の女。たっちゃんと目の前の女は、いまだ結びついていない。
男を盗られまいとする、女の本能が働いた。
楯無は、簪について話に来ていた。一割くらいは本当である。
残り九割は、たまにはベッドの上で、と思っていた。簪から、本音が今夜遊びに来ると聞き、口実もあることだし丁度良かった。
恋を秘すほど初心でも奥床しくもない楯無だが、最初の出会いから今日まで、ずっと翻弄され続けてきた。素直に好意を露にし、抱いてと迫るのは、なんだか全てを良い様にされているようで癪だった。
楯無も乙女である。
そうして訪れたら先客がいた。どう見ても事後である。
泥棒猫、と。視線が鋭くなった。
数秒か、数分か、十数分か。
ガラスのように張り詰めた沈黙が降りていた。
ガラスを割った者は、その破片に体中を引き裂かれるのだ。
「静かだね。箒さん、何かあったかな?」
沈黙を砕く愚者がいた。
箒の言付けどおり、しっかりと体の水気を拭き取ったはいいものの、バスタオルは肩に羽織り、全裸である。
決定的だった。
「簪ちゃんに手を出したと思ったらまたすぐ別の女にも手を出していったいどういうつもり!?」
「オリオール! 誰だこの女は!? 簪とは誰のことだ!?」
烈火の如く、である。全裸に突っ込みを入れてる場合ではなかった。
しかし、リーシュは慣れていた。
リリスの愛人と噂されるのは伊達ではない。
頬にもみじを作ったのは一度や二度ではないし、泣かせたのは三度や四度ではない。いまだ刃傷沙汰に及んでいないのは、高い回避スキルと、結局は誰もがリーシュを失いたくないからだろう。
これは修羅場ですらない。昼下がりのコーヒーブレイクとなんら変わらぬ日常茶飯事である。
「会いに来てくれて嬉しいよ、刀奈。君が自分から来てくれるなんて初めてだったね」
先ずは楯無に挨拶をし、
「箒さん。彼女は箒さんも知ってる女性だ。彼女が『たっちゃん』だよ」
「たっちゃん!? ……本音に聞いた話だと、オリオールに惚れ抜いて、スイスまで追いかけることを決めた女性だとか」
「うぐっ…………!」
大体合ってる。
箒はリーシュの女でいることは決めたものの、スイスまでついて行くかどうかまでは決めていない。さっきの今で、そこまで決断出来るわけがない。
だが、目の前の女は決断していた。
箒が楯無を見る目には、尊敬が宿り始めていた。
思わぬ先制攻撃を受けた楯無だったが、楯無は『更識』の『楯無』である。年下の小娘にやられるばかりの人間ではない。
瞬時に動揺を隠し、挑発的な笑みを浮かべた。
リーシュが口にした名前。箒。一年生の篠ノ之箒。重要人物の一人。箒のプロフィールは頭に入っている。箒の弱点を把握している。
箒が何を苦手としているか、楯無は承知している。
楯無は反撃した。
「こんばんは、篠ノ之箒さん。あなたは篠ノ之博士の妹さんなのよね。博士はお元気かしら?」
箒が姉を嫌っているのは周知の事だ。
箒が眉根を顰め、一歩下がるのを見て、楯無は内心で密かに微笑んでいた。
「刀奈」
「少し待ってもらえるかしら。わたしは今、篠ノ之箒さんと話しているの」
「……刀奈」
「もう……。すぐに相手をしてあげるわ。だから…………………………」
言葉が続けられなかった。
楯無は箒の弱点を知ってはいても、リーシュの禁句を知らなかった。
1年1組では、教師陣も含めて『篠ノ之』と口にする者は、一人を除けば誰もいない。唯一の例外が、リーシュの視線を撥ね付けられる織斑先生だ。
副担任の山田先生は、知らず『篠ノ之さん』と呼び、リーシュに睨まれ涙ぐんでいた。
生徒達はもちろんのこと、誰もが箒を、箒さん・箒ちゃん、と呼ぶ。
以前、楯無へISのロックについて話したときも、篠ノ之博士とは呼ばず、ISの開発者と呼んでいたのだ。
「刀奈は本当にマゾヒストなんだね。そうまでして俺を挑発するなんて、ね」
「え……、いや…………、そんな、つもり……………………」
リーシュは理性的な人間だ。
感情を暴発させることは先ずない。
そして、真に恐ろしい人間とは、感情を暴発させる愚者ではなく、理性的な賢者なのだ。
感情による犯罪よりも、理性的な犯罪のほうが遥かに重罪が下る。
人は、理性的な人間が恐ろしいと、知っているのだ。
理性でもって行われる残酷がいかに恐ろしいか、人間は知っているのだ。
楯無は、歩み寄るリーシュを前にして、一歩も動けなかった。
剣道で精神を鍛え、気合のぶつけ合いを得手とする箒を、呟きのたった一つで黙らせたリーシュである。
四年ほど前には、年齢が一回りどころか五倍以上の男性を睨みつけ、失禁させた前科もある。
言ってしまえば、潜り抜けた場数が違った。
奥底に潜ませるものが違った。
優しい笑みを浮かべるリーシュに頬を撫でられ、楯無は凍りついたように動けなくなった。
「箒さん」
「!!」
少しずつ後ろへ下がり、バスルームへ逃げ込もうとした箒を呼び止めた。
「こっちへおいで。本音さんから色々聞いて、人のプレイに興味があるんだろう? 俺と刀奈が愛し合うのをそこでゆっくりと見ていくといい」
「………………………………はい」
「そんな……………………、いや……、だめ…………、やめて………………。…………あぁーーーーっ!!」
楯無は、鳴いて、鳴いて、啼いた。
リーシュは容赦なく責め、箒は、自分への扱いが本当は優しかったのだと知った。
本音が持っていたディルドを見つけてからは更に拍車が掛かった。
前と後ろと、同時に責められ鳴かされていた。
箒は、リーシュを縛り付けるのは不可能、と判断した。
あれは一人で相手に出来るものではなかった。
責められ続ける楯無だが、声には甘い嬌声が混じり、顔には恍惚と悦楽とが現れていた。
箒が楯無を見る目には、再度の尊敬が混じり始めた。
もうゆるして、と。楯無はベッドに倒れこみ、気を失った。
なんだかんだと目的は達成できた楯無である。
「箒さん」
名前を呼ばれ、ビクリ、と震える。
「見ているだけは辛かったろう? 今度は箒さんの番だよ」
「いや…………わ、私は………………」
箒は、バスタオルを巻いた姿のまま、二人を正座して見ていた。
リーシュが合わせられた太ももの間に手を差し入れると、熱い。奥まで入れればぬめっている。
「辛い思いをさせちゃったね」
「そんな、こと……、わたしは、…………………………あぁっ!!」
箒も同じように責められた。
幸いにも、ディルドは使われなかった。
本音や簪では耐えられない責め方。鍛えている楯無と箒だからこそ受け止められる。
やがて箒も十数度目の絶頂を迎え、糸が切れた人形のようにベッドへ倒れこんだ。
ベッドに埋もれる瞬間、偶然か、体力が回復したからか、楯無が薄っすらと目を開いた。
目が合った。
共感があった。
同じ修羅場を潜り抜けた、強固な仲間意識があった。
知らず、互いに手を取り合い、共に意識を失った。
昨日の敵は、今日の友である。
リーシュは三度目の風呂を浴び、箒に言われた通り体の水気をきちんと拭って部屋に戻った。
ベッドでは、箒と楯無が手を取り合って眠っている。
二人の汚れをウェットティッシュで優しく拭い、体を冷やさぬよう肩まで毛布を掛けた。
セミダブルのベッドとは言え、リーシュが入る隙間はなかった。
もう一方のベッドは、シーツが剥ぎ取られたままである。
ベッドメイクをするか、と思い立ったところで、空いてるベッドがあることに気が付いた。
Tシャツにハーフパンツと、まともな部屋着に着替え、手土産を持って1025号室へ向かった。
ノックをすると、寝入り端だったのか、一夏が不機嫌そうな顔で出迎えた。
遊びに来たと伝えると、渋々と室内に入れてくれた。一夏の目が、手土産に注がれたのを見逃すリーシュではない。
何を言うまでもなく、一夏はグラスを用意する。
早速乾杯と相成った。
箒について訊かれたが、本音の友だちと意気投合して一緒に寝てる、と告げた。
大体合ってる。
既に数度目となるこの席は、一度目のような狂態を晒すことなく終わりを迎えた。
こうしてリーシュは酒の友と、空いてるベッドを確保したのである。
いたいけな少女を堕とし、純朴な少年を悪の道に誘う。
リーシュはやはり、悪い男だった。
大分先でちゃんとリベンジしてます。