【Rewrite】命のカタチのその先は【瑚太朗×小鳥】 作:千月華音
――45分前
ガイア本部、――その最上階。
足元に転がる長居の死体に一瞥だけしてから、ガラス窓に押しつけた朱音の身体を割り開いた。
すでに服は剥ぎ取られ、下着すら残酷に破かれている。……ずっと望んでいた朱音の胸。それがこんな形で拝めるとはな。
「……くっ、……ぅ」
「言え、時間がない。――リストはどこだ」
「なんの、こと……」
「とぼけるな。能力者のリストだ。おまえらガイアが世界中の能力者のデータを集めているのは知っている。その詳細な情報をハッキングしたが、最後の一人だけ掴めなかった。……そいつのリストを寄越せ」
朱音は。
悔しそうに歯軋りすると、――いつもと変わらない余裕の微笑みを浮かべた。
「……会長」
「まだ私をオカ研の会長って呼ぶの?」
「聖女と呼ぶのが正しいのかよ」
「あんたには、その呼び名だけは言われたくない」
「……朱音。俺は鍵を呼び覚ます。あんたたちガイアの悲願だったことだ。だけどな。別に人類なんかどうなってもいいんだ。ただ篝にもう一度会えればそれでいい……俺の願いはそれだけだ」
「欲張りな男。小鳥はどうしたのよ」
「二人とも俺の女だ」
「……誰かこの男を通報して」
「その気になればこの場であんたを犯してもいいんだぞ」
「はあ、……本当にどうしようもないやつに、鍵は奪われてしまったのね。……いいわよ、そこのPCのデータ、勝手に持っていけば?」
力を抜いた朱音を見て、毒気を抜かれてしまった。
もっと抵抗するのかと思ったが。
だが時間もない。さっそくデスクにあるPCからリストを照合した。
――こいつか。
現在地は、……なんだこのビルにいる。ここからすぐ近くだ。……よし、網膜パターン一致。これでいつでも起爆できる。
すぐに殺しに行かないと――と思ったその時。
朱音の手が、……後ろから巻き付いてきた。
「……っ?」
首を引き寄せられ、そのまま――口づけをされた。
あっけ。
こんなに落とすのが楽な女だったか?
口づけは、甘く蕩けるような、今まで感じたことがない――官能的なものだった。
…………。
誘われている。
こんな状況で?
朱音の手がズボンのファスナーに伸びた。俺のを引っ張り出そうとしている。その手慣れた手つき……こいつ、経験がある。
その手を掴み、今度はこっちから口づけを返した。するとすぐさま応じて絡みついてくる。あとはもう、流れるままに動いていた。
「……あとで見返りとか要求するのかよ」
「強いて言うなら、最後のご褒美かしらね」
「…………」
「するの? しないの?」
「やらせてもらう。股を広げろ。自分で
言われた通りに動く朱音に、もはや躊躇いなく怒張した自身を最初から奥に抉りこんだ。
豊満な胸を乱暴に揉みしだく。……感じてる。しかもその仕草のいちいちが色っぽい。小鳥では決して見られない女の色気。――最初から俺を虜にしたのは、この色気だった。
……蛇だ。
こいつの中。まるで蛇のように絡みつく。これは相当の経験がある。いったい――どれだけの男と交わったんだ。
両足を掲げて淫らな恰好にさせても、なんの抵抗もない。女の武器をこれほど活用しているなんて。
…………。
あんた、かなり、辛い経験をしたんだな……。
――来た。
わかっていた。
俺を殺すつもりだったんだろ?
だが生憎だな、俺はな、あんたと繋がった状態でも――。
「――ぐああああっっ!!」
たとえガーディアンじゃなくても。
能力者には必ず埋めこまれる制御装置。生まれたときから埋められる奴もいる。それほど危険視されている存在だ。
部屋の扉の前に立った瞬間に起爆コードを解除した。朱音を抱きながら扉のノブに手をかけたまま倒れている男を見据えた。……発火能力者か。しかも遠隔操作できる。外から俺を焼き殺すつもりだったのだろう。だが一歩遅かったな。
朱音は。
ようやく俺を見て怯えたように震えていた。
「……瑚太朗」
「やっと俺の名前、呼んでくれましたね」
「な、なぜ……抜かないの?」
「なぜ殺さないのかは、聞かないんですか」
「殺す、の……?」
「まさか。……一度だけ抱かせてください。ご褒美なんですから。すぐ終わらせます。ほら、……俺に掴まって」
「……っ」
「怯えた会長も可愛いですよ」
「……バカ。……気持ちいい?」
「すごく。……ああ、でも、篝の中で俺、昇天しちゃいましたから。それ知らなければあなたを貰っていた」
「小鳥がいるじゃない」
「小鳥と一緒に貰ってました」
「ほんとに……わがままな男」
数分間の性交だったが。
朱音を快楽で気絶させるのに、なんの苦労もしなかった。
こんなことすらこの人には、与えてくれるやつがいなかったのか……。
目が……。
くそ、視力に力を注げ。上書き……ダメか、もう、カスほども出やしない。
あれ……?
何か聞こえるけど、……小鳥の声か?
耳もおかしくなってきた。
畜生……。
目だけでも……見たいんだ……やっとここまで来たのに。
「……バカですね」
――あ。
篝の……声。
今のはハッキリ聞こえた。柔らかい少女の声。だけど少しこまっしゃくれた生意気そうな、……声。
「目と耳、どちらがいいですか?」
両方はダメですか?
なんか治してくれそうな言い方してる。
いまのところはっきり聞こえるのは、あんたの声だけだ。
じゃあ……。
……目で。
「わかりました」
視界が広がった。
小鳥が泣いている。
昔見たのと、なんか似たような……デジャヴかな。
膝枕。
篝の膝の上に頭を乗せていた。
「……見えますか?」
見えます。
……よかった。
生き返った。
小鳥が俺の手を握りしめていた。泣いている。泣き声がよく聞こえない。……そうか。耳は治ってないんだ。
じゃあなんで篝の声は……あ、喋ってないのか、これ。頭の中に直接篝の声が聞こえてきた。
「あと10分で歌います。それまではサービスタイムなので、何かご要望があればどうぞ」
まるで。
これからステージに立つ歌手みたいな、そんな晴れ舞台に挑むような、気楽な声だった。
あと10分か……。
じゃあ、セックスできないな……。
「浮気した罰です」
……バレてた。
仕方ないだろ。西九条はお詫びも兼ねていたし、朱音は誘われたし、長居とキスもしたけど最後にいい思いさせてやったんだから、……ダメ?
「ダメです」
ごめんなさい。
「小鳥に、何か言ってあげてはどうですか」
なんかさ……。
声、出ないみたいなんだ。
「篝ちゃんが代わりに伝えてあげますから」
…………。
自分のことをちゃん呼びするな。
そうか。
こういうやつだったのか。
もっと一緒にいる時間があれば、おまえのこと、いろいろわかったかもしれないな。
…………。
小鳥。
そして、……篝。
俺と、……結婚してください。
「いやです」
おい。
「重婚は犯罪ですよ」
わかってるよ。
だけど二人とも好きになったんだから、仕方ないだろ。
どっちかなんて選べない。
……そうだ。
聞いてもいいか、篝。
「なんですか」
妊娠……した?
「しましたよ」
ほんとっ?!
「瑚太朗の種で受精しました。いま篝ちゃんの子宮の中ですくすくと育ってます」
……すくすくって。
あと種って。俺は種馬か。
でも、……そっか。
俺、けっこう頑張ったよな?
「そのせいで篝ちゃんの肉体は耐えきれなくなりましたが」
…………。
ごめんなさい。
「許します。瑚太朗とのセックスは、とても気持ちよかったですから」
…………。
俺も。
できればもう一度、したかったな。
でも……そうか。見たかったけれど、篝と小鳥の子供。でも、……俺、成し遂げたんだな。
「あなたに、――祝福を」
それ前も聞いた。
逆じゃないのか?
子供を授かったのは、おまえたちなんだから。
……あ。
小鳥。
身体が、半分……消えてるぞ。
「始まりました。……命の帰還が」
……これが。
終わりなのか。
こんな、……寂しい終わり方なんて。
「寂しくはないですよ。みな、同じ場所に還っていくのですから」
小鳥……。
なんか言ってるけど、聞こえない。
じゃあ、……キスだけでも。
……ダメか。
もう、……顔まで消えてきた。
手……握ってる。
手だけでも。
……消えた。
もう……会えないのか。
やっぱり。
最後に、もう一度、抱いてあげればよかったな……。
……歌だ。
篝が、――歌っている。
声は聞こえない。聞こえないけれど……。
これが、滅びの歌なのか。
なんて優しい音色だろう……。
まるで母親の胎内に包まれているような……不思議な音色だ。
聞こえないのに、聞こえてくる。
「瑚太朗」
あれ?
目の前の篝は歌っているけど、頭の中にまた篝の声がした。
「結婚しましょう」
…………。
……はい。
小鳥、いいよな。
篝を貰っても……いいよな。
じゃあ、……誓いの、口づけを……。
「……ダメです」
なんで?
「いま、歌ってる最中です」
いや、そうだけど。
キスくらい、してくれても……。
「この歌を、誓いの口づけ代わりにしてください」
滅びの歌をですか。
「捉え方次第ですよ」
捉え方……?
「これは、あなたと篝の……婚礼の
……そうか。
そう思ったらなんか、……このキラキラした光の粒も、……祝福の光に見えてきた。
……篝。
「はい」
……ありがとう。
「こちらこそ」
また、……どこかで会おうな。
「会えますよ、すぐに。――あなたにはまだやらなければならないことがありますから」
……なんだよ、それ。
俺、まだなんか、しなきゃいけないわけ?
「はい。とても……とても大切な役目が。先に行っていてください。そこにいる――■■■……■■」
……なんだって?
よく聞こえない。
「行ってらっしゃい。……よい旅を」
……篝。
……遠ざかる。
意識が、もう……。
どこへ……行くのか……わからないけれど。
あの、……一人で歌っている少女を。
どうか。
誰か、――救ってやって欲しい。
たった一人で歌っている……あの少女を。
-Fin-
この話はこれにて終了となります。
ひとまず終わることができて満足しました。
書いてたときは、これ終わるのかと不安でしたが……。
終わり方も、思っていたのと違いますが、これで良しとします。
ここまでお付き合い頂きありがとうございました。
長居とのやり取りを省略しましたが、裏で瑚太朗はキス以上のことをしてます。
まあ、その……あまりよろしくない凌辱じみた……なのでカット。
その分朱音にはいい思いをさせてあげました。
だいぶこれもカットしましたが。
この話はこれで終わりですが、またRewriteで何か書きたくなったら投稿します。
それでは。
ここまで読んでいただきまして、ありがとうございました。