【Rewrite】命のカタチのその先は【瑚太朗×小鳥】 作:千月華音
カットした部分です。(長くなりそうなのでカットしました)
小鳥がブティックで試着している間。
今のうちにと思い、隣にいる篝に聞いてみた。
「…経験あるのか?」
何がです? と小首を傾げる姿に、こいつわかっててとぼけてるんじゃないだろうなと疑った。
「性行為をしたことがあるのかと訊いている」
篝は一瞬、呆れたような表情を浮かべたが。
「ありません」
あっさりと。
なんの感情もなく素直に言ったその言葉に、むしろ聞いたこっちが呆れた。
パタン――、とノートパソコンを閉じる。
タクシーの運転手はタバコを吸いに外に出た。この狭い空間には俺と篝しかいない。
篝の顔をまじまじと見た。
「…なんですか」
「つまり、あんた処女?」
「そうですが、それが何か」
「初めての相手が俺でいいのか」
「あなたしかいないのですから、いいも悪いもありません」
「俺しか?」
「篝を人間にすることができるヒトは、いまこの星ではあなただけです」
……そうなの?
つまり俺の上書き能力は、唯一無二の力だったってことなのか。
と思ったが、続く篝の言葉がそれを打ち消した。
「かつてはあなた以外にもたくさんいましたが、皆亡くなりました。寿命が短いので当たり前ですが」
「寿命が短い?」
「まさかなんのデメリットもなしに使える能力だとは思ってないでしょう?」
…………。
いま知った。
そういうことか。
そんな危険性もあることは薄々と感じていたが、……昔の俺は考えもしなかった。
「呆れましたね。今さら気づいたみたいな顔をして」
「……悪かったな」
「篝の見た感じでは、あなたの残り寿命は…」
「――言うな!」
「……。一応の危機感は抱いているようですね」
「篝。……俺に近づいたのは、ただ滅びのタイムリミットが近いだけじゃないよな」
「…………」
「記憶を返したのも、何かしらの見返りを期待したからなんだろう?」
「……そう思っていただいても構いません」
篝の横顔は無表情で分かりにくいが、嘘を言ってるようには見えない。
何らかの思惑があって近づいたのは確かだろう。……だが。
最初から。
俺はこの女には借りがある。
何を求められても、応じてやることしか返すことができない程の借りだ。
「……篝。やり方は見て知ってるよな」
「あなたと小鳥の性交ですか。監視カメラの映像で見た限りですが」
「俺の求めに応じてくれるってことでいいんだよな」
「……。応じます。篝であなたが興奮するかどうかわかりませんが」
「いまな、あんたを見て……これだ。手で、上から触ってみろ」
ズボン越しに篝の手を固くなっている象徴に触れさせた。
確かめるかのような僅かな仕草がくすぐったいが、躊躇う様子はなかった。
「これで貫かれるのを想像してみろ」
「…………」
「想像したか?」
「……瑚太朗」
「うん?」
「安心しました」
「はい?」
「篝で性的興奮が出来るのなら問題ありませんね。身体を変化させる必要性もないでしょう」
「へ、変化?」
「あなたは小鳥の胸で興奮していました。しきりと揉んでいたので、あのくらいの大きさでないと満足できないのかと思いまして、体型を変える必要があるかと」
「やらなくていいっ!!」
「はい…?」
「確かに俺は巨乳が好きだよ! だけど別にそれ以外が好みじゃないってわけじゃない。俺は小鳥の胸が好きなんだよ! 感じてる小鳥を抱くのが好きなだけだ。俺がいまこうして興奮してるのも、あんたを抱けると思っただけでこうなってんだ。だから何も変えるんじゃない!」
「…はい」
「ホントにわかってんのか?」
まだ分かってなさそうな顔をしている篝に、今度はズボンのファスナーをおろして直接手で触らせた。
脈打つソレに慄くかと思ったが。
篝は、
「…可愛い」
なんと。
頬を赤く染めて嬉しそうに微笑んだ。
「……篝」
「あなたと違ってとても素直で可愛いです。……篝を求めているのがわかります」
「…………」
「瑚太朗、小鳥に遠慮しなかったように、篝も抱いてください。最初に小鳥を抱いたときと同じように」
最初……?
思い出した。あの緑の匂い――まさか、あの場で見てたのか。
そうか、それで小鳥が。
舞い上がっていて気づかなかった。考えてみればあの小鳥が簡単に抱かせてくれるわけもなかった。篝に取られる――その焦りがあいつを焚きつけたのか。
最初から。
俺は篝がいなければ、何も得られていなかったんだ。
篝の手を取り、細いその身体を抱きしめた。
「…瑚太朗?」
「あんたが鍵でも俺は……下半身が昂るくらいには、あんたを欲している」
「……」
「全部あんたのせいなんだからな。俺を殺さずに助けたりなんかするからだ」
「…小鳥がそう望んだからです」
「違う。そもそも俺の頼みをきいたからだ。なんで俺を助けたんだ?」
「…………」
「俺が好きなのか?」
「…………」
「どうなんだ」
「…………。……面倒くさい男ですね、あなたは」
「め、面倒…」
「その答えは、篝を抱いてから教えてあげます。そろそろ離してください。小鳥が戻ります」
「……あんた、すごくいい匂いがする」
「はい?」
「最初に嗅いだ森の匂いだ。またあのキスがしたい…」
顔を近づけると。
篝が頬を抓った。
「いて」
「早くホテルを決めてください! 追手を撒くんじゃないんですか?」
「……はいはい」
もうとっくに手配してるが、もう少しだけこの逃避行を楽しみたい。
タクシーの窓から、地味な服を選んだ小鳥が、はにかんだ笑顔でこっちに走ってくるのが見えた。
小鳥――。
感謝するよ。
おまえが俺と篝を引き合わせてくれた。
だからおまえたち二人とも、俺の女だ。
いらないかな、と思ってカットしました。
このときの瑚太朗はまだ篝に惹かれはじめている自覚もありませんが。
性欲だけは盛んだったようです。