【Rewrite】命のカタチのその先は【瑚太朗×小鳥】 作:千月華音
前回からの続きです。よろしければお付き合いください。
「ほら小鳥。これなんてどうだ?」
病院からの帰り道。
近くのホームセンターに立ち寄って、二人で買い物をしていた。嬉しそうに店内を物色する瑚太朗を、小鳥は苦笑しながら眺めていた。
……こんなに嬉しそうな瑚太朗くん、初めて見た。
検査結果は――陽性。
妊娠して二日目という診断だった。
二日前というと、瑚太朗の家でセックスした日だろう。あのときを思い返すが、どう思い出しても妊娠して当たり前のことしかしていなかった。
安全日は小鳥の勘違いだった。
きっちり危険日だったことを、医者から告げられたとき、心の中で後悔というより運命めいたものを感じていた。
まあ……。
産まれることは、できないが。
それでもいい。こうして幸せそうな彼を見れるのだから。
ごめんね。
お腹を擦ってまだ形にもなっていない命に謝る。
命って――なんだろう。
産まれていないのに、確かにここにある。まだ自我すらないけれど。脈打って、時の経過とともに、遺伝子が結合した生命が、やがて産声をあげてくる。
生きていてよかったと思えるその日まで、生きていく。
そこまで辿りつけない命に、謝罪してもしきれないけれど、小鳥はそれでも喜びを感じていた。
魔物を作った――あのときよりも。
「やっぱり男かな。女の子のほうがいいけど、男だったらこんな可愛い産着はいらないよな」
「赤ちゃんは、男でも女でも、可愛いものを着せていいんだよ」
「そうなのか? なあ、小鳥はどっちが欲しい?」
「あたしは、どっちでもいいよ」
「小鳥が母親って、なんかまだ想像がつかんな。実際に見てみないことには」
「見るって、なにを?」
「おっぱいをあげてる姿」
「……っ! 変な想像すんな!」
相変わらずスケベな男に腕を振りかぶると、その手を掴まれ、胸の中に抱きしめられた。
「ちょっ…」
ここ、店内! と言おうとして見回してみると、誰もいなかった。いつの間にか人気がまったくない通路の中に連れこまれていた。
「小鳥」
「あ、あのね! いくら誰もいないからって!」
「愛してる」
「…っ」
「もうおまえのことしか考えられない。俺の子を身籠ってくれて、心から嬉しく思うよ。大切にするからな。おまえだけを……愛している」
「は、う……」
反則だ。
こんな色っぽい低い声音で愛の言葉なんて囁かれてしまっては、――もう恋に落ちるしかない。
この人は魔物なのに。
なぜこんなに心をときめかせるんだろう。
自分がそういうふうに作り変えたせいかとも思ったが。……なにか違うような気がする。
もともと。
天王寺瑚太朗という男は、そういう人間だったとしか、思えなくなってきた。
……思い出してみる。
ダメだ、最悪な男だったことしか思い出せない。だけどペロを拾ってきてくれたこともあったし、いいところもあった。だけどあまりに粗雑に扱われたものだから、あのときペロは骨折した。拾ってくれたことは感謝したけど、やはりあいつは乱暴なんだ、と再認識してしまった。
だけど。
親に叱られて隠れていた自分を見つけてくれたのも彼だった。祭りに連れていってやる、と言ってくれたときは嬉しかった。結局その願いは果たされなかったけれど、あのときの瑚太朗は間違いなく優しかった。
――いや。
鍵を殺そうとした。
危険人物だとそのときようやくわかった。助けたのは自分の手駒にするためだった。もともと助ける気なんてなかった。ただ利用するために助けたにすぎない。
なのに……。
大好きになってしまった。こんな世界の終わり際で、今さら。もう嗤うしかない。
「小鳥……」
顔が近づいてきて、口づけを交わす。吸い上げる舌の動きがとても優しい。それでいて官能を引き出すような痺れるほど淫らな動き方。……キス、って、こんなにエッチだったんだ。
どうして?
このキスを、他の女の子にも……したの?
したんだよね。そうだよね。そうじゃなきゃここまで上手いわけがないもの。セックスだってめちゃくちゃ上手い。さっきのあの熱い射精にはびっくりしたけど、あれもしたのかぁ……。いいな、その子。瑚太朗くんに愛されて。
だってあたし。
魔物化した瑚太朗くんとしかセックスしてないもの。
もともとの彼がどんな男の子だったのか、それをちゃんと知りたかったな……。
「……は、ふ……」
「小鳥、うちに帰るか」
「うん…」
「今日は泊まっていけよ」
「あ、はは……。やっぱり、そうなりますか」
「あんまり激しくしないからさ」
「嘘ばっかり。……でも、いいよ。ご飯、作る約束、おばさんとしてるし」
「お袋に言われたからやるのかよ」
「予行演習も兼ねてだよ。瑚太朗くんのお嫁さんになるんだから」
「……っ」
「ほら、行こ。お夕飯の材料、買わないと」
「……小鳥」
「んー?」
「裸エプロン、してくんない?」
「…………」
呆れた。
エッチでスケベな奴だってことはわかってたけど。
これ、あたしのせいじゃないよねえ?
間違ってもあたしは、こんなふうに彼を作った覚えがないぞ。
「……いいよ」
「ほんとっ?!」
もうヤケだ。
この際、瑚太朗くんのお願い事は、なんでもきいてやる。
どうせあと二日しかないんだから。――今日を含めて三日だけど。
「瑚太朗くんがしたいのって、裸エプロンだけ?」
一応きいてみた。
「スク水と、体操着ブルマと、スケベ下着と……」
「…………。どれかひとつにしなさい」
「じゃ、裸エプロンで……」
「もしかして、あのフリル付きのやつ?」
「そう。それをすっぽんぽんで着る」
「…………。着ながら料理しろって?」
「料理しながら俺が小鳥を食う」
「…………。…………。このド変態!!」
嬉しそうな瑚太朗の顔を見て、もう罵倒しか言葉が出なかった。
「はぁあんっっ……!」
シンクの縁に手を置いて背後からの貫きに悶えていると、その手に彼の手が重なった。
指をひとつずつ絡めて握りしめてくる。そうしながらも腰は彼の手で持ち上げられていた。
「小鳥、あとどれくらいで出来る?」
オーブンで焼いているミートパイは、あと45分くらいかかる。
シチューはそろそろ煮えてくる頃だけど……。
ていうか!
料理の邪魔、すんな!
「ひゃ、ううんっっ!」
だ、ダメ……。さっきからその抉ってくる場所、ビリビリと痺れてたまんない。
そこばっかり責めてくる……。わざとだ。あたしがこれでイこうとしてるのを、ギリギリのところでかわすように別のところを突き上げて、そっちに気をとられたら、またイイところを責めてきて……。
気持ちいいのに、苦しい。
こんなのしてたら、料理どころじゃない。
たまらなくなって火を消した。もうシチューはいい。オーブンも止めたいけどオートだから焼けば自動で消えるから、そっちはいいや。
「はうんっっ!」
そ、そこをまた……わかってて、この男!
背後を睨みつけると、エプロンの隙間からいやらしい手がいやらしい動きで胸を揉みほぐしてきた。
「あっ、く、ぅ……ん」
その乳首を陥没させるの、やめて……感じちゃうからあ!
と思ったら引っ張ってきた。搾乳するような指の動き。こいつ……わざとやってんのか?
「まだ出ないんだな」
「あのねえ!」
やっぱりだ。母乳が出るのを期待している。さすがに変態すぎる。いやそういうやつだった。
瑚太朗くんが腰を持ち上げた。
あ、うそ……まさかまた出すつもりじゃ……さっきからこれで、ええと……5回目。
相変わらずだな、おい。
こいつの勃起回復速度はどう考えても尋常じゃない。
あの連続する射精とかも、そうだったけど……あれ連続なのか継続なのか、よくわかんなかった。
「小鳥、中から垂れてるぞ」
「……っ」
誰のせいだ!
「滑りがいいから、これじゃ出してもまた垂れてしまうな」
「……あのね! キッチンの床が、精液塗れなんだけど!」
「おまえの愛液もだぞ」
「…ぐっ、……こんなところで、するからでしょうが!」
「なに言ってんだ。こんなところでするから、興奮するんだろ」
「この変態!」
「なにをわかりきったことを……」
ダメだ。
こいつの思考はエロで満ち満ちている。
そういうゲームでもやったんだろうか。……やったんだろうな。
おかしいな。
入院してた頃はここまでエロくなかったのに。
そういうのをまったく遠ざけていた。年頃の男の子だから、とおじさんからエロ本を渡されたけど、すべてあたしが破棄した。だからそういう妄想すらあり得なかったはずだ。
そんな瑚太朗くんをエロくしたのって、なんなんだ。
ネットか? ――エロサイトか。エロゲとやらもネット通販なんだろう。
それは仕方ないか。遠ざけていたのはあたしなんだし。でもねえ……さすがにセックスがここまでしつこいとは思わなかった。
長く入院していた反動なんだろうか。それとも、もともとこういう人だった?
あたしの魔物生成能力は、当時幼かったとはいえ、ほぼ完璧にマスターしていた。
基本的なベースは元の人格だ。だからある程度は本人と思って間違いない。
――つまり。
「やぁっ……あんっ!」
ま、また……膨らんで……子宮口に潜りこもうとしてる。
今度は中か。中に出すつもりか。妊娠したのも、もう関係なくなっているらしい。
つまり、瑚太朗くんは、自分の欲望に忠実すぎて隠そうともしない人だってこと!
そんな男に憧れた過去の自分が情けない。
「ちょ……まって、中、は……」
「待てない」
「だ、出すなら、せめてゴムを……」
「…………。医者はなんて言ってた?」
「は?」
「セックスしちゃダメとは言ってないよな?」
「言ってないけど……」
「中出ししてもいいって言ってた?」
「……そこまできけるか!!」
「バカ、二人の性生活に関わる大事なことだぞ。そうか、聞いてないのか。……じゃ」
「ゴム、つけてくれるの?」
「子宮に入るのはやめる」
「…………。でも子宮に注ぐ?」
「うん」
「同じことだ!!」
「別に毒じゃないし、大丈夫だろ。むしろ愛の結晶が出来たんだから、身体に悪いわけがない。じゃあ……口を開けて」
「~~~~っっっ!!!!」
「小鳥」
わかってる。
あたしは、この声に、弱い。
瑚太朗くんのイケボが、あたしの腰を蕩けさせる。
こんなの、逆らえるわけがないよ……。
「…んっ」
身を捩って膨らんできつつある男根を引き寄せるように吸い上げる動きをした。すると背後で腰を掴む瑚太朗くんの、感じいったため息が聞こえてきた。
なんて、色っぽい喘ぎ……。
心がときめく。胸の高鳴りが抑えられない。セックスの最中なのに、どんどん彼のことが好きになっている。
あ……。
瑚太朗くんから貰った、ネックレス。
エプロンの中にちゃんとしまったのに……いつの間にかハート型の上部分を止めていたリボンが取れていた。あたし、いま上半身が裸の状態で、もうエプロンを腰でしかつけていない。
こんな淫らな恰好にされたのに、なぜだろう……感じてる瑚太朗くんが愛おしくて、たまらない。
「こ…とり……」
いいよ、――出して。
もう子宮に入っちゃって。その中で出したほうが感じるの、知ってるから。
瑚太朗くん。
大好き。
「は、う……、……あ、あ、……」
初めて。
自分から子宮の口を伸ばして咥えた。
こんな動きできるなんて知らなかった。瑚太朗くんの先端が、入ってくる……それに応えて、もっと、と彼の亀頭を引っ張るようにどんどん飲み込んだ。
――入った。
中に出される熱い、精……たまらない。
腰が震える。射精で感じているのが伝わるのか、瑚太朗くんがとめどなく射精をしてくれた。腰を引き寄せられ、モノを扱うかのような手つきで乱暴に抑えつけられる。それすらも快感に繋がった。
「く、う……はあ、くっ、……こ、小鳥……大丈夫か?」
「……いっぱい出したね」
「悪い、とまらなかった。……熱くないか?」
「さっきほどじゃ、ないよ」
「……よかった」
「ねえ、瑚太朗くん」
「うん?」
「もう一回、言って」
「なにを?」
「さっき、ホームセンターで、言ってくれた」
「…っ、いま?」
「いまが最高のタイミングだと思う」
「…………。結婚しよう、小鳥」
「ちがーう! そっちじゃなくて!」
「俺のプロポーズは、またスルーか?」
「愛してるって、言った! 言ってくれた! もっかい言ってくんなきゃ、やだ!!」
「あれはな……、気の迷いってやつだ」
「気の迷いなんかじゃやだあ!!」
「小鳥……」
抱きしめられる。
こんなふうにごまかすなんて、ひどい。
照れてるわけじゃない。ただ子宮内に射精した後だから後ろめたいだけなんだ。
そーゆーところが、ずるいの!
どんだけあたしを惚れさせんだ、この男は!
再び腰を掴まれる。
内部で膨らみつつあるそれに諦めたようにため息をつき、身体の力を抜いた。
時計は――。
まだ日付が変わっていなかった。
ただ裸エプロンプレイが書きたかっただけです(笑)
さて。
小鳥と瑚太朗の最後を書こうと思います。
終わり方は静流ルートみたいに光の粒になって消えていく――そんな感じです。
ただそれではちょっとかわいそうなので、少し手を加えるつもりです。
そこまで書ければいいのですが。
それでは、最後までお付き合い頂けると嬉しいです。