※この作品はR-18です。

東京都高度育成高等学校・北郷伝   作:山上真

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北郷伝:01

 光陰矢の如し。そして、事実は小説よりも奇なり。そのどちらをも、俺は実際に体験した。

 中学一年時の課外授業で訪れた美術品の展示会。聞くところによると、俺は丁度特集をやっていた三国志コーナーで意識を失ったらしい。目覚めたときには都会の病院のベッドの上で、挙句に二年も経っていたのだから驚きだ。

 しかし、それよりも驚きなのは、俺はその意識喪失期間を『異世界チックな三国志時代』で過ごしていたことだろう。

 著名な武将や軍師は須らく女性であり、歴史を鑑みればあり得ないほどに食事情や技術が発展している。気功の使用はともかく、ドリルはあり得ないだろう。以上の理由から、『異世界チック』と俺が評するのも分かってくれると思う。

 しかも、自覚はないながら、俺は何度もループしていたらしい。時に所属を変え、時に所属はそのままに、関係の深い人物を異にして。

 自覚がないと言えば、言語や意識もそうだ。向こうでの俺は、自分のことを『聖フランチェスカ学園に通う学生』と認識していたし、会話も日本語で行われていると認識していた。

 しかし、その学校が存在するのは確かだが、俺が通ったことはない。また、目覚めたときにはスラスラと中国語を話せるようになっていた。もちろん、読み書きも可能だ。

 それで首を傾げることになったのは、何も俺だけに留まらない。家族、通っていた中学の先生、病院の医者、展示会の運営関係者、誰しもが首を傾げることになった。

 まず運営関係者。自身が開催していた展示会に課外授業で訪れていた学生が、突如として原因不明の意識喪失状態となったのだ。しかも、短時間では目覚めず、気付けば年単位で時間が経過していた。

 展示品の中には曰く付きの物があったこともあり、一時は随分と叩かれたらしい。その社会的ダメージはわざわざ言及するまでもないだろう。それでいて、俺の入院費用や転院費用まで支払ってくれたのだから、頭の下がる思いである。……まあ、向こうにも向こうの思惑があったんだろうが。

 次に中学の教師。俺が急に倒れたときには驚いたらしいが、それでも最初はそこまで深刻には思っていなかったらしい。だが、三十分が経ち、一時間が経ち、数時間が経ち、それでも目覚めないとなっては楽観視もしていられなくなったそうだ。最初は展示会場の医務室で休ませていたらしいが、関係各所との相談の結果、救急車を呼ぶことが決定したとのこと。

 そして、病院の医者。呼吸はしっかりとしているし、脈もきちんと動いている。言うなれば睡眠状態に近い。なのに目覚めないのだから、『原因不明』としか言いようがない。結果、地元の病院では手の打ちようがないとのことで、都会の病院に転院することとなった。

 家族にしてみれば、まさに寝耳に水の話だ。いつも通りに通学していった息子が、『突如として意識不明になり、病院に担ぎ込まれた』と電話口で聞かされたのだから。

 それから、進展らしい進展がないままに二年が経ち、ようやく目覚めたと思いきや、『劇的ビフォーアフター』を遂げている。これで首を傾げない方がおかしい。

 患者が、本来なら精神科に移すような内容を述べていても、一概に否定しきれないのだから尚更だ。

 少なくとも、意識を失う前の俺は、中国語の会話はもちろん読み書きもできなかった。精々が『謝謝(シェイシェイ)』とか『你好(ニーハオ)』とかくらいなものだ。それが目覚めたらスラッスラなのである。

 如何に信じ難くとも、俺の証言を信じるのが一番手っ取り早かったのは間違いないだろう。

 変化していたのはそれだけではない。頭の使い方とか身体の使い方とかが、意識を失う前に比べて格段に向上していたのだ。……目覚めた当初はリハビリで一杯一杯だったため、発覚するのには時間がかかったが。

 ともあれ。俺の証言内容と調査結果から、因果関係の証明はできずとも、美術品の『曰く』に原因を求めることで決着が付いた。むしろ、それ以外に都合の良い着地点が見付からなかった、と言う方が正しいか。

 さておき、困ったのは俺の進学に関してもだ。一年の時に意識を失い、目覚めることなく二年が経過し、目覚めはしたものの周りは受験勉強真っ盛りである。高校からは義務教育じゃないので、進学を希望するのであれば、俺はどうにかこうにか二年もの遅れを取り戻す必要があったのだ。

 退院して学校に通うことは可能だが、即座についていける筈もない。かといって、一年に混じって勉強していては時間がかかりすぎる。

 さて、どうするか? となったとき、声を上げた奇特な人物が現れた。誰かというと、件の展示会において個人所有物を貸し出していた人物だ。その所有物こそが『曰く付きの品』であり、だからこそ、その人物の許まで話が回っていったらしい。

 当人はとある学校の理事長を務めているということで、俺の状況を聞いて無下にできなかったそうだ。仕事柄、当人は流石に忙しいらしく直に面会が叶うことはなかったが、ビデオ通話で顔を合わせることは可能だった。誠実かつ柔和そうな表情の似合う人物で、こちらとしては感謝しきりである。名は坂柳成守さん。

 坂柳さんの伝手で家庭教師が派遣されることに決まり、会場として別荘も提供してくれた。複数の科目を学ぶ以上、教師が一人で済む筈もないからだ。

 いちいち俺の自宅に教師を派遣していては、色々な意味で効率が悪く、二年もの遅れは取り返せないという判断らしい。

 我が家にそれが可能なスペックがあるならその限りでもなかったのだろうが、スペックが無いのだから仕方がない。一々御尤もな説明に、俺も両親も学校の先生も頷くしかなかった。

 元々通っていた中学校には籍を置いたまま、実際は別荘での教育である。友人関係を育む機会を捨てさせることに坂柳さんは申し訳なさげだったが、取捨選択が世の常だ。そんなのは向こうで嫌というほど経験している。

 そもそもにして、俺の能力が足りているのなら普通に学校へ通うこともできたのだ。『たら』、『れば』を考えればキリはなく、原因についてもまた同じ。確かなのは、俺にも一因があるということ。

 この状況に対し、俺個人としては誰を責めるつもりもない。むしろ、責められる側であるとすら言えるだろう。俺が倒れたことで多方面に迷惑をかけてしまったのは、否定できない事実だからだ。

 同時、先々の進学や就職を考えた場合、この一件が不利に働く可能性は高い。不可抗力と言えば不可抗力であり、学校側も一筆書いてはくれるだろうが、人事担当官がそれを受け入れるとは限らないのだ。

 誰が好き好んで、『二年もの間、原因不明の昏睡状態に陥っていた生徒』を受け入れるだろうか。それよりは、『たとえ成績は並であったとしても皆勤した生徒』を受け入れる可能性の方が高いだろう。

 考えすぎと言われればそれまでだが、向こうでの経験からどうしても考えずにはいられない。

 そんな矢先、俺の学習態度と成績次第では、坂柳さんが理事長を務めている学校へ推薦してくれるとのお話も頂いた。そうまでされれば頑張らない理由はなく、俺は必死に頑張った。

 そして、見事に俺は結果を出し、今日この日から『東京都高度育成高等学校』の生徒となる。

 

 ♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢

 

 学校へ向かうバスの中、俺は知人を見かけた。男女の違いはあれ、俺と同じく高度育成高等学校の制服を着ている。車内は混雑しているが、歩けないわけではない。俺は声をかけに向かった。

 

「やあ、軽井沢さん。久しぶり。それとおはよう」

「うっそ、北郷くん!? マジで久しぶりだね! うん、おはよ」

 

 軽井沢恵さん。俺が入院していた病院に、同じく入院していた少女だ。同い年ということもあって医師から紹介されたのだが、どうも学校で酷いイジメに遭っていたらしく、その精神ケアを目論んでのことだったようだ。

 入院の理由が理由のため最初は暗い表情が多かったが、顔を合わせている内にどうにかこうにか持ち直してくれた。五斗米道(ゴッドヴェイドー)を教えてくれた華佗には感謝である。

 

「その後はどうだったか訊いても?」

「うん、まあ。流石に入院沙汰にまでなっちゃうとね、学校も問題を表沙汰にせざるを得なかったみたいで。

 あたしが退院して復学したときには、あたしをイジメてた連中も、訴えを真面目に取り扱わなかった担任も、どっちも処分を受けたあとだった。

 当事者であるあたしには事後報告だけでお終い。病院の費用は相手持ちだったけど、割れば大したこともないだろうし。……ほんと、信じられないよね。

 まあ、顔を見なくて清々したって気持ちも無くはないんだけどさ」

 

 俺の問いかけに、彼女はやるせない表情で答えた。……無理もない。ポーズだけの謝罪に然程の価値が無いのは事実だが、だからといって、謝罪すらもないのでは気を落ち着かせることもままなるまい。どれだけ価値が無かろうとも、彼女が心の決着を付けるに当たり、相手の謝罪は必要な儀式だったのだ。

 

「北郷くんには感謝してるんだ。北郷くんがいたから、病院生活の中で勉強の復習に取り組むことができたしさ」

「それを言うなら、俺の方こそ感謝してるんだけどね」

 

 俺の入院期間中、彼女には勉強に付き合ってもらったのだ。美少女との勉強は、モチベーションを維持するに十分な効果があった。また、『同じ釜の飯を食う』ではないが、協力して一緒の事柄に取り組むことは、互いの親密性を上げるのにも確かな役目を果たしてくれた。

 まあ、俺にしろ彼女にしろ、いつまでも入院しているわけにはいかないので、片方の退院がそのまま別れになったのだが。

 携帯番号は交換しなかったのかって? 結論から言うとしなかった。できなかった、と言う方が正しいか。

 入院生活で携帯が必要な場面がなかったこともあるが、向こうでの経験から、俺自身が携帯の必要性を感じていなかったことも大きい。

 自分用の携帯を所持してはいたのだが、俺の状態を鑑みて、入院に伴い両親へと返却されていたのだ。退院後は流石に使っているが、入院中は求めることすらしなかった。

 そんなだから、当時、自分の携帯番号などというものは忘却の彼方にあったのだ。

 軽井沢さんから交換を求められはしたのだが、俺は手元に携帯がなく、自分の番号は覚えてもいない。

 彼女は彼女で、入院した経緯が経緯故に、メモ紙などに自分の番号を書いて渡し、それが不用意に拡散する事態を恐れた。風で飛ばされたり、落としたことに気付かなかったり、なんて事態は、どれだけ気を付けていたとしても起こり得る。それを思えば、危惧のし過ぎとも言えない。

 結果、番号交換が果たされることはなかった次第だ。

 

「こういうの、運命の再会って言うのかな?」

「うわ!? きっざ~。……まあ、似合ってなくもないけどね。北郷くんイケメンだし、言われて確かに嬉しいし……」

「うん? 声が小さくて聞こえないなぁ~。さあ、もっと大きな声で言ってみようか」

「調子に乗んなっての」

 

 パコンと彼女の手が俺を打つ。……入院期間中という、ほんの僅かな一時。しかし、その短時間で育んだものは、時間を置いても枯れることなく確かに残っている。それを実感させてくれる一幕だった。

 ともあれ。

 こんな馬鹿をやっていれば時間の経過も早く感じるもので、気付けばバスは校門前に着いていた。次々と新入生が降りていき、瞬く間に車内は空席が目立つようになる。先ほどまでの混雑が嘘のようだ。

 

「あたしたちも降りよっか」

「だね」

 

 バスを降り、立派な校門をくぐり、案内板に従って道を進む。

 前情報によると、60万平米を超えるほどの無駄に広い敷地を誇り、敷地内には学校や学生寮の他にも多種多様な店舗や施設が並んでいる。

 そのため、校門をくぐればすぐに学校というわけではない。随所に立つ案内板がなければ、学校に着くのも一苦労だろう。

 

「ひっろ!? これ、案内板がなければ迷う自信があるわ~」

「全く以て同意だね。……しかしまあ、案の定キナ臭い学校生活になりそうだ」

「どゆこと?」

「この学校の謳い文句、話が旨すぎると思わなかった? 希望の進路に進むことができる、ってやつだけど」

「そりゃあ思ったけど。あたしとしては、名門校に受かればイジメられるようなことは無いかな? って考えが一番だったから。

 そして受かった今は、イジメられないことが第一だし。

 だからそこまで気にしてないかな」

「まあ、スタンスは人それぞれだから、そこについてとやかくは言わないけどね。

 ただ、世の中に絶対はないから、覚悟だけはしておいた方が良いと思う。場合によっては、外以上に凄惨なイジメを受ける可能性もある。

 所々に監視カメラがあるだろう? カメラがあるだけならおかしくはないけど、あまりにも数が多すぎるし、これ見よがしだ。

 そこにこの学校の特色を組み合わせると、良い想像はできないね」

 

 俺が周囲に視線を向けつつ言えば、軽井沢さんもそれに倣って周囲に視線を向けた。

 そして、初めて監視カメラの存在に気付き、意識したのだろう。思いっ切り顔を顰めた。

 無理もない。監視カメラの存在意義は、何よりも防犯にある。だからこそ、罪を犯す覚悟と自覚の無い者は、日常においてそこまで監視カメラを意識することはない。気付いたとしても、日常を彩るオブジェと認識する。

 だが、こうも数が多いとなると話は別となる。監視カメラが視る対象――つまりは生徒(俺たち)のことを、犯罪者予備軍と認識しているかの如き振る舞いだ。

 良い気分ではないだろうに、俺の話に対する興味の方が勝ったのだろう。一つ息を吐いた彼女は、顰め面のままに口を開いた。

 

「特色って言うと……『日本政府が次世代を担う優秀な人材の育成を目的として設立』ってのと、『許可なき外出及び外部連絡の禁止』ってあれ?」

「そう。綺麗事が尊ばれる一方で、それだけでは成り立たないのが世の中だ。俺たちが気付いていないだけで、後ろ暗いことは日々起きている。

 政治家の裏金問題とか芸能人の薬物使用なんて、事ある毎にニュースで流れるだろう? あれは立場とか知名度の関係で殊更目立っているだけで、他にも手を出している奴はごまんといる筈さ。

 周囲に気付かれていないから問題視されていない人物だっているだろうね」

「そりゃそうだろうけど……。ん? ちょっと待って。それってこういうこと? 『カメラの前で問題行動を起こす輩は優秀な人材ではあり得ない』。逆説、『優秀な人材であるならば、問題を問題として取り沙汰されない行動も必要である』……っていう考え方?」

 

 更に顔を歪めて彼女は言った。

 

「そう。監視カメラのない場所。それでいて人目に付かない場所。そういう場所でなら、イジメだって起こり得る。暴行の後を根拠にして訴えたところで、確たる証拠がないんじゃあ、あまり大きな罰が与えられることも無いと思う。

 それが現代社会ってもんだからね。必要悪とかトカゲのしっぽ切りとか、聞いたことあるだろう?」

「そりゃあ聞いたことはあるけど、そこまで気にしたことは無かったわ……」

「一般大衆としては、それが普通なんだろうし、別におかしなことじゃないさ。ただ、次世代を担おうって人材には、そうあることが許されないって話だ。

 推測だけど、個人としての能力を測り、社会の一員としての能力を測り、次世代を担う人材としての能力を底上げし、その果てにどこに出しても恥ずかしくない人物ができあがるっていう寸法だ。一クラスの中から一人でもそういう生徒が出たのなら、試みとしては成功と言えるんだろう」

「うっわ。まるで蟲毒だね」

 

 話をしている内に、クラス分けが貼り出された掲示板の前に着いた。

 クラスはA~Dの四つ。順に見ていく。俺はDクラスだった。軽井沢さんも。

 

「同じクラスだね。さっきの推測を聞くと、北郷くんと一緒のクラスっていうのは助かるかな」

 

 そう言う彼女の表情に、バスの中で再会を果たした時の笑みは無い。

 

「入学案内によると、学校から与えられるポイントを通貨として生活することになるんだっけ?」

「そうだったと思う。毎月冒頭に与えられる旨が記載されていた筈だ」

 

 教室に向かう途中、問いかけられた。記憶を漁って答える。正直、先の推測を合わせて考えると、快い気分にはなれない。

 

「Dか……。Dかぁ~。世の中、ランク分けとか連帯責任って言葉があるよね……。フ、フフ……」

 

 深々と溜息を吐いた彼女は、壊れたような笑い声を零す。

 

「よし、決めた! あたし、この学校生活、北郷くんに寄生する! 代わりに料理とか作ってあげるから、あたしのことを助けてね!」

「高らかに言うことでもないと思うけど……。まあ、美少女の手料理になら、その価値はあるか……。その代わり、ちゃんと美味しいものを頼むよ?」

「まっかせといて!」

 

 軽井沢さんはドンと胸を叩いて言った。

 

「あと、俺って結構な女好きだから軽井沢さんだけを助けるとも限らないけど、そこは了承をお願いするね? 少数精鋭を気取るにしても、俺と軽井沢さんだけじゃ数が足りないのも間違いないし」

「む……。分かった。ただし、こっちが先約なんだから、優先するのはあたしでお願いね?」

「オッケー。……ま、何だかんだと脅しちゃったけど、せっかくの高校生活だ。楽しんでいこう」

 

 俺は俺でしかない。どこまで行っても、華琳にも、炎蓮さんにも、雪蓮にも、蓮華にも、桃香にも、月にもなることはできない。それぞれの在り方で国を支えた彼女たちと同じことはできない。

 しかし、その模倣であればできる筈だ。それぞれの国に所属し、その在り方を間近で見続けた俺だからこそ、できる。

 もちろん、その対象はトップの彼女たちに限ったことではない。桂花、冥琳、朱里、詠を始めとした軍師陣、春蘭、思春、愛紗、恋といった武将勢の模倣も、やってやれないことはない。

 彼女らから学び取ったことを混ぜ合わせ、補い合わせれば、たとえ純粋な能力では彼女たちに及ばずとも、渡り合うことは可能な筈だ。

 ハードモードにも等しいが、その程度のことができずして、彼女たちに合わせる顔がない。

 彼女たちにはまるで関係ないが、これは一種の恩返しだ。北郷一刀(俺)という存在を受け入れ、育ててくれた彼女たちへの。

 だからこそ、彼女たちに負けぬように。

 俺もまた、北郷一刀(俺)という存在を歴史に刻み付ける。

 この高校生活は、そのための第一歩だ!

 意気を新たに、俺は教室のドアを開けた。

 

 ♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢

 

 高度育成高等学校データベース(4/1時点)

 

 氏名  :北郷一刀

 クラス :1年D組

 学籍番号:S01T004699

 部活動 :――――

 誕生日 :1月26日

 

 評価

 学力  : C  (A )

 知性  : C  (A+)

 判断力 : B  (A+)

 身体能力: B+ (A+)

 協調性 : A  (C )

 

 担当官からのコメント

 率直に言って、非常に評価に悩んだ生徒である。

 別途資料によると、中学一年時の課外授業の際、原因不明の意識喪失状態に陥る。その二年後、無事に目を覚ましたことは喜ばしいが、授業の遅れは如何ともしがたい。

 ただ、件の課外授業先の展示会に理事長が個人的な所有物を貸し出していたこともあり、審議の末、理事長が個人所有する別荘を貸し出し、家庭教師を派遣。それにより遅れを取り戻すことになった。そのため、退院後も元の中学校へは通っていない。

 入院前と退院後で、データの相違が非常に大きな生徒と言える。

 左は入院前――小・中学校時を参考にした評価である。

 学力や知性は平均的だが、適応力は平均以上の数値を示している。実家が剣道場を開いており、自身もまた幼い頃から剣を学んでいたため、身体能力も平均以上に高い。コミュニケーション能力に至っては非凡としか言いようがなく、老若男女を問わず各方面から好意的な印象を抱かれている。

 右のカッコ内は退院後――家庭教師からの報告を参考にした評価である。

 僅か数ヶ月で中学三年分の授業の遅れを取り戻し、そればかりか高校の分も予習して優秀な成績を示した。このことから、学力は非常に高いと判断せざるを得ない。

 家庭教師の独断により、勉強の息抜き兼娯楽として囲碁、将棋、チェスを行わせたらしいが、対人・対コンピューターを問わず高い勝率を誇る。知性と判断力も非凡と言えるだろう。

 元から高かった身体能力は更に向上を示したが、仕方のないこととはいえ交流関係が非常に限定されてしまったこともあり、協調性に関しては評価を落とさざるを得なかった。

 元々の評価でもBクラス、退院後の評価ではAクラスが妥当ではある。

 ただし、意識喪失の件に関して多方面に迷惑をかけたことは事実であり、その原因も特定できずにいるため、本人にも責任の一端ありと判断せざるを得ない。同時、これまた不可抗力ではあるが、中学時の出席日数が非常に少ないことも考慮せざるを得ない。

 以上の理由から、Dクラスへの配属が妥当であると判断するに至った。ただし、純粋な能力的にはAクラスでも上位に値するため、今後の活躍が非常に期待される生徒でもある。




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