オリシューとISヒロイン(ry 作:user
自分は今、男に組み敷かれている。
それを理解した途端に身体中が熱をもった。
男女のなにやらを想像して興奮したわけではない。羞恥だ。
痴態を晒していることへの羞恥ではなく、自身の無様への羞恥。
楯無とリーシュでは性差・体重・体格差などの要因によって、力こそリーシュに軍配が上がる。だが、格闘を見るならリーシュは素人だ。
楯無からすれば一目瞭然で、事実リーシュは護身術などの格闘技を修めていない。
なのにこの結果。
更識の当主として、裏側のプロとして、学園最強を体現する生徒会長として、一素人にしてやられるのは屈辱以外の何物でもなかった。
「お、おりなさいよ!」
「こらこら……」
リーシュは思いのほか上手かった。
楯無が起き上がろうともがいても重心を移動させて思うようにさせない。
挙句に腕をとり、頭の上で交差するように縛ってしまう。
「……ほどいて」
「だめ」
「ほどきなさい!」
「だーめ」
「このっ……いいかげんに…………」
「そろそろ大人しくしないと打つよ?」
うつ? 撃つ?
何を。
銃器を始めとする危険物は必ずセキュリティに引っかかる。仮に持ち込めたとしても、寮内で発砲すればリーシュと言えどももみ消すことは出来ない。
ブラフか。
楯無はそう判断して身をよじろうとしたところ、首筋に冷たく鋭いものが当てられたのを感じた。
ナイフではない。もっと細く鋭いもの。
注射針。
思い至ったと同時に動くのを止めた。
持ち込める、可能性は、あった。
注射器は学園内の医療設備からも入手できるし、薬物と言うものはほんの僅かな分量でも劇的な効果を発揮する。
僅か1ccで人を死に至らしめることが出来れば精神を錯乱させることも、重い後遺症を残す事だって可能だ。
「…………女の子を押し倒して脅すなんて最低」
「裸エプロンでわたしを食べて、と比べたらどうだと思う?」
「うぐっ……、そんなこと言ってないもん」
「言った言わないより、それを聞いたほうがどう受け取るか、だね。明日になったら一緒に一夏へ訊いてみようか?」
「うぅ………………」
「あれは確実に誘っていたし、こうも積極的なアプローチを受けて何もしないで帰したら逆に失礼だ」
「失礼じゃないから上から降りて」
「もう一つある。失礼がどーのこーの言うより、何もしなかったら自分は不能だってアピールするようなものだ。もし一夏が今の俺の立場で何もしなかったら、俺は指差して笑うね」
「ちょ、ちょっと、何するつもりなのよ!」
答えはなかった。
涼しげな衣擦れの音が聞こえ、ベッドサイドに白いブレザーとワイシャツが落ちるのを見た。
動悸が激しくなり、今度こそ羞恥で肉体が熱をもってくる。
リーシュが自分の上で服を脱いでいる。
「もう一度訊こうか。どんな用件できたのかな?」
「…………あなたの顔を見に来たのよ。リーシュ=オリオールって言えば経済に興味ない人でも知ってるし。日本のメディアが紹介した事だって何度もあったわ」
普通に生活をしていれば投資家なんて人種とは縁がない。生活に関わらなければ興味も持たない。名前を聞いたことがあっても顔までは、という人間が大半だろう。
リーシュの場合は特別でインタビューなどで雑誌の表紙を飾ったことがあり、端麗な容姿が注目されて広く知られるようになった。
ファッション誌などではなく経済誌の表紙だったが。
楯無がリーシュの姿を一目、と思ったのは嘘ではない。
休み時間に遠目に確認したが、近くでじっくり見てみたかった。
嘘ではないけれど全てではない楯無の告白を、リーシュはあっさりと両断した。
「はい、ダウト」
「え? ちょっ…………!」
背中にかすかな開放感が生まれる。
腰の少し上辺りで結んでいたエプロンの紐を解かれた。
「嘘じゃないわ!」
「どっちでもいいよそんなこと。面白くも刺激的でもなかったから減点だね。これが見た目通りに俺に抱かれに来たとか拉致に来たとかだったら加点したのに」
前者だったらなるようになってしまうし、後者だったら大問題に発展する。
いずれにせよ逃げ道はなかった。
「目的はまたあとで訊くとして、君の名前は?」
「更識楯無。ロシアの国家代表でIS学園の生徒会長。更識は対暗部用暗部でわたしが当主よ。これでいいでしょ」
「残念だけど、そこまでは調べがついた。でもそこまでだ。ヨーロッパから見れば日本は遠いね。時間もなかったしろくに人を遣ることも出来なかった。付け加えると『楯無』は更識の当主が襲名するものと聞いている。それは君の名前じゃないだろう? で、君の名前は?」
「……………………」
絶対に秘匿しなければならない類の情報ではない。
襲名以前は自分の名前を名乗っていた。当然、その頃から付き合いのある人間は自分の名前を知っている。
教えても痛手にならない情報なのに、話せなかった。
男性に教えるときは、名前と一緒に身も心も預ける。そんな少女らしい想いを抱き続けてきた。
リーシュは、水着の紐を解いた。
「っ!!!」
「綺麗な背中だ」
背に残る紐を除けて、両の手の平を楯無の背中に乗せる。
素肌が直に触れあい、楯無に温もりを伝えてきた。
意識してしまえば密着状態が続いている腰と太ももにも、スラックス越しに熱が伝わってくる。
自分が熱いのか向こうが熱いのか、わからなくなるほど熱をもっている。
「か………………、かたな、です……」
「どう書くの?」
「刀剣の刀に朝比奈の奈……」
「あさひなあさひな…………、ああ、奈良県の奈か。わざわざわかり難い言葉を使ってくれたね。と言うわけでダウト三回目だ」
「!」
水着の、ボトムの紐も解かれた。
隠れていた部分に外気が触れ、楯無の目からは見えなくても本当に脱がされてしまったのだと教えてくる。
これで全て脱がされてしまった。
こんなことになるのだったら水着なんか選ばないで、普通に下着を着けていたほうがましだった。
うつ伏せにさせられている楯無にはシーツの海しか見えなくても、上に乗っているリーシュからは見えてしまう。
「ね、ねぇ。からかった事は謝るから……。もう、ゆるして…………」
「お互いに生きている世界は違っても、謝ったら許されるなんて甘い話は一度もなかっただろう?」
濡れ始めたか細い訴えは即座に却下された。
無駄だろうとは思っていた。楯無の中で諦念がより深くなっていく。
こんなことがあるかも知れないと考えた。
大胆なポーズで挑発して、慌てる姿を見たいと思った。取り繕った澄まし顔の下にある本性を見てやろうと思った。
挑発したら興奮されて押し倒されて、犯されてしまう、と。夢想した。体を隅から隅まで弄ばれて奪われてしまうと空想を遊ばせた。
あくまで夢想、空想だった。あり得ない可能性として妄想を楽しんだ。
危険な任務についていけばいつか近しいことが起こりうるかも知れない。ISを持つ自分にその可能性は低いだろうが。
今は奪われてしまった。
こんなことになるなんて、考えたけれど考えもしなかった。
でも、こうなって良かったのかも知れない。
リーシュなら過度の暴力を振るうことはないと思うし、自分を脅したとしてもリーシュが得るものは少ないからだ。互いに活動するエリアも分野もまるで違うのだから。
涙を呑んで耐えていれば男は終わると聞き知っている。
確定した未来に楯無は、ぐす、と涙をこらえた。
なんだかしおらしくなってしまった楯無を下に敷いて、リーシュは釈然としない思いでいた。
まず第一の前提として、リーシュは女性を暴力でもって従わせるのは嫌いだ。犯すなんてもってのほかだ。人間の世界も弱肉強食だからこそ、獣のような振る舞いを固く忌避する。
こうして楯無を辱めているのは単なるお仕置き。
調子に乗って馬鹿なことを続けていればいずれ大きな火傷をする。そうなる前に誰かがたしなめなければいけない。
楯無がリーシュの笑みに慈悲を見たのは勘違いでも何でもなかった。
この程度の悪戯で理性のたがが緩むほどリーシュは愚かでない。
もちろん楯無をすぐに解放するつもりはなく、同じことを繰り返さない程度に懲らしめる予定だ。
予定だったのだけど、想定と少し違う感触が返ってきた。
楯無のノリが良すぎる。
抵抗をなくすように誘導してきたのはリーシュだが、楯無が自らそちらへ歩み寄っているような気がしてならない。
両手首を縛った拘束は緩んでいるし、打つぞと脅し首筋に当てたものは0.2mmのシャープペンシルだ。
想定外の事態に遭遇して気が回らないのか、とは思えない。事前の情報から得た『楯無』の像とひどく合わないのだ。
それとも直接的な危険はありえないと見越しての無抵抗なのだろうか。
押し倒して上に乗ったところまではリーシュの予想通りだったが、どこかで何かのスイッチが入ってしまったような気がする。
まさか、と思った。
右手を後ろに回し、ゆっくりと下げていく。
手の平は開いて、中指だけをやや折り曲げて。
余計なところを触らないように。楯無の肌が発する熱を感じてからは一層に慎重に下ろしていく。
中指が熱いものに触れ、楯無の背が微かに跳ねた。
すぐに手を戻し中指を確認する。
部屋の明かりを受けて、そこだけが光っていた。
親指とこすり合わせれば粘性があってよくすべる。明らかに汗ではなかった。
ベッドシーツに顔を押し付けていた楯無が、首をねじって振り向いてきた。
覗く瞳は情欲に潤んで半開きの口からは荒い息が漏れている。
止めてくれた、と安堵している顔ではなかった。どうして止めるの、と困惑している顔だった。早く続きを、と訴える顔だった。
リーシュは全てを理解した。
「あうっ」
立ち上がり楯無の肩を掴んで強引に転がした。
エプロンの紐は解かれ、水着のトップもボトムも解かれている。上下共に紐で結ぶタイプを選んだのはこのためかと勘繰りしてしまう。
伏せて隠れていた楯無の裸身が、明かりの下に晒された。
隠そうともがく素振りを見せても腕は縛られたまま。せいぜいが足を閉じることしか出来ない。先に触れたときは開かれていた。閉じていれば肉を掻き分けないと触れられない部分に触れられたのだから。
見下ろす楯無の裸身は、綺麗だと思う以上に卑猥だった。
スタイルはリーシュの肥えた目から見ても非常に整っている。
片手では収まりそうにない乳房は仰向けになっても形が崩れず、つんと上を向いている。腰の括れからヒップへといたるラインはまさに曲線美と言え、人体の美しさはここにあると主張していた。
それだけだったらリーシュは楯無の美貌に感心するに留まり、機会があったら絵や写真のモデルを頼んでいたかもしれない。
リーシュの眉間に皺を作らせるポイントが幾つもあった。
肌全体が上気している。ロシア代表なのは幾らなんでも関係ないだろうが、楯無は肌が白い。色素が薄い。赤くなるとすぐにわかる。まるで体全体がピンク色に染まっているようだ。
乳房の先端が尖っている。柔らかそう、ではなくて。弾力がありそう、になっている。言ってしまえば乳首が立っている。肌とさして変わらない色の乳輪から赤く色づいた乳首が自己主張している。乳首の先端は透明感を感じさせるほど。
ぬめる様な腹から視線を下げ、下腹部を見れば陰毛が目に映る。さっきまで着けていたビキニのように際どい下着を好むのだろうか。丁寧な処理をしてある。VではなくIの形をしていて、薄めなため地肌が透けて見えた。今はぐっしょりと濡れそぼっている。膣口が垂れ流した愛液を吸って濡れている。
視線をずらしてベッドに張り付いているボトムを見れば、下着で言うクロッチの部分から前面が、元来の生地とは違う色を放っている。紐を解かれる前から濡らしていたと思われた。
美しい裸身を晒して身をよじる楯無は、どうしようもなく卑猥だった。
「レイプ願望のマゾヒストか……」
「ちっ、違う! わたしはそんなんじゃ…………!」
リーシュの呟きが楯無の耳に届いた。
逸らした顔を正面に戻して叫ぶと、見下ろす男と目が合った。言葉が出なかった。
赤青の神秘的な瞳に気圧された。蔑んでいた。目が雄弁に語っていた。
自分も知らなかった性癖を突きつけられた驚愕と、正常から逸脱しつつある羞恥と、目の前の麗人から否定された恐怖と。感情が千々に乱れて収拾が付かなくなっている。こんなのは更識の『楯無』ではない。愚かな16歳の小娘だった。
「一夏には通用しなかったろうね。あれはあれで中々純情だ。そんなプレイがあるなんて想像も出来ないだろう」
「違う!」
「確か、回し受け……、じゃなくて誘い受けと言ったかな。挑発して相手の行動を誘い、一身に受ける。刀奈の行動そのままじゃないか」
「違う……」
「そんなにフラストレーションが溜まっていたのか? 接触したその日に行動するほどに」
「ちが……う…………」
違う、のだろうか。
楯無には対等な相手がいなかった。
IS操者として、学園最強に君臨している。最強とは孤独なものだ、とは言わない。ランクをつければ何時だって何だって一位は一人だ。それでも孤独にならないのは、それが全てではないからだ。
ISから離れ、暗部の更識の立場でもやはり孤独とは違う。権謀術数渦巻く世界であっても頼りになる仲間がいる。妹とは少し距離が出来てしまっているけれど、妹は妹で、大切な妹だ。
頼りになる友人がいても、彼女は自身と対等とは言えない。
可愛い妹とは思っても年の差がある。たったの一つ違いでも姉と妹とでは立場が違う。『家』の影響が強い、古い家柄なのだから尚更だ。
同い年、同じ仕事であっても明確な主と従がある。
生徒会の仕事をサボるのは、猫のように自由でいたかったからと思っていた。面倒臭いし甘えれば代わりにやってくれるからと思っていた。
果たしてそうなのだろうか。
自分の従者である布仏虚に構ってもらいたかったからなのだろうか。叱って欲しかったのだろうか。
叱られてげんなりした事はあったけれど、うんざりしたことは一度もなかった。
自分は叱られたかったのだろうか。対等以上の上位者から詰られたかったのだろうか。
対等以上の上位者なんて『楯無』襲名以前の両親以外に一人もいなかった。一般の教職員はある意味上位であっても住む世界が違う。
目の前に立つ男はいずれとも違う。
世界の区分けなどものともしない巨人。
彼ならば、と考えはしなかっただろうか。
どこかで期待して、あんな愚にもつかない挑発をしてしまったのだろうか。
自分は。
更識刀奈は、リーシュが言うような女なのだろうか。
ふぅ、と息を吐いた。楯無が震える。
渋面を作り半目で見下ろす。目が合った。すぐさま逸らされる。
溜まった涙が流れ始めシーツを濡らす。下唇を噛み、楯無は声を上げずに泣いていた。
リーシュはベッドの上に立ったまま。楯無の拘束は手首を締めるタイのみ。お約束のように緩んでいて、数度引っ張れば解けてしまいそう。
攻撃を仕掛けてくる気配はまるきり感じられない。反対側のベッドに放ったISには一度も視線を遣っていない。
きっと、彼女は本当に不本意なのだろう。辱められて羞恥と怒りを感じているのだろう。それなのに体は一向に動こうとせず、泣いてしまったのだろう。
推測が合っているか間違っているか、リーシュにはどちらでも良かった。他人は他人で自分ではない。推し量るには限度がある。感情の共有は大切なことでも、要はどう行動するかだ。
即ち、優しく諭すかこのまま犯すか。
無言になったリーシュに不安を感じたのか、楯無が瞳だけでこちらを窺ってくる。泣き顔はのぼせたように耳まで赤く染まっている。
リーシュは無言のまま爪先で楯無の足を突付いた。
一度目はびくりと大きく震えただけで、それ以上の反応はなかった。
二度目は一度目ほどの震えはなく、リーシュの要求がわからないようで困惑した顔で見上げてくる。
三度目で楯無はリーシュの要求を理解した。半ば無意識に、体が勝手に要求へ応えてしまった。
おずおずと、蕾が花開く速度で、楯無は閉じていた足を開いた。
空いた隙間にリーシュの足が割って入り、再度楯無の足を突付く。
ここに至って、楯無はようやく自分が求めるものを理解した。
肉体の発する感情が強く主張し、理性が色々と喚いた。それら全ては自分を納得させるために、後で自己弁護できるような理論展開を行っていた。
曰く、無理強いだった。ISを奪われた。知恵比べに負けた。リーシュは分野は違えど篠ノ之博士と伍すると言われるくらいなのだから仕方ないし。
あの顔と体で迫られたら誰だって拒否できないし。
楯無は素直に従った。
膝を曲げ、足をベッドに立ててから開いていく。
すすり泣く声は、いつの間にか熱く荒い吐息に変わっていた。
そこは艶かしく潤んでいた。
淡く柔らかい肉色は食欲にも似た何かを刺激してくる。
一度の愛撫もなしに滴り落ちるほど濡れている。リーシュを受け入れようと開いている。
女にここまでさせてしまい、手を出さないわけにはいかなくなった。
ベルトのバックルが床とぶつかる音を聞いて、楯無の胸は激しく高鳴った。