解凍されたら1000年後。人類から男が絶滅してました。〜ピッチリスーツの性欲旺盛美少女たちに人類保全の種付けセックスを強要されるらしい〜 作:ユリイカ
厚さ250mmの高耐久宇宙装甲が、雲のように漂うデブリを貫いた。赤く輝く尾を引きながら、円錐形の降下ポッドは一直線に落ちていく。三基のプラズマジェットエンジンは問題なく動作し、母なる地球を守るように立ちはだかる鉛の黒雲を貫くことに成功した。
大気圏へと突入する三秒前。推進剤を使い切ったエンジンはタンクごと投棄される。これもまた重力に巻き取られ、散り散りとなったデブリの中へと紛れ込んでいくだろう。
「地上降下部隊アルファ、黒雲を突破。大気圏突入を開始」
『了解。機体パラメータを注視しつつ、広域レーダーを展開しろ』
大気の壁と衝突し、降下ポッドが大きく揺れる。断熱圧縮により、高耐久宇宙装甲に赤色が滲むように広がる。だがクルーたちは冷静に各々の役目を遂行する。何度も繰り返したシミュレーションから大きく逸脱した状況はない。
「アリサ、レーダーに反応あり」
「了解。……撃ち落とされないように気をつけないと!」
ポッドから照射されたレーダーは周辺の状況を知らせるが、敵に自身の姿を曝け出すことにも繋がる。ポッド自体はステルス構造で構築されているが、ほとんどおまじない程度にしか期待できない。
レーダー観測員からの報告を受け、アルファ隊長アリサは各員へ通達する。直後、予告された方角から闇を貫くように鋭く飛翔体が迫ってきた。
「旧式の自動防衛ミサイルです。自律行動が可能なレベルⅢAIを搭載し、八つのサブミサイルを展開します」
「装甲パージ。高高度チャフを展開。デコイA、Bを投下」
「了解」
「了解」
アリサの指示を受け、ポッドが形を変える。
鈍色の装甲が剥がれ、後方の左右へと吹き飛ぶ。同時に現れたのは白銀の躯体だ。腹に抱えた円筒形のデコイが二つ投げ出され、遅れて無数のチャフがばら撒かれる。
地球の地平線上から現れたミサイルは一定の距離を詰めたのちに細かく分裂する。八つのミサイル――その一つ一つがポッドを木っ端微塵に破壊できるだけの能力を持つ。光学的センサーによって標的を自動的に選別し、捨て身の特攻を仕掛ける。
「デコイA、ロスト」
強い電磁波を発して存在感をアピールしていたデコイの一つが爆散する。その衝撃はポッドにも伝わり、大きく揺れる。即座に姿勢制御スラスターが細かく断続的に焚かれ、軌道修正が実施される。
「防空層突破まで250kmを切りました」
地球の大気圏は約500km。半分を切った。
旧時代の自動防空システムがサポートされているのは大気圏の上層から地表100kmまでの範囲だ。その400kmを切り抜けなければならない。
「自動防衛ミサイルが新たに出現」
「デコイB、ロスト」
これまで多くの先人達がこの厚い大気の層を突破しようと試みてきた。彼女達が乗るポッドに収められた情報は、命を代価に支払われたものだ。
「斥力フィールドを展開!」
「隊長!? 速度が減衰してしまいます!」
「構わないから!」
捩じ伏せられるような重圧を受けながら、少女は叫ぶ。
事前のシミュレーションよりも敵の攻撃が激しい。事前に観測されていたよりも、生き残っている迎撃設備が多かった。このままでは防衛策が枯渇してしまう。
隊長の決定は絶対だ。一瞬の躊躇ののち、半透明の膜がポッドを包み込む。自由落下中にパラシュートを開いたようなものだ。一気に速度は落ち、慣性力に従って船内には強い衝撃が伝わる。
スキンスーツはあらゆる環境から生体を保護するが、物理的衝撃には無意味だ。クルー達がしっかりとシートベルトを締めていなければ、怪我人も出ていただろう。
速度を落としたポッドは絶好の標的だ。親機から分離されたミサイルが次々と殺到する。水の中に落とされた腐肉を啄く肉食魚の群れのようだ。
「残存電力、40%を切りました!」
「フィールド耐久が持ちません!」
悲鳴が上がる。
1,000光年もの長い旅路の果て、もう目の前に目的のものがある。こんなところで死にたくない。
先遣隊たちが上げたであろう悲鳴を、彼女達も同様に叫ぶ。だが――。
「リージュ、私の合図でフィールドを解除して」
「た、隊長!? そんなことしたら――」
装甲を取り払い、ポッドは生身。ミサイルに耐えられるわけがない。
目を剥く同僚にアリサは努めて強気に笑う。
「大丈夫。――今ッ!」
「っ!」
躊躇している暇はない。
リージュがコンソールのボタンを叩く。瞬間、電力系統に指令が走り、斥力フィールドに供給されていたエネルギーが途絶。ポッドは薄い装甲を曝け出す。
直後、パラシュートを畳んだ船体は一瞬加速する。それが命運を分けた。
照準を定め、左右から一直線に迫っていた二つのミサイルがポッドの後方で衝突。凄まじい爆風が大気中に広がる。
「フィールド展開!」
「はいぃっ!」
再び、斥力フィールドが広がる。パラシュートとしてポッドを掴んでいたそれは、今や順風を孕む帆となり、内部に抱き込んだポッドを地面へ誘っていた。
ミサイルを誘爆させ、その風を受けて再加速。ポッドは大気の分厚い壁を貫き、天然の白い雲を破る。
「防空層突破しました!」
船内で歓声が上がる。
だが、船首に向かうアリサは口を結んだままだ。
「大気圏内巡航モードへ移行。レーダー解析を始めて、降下地点の選定を」
「りょ、了解しました」
雲の向こうに広がるのは一面の荒野。汚染された土壌に植物が繁茂するまで、まだしばらくの時間がかかるらしい。朽ちた戦争機械の残骸が、往時の絶望を想起させる。
おどろおどろしい光景を前に、船内の浮つきかけた空気も鳴りを潜める。防御装置担当のリージュが、不安な瞳をアリサに向けた。
「隊長……。本当にいるんでしょうか」
「侵略戦争時はまだ、男女比率は男性優位だったわ。それに、この先は医療都市があった座標だから。ひとりくらいは見つかる――いえ、見つけないと」
強い使命感を瞳に宿し、アリサは硬く拳を握りしめる。
人類の命運はいま、大きく破滅へ傾いている。その急激な天秤の変化を押し留めるには、アリサ達が目的を達さなければならない。
荒野には真新しい残骸もいくつか落ちている。それらはアリサたち以前に大気圏突入を敢行した旧人類捜索隊たちの墓標だ。彼女達が命懸けで築き上げた足場の頂点に、アリサたちは立っている。
『地上降下隊アルファ、状況を報告せよ』
重い沈黙を断ち切るように、スピーカーから凛然とした声が響く。アリサははっと我に返り、慌てて答える。
「こちら地上降下隊アルファ。我、無事に防空層を突破。現在は捜索ポイント-ワンに向けて航行中」
高精度のスピーカーから、本部オペレーターたちの安堵の気配が伝わる。
『了解。よくやった。しかし油断はするな。防空システムについてはともかく、地上防衛システムについては未知数だ。大半は経年劣化で動かないだろうが……』
「分かっています。全方位に向けて警戒しつつ進みます」
鉄屑の荒野に動くものはない。だが、観測員は目を皿のようにして盤面を睨んでいる。
1000年前の機械はとっくに耐用年数を超過している。しかし防空システムは健在だった。分厚い大気の内側でじっとしていた他の兵器達が全滅している可能性は低い。
「ッ! 11時方向より熱源感知!」
「大気圏内防衛迎撃装置起動。逃げ切るわよ!」
案の定、眠ることも飽きることもない兵器が動き出す。1000年ぶりの獲物に歓喜の声を上げ、蜂起する。錆びついた車輪、欠けた歯車を動かして、装填した砲弾を投射する。
雨のように降り注ぐそれを、ポッドから展開された無数の近距離防衛砲塔が瞬間的に撃ち落とす。
「防衛迎撃能力、稼働率2%。余裕ですね」
「当たり前でしょう。1000年前の型落ち品に負けてちゃしょうがないでしょ」
軽口を叩く余裕すら出てきたクルーたちに、アリサも少し安堵する。
鬼門となっていた防空システムは人類製ではない。あれを突破することさえできれば、地上のスクラップはどうとでもなる。
安定のため左右に機翼を展開したポッドは、滑らかに地表を飛ぶ。向かう先に見えるのは、瓦礫がうずたかく積み上げられたかつての大都市。
「――捜索ポイント-ワンを発見。降下次第、地上探索を行います」
『了解。ここからが正念場だ。気を引き締めろ』
「了解」
司令部からの激励を受け、アリサ以下アルファ部隊のクルーたちも緊張感を取り戻す。
広域レーダーを用いて瓦礫の中から安定した地面を見つけると、ポッドは滑らかに3本の足を伸ばして着陸を果たす。実に1000年ぶりの人類の帰還だった。
「各員、地上探索用装備の着用を」
アリサの指示を受けてクルーたちが動き出す。ラックに並べられていた装備は、この日のために開発された物々しい防具だ。頑丈なフルフェイスヘルメットには汚染大気を阻み、呼気を循環させる浄化システムが内蔵されている。スキンスーツの上から着用する防護装備は、防弾防刃性能に加え、高い放射線にも耐える。
更には重厚な銃器を抱える。追加のマガジンもベルトに差し込み、背後のリュックにはサバイバルキットもある。万が一ポッドに戻れずとも、無補給で三日間の生存は可能だ。
ポッドの留守を任される二人のクルーを残し、アリサたちはエアロックを開放。タラップを降り、いよいよ地上へ降り立つ。
ポッドの上部が開き、小型の探査ドローンが飛び立っていった。
「1G環境は身に染みますね」
「訓練は受けてるでしょ。油断せず向かうわよ」
スキンスーツに慣れ親しんだ彼女たちにとって、分厚く重たい地上探索用装備は着心地が悪い拘束具のようだ。しかも地上には立っているだけで強い圧力が降りかかる。
苦しげに呻く部下を叱咤激励し、アリサは動き出す。
「あの廃病院には冷凍睡眠装置があるはず。――そこに、私たちの希望が眠っているのよ」
向かう先は、1000年前に木っ端微塵に砕け散ったかつての聖域である。