【Rewrite】命のカタチのその先は【瑚太朗×小鳥】 作:千月華音
――10年前
気がついたのは――。
身体中を駆け巡る激痛に遠のきかけた意識が呼び戻されたからだった。
「――瑚太朗くんっっ!!」
……触るなよ。痛みで気がおかしくなる。
涙で顔がクシャクシャだ。なんでおまえがここにいるのかとか、こんなところで何してるのかとか、そういう疑問は激痛とともにどうでもよくなっていた。
「痛い? どこ痛むの?! 腕――腕どこなのっ?!」
「…………小鳥」
「喋らないでっっ!! 血が、血がどんどん流れて……ダメ、なの……あたしじゃ、もう……っっ!」
目の前に。
――いる。
不可視の少女。……それと小鳥。なんだか変な組み合わせだ。
鍵は。
俺を無言で見下ろしていた。
「お願い……死なないでっ!」
「…………泣くなよ」
「あんたまでいなくなっちゃったら……あたし、……ううううっっ!!」
「…………」
「待ってて、なにか……なにか、ドルイドの……や、宿り木、どこにあったっけ……探してくるっ!」
「…………行くな」
「お願い、死んじゃ、ダメだからね! あたしが戻るまで絶対……!」
行くなっての。
俺を置いて行くな。
…………。
もう、……間に合わない。
小鳥が戻るまでに、俺は死んでいる。
この痛みはそういうものだ。命の灯が消えていく……。あの世はすぐ目の前にあった。
ふと――。
その入口に佇むかのような、死神みたいな少女が、俺を見下ろしていた。
いや。
膝枕、されていた。
「……」
無言。
だが……。
鍵は心配そうに、あるいは気にかけるように、俺を見下ろしていた。
「……なんで、俺なんかを、…………。そうか。あれは攻撃じゃ、……なかったんだな」
俺が撃った。
その直後に襲ってきた衝撃。なんだかよくわからないうちに倒れていた。
鍵の防衛本能だろう。
それはそうか。星の意思みたいなものだ。鍵は滅びをもたらすけれど、襲われてようやくわかった。なんだかよくわからない痛みがその答えだ。
この激痛は星の痛み――そのものだ。
「なあ、……頼みがある」
ずうずうしいこと甚だしいが。
「俺はもうすぐ死ぬ。……だけど、最後にもう一度だけ、上書きをしてみようと思う。俺の超能力みたいなもんなんだけどさ」
「……」
「あんたに頼む筋合いじゃないかもしれんが、……俺の記憶を預かっていて欲しい。この上書きがうまくいけば、俺は今とは違う自分に生まれ変わる。やり直したいんだ、もう一度――今度はうまくいってみせるから」
「……」
「わかってる、この星は……時間がないことも、よくわかっている。たとえ手遅れでも、なんでもいい、何かを成し遂げてみたい。なんでもいいんだ。俺みたいなちっぽけな人間でも、たったひとつでも何かが出来ればそれでいい」
「……」
「ダメ、……かな。そりゃまあ、ずうずうしいよな……あんたを撃ったわけだし」
「……」
鍵が。
そっと――キスをしてきた。
何かが唇から移っていく……そうか、これ、俺の記憶か。記憶というより記録媒体みたいなもんか。俺が見聞きしたことすべてを何かで包み込んでいる。
それを再び唇に戻してくれた。――こうすれば壊れない。そう、言っているようだった。
「……ありがとう。じゃあ、……行ってくる」
最後の上書き。
俺の命のすべて――それを書き換えてみせる。
――6時間前
「――どうだった?」
診察室から出た小鳥は、顔を赤くして俯いた。
それを見て確信した。……妊娠、したんだ。
「小鳥っ」
「わっぷ!」
抱きしめると、辺りにいた他の患者からの苦笑した声が聞こえてきたが、構わず抱きしめた。
小鳥は恥ずかしいのか、腕を突っ張って離れようとする。しまいには足を踏んずけてきた。
「いてえ!」
「いい加減離れろ!」
だって嬉しいんだから仕方ない。
俺の、――俺たちの子供だ。セックスしたのだから当たり前だけど、その当たり前がこんなに嬉しいなんて。
小鳥を座らせて、人気のない場所で肩を抱き寄せた。
「何日目なんだ?」
「二日目だって」
「じゃあ中出しし放題だったあのときか」
「そーゆーこと言うな!」
「おまえ安全日だって言ってたから、念のためと思ってたくさん出しておいた」
「いや、あの……それはそれでどうかと思うけど……危険日だったみたい」
「……そうなのか?」
「小鳥さんの勘違いでした」
「それはむしろありがたい。おかげでたくさん出すきっかけにもなったわけだし」
「だから……あのね、そーゆーことを、こんなところで言わないで」
「小鳥……ありがとな」
「(∀`*ゞ)エヘヘ」
抱きしめると、今度は逆らわず、素直に抱きしめ返してくれた。
なんだろう。
胸の奥底から喜びが溢れてくる。
初めての子供だから?
それもあるが……、もっと根源的な喜びというか。
ふと――。
目の端に、黒い服の少女が映った。
こっちを見ている。……患者かな。それにしては派手なリボンだ。ずいぶん長いのにフワフワと浮いている。
少女が手招きした。
――俺?
小鳥は胸の中にいて気づいていない。
少女は無表情だが、敵意もなさそうだし、不審者には見えない。だけど呼ばれているのがなぜか気になった。
「神戸さん、お入りください」
「あ、呼ばれた。じゃあね、瑚太朗くん。説明受けたら、お会計して帰ろ」
「ああ、ここにいるからな」
小鳥が診察室内に入るのを見送ると、こっちを見ている少女のほうへと歩いた。
……変だな。
すぐ横に点滴をした患者が通ったけど、あんな派手なリボンをした女の子に見向きもしない。
不思議に思いながらも少女へと近づいた。
「なんか用か?」
「……」
「俺を呼んでたんだろ?」
少女は、クイッ――、と俺の服を引っ張ると。
そのまま。
背伸びをして。
俺にキスをした。
「――っ?!」
……え?
唇が重なっている。
明らかにキスだ。いやどう見てもキスだろ。――なのに。
少女を突き放せない。
そのまま、されるがままに口づけていた。
柔らかな、小さな唇……。ただ触れているだけのフレンチキス。
少女の唇がわずかに動いた。
その瞬間、それ以上の行為はさすがに理性が押しとどめ、少女の肩を軽く押して引き離した。
「……こういうのは、その、もっと親密になってからするもんだ。名前も知らない初対面でするような行為じゃない」
教え諭すように言うと、少女は。
ようやく、言葉らしい言葉を発した。
「あなたに、――祝福を」
「え?」
「新しい命を、どうか……見守ってください」
「…………。どうも」
小鳥が妊娠したことを言ってるのか?
さっきの俺たちのやりとりを見ていたらしい。
……だけど。
それにしたってキスはないだろ。
「また来ます。今度はちゃんと……お返しします」
「返すって?」
「成し遂げましたね、天王寺瑚太朗。――あなたを誇りに思います」
そう言うと。
リボンを翻し、少女はその場から立ち去った。
パジャマを脱がせ、全裸になった小鳥の胸に貪るように吸い付くと。
初めて逆らうことなく、むしろ俺の頭を押さえつけるように抱きしめてきた。
いつもはこうすると恥ずかしがって顔を逸らすか、身体を捩って逃げようとするのに、――小鳥も求めている。
もう時間は残されていない。それもあるだろうが……。
小鳥の想いが初めて伝わった気がした。いつもごまかし、避けて、スルーする……そんな女に、嫌気がさしていたこともある。
素直に求めるとこんなに可愛いなんて知らなかった。
小鳥の顔を見上げると、恥ずかしそうに唇を噛み締めているが、俺の愛撫で感じている様子が窺えた。
もっと求めて欲しい……。
欲望は膨れて、とどまることを知らなかった。
「小鳥……咥えてくれるか?」
服を脱ぎ、ズボンのファスナーから飛び出したそれを見た小鳥は、一瞬息を呑んだが、すぐに笑みを浮かべた。
手で優しく撫でつけ、息を少しだけ吹きかけただけで、ビクッ――と震えたそれを、小鳥は愛おしそうに口元へと近づけた。
「熱い、ね……」
「上書きしたからな」
「ね、……それってどんなふうにしたの?」
「具体的に聞きたいのか?」
「あまりエロくない説明でお願いします」
「…………。そりゃ無理だ。どう言ってもエロくなる」
「…………」
「なんだよ?」
「やっぱり、……瑚太朗くんだなぁと思って。あたしの知ってる、スケベな男の子だ」
「おまえだって、相当スケベだぞ」
「はい?」
「具体的に教えてやるから、まずは咥えてみるんだ」
小鳥の小さな口にねじ込むと、喉奥まで亀頭を突っ込んだ。そのまま引きずると、舌が追いすがってついてくる。
この動きがたまらない。無意識なのだが、絶妙なところに舌先のザラつきがあたって震えがとまらなくなる。
さて……。
小鳥にどう教えてやったものか。
「ふあ……はぅ、ん……」
「いいか、小鳥……先走りを舐めるんだ。その味をしっかりと感じてくれ。俺のカウパーはな、少し塩気がするが甘い。そういうふうに作り替えた。味だけじゃない、成分もだ。女の愛液を促して膣内を収縮させるほどの発情させるものが含まれている。そう……いまおまえが舐めているそれにだ」
「……っ」
「吸い上げるんだ、そう……割れ目をもっとこじ開けて、それを体内に染み込ませろ。自然と頭がぼうっとなってきて、俺が欲しくてたまらなくなる。ほら、言ってるだけでおまえの股から愛液が垂れてきてるぞ」
「……っっ、ふがっ、……はうっ!」
「言っただろうが、エロくなるって。実はそればかりじゃない。おまえを夢中にさせるためにもっと工夫して書き換えている。我ながら最高傑作だと思っている。……口がとまっているぞ。そんな睨んでないで、ちゃんと最後まで咥えろ」
いまきっと小鳥の頭の中では、俺への罵詈雑言が飛び交っているに違いない。
それが狙いだ。おまえを俺のものにするためなら、どんなにエロくしても構わない。
そう。
俺は小鳥をもっともっと淫らにさせてやりたいんだ。
「小鳥、ほら……膣内を指でほぐしてやるぞ。痛くないように中を柔らかくしてやるからな」
「は、ぅ……あうっっ」
「だいぶ先走りを飲んだな……潮まで出てきた。口の中で熱くなってるだろ? 熱膨張させるようにしたからな。小鳥の口の中、気持ちいいぞ……」
「……っっ、~~っっ!!」
「どうし……」
小鳥が。
突如、口から陰茎を外して俺をギンッ――と睨みつけてきた。
「瑚太朗くんっ!!」
「はい」
「もっと、……もっとエロくないようにお願いしますって、言った!!」
「言ったが、どうした」
「あのねえ! さすがにそれはエロすぎるわ! あたしのときめきを返せ!!」
「…………。おまえが俺をどう思ってるか、よくは知らないけどな」
小鳥の身体を組み敷いた。
ぶるんっ、と小ぶりだが形のいい胸が震えるのを手で鷲掴み、上から見下ろすように言った。
「本来、俺はこういう男だ。さっきエロゲをやってただろ。あれをおまえに見せたのも、俺の原点みたいなものを知って欲しかったからだ」
「げ、原点?」
「ゲームだとあらゆるシチュエーションで禁忌を楽しめる。近親相姦、百合、スカトロ、SM、死姦、……ざっとあげてもこれだけの背徳を味わえるんだ。俺は夢中になったよ。若い頃は禁忌に対する抵抗ってのがないからな」
「…………」
「つまりそれだけの欲望を、本来人は持っているが、倫理観ってやつが邪魔をする。そりゃそうだ。犯罪行為にしないと人間の欲望ってのはキリがない。俺はな、生まれつき持っていた能力のおかげで、そのリミッターをなくしたんだ」
「なくした…?」
「倫理観を捨てた。おかげで草薙は再起不能になったよ。あいつにはありとあらゆるプレイを試させてもらった。そのせいかどうか知らないが、以後俺は女を二度と抱く気がしなくなった。満足なんかこれっぽっちもしなかったのにな。……小鳥。おまえに会うまでは」
「……え?」
「入院中に会いに来てくれたおまえに、恋したって言っただろ」
「うん…」
「おまえを見ながら、あらゆるプレイを妄想してた」
「……っ」
「入院してたとはいえ、俺の息子は元気でいきり勃っていたよ。小鳥のせいなんだからな。あの頃のおまえはそれだけ俺に女の匂いをさせていたんだ」
「あ、あたしが……?」
「俺に会いに来てたのは、魔物になったかどうか、確認するためだったんだろ?」
「……うん」
「それがおまえの間違いだ。おまえのやったことは俺の欲情を煽った。封印していた倫理観の欠如を、おまえが呼び覚ましたんだ」
「…………」
「さて、と……。そろそろ始めるか。心配しなくても大事なおまえを壊すようなことはしない。ただおまえにも……俺と同じように淫乱になってもらいたいだけだ」
「…………」
「なんだったらスケベ下着でもつけてみるか?」
「……いいよ」
「ほんと?」
「瑚太朗くんがしたいこと、あたしにしてもいいよ。……あたしが瑚太朗くんを狂わせたのなら、そんな嬉しいことはないもん」
「…小鳥」
「それどんな下着なの?」
「乳首と陰部を隠す部分がない」
「…………」
「つけたままセックスできるんだ。一度小鳥でそれをしたかった」
「……一回だけだからね」
「小鳥、……キスしよっか」
「うん。……優しくね」
引き寄せ、望み通りの優しいキスを交わしていく。
まだ二人だけの時間は始まったばかりだった。
どこまで引き延ばすやねん!
すいません、わりといいところまで書いたのですが……。
なんかうまくいかない。エロゲでもやって精進してみます。