【Rewrite】命のカタチのその先は【瑚太朗×小鳥】 作:千月華音
「……おい、……」
揺さぶる。
髪も、目も、滑らかな肌も、生きているように美しいが……。
心臓に耳をあててみる。
……動いてない。
嘘だろ。
さっきまで息をしていた。
気絶したように倒れた、その直後のことだった。
篝の息が途絶えた。
鼻に指先をあててみた。……動きがない。本当に息がとまっていた。
リボンが消えたのはいつだ。
迂闊なことに、よく見ていなかった。
抱きしめた篝の動きがとまって、そのとき初めて腕のリボンが消えていることに気がついた。
ホッとした束の間、篝が気絶して……。
キスをしたときだ。
息がとまっていた。
…………。
……俺の、……せい?
俺が、無茶な抱き方を……したせいなのか?
下を見下ろす。
まだ……繋がったままだ。
中は、暖かい……熱はまだ籠っている。動くことすらできる。ほら、こんなにまだ……気持ちいい。
なのに。
「……起きろよっ!!」
がむしゃらに口づけた。
必死に呼吸を送りこむ。今ならまだ蘇生できるかもしれない。死んだなんて信じない。俺の面倒を見るって言っただろ。呆れていたけどプロポーズにだって応じてくれた。……それなのに。
こんなのって……ないだろ。
人間に、……なったんだぞ。
俺の子を、欲しいって、言ってただろ……!
篝を抱きしめた。
いやだ。
失いたくない。
やっと手に入れたんだ。星の化身だろうと、人類を滅ぼす終末装置だろうと、そんなのどうでもいい。
もう一度。
……もう一度、……篝を。
この女を、手に入れるためなら……。
「…………」
……篝。
俺はな。
諦めが悪いんだ。
最後まで、足掻く。
それは10年前におまえに見せたはずだ。俺の生き様を。だから二度と文句は言わせない。
「……篝……」
再び口づけた。
涙はもう――流さなかった。
篝を拭きながら計画を練った。
頭の中でシミュレートする。……いける。時間はギリギリだがいけるだろう。やるしかない。もう後戻りはできないんだ。
扉の奥を見る。
……小鳥。
おまえも連れていく。
付き合わせて、悪い。……だけど俺、もうおまえがいないとダメだ。思えば奇妙な縁だったな。隣に引っ越してきたときは、ただのウザい小娘だったのに。
おまえの花嫁姿、見てみたかったな……。
きっと照れて、顔を真っ赤にしながら、俺の手を握りしめて、嬉しそうに微笑んで。
そんな日が、いつかどこかの世界で、見れたのだろう。
篝が一瞬だけ、見せてくれたんだ。――幸せそうに子供を抱いていた。
だけど。
篝。
おまえ、人のことばっかり……。例えばさ、おまえと二人で、世界中を旅するとか、そういう世界だってあってもいいんじゃないか。
人間じゃなくてもいいからさ。老成しきっていてもいいよ。俺は金魚の糞みたいにくっついていてもいい。
……夢物語だ。
今だけ、……見させてくれ。
その一瞬だけでも得られるのなら、俺は――命を捨てても構わない。
……さて。
こんなものかな。
さっきシャワーで流したし、だいぶ綺麗になった。
服、着せてやるか。……どこにやったかな。これか。なんか着せ方がよく、……下着ないな。まあいいか。
…………。
なんか、……まだ。
生きてるみたいだ。
そうか。……守られているのか。
もしかすると、身籠った……のかも。
肉体は、息をしていなくても……別の命が……。
星の化身だもんな。
そういうサービスくらい、あってもいいよな。
かなり残業してるけど。
もうちょっとだけ、残業してくれ。
最後の仕事だ。
おまえと、……俺の。
「……よし」
まず――。
荷物からノートパソコンと回線を取り出し、動きだした。
「小鳥……」
鼻の付近に気付け薬を嗅がせた。
顔を顰めるその表情が可愛らしい。優しく唇を重ねた。
「ん、……ん」
俺にキスされているとわかったのか、小鳥は嬉しそうに腕を伸ばしてきた。――が。
すぐさまその手が拳骨に変わった。
「いてっ!」
「離れろっ!!」
後頭部を殴られた。
まあ、覚悟してたが……。それにしても容赦ないな、おい。
「――篝はっ?!」
ガバッ――と身を起こすと、隣のベッドにいる篝を見て目を輝かせた。
「リボン……ない!」
「…………」
「え……? 寝てるの? ……っっ?!」
……気がついたか。
小鳥は口元を手で覆って、信じられないといった様子で俺の方を振り向いた。
「篝になにしたのっ?!」
「……小鳥」
「瑚太朗くんっ! 答えて!!」
「仮死状態だ。……肉体の時間は止まっている。死んではいないが、生きてもいない」
「……っ」
「星の加護だろう。だがこれも、あと数時間のものだ。だから……元に戻す」
「え……?」
「篝を鍵に戻す。……小鳥、おまえも協力してくれ」
「そ……っ、そんなこと、できるわけっ」
「鍵は、……なぜ発生する?」
「それは……」
「篝は言った。この星の病原体――人間を滅ぼすための抗生物質だと。だが俺は耐性菌を持ってしまったらしい。いや、俺に限らず、超人と呼ばれる人の枠からはみ出た能力者は、すべて癌細胞のようなものなんだ」
「…………」
「そいつらをすべて駆逐する。……するとどうなる? ストッパーがなくなった星は一気に滅亡装置を起動する。篝は人間になることで緩やかな滅びを選択したが、それは超人どもが蔓延っていたせいだ。俺も含めてな。だがその超人たちが、世界中から一斉に消えてしまったとしたら」
「そ……んなこと、できるわけがないっ!」
「俺はな、海外で……摘出手術をした。ガーディアンになったとき、首の後ろに何かを埋め込まれた。それは能力の制御装置みたいなものなんだ。だが同時にそれは、もうひとつ――起爆装置も兼ねている」
「――っ?!」
「この風祭市には、世界中の能力者が集結している。鍵がこの地に現れたからだ。だから……やるなら今しかない」
「……瑚太朗、くん」
「小鳥。篝の生まれた場所――俺が死んだあそこに、もう一度行くぞ。篝を蘇らせるには、あそこにあるパワースポットしかない。星の動脈みたいなものが、あそこを中心に渦巻いている。そこでしかもう、篝を生き返らせることはできない」
「だ、だけど……そんなことをしたら」
「人類は滅びる――だろ?」
「…………」
「付き合わせて……悪い。だけど最後までおまえと一緒にいたい。それくらいは、許してくれるよな?」
泣きそうな顔。
だけど小鳥は――笑みを浮かべた。
「篝と……愛し……あったの?」
「……ああ」
「瑚太朗くんの、……欲しかったもの、……手に入ったんだね」
「……おまえから貰うつもりだったんだけどな」
「先、越されちゃった……」
「気づいていたのか? 俺が求めていたもの」
「だって、あんな変態行為を何回もされたんじゃ……気づくよ」
「……悪い」
「あたしも、……篝に会いたい。……いいよ。一緒に……行こう」
「…小鳥」
「時間、あとどれくらい?」
「12時間ちょい、ってところか」
「じゃあ、ご飯作るね。食べる時間くらいはあるでしょ?」
「そうだな」
「これが……最後の……だね」
「小鳥。……もう一度だけ、抱かせてくれ」
「やだ」
「小鳥」
「篝を抱いた後なんて、やだ」
「…………」
「キスなら許す」
「……わかったよ」
小鳥を引き寄せ、貪り尽くすような――深いキスを交わした。
結局、元さやかーい!
と思われても仕方ないです。
もともと、この世界は滅びる定めですので。
次回以降ですが、少しずつ書いてますが、ソシャゲに時間を費やす関係上、遅れると思います。
ご了承ください。
エロ描写は少なくなりますが、決して疎かにはしないつもりです。
これはエロ小説なので。(3回言った)
※瑚太朗のモノローグで、篝と二人で旅行ってのは、Rewrite アニメ2期Blu-ray13巻特典ゲーム『Cladles Tale』からの引用です。
アニメラストのその後を篝と魔物化瑚太朗とのほのぼのとしたお話で、天然篝のボケとポチ瑚太朗のツッコミが微笑ましいです。
見てない方は是非ともおすすめします。