解凍されたら1000年後。人類から男が絶滅してました。〜ピッチリスーツの性欲旺盛美少女たちに人類保全の種付けセックスを強要されるらしい〜 作:ユリイカ
先行する探査ドローンが周辺の地形をマッピングしリアルタイムに地図を書き広げていく。地上探索部隊の装着するヘルメットには透過ディスプレイが内蔵されており、そこに視覚拡張情報が投影されている。
アリサを先頭に部隊は廃墟の中を突き進み、探索領域を広げていった。チームは全方位に意識を伸ばし、いつどこから何が現れても対応できるように神経を尖らせている。銃を構えて歩く彼女たちにとっては、黒々とした瓦礫の山も不気味に映る。
「当たり前ですけど、全部ボロボロですね」
銃の先端を使って近くの機械を小突きながら、一人の隊員が呟いた。たいした力も込めていないのに、錆びついたそれはボロボロと崩れて形を失う。
廃墟といいながら、そこに生活の跡はほとんど見られない。全てが焦げ付き、半ば土に還ってしまっている。凄まじい戦禍の残滓と、それを塗り潰そうとする自然の力強さを実感させる光景だった。
「本当にいるんでしょうか」
また誰かが不安を露わにする。アリサは周囲の士気が少し下がったのを感じて、振り返って強気に答えた。
「絶対に、見つけられます。――第188次探索隊がこの辺りで旧時代の形式の非常信号を捉えたのは事実なんですから」
「そう、ですね……」
激励のつもりで放った言葉だったが、その効果は思ったほどではなかった。
アリサたちは第264次探索隊だ。最後に目的の灯火を見つけられたのは、80年近く前のことである。それ以降の探索隊は、非常信号の感知すらできていない。
「我々はここまで来ました。あともう一歩なんですから、頑張りましょう」
「はいっ」
結局、月並みな言葉で締めくくる。
空元気を振り絞りながら、アリサたちは遠目にも見えていた巨大な塔――旧医療都市の大病院本棟へと足を踏み入れる。
「先輩! あれを見てください!」
いつ崩落するかも分からない廃墟の中を、ライトで周囲を照らしながら戦々恐々と進む一行。狭い通路に鬱屈とした雰囲気が漂う中、それを振り払うような明るい声が上がった。
アリサたちは一斉に声の主を見て、小柄な少女が銃口で指し示す方を見る。
「院内図……。よく見つけたわね、ラミナ!」
「えへへ。ありがとうございます!」
それは壁に掲げられた大きな施設の全体図だった。かなり風化が激しいが、まだ判読可能な箇所もある。これを精査すれば、目的地への手がかりも見つかる可能性があった。
アリサはすぐに情報解析を担当する部下を呼び寄せ、カメラで撮影、記録する。
「建物の立体構造との照会を行います。旧人類言語も辞書パッケージを持ってきていますが……。良かった、日本語で一致しました」
「よしっ。早速解読しましょう」
1000年も経てばあらゆる言語は変容する。ましてや宇宙へ飛び出した人類は言語の壁を煩わしく思い、今では銀河統一言語が一般的に使用されているのが現状だ。地球文明時代は、この小さく狭い世界にも関わらず無数の言語が乱立していたという。
現代まで細々と残っている旧人類言語は僅かのみ。しかし運よく院内図に使用されている文字はOCRシステムで認識可能なものだった。
「ほとんどは病室ですね。手術室や事務室、こっちは薬品庫のようです」
言語解析と論理的図形補完を行いながら、解析官がマップに情報を追加していく。アリサたちのヘッドセットに即時的に共有され、彼女もその結果に口元の緩みを抑えられない。
「……冷凍睡眠に関連しそうな施設はありません」
「そう……。なかなか上手くはいかないわね」
しかし、肝心の目標は見つからない。
アリサたちが探し求めているのは、旧人類種の男性だ。遺伝子汚染に侵されておらず、頑強な精子を生成可能な人類だ。
訳あって現在の人類はその99.999%以上が女性で構成されている。残り僅かの男性もなんとか生命維持装置によって糸を繋いでいるだけで、生殖能力は喪失されている。現在においても単為生殖は不可能であり、希少な冷凍精子のみが次世代を産むための希望となっている。
簡潔に言えば、人類は絶滅の窮地に立たされている。今は数千億の人口を抱え、銀河の広範に版図を持つ人類ではあるが、次世代が生まれなければその栄華も泡沫にすぎない。
人類の命運はアリサたちの双肩に懸かっている。
「隊長、探査ドローンが全域のスキャンを完了しました」
院内図の解析が終わる前に、ばら撒かれたドローンによる空間スキャンが完了した。しかし、報告をあげた隊員の表情は沈痛なものだ。
「生存者やその手がかりは……」
「見つかっていません」
その一言で、部隊の士気は地に落ちる。
1000光年の旅路の果てに、目指した希望は蜃気楼だったのだ。
膝から崩れ落ち、泣き出す隊員もあった。アリサも泣きたかったが、隊長としての矜持がそれを許さない。まだ、希望を捨てたくないという意地もあった。
捜索ポイント-ワンが空振りだったのならば、ツーを探さなければならない。降下ポッドに積載された食料などは、彼女たちが一ヶ月ほど活動できるだけ積み込まれている。しかし燃料は行き帰りのぶんだけ。地上での探索を追加すれば、切符は片道に変わる。
誰もが死を予感する。
その時だった。
「た、隊長!」
解析官が悲鳴のような声を上げる。アリサが顔を向けると、彼女は目を見開いて院内図を指差し、震えていた。
「どうしたの?」
「ち、地下です。探査ドローンは地表部のみしかスキャンしていません。ですが、地下にも施設が――シェルターがあります!」
「っ!」
その言葉の意味するところを理解できたのは、チームの中でも数人だけだ。
シェルターは地下にある。そして、シェルターには守るべきものが収められているはず。例えば――冷凍睡眠装置など。
「今すぐ経路選定を! シェルターへ向かいます!」
「は、はいっ!」
マップに道が表示される。アリサは部隊を立ち上がらせ、猛然と走り出す。
入り組む通路を駆け抜け、やがて目の前に頑丈な扉が立ち塞がった。1000年の風雨にも耐えた番人だ。
「爆破できる?」
「やってみます!」
工兵がリュックを下ろし、爆薬を取り出す。導線をつなげ、起動。最小限の爆発により、鉄扉を嵌める壁に亀裂が入り、分厚い金属の重量で倒れる。土煙が舞うなかへ飛び込めば、九十九折りの階段が地下へと続いている。
アリサははやる気持ちを抑え、一段ずつ降りていく。隊員たちが息を飲む音さえ聞こえてきそうな静寂だ。
「これ、なんて書いてあるかわかる?」
「第一避難シェルター、とあります」
階段の底に再び扉が立ちはだかった。そこに刻まれた文言を見て、アリサは期待に胸を膨らませる。
再び工兵が動き出し、扉を破る。
「電力が……」
「施設はまだ生きてる!」
暗い部屋の中に点々と弱い灯りが浮かんでいた。浄化装置も稼働しており、内部の空気は清浄だ。
施設全域が老朽化しシステムの面影さえ無い中、ここだけは独立した系統によって動き続けていたのだ。1000年もの間、ずっと。
大型ライトが持ち込まれ、部屋の中を照らす。露わになった室内の様相に――アリサたちは絶句する。
「そ、そんな」
「嘘……でしょ……」
そこは、朽ち果てた廃墟だった。他と変わらぬ荒廃した部屋だ。
整然と金属の棺が並んでいる。それらは旧時代の冷凍睡眠装置だろう。しかし、そのどれもが開いていた。
「ひっ」
誰かが悲鳴を上げる。ライトの光が照らし出したのは、朽ち果てた人骨だ。全身一揃いのそれは、壁を掻きむしるようにして倒れ込んでいる。そのようなものが、あちこちに散乱している。
「まさか、みんな」
冷凍睡眠装置はあった。システムも動いている。
だが、予想外のことが起こった。冷凍睡眠装置は、シェルターの開放を待たずに解凍シーケンスを実行したのだ。その結果目覚めた旧人類は棺から目覚め、また別の棺に収められていることに気付いた。
未来に希望を託して眠りについた彼らは、絶望の淵で死んでいったのだ。
壁に刻まれた掻き傷が物々しい。誰かがえづいていた。
「嘘、嘘よ……。そんな、ここまで来たのに……」
あともう少し早ければ。こちらの到着か、シェルターの備蓄があれば、彼らを保護し、人類の命脈をつなぐことができたはずなのに。
アリサの心が折れる。僅かな希望の先にあった絶望が、彼女を叩きのめした。
平衡感覚を失い、崩れ落ちる。――その時だった。
「……あれ?」
アリサは、自分が項垂れていた棺を見る。冷凍睡眠装置の一つだ。しかし、それは蓋が閉まったままになっている。他は全て開いている中、一つだけ。
冷え切った心臓が拍動を速める。
「だ、誰か来て! この、これ!」
動転しながらも叫ぶ。部下たちが一斉に駆け寄ってきて、蓋の閉じた冷凍睡眠装置を認めるや否や悲鳴のような声を上げる。
すぐさま解凍が試みられる。チャンスは一度きり、失敗すれば後はない。もし成功しても、中に入っているのが女だったら、それも終わりだ。だが、一縷の望みをかけるしかない。
祈るような気持ちで見守るアリサたち。担当する工兵たちも緊張している。人類の運命が彼女たちの指先にかかっている。
「――開きます」
震える声。
アリサが冷凍睡眠装置の側へ向かう。解凍シーケンスが実行され、瞬間的に凍結されていた誰かが、瞬間的に解凍される。細胞の欠損なく、全てを元通りに。
お願い。お願い。少しでも生きていれば、あとは生命維持装置でなんとかなる。だから、生きていて。
アルファ隊の誰もが祈る。
その時。
プシュッ
気密が解かれる。
ゆっくりと蓋が開き、冷媒の白い冷気が漏れ出す。完全に外れた蓋は誰かが蹴飛ばすように外した。アリサは中を覗き込む。そこに、一人の旧人類が横たわっていた。
「――男!」
頬骨の浮いた、全裸の男だ。局部を確認すれば、女性にはない肉棒がついている。
骨に皮を張っただけのような姿だが、冷凍睡眠装置に取り付けられたインジケーターには生命反応が記録されている。すぐさま衛生兵が動き出す。医療用ナノマシンと栄養剤が注入され、身体の損傷を修復していく。
弱々しい生体反応が、次第に力強く上向き始めた。
アリサたちの胸が高鳴る。
「――……こ、こは……?」
薄く瞼が開く。アリサと同じ、黒い瞳に光が宿る。
それを見た瞬間、アリサは胸の奥底から湧き出す感情に涙を流した。