幼馴染を交通事故から助けて死んでしまったけど、なんかそのまま現代にショタ転生して幼馴染に拉致監禁されました。 作:ひざぎ
◇
こいつは何を言ってるんだろう。もしくは俺の聴覚機能が転生したばかりのために故障してしまっているのか、とかそれくらいに突拍子のないことを彼女は言っているような気がした。
彼女の今の服装としては夏らしい服装、まあ涼しそうな服装だ。それを詳細に言葉で表現すればセクハラになってしまうかもしれないけれど、それでも誰かに伝わるために並べるのであれば、夏の暑さに耐えるために薄くなっている灰色のTシャツ(どことなく胸が強調されている気がするし、丈が短いせいでへその部分が頑張れば見えてしまう)ものと、少し身体のラインを強調するようなショートパンツ、その裾からはみ出ているスパッツのような線も見える。ともかくとして、身体の女性的な部分を誇張したような、そんな夏らしい服装を彼女は着ているのだ。
その上で彼女の言葉を整理しよう。
『私の服の中に隠れててっ!』
……いや、いやいやいやいや、いやいやいやいや、それは流石にどうかと思うよ。俺、男だし、なんなら幼馴染の女の子だし、そりゃ性的な目で見たことも数えきれないほどだし、そんな薄手の服を着ている彼女の中に隠れるとか、どう考えてみても倫理的におかしいと思う。
そりゃ、この少年の身体、という恩恵があるうえでそのような体験ができるのであれば、正直悪くはないけれど、これでも精神年齢は男子高校生と同じなのだ。もしかしたら小学生の無垢な男子であれば、気にせずに彼女の言葉に乗っかるかもしれないけれど、俺は男子高校生でしかないのだ。そんな人間が、こんなムフフなイベントに積極的に参加する、というのはどうだろうか。
うん、絶対にダメだ。中身が子供じゃないからこそ、俺はきちんと相応の振舞いをしなければいけない。
「え、ええと、その」
……まあ、それはそれとして解決案のようなものは思い浮かばない。裸で投げ出されてしまっている以上、切るべき服装のようなものはどこにもないし、彼女の提案以外に方法はない。もし、一瞬考えた彼女に服を貸してもらう、というパターンを実行したとしても、そうなれば下着を晒して歩く痴女が完成してしまう。それは幼馴染である俺からすればどうやったって肯定することはできない。
……うん、ここは一旦彼女と距離を取って、まずは自宅に隠れながら帰るのが一番なんじゃないだろうか。
なんだかんだ考えた末、それが一番正しいような気もしてきた。幼馴染という血のつながっていない人間に迷惑をかけるよりかは、血のつながりがあった両親に迷惑をかけた方が何千倍もましだろう。そしてゆくゆくは穂波にも正体を伝えて……。
よし、そうしよう。
「あっ、全部思い出したぁ! 僕、お父さんとお母さんのお家、思い出したよ!!」
あからさまな棒読みになってしまわないように、少年らしさを失わないようなそんな声をあげてみる。自分で吐き出した言葉に違和感はない。……まあ、少々の胡散臭さ、というか嘘臭さは出ているような気がするけれども、これも穂波の為である。
「ごめんねお姉ちゃん。僕帰るよ!」
裸のまま自宅に向かう、というなんとも虚しい状況ではあるが、それでも俺は踵を返して、俺が翔太だったころの自宅を意識して歩みを始めようとする。せめて靴でもあればなぁ、とか思ったけれど、そんなわがままは言っていられない──。
……と、そんな風に歩き出した時だった。
──バシッ。
一瞬弾けるような音が聞こえた。それと同時に手を掴まれるような感触を覚えた。確かな温もりを掌に感じて、そうして俺の手を掴んだであろう穂波の方へと振り返っていく。
「今、君、嘘ついたでしょ」
「……へっ?」
穂波は俺の目を覗きながらそう言った。その視線は俺の心を釘刺しにするかのように鋭いもので、中身が男子高校生である俺であっても怯んでしまいそうな、そんな眼光が宿っていると思ってしまった。
「……なんかわからないけれど、今君は嘘をついたと思う。なんか、なんとなくそう感じるんだよね。どう、嘘、ついたんじゃない?」
「……」
……まあ、流石にあからさますぎるセリフだなぁ、とは自分でも思っていたけれど、それを言及されるとは思ってもみなかった。
「ほらやっぱり!」と俺の沈黙に何かを察したように、途端に得意げな表情を浮かべる。
「何を心配しているのかはわからないけれど大丈夫! 私の家に来れば無問題! とにかく、さっさと私の服の中に隠れなさいっ!」
「えっ、いや、それはちょっと──」
「──いいから隠れるのっ!!」
やだっ! と返そうとしたけれど、そう吐き出そうとした言葉は喉の中に飲み込まれてしまう。
穂波はそうして上に着ていたTシャツを脱ぐような動作をして捲っていく。そうして見えた下着のようなものと肌。俺はあわあわと視線を逸らすようにしていると、次の瞬間には真っ暗になった。というか、顔に気温以上の具体的に感じる温もりに包まれていった。
──もにゅっ。
そんな擬音が頭の中に響くかもしれないような、そんな感覚。頭の上には重いものが乗っかっていて、そうして身体全体を包むように肌の温もりがそこにはある。確実に穂波の体温。
「──さあ行くよ!!」
俺が拒否の言葉を話す間もないまま、彼女は俺を服と肌の間に挟んで、そうして言葉を紡いでいく。俺としては頭の中に乗っかっている重さの正体を考えるだけでどこかむずむずとする下腹部を感じずにはいられなかったが、それはそれとして思うことがあった。
これ、拉致じゃねぇ?
そんな客観的な感想が俺の気持ちの大半を占めていた。
……嘘、それ以上に柔らかい感触が身体全体を包んでいることに、どうやって意識を逸らせばいいか、そんなことを必死に考えようとしていた。
◇
視界は真っ暗なままで、特に変化はない。目を開けてもその景色は変わらない。暗がりの空と穂波の肌が目の前にあるから、真っ暗であっても仕方がないのかもしれない。
穂波ははぁ、はぁ、と息を吐きながら俺の体を揺らしていく。いや、揺らしている、というよりかは単純に走っているのだろう。だんだんと目の前に滲んでくる熱気のようなもの。俺は滑りそうな感覚を覚えて、無意識に彼女の身体を抱きしめるような体勢になっていた。
そうして数分くらい。デパートからの道程を考えれば、おおよそ穂波の家にたどり着くであろうそんな時間。本来であれば彼女は走っているのだから短い時間でたどり着いたのだろうけれども、正直目の前の肌色のことばかりに意識を取られてしまって、邪念を振り払うために豆腐の白さを思い出そうとしていたから、どうにも長い時間を過ごしたような気がする。
がちゃ、と扉があいた音。それから、とんとん、と靴を脱ぎ捨てるような音。
「はぁ、はぁ……。ようやく、到着……」
穂波はそう息を孕ませながら、そう俺の方へと声をかけていく。
ただいま、ってこいつ言わないんだっけ、とか一瞬思ったけれど、そういえば穂波の両親はどっかのライトノベルの主人公のように海外へと働きに出ているから、家に帰ってもだれもいないし、ただいま、という言葉をかける意味がないのか、と唐突に俺はそんなことを思った。
よいしょ、と穂波は言葉を吐きだしながら、俺の身体を担ぐようにする。窮屈に思っていた肌と服の挟み具合から俺はようやく解放されて、俺は静かに息をついた。
……めっちゃ温かかった。なんかいい匂いがした。柔らかかった。穂波が走って足を動かすたびに乗っかった頭への弾力が忘れられない。あの瞬間、どれだけの煩悩が俺の心を揺るがしたのか、筆舌に尽くしがたいほどだった。
まあ、それはそれとして。
(懐かしいな……)
別に意識的にはそんなに久しぶりに来たわけでもないのに、なぜかそんな気持ちになった。なんなら死んだあの日でさえも穂波の家出時間を過ごしたわけだし、懐かしい、だなんてそんな気持ちを抱くのはどうかしてると思うけれど、家の中に入った瞬間の空気、というか香りのようなものに対して、俺はそんな感慨を抱いてしまう。
……裸じゃなければなぁ。
そんな格好のつかないことを考えながら、ようやく解放された視界の暗さに、少しばかりの眩暈を覚える。いつの間にか穂波は玄関先の電灯を点けていて、その明るさに頭痛を感じそうになった。
特に何か言葉を吐いたわけではないけれど、俺の態度で何かしらを察したらしい彼女は「ご、ごめんね?! 暑かったよね?!」としきりに頭を下げるようにする。俺は、大丈夫、と声を吐き出したけれど、それからも穂波は頭を下げ続けていた。
「ごめん、ごめんね……」
なんというか、こうやって女性に、しかも知っている女の子に頭を下げ続けるシチュエーションは好きじゃない。だから、頭を下げるたびに俺は、本当に大丈夫だよ! と元気なふりをするけれど、それでも彼女は頭を下げ続けたままで顔をこちらに向けようとしてこない。
そんなに思い詰めることもないだろうに。
俺は彼女の行動にそう思った、けれど。
「……」
次第に、彼女が頭を下げ続けている理由がはっきりとわかってくる。いや、理解したくはなかったのだけれど、それでも視線がそれにぶつかるような感触を覚えて、理解したくないことを理解してしまう。
「……穂波、さん?」
敬称をつけるのを意識しながら、それでも彼女が俺の理解したくない部分を見つめている視線を交わすために、なんとか穂波の名前を呼んでみる。
けれど。
「……」
穂波は、何か言葉を返すことはない。
──頭を下げ続けながら、そうしてその視線は、俺の、その、……ええと、あれだ。あの、下腹部、というか、股間を凝視していた。
そして、その視線の流れに沿うように、俺も自分のそれへと視線を移してみる。
──嫌なほどに屹立している自分のそれ、というかベビー息子。ベビーな息子であっても、興奮を覚えていることを誇張するように、それは確かに垂直、いやそれよりも角度を作って起立していた。
まず、言い訳をさせてほしい。
昔から関わっている幼馴染である穂波、俺は彼女のことが昔から好きだし、好きだからこそ彼女の体に直接的に触れてしまったことで、少しばかりの煩悩、というか興奮を覚えてしまった。
けれども、それでもそこは男子高校生の矜持、なんとか木綿の豆腐を想像して、性的な興奮から意識を逸らそうとしたのだ。俺は頑張ったのだ。……あの、木綿のような柔らかいおっぱ──、じゃなくて、木綿豆腐を頭の中に想像して、なんとか難を逃れようとしたのだ。
けれども、それでも抑えられない衝動というやつがある。
男子高校生の時の身体であれば、きっと木綿豆腐を想像しただけでなんとかその屹立を抑えることができたかもしれないけれど、今や少年の身体になってしまっている。未経験でしかない身体では、どれだけ意識を逸らして木綿豆腐のことを考えたって、それでも屹立してしまうものなのだ。
クソッ! 全裸じゃなければ!!
そんな後悔すら役に立たない状況。そして、いつまでもそれを無言で見つめ続ける穂波の視線。
「え、えーっと」
やめろ、やめてくれ。恥ずかしいからやめてくれ。そんな、幼馴染に興奮してしまう男子高校生とか、そんなの好意や性的関心を持っていることをアピールしてしまう恥ずかしい状況を察するのはやめてくれ。
心の中で何度もそんな言葉を吐いてみる。でも、実際に口から漏れることはない。
ああ、この流れは糾弾でもされるんだろうな、非難される流れになるんだろうな。嫌だなぁ、穂波に罵詈雑言をぶつけられるの、本当に嫌だなぁ──。
──と、俺がそう思ったときに、穂波がさらに頭が白くなるようなことを言い出した。
「──これ、私が小さくしなきゃ、だめ、だよね……」
「──はいっ?!」
俺はそんな彼女の言葉に、素っ頓狂な返事をあげることしかできなかった。
◇
「わ、私で大きくしちゃったんだもんね。そのせ、責任ってやつを、私がとらなきゃいけない、……よね」
「……いや、いやいやいや」
衝撃的すぎる彼女の言葉に、俺は否定するための言葉を並べていく。具体的な言葉は思いつかないけれど、それでも安易にこのような流れになってしまってはよくない、とそう思って言葉を並べてみる。
けれど、その甲斐はない。
「だ、だって、翔太が隠している本に、そういうやつあったし。私も友達の彼氏の話とか聞くと、いつもヤってあげてる、とか、そんなこと言ってたし」
うぇいうぇいうぇい、待ってくれ、待ってくれないだろうか。なんで俺の隠している本のことをこいつ知ってんの? というか、そうじゃない、そんな不埒な友達の話なんか当てにしちゃいけない。というか、俺の本だって、あれは創作なんだから、まじにしちゃいけない。
「ま、まって穂波さん──」
「──う、うん。大丈夫、わかってる。自分でもなんでここが大きくなったのかわかんないよね。大丈夫、大丈夫だから」
「いや、違くて。まずは話を──」
「──大丈夫、大丈夫だから、本当に大丈夫だから。すぐに小さくしてあげるから」
だからなんでこいつは俺の話を聞いてくれないの?
俺が何かを発言しようにも、必ず食い込むように返答をするし、しかも聞こうともしてくれない。そうじゃねぇ、と声に出したとしても、更にそれを上書きするように穂波が被せてくるから、何かを発言する意味もない。
でも、それでもだ。だからといって、ここから想像できる展開に身を委ねてはいけない。そんな不埒な行為をしてはいけないのだ。ほら、そういった性的なことは結婚してからって法律で決まっているはずだから──。
「──ちょっと、じっとしててね」
──でも、俺が言葉を吐こうとしたとき、既に彼女の指先は俺のそれへと近づけていて、そうして──。
次回、確定演出。