オリシューとISヒロイン(ry 作:user
「…………………………山田先生……」
「先生は今忙しいんですから、すこーし待っててくださいね」
山田真耶。1年1組のクラス副担任。
生徒達からは、おっとりしているとか、天然ボケとか、どじっ娘とか、先生なのに年下に見えるとか、色々言われ思われている真耶であるが、低く響くリーシュの声に大人の余裕を見せつけた。
もしも1年1組の生徒がこの場にいたら、目を疑ったことだろう。
そこにいるのはベビーフェイスの真耶ちゃん先生ではなく、大人の女教師だったのだから。
美麗なことこの上ないとの評価を受け続けるリーシュは、体重と同じ重さの白金よりも万倍以上の価値があると称えられている。神が美の絶対的基準として地上に遣わしたとさえ言われ、付けられた愛称はビーナスの愛し子。
ビーナスはローマ神話における愛と美の女神であり、ラテン語読みではウェヌスとなる。ギリシア神話におけるアプロディーテーと同一視され、美の象徴として広く知られる存在だ。
ビーナスが愛して止まないとして、付けられた愛称がビーナスの愛し子である。
そのリーシュと、教職員準備室で二人きり。放課後であり、周囲に人気は感じられない。完全に二人きりである。
にもかかわらず真耶は、動転することも、動揺することも、困惑することも、緊張することも、頬を赤く染めることもなく、平時以上に落ち着いた精神状態のままリーシュをあしらってみせた。
真耶がこの域に達するまでは、涙なしに語れない。涙を流したのは、無論のこと真耶である。
当初は全く違った。酷いとしか言いようがないほど酷かった。
リーシュと二人きりになり、男性経験が皆無であった真耶が緊張しないわけがなかった。
歩けば右手と右足が同時に動いて何もないところで躓き、口を開けば舌を噛んで涙目になり、お茶を淹れればリーシュに掛けるのは良いほうで、作成した書類を台無しにすることもあった。こっそりと、ふぅと息を吐くリーシュには気付かないでいた。
しかし悲しいかな、人間は慣れる生き物である。
週に一度以上の頻度で行われる二人きりの作業が、数ヶ月も続けば真耶であっても慣れるものなのだ。
逆を言えば、リーシュはそれだけ教師側の仕事を投げられたと言うことになる。
事の起こりは、リーシュのIS学園入学前にまで遡る。
前提として、リーシュはIS学園の授業を受ける必要がない。
IS学園はIS操縦者育成用の特殊国立高等学校であり、文字通り高等学校に相当する。
世界有数の大学卒業程度の学力を持ち合わせているリーシュが、わざわざ高校レベルの一般教養科目を履修する必要があるわけもなく、また、履修したとしても1年間の在籍では卒業証書をもらえるわけがない。リーシュがIS学園に在籍しているのは、男性適合者としてのデータを収集するためなのだから。
にもかかわらず、リーシュが授業を受けている理由の一つは、他の生徒達との関係を良好に保つためである。
リーシュのIS学園入学が決まったのは、入学式の五日前であることは既に述べた。
急な入学であり、単純な書類整備であっても現場の負担は大きかった。
それに加え、世界有数の重要人物である。
スイス政府と、何よりもリーシュの会社から徹底した安全性を求められた。
学園のセキュリティについて総点検を要求されたのは言うまでもなく、更に絶対の安全を求められるも、そんなものを保証できるわけがなかった。万が一なら兎も角、兆に一の可能性まで潰せるわけがない。
代わりに、リーシュに万が一があった時の賠償について要求された。
天文学的な数字である。
各国が出資して設立されたIS学園と言えど、払えるわけがなかった。
賠償についてはしばし平行線を辿り、リーシュの身の安全に対して保険が掛けられる事になった。
引き受け手が現れるはずがなかった。
万が一にもリーシュの身に何かがあれば、天文学的な額を払う羽目になるのだ。間違いなく、会社が消し飛んでしまうような巨額だ。可能性は極々僅かと言え、どの保険会社も尻込みし、結果、複数の保険会社が分散してリスクを引き受けることになった。
言うまでもなく、それらは全て、リーシュの会社が全額出資している保険会社である。
一日あたりの保険料は、山田先生と織斑先生の月給を足して2を掛けた程度の数字である。
IS学園全体の予算からすれば十分受け入れ可能な額ではあったが、現場で働く人間達にとって面白いわけがない。徹夜で書類仕事及び交渉をさせられた恨みがあった。その上、幾つかの条件を飲まされたのだから何を況や、である。
念のために付け加えるが、リーシュの会社からの要求であって、リーシュからの要求ではないのだ。リーシュは会社の代表であっても、会社自身ではない。会社には会社の人格らしきものが生まれ、だから法人と呼ばれるのだ。
IS学園の教職員達から、入学前から恨まれていたリーシュであるが、やはりリーシュである。
入学直後から、学園長を始め、教員、事務員、更には用務員から食堂で働く料理人達にまで、一人一人に挨拶をして回っていた。
紳士的で丁寧な物腰であり、あのリーシュがわざわざ、と。相好を崩し、誰もがリーシュを暖かく迎え入れた。
誤魔化されない者が一人だけいた。
ブリュンヒルデこと織斑千冬である。
1年1組のクラス担任であり、リーシュが自分のクラスの生徒となることが決まった瞬間から、容赦なく仕事を投げることを決定していた。そのために、リーシュをクラス代表補佐、と新設の役職に着けたのである。
セシリアが、リーシュに仕事を振るときは自分を通せ、と訴えたが、リーシュに振っている仕事は教職員がすべき仕事だったのだ。セシリアに話を通せるはずがなかった。
もっとも、今となっては教師の代わりにテストを作っていると知られてしまっている。二人の女教師が、暗い復讐心に身を投げた結果である。
このことからわかるように、復讐は何も生み出さないのだ。
有能すぎたリーシュも原因の一つだ。
既にビジネスマンとして大成しており、守秘の意味を知っているのも尚良かった。
始めの内は簡単な書類仕事。
何故かテストの採点が加わり、テストの作成になってしまうまで、大した時間を要さなかった。
学校のテストとは、入力に対して出力が決まっている。
言い換えれば、ああすればこうなる、が完全に成り立っているものばかりだ。
入力に対し、出力を導き出す論理が生徒達に備わっているかどうか。それを測るのがテストである。
生徒達の何を測りたいかが決まっているならば、入力であるテスト問題を作るのは、リーシュにとって簡単なことだった。ただ、文脈に沿って導き出すだけでよい。
パズルを作っているようで、面白くも感じていたリーシュである。
そのような経緯があり、リーシュは真耶と共同で作業を行ってきた。セシリアが欲しかった立場は、真耶が奪っていたのだ。
真耶は、1年1組のクラス副担任である。
当然の事ながら、リーシュにどのような噂があるのか十分に承知していた。
緊張しないわけがなかったが、今日に至るまで何も起こっていない。
躓いてリーシュにもたれ掛かり、胸を鷲掴みにされたことが何度かあった。のみならず、押し倒してしまったことすらあり、鼻先数センチの距離で見詰め合うこともあった。
リーシュのスラックスにお茶を零し、慌ててリーシュの股間にハンカチを当ててしまったこともあった。
その度にリーシュは、
『申し訳ありません、山田先生』
『お怪我はありませんか、山田先生』
『私は大丈夫です。山田先生こそ火傷などされていませんか』
紳士であった。
そんなことが何度も。何度も起こったにもかかわらず、リーシュからは何のアクションもなく、紳士的に真耶を気遣うばかりであった。
噂多きリーシュから何もされず、される気配もなく、真耶は悟ってしまった。
『わたしって…………女として終わってたんだぁ……………………』
はらりと、涙を落とした。
悟ってしまった真耶は、それまでの手抜かりは何処へ行ったものか、遺憾無く優秀を発揮した。
悲しみを忘れるため仕事に打ち込んだと、本人も気付かないでいた。
更には、生徒達の恋模様も影響した。
誰それが好き。
手を繋いだ。
キスをした。
その程度であったならば、微笑ましい、羨ましい、で済んだことだろう。
疑わしいレベルの仲良しであっても、いいなぁ、で済ませられたことだろう。
シャルロットが、灰色を真っ黒に塗り潰した。
口には出来ない関係。
真耶は成人している女性である。二十歳を過ぎて幾年も経っていないが、一応は大人の女性である。
それが何を指すのか、わからないわけがなかった。
真耶の今までで、異性との最も濃密な接触は、父親と手を繋いだことだった。
早くにISの世界に入ってしまった真耶だ。ISを起動出来るのは今までは女性だけであり、女性だけの社会に組み込まれ、異性と縁遠い生活を送っているのだ。
『妬ましい』が加わらないわけがなかった。
実のところ、リーシュが真耶を魅力的に思わないわけがない。
セシリアが評したように、可愛らしいベビーフェイスに豊満な体。
真耶の胸に触れてみたいと何度思ったことか。
けども、一応は教師と生徒であり、リーシュは公私を完全に分けられる人間だ。
それに加え、十の時間で済む作業に、百や二百も掛けていられるわけがなかった。
言い換えれば、真耶の涙を拭うより、作業効率をとったとも言える。
果たして、リーシュが悪いのか否か。それは誰にもわからない。
リーシュからの密かな教育を終えた真耶は、IS学園で教鞭をとる人間に相応しく、優秀さを見せ付けた。
元日本代表候補であり、優しい性格が難をして国家代表の座は逃したものの、実力は織斑先生の折り紙つき。
一芸に秀でた人間が、他の分野でも秀でていることは珍しいことではない。
リーシュが他の生徒に混じって授業を受けているもう一つの理由が、彼女ら学園教師を見るためなのだ。
1年間のカリキュラムを終えたら、折を見て引き抜いてしまおうと画策しているのは、リーシュ以外の誰も知らないことである。
そうして、セシリアが止めを刺した。
『殿方が放っておかない』
放って置かれたから、今の真耶があるのだ。
真耶は、暗黒面に堕ちた。
リーシュは、今、目の前にいる可愛らしい女性が、一教科だった期末テスト作成を全教科にしてくれた元凶とは、思ってもみないでいた。
「…………山田先生!」
「大きな声出さないでください。あと少しで確認が終わりますから、もう少し待って――!?」
リーシュが、真耶の肩に手を置いた。
それだけで、真耶は弾かれたようにリーシュへと振り返った。
真剣な顔で、真耶を見詰めるリーシュがいた。
「な、なんですか? …………も、もしかして、怒ってるんですか? 全教科って言ったのは確かにわたしですけど、……織斑先生だって、賛成してくれたんですよ?」
「…………………………」
ここに犯人がいた。
しかし、既に終えた作業について蒸し返すリーシュではない。
無言で、もう片方の手も真耶の肩に置く。
真耶は、リーシュに両肩を掴まれて、釣られるようにして立ち上がった。
リーシュから真耶に触れたことは、唯の一度もなかったのだ。
動悸が激しい。
何が起こっているのか理解がついていかず、浮かされたようにリーシュを見詰めると、真直ぐに見詰め返された。
「先生がいけないんですよ…………。僕の気持ちを知っていながら、そんな態度をとるから………………」
「え? え!? ええ!!」
真耶の、掴まれた肩が引き寄せられる。
「山田先生…………」
「ええ!? だ、ダメですよ! わたしとオリオール君は……、教師と、生徒なんですから…………」
「山田先生……。リーシュって呼んで下さい…………」
「そんな……。リーシュ、君………………。ダメ、ですよ…………」
「やっとリーシュって呼んでくれましたね、山田先生。いや……、真耶さん」
「はぅっ!?」
二人ともノリノリであった。
リーシュは、日本製のポルノグラフィに女教師物、と言うジャンルがあるのを知っていた。
セクシーな女教師が純真な男子生徒を誘惑し、関係を持ってしまうと言うのがそれらのストーリーだった。ポルノグラフィを収めたディスクが秘書に見つかり白い目で見られ、別の女性に粉砕されたのは余談である。
リーシュは純心から程遠く、真耶はセクシーと言うよりも可愛らしい女性であるものの、男子生徒と女教師であるのは確かだ。
リーシュは教師と生徒プレイに興味があるわけではなかったが、いざ始めてみると背徳感があり、興奮を覚えた。
肩から手を離し、真耶の顎をつかんで上を向かせた。
真耶は、抵抗することなくリーシュの唇に顔を向け、目を閉じた。
真耶が、リーシュの考えを読んでプレイに乗ったわけではない。
何度も。
それこそ何度も、脳内でシミュレーションしたシチュエーションなのだ。
真耶は、リーシュの噂を知っているのだ。
二人きりで作業するうちにリーシュに迫られ、なるようになってしまう。
何度想像したか知れないほどだった。
今、想像通りのことが起こっている。
胸は高まり、体が熱を持っていく。
どうしよう、と思わないでもない。
けども、真耶が想像してきた二人は、その場の雰囲気に流されて、いつもいつも、なるようになってしまっていた。
「真耶…………」
「リーシュ君…………」
リーシュは、瞳を閉じた真耶に呼びかけ、真耶も呼びかけに応えた。
そうして、真耶の唇に、リーシュが触れた。
強く押し当てられ、真耶の柔らかな唇が形を変える。
ただし、真耶の想像とは全く違う感触だった。
動転して勢い良く目を開くと、何故かリーシュの顔が見えた。
「ふぇ!?」
キスとは、少なくとも唇同士のキスをするならば、真耶の唇に触れているのはリーシュの唇でなければならないはずだった。
けども、真耶からは、何故かリーシュの顔が見える。
キスをしているならばリーシュの顔は見えないはずなのに、どういうわけか、リーシュの顔が見えてしまう。
恐る恐る視線を下げていくと、リーシュの肩が、腕が真耶に伸びて、人差し指だけを伸ばした手が見えた。
真耶の唇に触れているのは、リーシュの人差し指だった。
リーシュは口角を釣り上げ、意地悪く笑った。
「冗談ですよ、山田先生」
ずっと触れてみたいと思っていた真耶なのだ。可愛らしく優しい女性で、大人の色香、とは言えないかも知れないが、時折見せ付けてくる胸の谷間に、手を入れてみたいと何度も思っていた。
真耶が受け入れようとしているのを、わからないリーシュではない。
このまま、と思わないでもなかったが、睡眠欲が打ち勝った。
全教科の期末テストの作成を命じられ、ここ一週間の平均睡眠時間は一時間を切っていた。
真耶の可愛らしく慌てる様を見ることが出来、幾分溜飲が下がったリーシュは、部屋に戻って一週間分の睡眠を取り戻そうと、外道過ぎることを考えていた。
「ふぇ…………」
「?」
キスではなかった。
胸を高鳴らせ、待っていたのに訪れたのは、唇ではなく指だった。
憧れていたシチュエーションは、幻だった。
真耶は、耐えられなかった。
「ふぇぇええぇぇえぇええーーーーーーーーーーん!!!!」
(泣いちゃった!?)
真耶は、泣いた。
年下の男の子にからかわれた、とは思わない。
ときめいたのだ。
胸が高鳴り、瞳を潤ませ、キスを待っていたのに、やってこなかった。
ときめきは、幻だった。
そして、わかってしまった。
自分にそんなときめきが来ることなんて、これからずっとないであろうことが。
悔しくて、苦しくて、辛くて、悲しくて、リーシュが恨めしくて。
堪らなかった。
人前でとか、異性の前でとか、年下の男の子の前でとか、そんなことは一切考えられなかった。
胸の苦しみに火がついたかのように、真耶は声を上げて泣いた。
怒るかも知れない、とリーシュは思っていたが、泣かれるとは思っていなかった。
子供をあやすように、慌てて真耶を抱きしめた。
泣いている相手に、感情的になってる相手に言葉は無意味だ。
「離してくださいぃ!」
真耶の言葉は聞かず、抱きしめる腕に力を入れる。
言葉にならないから、感情なのだ。
言葉にならないものに言葉が通じるわけもなく、行動で示す他ない。
「リーシュ君のばかぁ!」
「真耶が可愛らしくて……、つい」
「ばかばかぁ…………」
割れるような泣き声も、次第にすすり泣きへと変わり、やがて唸るような声に変わっていった。
真耶は、いまだリーシュに抱きしめられている。
唸るような声も次第に消えて、真耶は、縋るようにリーシュの制服を掴んでいた。
少し前から気付き、声を上げられなくなっていた。
リーシュの余りにも非道な仕打ちに、今まで培ってきた脳内シミュレーションによる成果が、リセットされてしまったのだろうか。
静かな部屋で二人きり。
リーシュに抱きしめられている。
恨めしく思った男だが、離して、とは言えなかった。
リーシュの手が、あやすように背を撫でているのは心地よかった。
けども、もう一方の手が。
耳の先まで紅潮して、抱きしめられているのだから動悸が伝わってしまっているだろうが、それすら気に掛けられず、真耶は非難するようにリーシュを見上げた。
「はうっ!」
鷲掴みにされた。
リーシュの手は、片方は真耶の背を撫でて、もう片方の手は尻を撫でていた。
スカートの上から、尻を鷲掴みにされた。
密着しているのだから、わからないわけがない。
下腹に、スラックス越しにリーシュの膨らみを、感じていた。
「真耶…………」
リーシュの声が、先とはまるで違った。
リーシュは、ロールプレイの生徒と教師としてではなく、真耶を見詰め、真耶へ呼びかけた。
「か……、からかって、いるんですよ、ね?」
リーシュは無言で真耶の背を撫で、真耶は胸に微かな開放感を覚えた。
ブラジャーのホックが外された。
尻を撫でていた手が、真耶の体の前に回っていく。
「!?」
真耶の乳房に指を這わせ、強く握る。
真耶の失敗によるものではなく、リーシュがからかっているわけでもなく、真耶はリーシュに、乳房を触れられ鷲掴みにされた。
「だ、ダメですよ………………。わたしは先生で、リーシュ君は――」
「半分生徒じゃない、だろう?」
「あう…………」
真耶が好んで着るワンピースは、襟が広く取られ、胸元を、胸の谷間さえ見せつけ、インナーを覗かせている。リーシュと二人きりになる時はここまで油断した服装を取ることはなかったのだが、リーシュに女性として意識されていないとわかると、次第に元の好みへと戻っていった。
「あ…………あ…………あぁ……………………」
リーシュが真耶の肩に両手を置き、襟に指を入れて下げていけば、真耶はワンピースを、インナーも、ブラジャーすらまとめて、脱がされていく。
真耶の乳房が段々と露になり、乳房の先端が顔を覗かせたところで、リーシュは手を止めた。
真耶は、抵抗できなかった。
抵抗することも、声を出すことも、取れる選択肢は一つもなく、リーシュのされるままでいた。
憧れのシチュエーション、なのかも知れない。
だけれども、所詮は脳内シミュレーションだったのだ。
そうなってしまえば、真耶は初心な処女に過ぎなかった。
全身が火照り、頭は茹ったように思考を放棄し、口からは意味を成さない声が漏れるばかり。
「ここまでして、冗談なわけがないだろう?」
リーシュは真耶の顎を掴み、上を向かせた。
真耶の瞳は先の涙の名残か、それとも愛欲によるものか、潤み、リーシュを見上げている。
リーシュはこの一週間と言うもの、期末テストの作成に掛かりきりだった。
空いた時間があるわけがなく、授業、食事、入浴に僅かな仮眠以外の時間は一秒たりとも存在していなかった。
当然、誰かと行為をする時間があろうはずもなく、強制的な禁欲生活を強いられていた。
IS学園に入学してから、十六時間以上、射精をしなかったことは一度もなかった。
それが丸々一週間である。
言ってしまえば溜まっていた。
そして真耶は、生徒達から年下に見られる可愛らしい女性ではあるものの、成人した女性である。
生徒達からはない、化粧の甘い匂いが鼻をくすぐった。
今のリーシュにとって、媚薬にも、興奮剤にも等しい香りだった。
抱きしめた肉体からは、柔らかさと、匂い立つ色香がある。
リーシュが反応し、興奮しないわけがなかった。
リーシュは、すぐには唇を落とさなかった。
真耶の唇を指で撫で、薄く開かれた口に入り込み、舌を弄り始める。
その間もずっと、真耶の尻を撫で上げている。
真耶の顔が、段々と恍惚に溶けていく。
リーシュの指が真耶の口から離れたときには、真耶の唾がたっぷりと塗されて、白く光る糸を引いた。
「あぅっ!」
真耶の唾を、真耶の乳首に塗りたくっていく。
真耶の顔が泣きそうに歪んでいくのを、リーシュは意地悪く見詰めていた。
真耶の瞳に涙が溜まり、零れそうになるのを待って、リーシュは真耶の頬を両の手で包んだ。
身をかがめ、真耶と自身の唇が掠るような距離で、止まった。
真耶は、両手が動かせなかった。
ずり下げられた服が、肘の辺りで止まっている、無理に動こうとすれば破れてしまう。
リーシュは、キスをしてこない。
真耶へ、自分からしろと言っている。
教師である真耶に、生徒へキスをしろと、言葉に出さずに言っている。
だけれども真耶には、もう教師も生徒もなかった。
目の前に、ビーナスの愛し子とさえ呼ばれる男がいる。
自分がどれだけドジを踏んでも、笑わず貶さず、真摯に向き合ってくれた男がいる。
真耶は、どうしてあんなにも心中が荒れていたのか、ようやく気付いた。
リーシュと関係を持ったであろう生徒達へ、嫉妬していたのだ、と。
目の前に、リーシュの唇がある。
何度も想像した唇がある。
躊躇うわけがなかった。
真耶は、少しだけ背伸びをして、リーシュの唇へ、唇を合わせた。
本話で一旦作品削除
理想に捜索願を出された
2015.2であるらしい