幼馴染を交通事故から助けて死んでしまったけど、なんかそのまま現代にショタ転生して幼馴染に拉致監禁されました。 作:ひざぎ
まだ導入なので今話でエロはありません。
次回から本気です。
第一話
◇
さて、こんな口上から始めるのはどうかとも思うが、端的に言えば、俺は転生というものをしたらしい。
転生をした、ということは、死んだ、ということにもなり、死んだ、ということは、それまでの人生すべてを失った、ということに他ならない。
実際に死に直面をした者として、誰かにその状況を伝えることがあるとするならば、とりあえず痛い。めっちゃ痛いし、なんか冷たい。やけに心臓の鼓動が遅くなるのをリアルに感じて、そうして自分が死んでいく、っていう感覚を味わうのが死、というものだ。
と、こんな誰かに語るようなことでも、語れないことでも語っている俺ではあるが、とりあえず至急でこれを見た人に頼みたいことがある。
助けてくれ。
ただ、それだけを俺は伝えたかったんだ。
◇
人の死というものはいつだって平等に、そして唐突に訪れるものだと思う。ほら、よく異世界転生する主人公とかだって同じような者じゃないか。よく読む小説とかだと、遺書を残してこの世を去るパターンなんて全く見たことがないし、誰も心の準備ができていない中で死んでいくもの。俺も同じようなもので、ある日唐突に死ぬことを全うした、と、そう言えてしまう。
「これ、重いんだけど何が入ってるんだよ」
夏休み、湿気の茹だるアスファルトの上で、俺はそんな独り言みたいな言葉を、隣にいる彼女、幼馴染である笹川 穂波に向けて呟いていた。
俺の両手には、彼女がデパートで買い上げていた荷物がたくさんあって、言葉の通りに確かな重さを感じる。なんというか、数リットルのボトルを延々と担がされているような、そんな感覚。
買い物中、俺は暇だったから店の前でだらだらと携帯を開いて適当な時間を過ごしていた。だから、穂波が買ったらしいものについては何一つとして知らないし、持たされているレジ袋についても鼠色で透過しないから、中身については全く把握できない。
「ふふ、乙女にはいろいろ秘密があるんです」
「……乙女、ねぇ」
彼女の冗談みたいな口調に、俺はそんな反応を返した。……そしてすぐに脇腹を小突かれた。痛いな、って返したくなったけれど、これは俺の言葉が悪いような気もして、特に何かを返すことはなかった。
「というか、これは翔太の
彼女は俺の名前を呼んで、あからさまなくらいに罰ゲーム、という言葉を強調して、悪戯みたいによく笑う。まあ、実際その通りでしかないので、俺は文句を呟くことはなかった。
健全な精神の高校生であれば、もっとデジタルなゲームとかをやるのだろう。そうでなくとも、夏場というのであればプールや海、そうでなくとも涼し気な場所で遊んでいく、というのが鉄板ではあるものの、俺たちは自堕落を自称している高校生であるため、特にそういったことを行わず、だらだらと毎日を過ごしている。
今日に関しては、穂波の部屋にあったトランプでババ抜きなるもので時間を過ごしていたわけなのだが、そのすべての試合で俺が惨敗する、というなんとも哀しい結果に終わり、それにかこつけて穂波が一日荷物持ちの刑を俺に処したのであった。
「負けた自分を呪うんだねぇ」と穂波はいつになく煽るような表情でこちらを見てくる。はしゃいでいることがよくわかるように、ずっと口角は緩みっぱなしだし、そんな彼女が楽しそうでいてくれるなら悪い気もしないから、俺も結局重たいものであっても気にしないくらいには楽しい時間を過ごしていく。
そして、そんなデパートの道で、唐突にそれは起きた。
「ほら、早く家に帰らないと疲れちゃうよー?」
にやにやとした表情を崩さないまま、彼女は青信号を渡ろうとした。少し駆け足気味で、鬼ごっこをするみたいに煽る穂波に、俺は「待てよっ」と荷物を抱えながら、それでも彼女のペースに合わせて足を運ぼうと、する──、──した、が。
「──危ないッ!!」
「──えっ?」
──青信号だっていうのに、それでも横から突き抜けるように加速するトラックの姿。完全にこちらに非はない状況。それでもトラックが止まる様子はなく、勢いよくこちらに、……いや、穂波に向かってトラックは動いていく。
このままだとまずい。そんなのはすぐに理解できた。なによりも彼女のことを助けないと、っていう一心で、俺は持っていた穂波の荷物を放り出して、トラック目前にいる彼女を力いっぱい押していく。
──それで、助かるかなんてわからない。というか、この状況を思えば、なんというか異世界転生でもしそうだな、と俺は冷静にそんなことを思っていた。それくらいに非現実的な光景だったからこそ、ぼんやりとそんなことを考えるしかなかった。
そして──。
「翔──」
俺の名前を呼ぶだけの声、それも、断片的なもの。
そんな彼女が俺を惜しむだけの声だけ聞こえて、そうして俺の命は全うするに至ったとさ。
◇
まあ、きっと彼女が助かったならそれでいい、と俺は思うことができた。ほら、こういう死に方もドラマチックなもんだし、もしかしたら本当に異世界転生なんていうものもあるかもしれない。そんな感じで死を見つめていたから、割と悲観的になることはなく──。
──そうして、目を覚ました。
「──……、……っ!」
目が覚めたときに感じたのは、命を全うする瞬間の痛みの感覚。それは具体的に体へと刻み付けられていて、俺の関節すべてが破壊されるような電流の痛みが一瞬だけ走った。でも、一瞬だけでしかなく、その次の瞬間には痛みもなくなって、ただ目が覚めたなぁ、というぼんやりとした実感だけを覚えた。
目を覚ました、ということは生きているっていうことだし、まあ痛みが走ったのも、なんとか病院とかで手術なりなんなりをして蘇生したのかなぁ、と目覚めた頭順序立てて整理をしてみる。だんだんと納得のいく結論にまとめられたところで、改めて視界をぐるりと見渡してみるけれど。
「知らない天井、……ではないな」
知らない天井でも、知っている天井でもなかった。なんなら目の前に天井なんて存在しなくて、ただただ暗闇を照らす夜の世界がそこにはあった。
それでも周囲には光が散乱しているようで、ちかちかとする明るさに眩暈を覚えそうになる。それでも体を起こして、いろいろなものを確認するけれど──。
「──えっ、裸? ……って、……は?」
なぜか、俺は裸だった。まあ、裸なのはいいとして、いや、良くないけれど、それは置いておくにしても……。
──伸ばした腕の短さ、そして立ち上がったときに感じる身長の小ささ。というか、声を吐き出した時に感じた違和感のようなもの。それは聞き馴染んだ俺の声ではなく、どこか少年のような、そんな高い声。
そして、周囲にあったのは、見慣れている場所。というか、最後に死を迎えた場所。
見覚えのある青信号、穂波と歩いたなぁ、と思い返すことができるくらいに通い慣れている場所。確実にここはデパート前の信号じゃないか、とそう思うほどに、目の前の景色はあまりにも現実世界のものそっくり、というかそのまんまだった。
「……転生、したのか?」
自分で声を吐き出すと、知らない声が自分の中で響くから違和感が強くなる。そして、転生するのであれば、相応に何かしらの異世界とか、そういうものだと思っていたからこそ、現状について理解が追い付かなくなる。
だって、異世界転生って、死んだら神様のような人に会って、なんかすっごいスキルとかをもらってさ、それで無双したり、現代知識を生かして成り上がるとか、そんなやつだろ。
でも、目の前にあるのはどうしようもないほど見慣れている現実であり、そして神様というものもいないし、特典というものもない。強いて違う点を挙げるのであれば、自分がなんか子供っぽくなっている、ということくらい。
……まず、この状況でやるべきことはなにか。
そう頭の中で考えてみて、衣服とか助けとか、もしくは実家に駆け込む、とかいろいろ考えてみたけれど、それはそれとして欲望が先にちらついて、俺は鏡を探すことにした。
信号機の近く、その奥の交差点であれば、車用のミラーとかあったはずだ。そう思いながら、俺は裸を隠して、そうして青信号を渡ろうとする、が──。
「──うぅ、うっ、翔太……、翔太ぁ……」
信号の近くで、花がたくさん飾られている電柱の付近で、ひとりの女の子が泣いている。それも、いつか見た景色と重なるように。
──っていうか、確実に穂波じゃん、あれ。
俺はそんな確信をもって、とりあえず彼女に話しかけることにした。
──それが、この間違いの始まりだということには気づかずに。
というわけで週一更新でやっていきます、改めてよろしくお願いします!