解凍されたら1000年後。人類から男が絶滅してました。〜ピッチリスーツの性欲旺盛美少女たちに人類保全の種付けセックスを強要されるらしい〜 作:ユリイカ
艦橋に現れたトウヤに向かって自慢の曲芸飛行を見せた直後、アリサの乗る機動宇宙戦闘機スワローⅠのコックピットにアラームが響いた。アリサは即座に意識を任務に切り替え、口元を固く結んで〈ミグダル〉からの指示に傾聴する。
『広域哨戒レーダーにて所属不明船を感知。現在、本艦との接触針路のまま高速で接近中。警告信号に反応なし』
座標が送られ、ウィンドウにマーカーが投影される。星の煌めきに紛れるように、不自然に揺れ動くブースターの炎が超望遠カメラで捉えられた。速度と距離が自動的に計算され、衝突までの猶予が弾き出される。
『現状の衝突予定時刻は3分21秒後。二度目の警告信号に反応なし。識別IDに該当がないことから、現時点を持って積極的撃墜対象“ジャック-ワン”に指定。展開中のアルファ隊は当該目標に攻撃を開始』
「アルファ-ワン了解。――各員、命令は確認したか」
『アルファ-ツー了解』
『アルファ-スリー了解』
アリサの声に、近距離通信で繋がるアルファ隊の戦闘員たちが応じる。隊長アリサ、副長テレスを含め、5人のパイロットが〈ミグダル〉の周囲に展開している。幸いなことに、ジャック-ワンに最も近いのはアリサが乗るスワローⅠだった。
通常の宇宙船航行においては、たとえ海賊船の疑いがあれども先制攻撃は許されない。しかし、人類捜索船〈ミグダル〉はその使命の重大さから、〈カルヴァリヤ〉の統一銀河政府から直々に無差別の迎撃許可が下されていた。よって、艦長セイルの判断一つで、疑わしきを罰することが可能である。
アリサの操作を受けて、スワローⅠがエンジンを励起させる。青白い尾のような炎を噴き上げながら一気に加速する。軽量化と小型化のため重力制御装置を搭載していない機動宇宙戦闘機のコクピット内には容赦なく重圧がかかる。
「アルファ-ワン、目標捕捉。周辺に僚機は確認できず」
『了解。ただちに迎撃を始めよ』
慣性による擬似重力を受けながらも、アリサは冷静に翼を操る。彼女の着るスキンスーツは、最大70Gもの高圧にさえ耐え得るように設計されている。酸素さえどうにかなれば、これとフルフェイスヘルメットのみで宇宙空間での単独遊泳さえ可能なほどの機能があるのだ。
なにも、トウヤの精液を受けるだけの便利なコンドームスーツという訳ではない。むしろそちらの方がおまけである。
「帰ったらトウヤさんとエッチしよ。撃墜すれば、それくらいは許してもらえるでしょ」
艦橋に現れたトウヤは、自分の曲芸飛行を見て驚いた顔をしていた。その可愛い姿を思い出し、アリサは口元を緩める。
襲撃機の迎撃は、アリサにとって何ら気負うことのない事務的な作業だ。合計訓練時間が1000時間を超え、地球に構築されたミグダル製の防空システムさえ突破してみせた彼女は、自他共に認めるエースパイロットである。
照準を定め、最速のレーザー熱線銃にて仕留める。彼女の指先が引き金を引きかけた、その時。
『隊長!』
「っ!?」
耳朶を打つ声。アリサを追いかけてきたテレスのものだ。
副長の叫びにアリサは深く思考を巡らすこともなく、反射的に操縦桿を倒す。パイロットの意思をほとんどラグなく反映させ、燕が身を翻す。
「きゃああああっ!?」
直後、凄まじい衝撃がコックピットを揺るがす。予想だにしない方向からの、物理砲弾による狙撃だった。それはスワローⅠの右翼先端を貫き、弾き飛ばした。
テレスの声がなければ回避する間もなく、機体の胴ごとコックピットを撃ち抜かれていたはずだ。
『隊長! 大丈夫ですか、隊長!?』
「平気よ! 周辺を走査! 隠蔽の可能性を考えて、徹底的に!」
テレスに矢継ぎ早の指示を下しながら、アリサは操縦桿を握りしめる。着弾の衝撃で機体が猛烈な回転をしていた。急いでスラスターを炊き、制動を始める。優秀なスタビライザーが即座に発動し、彼女は程なくして機体の安定を取り戻す。
「チッ! アルファ-スリー、アルファ-フォー。敵機はどこにいった!?」
『わ、分かりません!』
『狙撃方向を探しましたが、反応がありません!』
戦況を俯瞰していた僚機達も戸惑いを声に滲ませている。
アリサは拳をどこかに叩きつけたい気持ちを抑え、周囲を見渡す。せめて接近中だったジャック-ワンだけでも墜とす。
「そこかっ!」
ジャック-ワンは怯むこともなく直進していた。逡巡なくトリガーが引かれ、音のない光条が燕の首元から飛び出す。光速に迫る勢いで放たれた超熱量の破壊光線は、一分の狂いなくジャック-ワンのコックピットを貫き、爆散させる。うまくエネルギージェネレータあたりに直撃したようだ。
「ジャック-ワン撃墜! しかし、不明機より狙撃を受けました!」
『何っ!?』
「現在捜索中ですが高精度レーダーにも反応ありません。すでに離脱されたものかと」
アリサの報告に〈ミグダル〉の中央指揮所も少なからぬ動揺を見せる。本艦が搭載しているレーダーは、スワローⅠのものとは根本的な規模からして違う。広域レーダーといえど、並のステルス工作は濡れ紙のように容易く破られるはずだ。
しかし、謎の狙撃手はその目を掻い潜っていた。わざわざレーダーに映りやすい物理砲弾を撃ち込んでなお、〈ミグダル〉の目を誤魔化せるほどの実力を示したのだ。
『アルファ-ワンは帰艦し、機体の補修を受けよ。残存のアルファ隊は周辺警戒を継続。ベータ隊はジャック-ワンの残骸を回収し、解析に回せ。本艦は完全防御体制へと移る。安全確認を優先し、不明機の調査を始めろ』
セイルの指示で各員が動き出す。〈ミグダル〉は非常用エネルギータンクを開放し、その巨大な船体を斥力フィールドで包み始めた。
『隊長、お怪我はありませんか?』
「私は問題ないわ。――ありがとう、テレス」
右翼を半分ほど失った不安定な動きで〈ミグダル〉に向かうスワローⅠに、副長機のスワローⅡが駆けつける。短距離通信の心配そうな声に、アリサは努めて気丈に答えた。
実際、テレスの声がなければあっけなく消えていたのはアリサだ。今更ながら死の恐怖が彼女の背中にべっとりと張り付く。
「よく気付いたわね。〈ミグダル〉もまるで感知できなかったのに」
『一瞬、星の光がチラついたような気がして。少し違和感を覚えたんです』
「ありがとう。おかげで助かったわ」
滲み出す冷や汗はスキンスーツが吸収していく。それでも、アリサは芯から冷えるような恐怖を拭うことができなかった。
スワローⅠが〈ミグダル〉の格納庫に戻ると、待ち構えていた整備士たちが機体を引き継ぐ。アリサは震える足で母艦を踏み、ようやく少し安心する。
「残骸を調査したジェーンたちから連絡がありました。ジャック-ワンからは生物的な痕跡が見つからなかったとのことで」
「つまり、囮だったってことですね」
アルファ隊の解析官からの報告に、アリサは肩を落とす。通りで愚直に突っ込んできたわけだ。自分はただの案山子に勝ち誇っていたのかと思うと、顔から火が出るような思いだった。
無人機による陽動にまんまと引っかかり、飛び出したところを狙われた。隠遁技術も相当だが、これほど簡単な計略に引っかかった自分が許せない。
「艦長が、メディカルチェックの後で中央指揮所へ来いと」
「了解。――向こうも大変でしょうね」
艦隊の目たる哨戒が敵を見逃していたのだ。今ごろ機器の総点検から作戦の再構築まで、あらゆる部署が上へ下への大騒ぎとなっていることだろう。
補給先の都市惑星〈ティリア〉到着まで三日ほど。何事もなければいいのだが。
アリサは祈るような気持ちを抱きながら、重い足取りで医務室へと歩き出した。