※この作品はR-18です。

【Rewrite】命のカタチのその先は【瑚太朗×小鳥】   作:千月華音

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婚礼の詩(うた)④

 

 

 

「ほら、小鳥。チョコレート」

「わーい」

 階下のリビングからいろいろ食べ物をもってきてくれた瑚太朗くんが、次から次へと口の中に放りこんだ。

 おいしー! と言いながら腕に縋りつく。よしよし、と頭を撫でてくれる。そんなじゃれ合いみたいな、穏やかな時間が過ぎていた。

 ……ちょっと思い描いていたのと違うけど。

 もっと色っぽい時間になるのかと思っていた。

 キスとか、愛撫とか、そういうの。

 でも、……こーゆーのも、いいな。

 あと――20分。

 瑚太朗くんの下半身は、……ダメだこりゃ。さっきより膨らんでいる。

 さっきから瑚太朗くんの手が、あたしのパジャマの中に入ろうとしていた。なのに入ってこない。胸を触りたいみたいなのに、胸元をさわさわと撫でるだけ。

 ……我慢してるのかな。

 まだ12時前だから?

 なにこだわってんだ、こいつは。

「…小鳥」

 ――きた。

 時間前だけど、いいよ。

 こういう色っぽい声を、待ってたんだから。

「俺のパジャマ、よく似合ってる」

「……へ?」

「すごく可愛い」

 ……それは、どうも。

 どうせ脱がすくせに。

 だけど……。

「なんか、これ、ズボンがね……」

「ん?」

「とくにお股のあたりが、なんか……ゴワゴワしてて」

「…………」

「下着つけてないからかな」

「それでよく小鳥で抜いてたんだ」

「……へ?」

「入院してた時に、それ着てただろ」

「そうだっけ?」

「小鳥が見舞いに来るだろ。中学の制服着てた。可愛かったな、あの頃の小鳥。髪は今ほど長くなかったけど、胸とか少しずつ膨らんできてて、スカートの尻の部分とか丸みを帯びてて」

「……そんなとこ見てたの?」

「素足が細くてさ。膝の上でリンゴ剥くだろ、その膝の上のリンゴが羨ましかった」

「あのね……」

「あのスカートの下を想像した」

「へ……?」

「小鳥の下着はどんなのかな、あそこはもう濡れるのかな、――ってさ」

「…………」

「シコらなくても射精してたんだ。いつもズボンが濡れてたよ、おまえが帰ったあと」

「……っ」

「つまりだな、おまえを見ながら」

「やめい!」

「見舞いの最中に抜いてたんだ」

「――っ!」

 立ち上がってズボンを脱ごうとしたが、その手を瑚太朗くんが掴んだ。

「はなせ、このヘンタイ!」

「おまえのせいだぞ」

「なっ…」

「毎日見舞いに来て、3時間も顔を突き合わせて、俺の上半身とか拭いてくれたり、髪も梳いてくれたり、顔だって優しい手つきで拭いてくれた。母親すらしねえぞ、そんなこと。病院の看護婦だってしなかった。――全部おまえがやったことだ」

「そ、れは……」

「ナイチンゲール症候群って言うんだってな。俺はおまえに恋に落ちたよ。だけどそんな勘違いみたいな恋じゃなくて、本気で好きになったかどうかを確かめた。そしたらな……出たんだ」

「出た……って?」

「ホテルでおまえに出した、あの熱量の高い射精だ。勘違いなんかじゃなく、おまえでしか抜けなくなったんだ」

「…………」

「聞いておきたいんだ。あの頃のおまえ、俺のことどう思ってたんだよ。普通に思い出してみても、おまえの献身は異常だ。好きでもないとあそこまでしねえぞ」

 …………。

 それはね。

 瑚太朗くんを、観察しないといけなかったからだよ。

 あの頃の瑚太朗くんは、支離滅裂な会話しかしなかった。

 たぶん、本人はそのこと、覚えてないんだろうけど……。

 あたしの責任だから。

 瑚太朗くんを作った、あたしの責任だったから。

 ……でも。

 そういう目で見てくれていたんだ、あたしのこと。

 えへへ……。

 ちょっとだけ、嬉しいな。

 女の子として、ちゃんと見ててくれていたんだね。

「……瑚太朗くん」

「なんだ」

「お見舞いのとき、一回だけ、あたしにキスしようとしたの……覚えてる?」

「……あったっけ?」

「やっぱり……覚えてないか」

「もしかして、俺、なんかしたのか?」

「ううん、瑚太朗くんのせいじゃないよ。あたしがね、瑚太朗くんに、こう……」

 彼の顔の前に、胸を近づけて抱きついた。

「こうやって、胸を顔にあてちゃったの」

「それで?」

「ナースコールのボタンを押そうとしただけなんだけど、態勢がね、うっかり瑚太朗くんに覆いかぶさっちゃって」

「そしたら?」

「瑚太朗くんが……胸を揉んできました」

「…………」

「やめて、と言ったんだけど、無言で揉む瑚太朗くんに、何も言えなくなって」

「…………」

「あたしも……あう、って気持ちよかったもんだから、つい……揉まれるままに」

「……覚えてないぞ、そんな天国」

「そしたらね……小鳥、って……初めて、あたしの名前、呼んでくれたの。……嬉しかった」

「…………」

「瑚太朗くんの声だあ……って、泣きそうになっちゃったら、瑚太朗くんが涙を唇で拭ってくれて」

「…………」

「雰囲気的に、その……キスしそうな流れに……」

「キスしたの?」

「……直前で、あたしが制止しました」

「…………」

「あたしも、あのとき……恋、したよ」

「……ほんとに?」

「なんか成り行きというか……その、こういうのもナイチンゲール症候群なのか、よくわかんないけど」

「じゃ……なんで」

「いろいろね、あったの。瑚太朗くんにずっとつれなくしちゃって、そこは本当にごめんなさい。だけど、お見舞いしてたときもずっと、瑚太朗くんのこと、考えてたんだよ」

「…………」

「ねえ……12時に、なったよ」

「…………」

「魔法の時間、――だね」

「そうだな」

「瑚太朗くん……もういいよ」

「……ついてこれるか?」

「瑚太朗くんこそ、そんなに続けられるの?」

「そのための上書きだからな」

「どーゆーエロい能力なのそれ」

「小鳥を抱くためならエロくしてもいい」

「……はいはい。じゃ……お手柔らかにお願いします」

 ――チュ……

 瑚太朗くんの額にそっと口づける。

 それが合図になり、身体を持ち上げられ、嵐のような口づけを交わされた。

 

 

 

 

 

 ――3年前

 

 ――コンコン……

 病室の扉をノックすると、中から「入れよ」という声が聞こえた。

 その声に嬉しくなって顔が自然と綻ぶ。ここ数日、彼の状態は安定していた。

 最上級の個室をあてがわれた瑚太朗くんは、一人しかいない病室のベッドで背もたれしていた。

 入院から8年目にしてやっと、――目覚めたばかりだった。

「こんにちは、瑚太朗くん」

「遅いぞ!」

「ごめんねぇ、これでも早く来たんだよ」

 午後3時。

 ギリギリの時間だった。6時には面会時間が終わってしまう。いつもはもう少し余裕をもってくるけれど、今日はどうしても森の魔物の微調整をしなければいけなかった。

 よいしょ、と持っていた荷物を下ろすと、瑚太朗くんが不思議そうにそれを見た。

「なに持ってきたんだ?」

「あ、これ? 瑚太朗くんにどうかな、と思って。ほら、前によくゲームとかしてたでしょ」

 彼の部屋にあった携帯のゲーム機と、ソフトを持ってきた。

 子供の頃、一度だけ彼が「やってみるか?」と渡してくれたことがある。

 あの当時はよくわからなかったので返したが、それで彼が不機嫌になってしまったことを思い出す。……もったいないことをした。あんなに無愛想だった彼が、初めて親切にしてくれた機会だったのに。

 渡してみると、瑚太朗くんは慣れた手つきでゲーム機を立ち上げ、すぐに夢中になった。

 持ってきて正解だったかも。

「あっ……! くそっ、いつもここでやられるんだよ!」

「覚えてるの?」

「なんか身体が覚えてるというか……うーん、もうちょっと立ち回りを工夫して……」

 なんのゲームかよくわからないけど、まあ、楽しいならいいか。

 お茶を入れて、いつも持ってきてるお茶菓子をお盆に乗せ、瑚太朗くんの口もとに運んだ。

「はい、あーん」

「…………」

「どうしたの?」

「おまえさ。俺は赤ん坊じゃないんだから、それはいい加減にやめろ」

 …………。

 瑚太朗くんが。

 普通に拒否した。

 いつもは無意識に食べてくれるのに。

 ……変化した。

 植え付けた上層人格の乖離現象なのか。……あとで鍵の知識と照合する必要がある。

「……そっか。ごめんね」

「いいよ。そこに置いててくれれば、あとで食べる」

 瑚太朗くんが、そっぽを向いてしまった。

 なんだか照れてるみたいな。

 ……まさかね。

 顔も少し赤いけど、脈拍はそれほど早くはない。首筋が少し浮き上がってる。リンパ節が乱れているのかも。でもおおむね顔色は良好だ。ずっと意識がなかった頃に比べたらはるかに人間らしくなっていた。

 ……さて、と。

 そろそろ彼の肌質を確認しようか。

「瑚太朗くん、脱いで」

「……へ?」

「とりあえず、パジャマの上だけね。おしぼりで拭いてあげるから」

 電子レンジで温めてきたおしぼりを何個か取り出し、腕まくりをすると、瑚太朗くんが――後じさった。

「――バカ! なに考えてんだ!」

「え? なにって、いつもの清拭だけど?」

「それは! 普通、看護師のやることだろうが!」

「…………。その看護師さんに頼んで、あたしがやってるんだけど」

「なんでだよ!」

 そりゃ自分で作った魔物なんだから、チェックするのは当たり前だ。

 もともとのベースは本人の身体だけど、接合した腕の状態も確認したい。

 ……だけど。

 今までは素直に従っていた。

 明らかに何か違う。これじゃ普通の男の子の反応だ。

 精神年齢は退行……というより、外見通りの反応だ。だが本来の彼は間違ってもこういう態度はとらなかった。

 成功――といえるのだろうか。

 迷惑そうな顔、とは言えない。ただこれは普通に照れている反応だ。本当に普通の、少年そのままの反応。

 ここは。

 彼の態度に合わせておいたほうがいい。

「瑚太朗くんの身体を拭いてあげたいからだよ」

「……っ」

「それとも小鳥さんに触られるのは、いやですか?」

「い、……いやじゃ……ない」

「素直でよろしい。ほら、脱いで。気持ちよくしてあげるからね」

 パジャマの上を脱がせて、横たわらせる。

 暖かいおしぼりで優しく拭いながら、彼の肌をジッと隈なく調べていた。……ほぼ人間に近い。腕の継ぎ目も全く分からなくなっている。そりゃそうか。医者ですら気づいていない。

 これなら普通に生活もできる。

 安心したかのように吐息を吐くと、瑚太朗くんがビクッ――と震えた。

「あ、ごめんね。くすぐったかった?」

「……いや、今の、色っぽかった」

 ……なんですと?

 いまこいつ、なんて言った?

 拭く手をとめると、瑚太朗くんが不思議そうに見上げてきた。

「止めるなよ」

「…………」

「そこ、乳首のとこ、もちょっとゆっくり」

 …………。

 怪訝に思いながら言われた通りにする。

 顔をよく見ながら拭くと、明らかに官能的な何かが見られた。拭くたびに目を細めて感じている。そりゃ、丁寧に優しくやっておりますが、……なんだこの表情は。

 …………。

 なんか、……瑚太朗くんって、こういう人だっけ?

 基本的な人格は本人とはいえ、……こいつは絶対違う気がする。

 少なくともあたしが触ってこんな反応をする彼を想像することができない。

「じゃあ、だいたいこれで終わりね」

 隈なく拭き終わると、ホッとしたかのようにパジャマの上を着た。

 今度は下だ。

「ちょ…っ?!」

「なに?」

「おまえ、なにしようとしてんの?!」

「手、どけて。ズボンを脱がないと」

「あのな! 下はいい! ていうかおまえ、女だろ?!」

「女ですが?」

「恥じらいってもんがないの?!」

「…………」

 やりにくいなあ、もう!

 前はこんなに抵抗なんてしなかったのに。

 もっとも機械的な反応しかしなかったから、それはそれでちょっと不安だったけど。

 面倒だ、と瑚太朗くんの手をどけてシーツごとひっぺ返した。

「……っっっ!!」

 瑚太朗くんが。

 股間を抑えている。

 ……なるほど。そういうことか。

 ちょっとかわいそうになった。年頃の男の子、だもんね。

 その抑えている手の上に、そっと手を乗せた。

「……」

「拭いてあげる」

「……いいってば」

「わかってるよ。出しちゃったもの、綺麗にしてあげるから」

「……」

「このままじゃズボン、濡れたままでしょ?」

「……」

「ね? なんだったら目隠ししてあげるから」

「…小鳥」

「ん?」

「結婚して」

「…………」

 いま。

 こいつ。

 プロポーズしたぞ。

「俺と結婚して」

「…………」

「してくれないと、拭かせない」

「……あのね」

 どうしろっての。

 ダメだ、この人のこと、だんだんわからなくなってきた。

 あたしのせいか?

 生成過程でなんか変なバグでもあったのか?

「瑚太朗くん、あのね、これは清拭なの。看護師さんだってやることなの。どっちにしろ、汚れたズボンと下着を取り替えないといけないでしょ?」

「……小鳥がやるんだろ」

「やらせてって、言ってんの! もう……、……ね? お願い。拭かせて。終わったら、瑚太朗くんのお願い、一個だけきいてあげる」

「…ほんと?」

「ほんとほんと。小鳥さん嘘つかない」

 やっと手をどけてくれた。

 たく、世話のかかる!

 ズボンを剥ぎ取り、真っ白の下着も剥ぎ取って、汚れた部分を性器ごと拭き取ってあげた。

 さっきより感じてる顔してるけど、知るか。こういう生理現象なんだと思うことにする。よいしょ……けっこう出したな。溜まってたのかな。よくわかんないけど。

 暖かいおしぼりが気持ちいいのか、目を瞑って悶えている。なんか……色っぽいな。こういう顔もするのか。表情に艶があるというか……。小鳥さんの魔物状態チェックに入れておこう。

 なんかまだ勃起状態なのが気になるけど、構わず拭き取った。睾丸も含めて、股も全部。よし、全部拭いた。

 あんまり見ないようにしたからね。ここまであたしゃ弄ってないんだから。

 よいしょ……、と瑚太朗くんに新しい下着を履かせてあげて、用意していた別のパジャマに着替えさせた。

 大人しく従ってくれたから早く終わった。いつもこうだと助かるんだけど。

 今日だけにして欲しいよ、こんなやり取り。

「……小鳥」

「んー?」

「お願い、……きいてくれるんだろ?」

「あ、うん、そうね」

 そういう約束だったしね。

「なんですか? あたしにできることなら」

「明日も……してくれるか?」

「はい?」

「今と同じこと」

 きょとん、と彼の顔を見た。

 なにを当たり前のことを……。

 今まで何度もしてきたことじゃない。

「いいよ。明日もやってあげる」

「ほんとだな!」

「ほんと、ほんと。小鳥さん嘘つかない」

「小鳥…」

「明日も明後日も、その次の日も、ずっとしてあげるからね」

 瑚太朗くんがギュッと手を握りしめてきた。

 その嬉しそうな顔に苦笑いする。

 目覚めてからまだ数日しか経ってないけど、小鳥は精神的にとても疲れていた。

 

 

 




たのしいー!(書くのが)
すみません、3年前をノリにノって書いてしまったら、本番が書けませんでした。
次にまわしますので、ごめんなさい。
目覚める前の瑚太朗は目が開いてても虚ろで、何も喋らず、無反応でした。
小鳥の胸揉み&キス未遂の翌日から、スケベな瑚太朗になってます。
スケベになった原因はもちろん小鳥の胸を揉んだからです。(刷り込みかい!)
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