※この作品はR-18です。

東京都高度育成高等学校・北郷伝   作:山上真

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一気に評価が増え、赤に持ち直しました。
ありがたやありがたや。
まあ予約投稿なんで、投稿時にはどうなってるか分かりませんけど。


北郷伝:22

 先生への相談を終え、教室に戻った俺たちを出迎えたのは、クラスメイトの三宅明人だった。

 

「ああ、北郷。今日の放課後、暫く教室に残っていてもらっても構わないか? さっきの昼休み、何人か先輩がこのクラスを訪ねてきたんだが、どうもお前に用があったらしい」

「俺に?」

「ああ、そうだ。そのうちの一人が、弓道部の先輩でな。その関係で伝言を頼まれた次第だ」

「弓道部……。名前を訊いてもいいか?」

「悪いが答えられん。秘密にしておいてくれって命令だからな」

 

 そんなやり取りがあったものだから、放課後を迎えた今現在、俺は帰宅するでもなく教室で待機していた。

 

「邪魔するで~!」

 

 そして、待ち人は程なくして現れた。スパン! と音を立てて教室の扉を開き、元気な挨拶をしながら教室に入ってきたのは霞だった。魏の五将軍筆頭にも数えられる、神速の張遼その人である。

 

「お! おったおった。か~ず~と~! いや~、ひっさしぶりやな~」

 

 軽く室内を見渡して俺に気付いた霞は、瞬く間に距離を詰め、俺に抱きついていた。おまけに頬ずりを始める始末である。

 

「失礼する。……ってこら! ご主人様から離れんか、霞!」

 

 次いで入ってきたのは愛紗。蜀に名高き五虎将軍の筆頭。劉備の義兄弟にして、軍神と名高き関羽その人だ。……まあ、この愛紗は義兄弟ではなく義姉妹だが。どうやら、愛紗の方が桃香よりも年上らしい。

 こちらも俺に気付くや否や、瞬く間に接近して霞を引き剥がしにかかる。

 

「失礼する」

「邪魔するよ」

 

 そして、新たに入ってきたのがもう二人。

 一人は見知った人物であり、想像通りの人物でもあった。そもそも、弓繋がりで俺の知人となると、関係者がだいぶ限られる。その中で高校生でも通用する人物を鑑みると、秋蘭しか思い浮かばなかった。魏の誇る弓の名手、夏侯淵である。

 もう一人は、全然、まったく、これっぽっちも見覚えがない。つまり、俺の知人ではあり得ない。にも拘らず同行してきたということは、仲の良い友人なのだろうか?

 

「やあ、久しぶりだな北郷。……三宅もご苦労だった。どうやら、きちんと伝言を届けてくれたようだな」

「先輩の頼みですから。敢えて無視する理由はありませんよ」

「フッ、そうか」

 

 相変わらずというべきか。この世界でも落ち着いた雰囲気を醸し出しており、周りに対する気遣いも忘れない。現に、俺への伝言を頼んだ三宅にも労いの言葉をかけている。

 

「やあ、君が北郷一刀か! 君のことについてはよく聞いていてね。何と言うか、初めて逢った気がしないな。ああ、自己紹介を忘れていたな。私は鬼龍院楓花という。気軽に楓花で構わんぞ?」

 

 ニッコリと満面の笑みを浮かべ、ハイテンションで捲し立てる。

 

「初めまして、北郷一刀だ。お言葉に甘えて名前で呼ばせてもらう。よろしく、楓花。愛紗、秋蘭、霞共々、仲良くしてくれると嬉しい」

「……ハハ! 良いね! 君は実に良い! どうやら三人の言葉を信じて正解だったようだ!」

「三人とは仲が良いのかい?」

「三人との仲かい? 実に良いとも! 一緒のベッドで寝るくらいには仲良しだよ!」

「へえ? それなら、是非俺とも一緒に寝てほしいな。どうだい?」

「ック、ハハ! 流石にその返しは想定外だったなぁ」

「そう? 俺は自他共に認める希代の女好きだよ。三人から聞いていないのかい? そもそも、楓花ほどの魅力的な女性が相手となれば、一緒に寝たいと考えるのが健全的な男というものだろうに」

「いや、北郷。言わんとすることは分からないでもないが、流石にお前は例外だ。お前と一緒にしては、他の男共が耐えられないだろう」

 

 俺と楓花の、初めて逢ったとは思えないほどの気安いやり取りに、呆れた様子を隠さずに秋蘭がツッコミを入れた。

 

「そう言えば秋蘭、春蘭は――いや、すまない。訊こうとした俺が間違っていた」

「それが賢明だな。……霞、お前もいい加減、北郷から離れろ」

「は~い。まったく、イケズやなぁ」

 

 愛紗のみならず秋蘭からも窘められ、そこで漸く霞は俺から離れてくれた。

 

「せっかくだから、俺のグループメンバーも紹介しておくよ」

 

 言って、俺はメンバーのそれぞれを紹介した。

 

「ほうほう? ……で、この内の何人が一刀の女なん?」

 

 猫の如きニンマリとした笑みを浮かべ、霞が問いかけてきた。揶揄う気満々である。

 

「御想像にお任せするよ。……そういえば、皆は一緒のクラスなのか?」

「ええ、そうですね。全員が二年Aクラスの所属になります」

「へえ~。やっぱ皆優秀なんだな~。俺なんてDクラスだぜ、Dクラス」

「ご主人様の場合は、事情を考慮すると仕方がないでしょう」

「ついでに言えば、ウチは生徒会の副会長で、秋蘭は弓道部の部長をやっとる。崇め奉り~」

「はいはい、凄い凄い。……愛紗と楓花は?」

「私たちは部活動はやってません。と言うより、やってる余裕がありません。……この女、能力はバカ高いのですが、究極の自由人でして。放っておけば何をしでかすか分からないのですよ」

「中々に失敬だな、愛紗。それでは私が可愛い後輩に誤解されてしまうではないか。私はただ、協力という名で寄生するだけの連中になど力を貸す気になれんだけだ。実際、お前たちには素直に協力しているだろう? 個人の成績だって優秀だぞ」

「要は自分の認めた相手しか相手にしないってことだろ? まあ、別に良いんじゃないか。実力主義を謳うこの学校なら十分にありだろ。……となると、是が非でも楓花には俺を認めてもらわないとな」

「おー、一刀がやる気になっとんな~。覚悟しといた方がええで、楓花ちん。この男、己の欲望と女のためならば、どこまでも力を発揮する奴やからな。龍退治かてやってしまうほどや」

「龍退治? まあ、そこはよく分からんが、そういうことなら期待させてもらうとしよう。何せ、私の夢は普通の人生を送ることだというのに、旦那となり得る人物がいなくて困っていたところだ。一度は生徒会長や南雲に期待したんだが、どうにも期待外れだったからな」

 

 それはひょっとしてギャグで言っているのか!? 思わずツッコみそうになったが、どうにか抑え込んだ。

 

「失礼します~」

「失礼します」

「失礼する」

「失礼します」

 

 そうこうしているうちに、またもや別の客がやって来た。Sシステムのネタ晴らしが解禁される五月を迎えたからだろうか? 何とも千客万来な日である。

 現れたのは穏と美花、それから生徒会長と、最後の一人は誰だろう?

 

「お~、穏と美花はともかく、会長と茜ちんも来たんやね」

「茜ちんは止めてくださいよ、霞ちゃん」

 

 茜ちんと呼ばれた女子が、ガックリと肩を落としつつもシアにツッコミを入れた。

 それを脇目に、生徒会長はスタスタと歩を進め、やがてその足を止めた。その先にいるのは堀北さんだ。

 

「にい、さん……」

「もしやとは思っていたが、やはり俺を追ってきたのか、鈴音」

 

 普段の態度からは想像もできぬほどに弱々しい声を洩らす堀北さんと、冷たく、威圧的な声を発する会長。

 

「堀北くん?」

「……む、分かっている、孫。これは、つい癖になっているだけだ。……ゴホン、ゴホン。

 あ~、鈴音。兄として言わせてもらうならば、お前が俺に憧れ、それを目指す気持ちは嬉しいんだ。……だがな? そのためにお前は人間関係を台無しにし過ぎている。俺はそれが悲しいし、我慢がならない。

 たとえ家族であっても、人が他人になることなどできない。お前がどれほど努力したところで、俺になることはできないんだ。なれたとしても、精々がデキの悪いデッドコピーだ。誰が可愛い妹に、そうなることを望むと思う?

 本当ならば、そのことには自力で気付いてほしかった。そのために、今まで厳しく接していた。そうすれば、俺に幻滅するだろうと考えたからでもある。なのに、お前はより意固地になって、より強く俺を目指すようになってしまった。

 思惑が外れ、俺は困惑した。困惑したが、他にどうすればいいか分からなかった。分からないから、分からぬままに、同じように振る舞った。

 この学校に入学し、出会いと人間関係に恵まれたことで、俺はどうすればよかったのか気付くことができた。何のことはない。何も難しいことはない。ただ、俺の思うところを正直に話すだけでよかったんだ。……すまなかったな、鈴音。俺の未熟で、必要以上にお前を傷付けてしまった」

 

 先とは一転、非常に優しい声で、会長は堀北さんへと語った。

 どうやら、人間関係が不器用なのは会長も同じだったらしい。むしろ話を聞くと、会長に憧れ、会長の真似をしたからこそ、堀北さんも不器用になってしまった感がある。

 

「鈴音、友人を作れ。誰しもと仲良くする必要はない。たった一人――だと、流石に少ないか。せめて片手から両手の指ほどは、忌憚なく意見を言い合える相手を、ありのままのお前を受け入れてくれる相手を作るんだ。

 これから先、お前たちはクラス闘争と無縁ではいられない。Aクラスへの逆転を、Aクラスでの卒業を望むのなら、クラス内に手を取り合える仲間を見つけろ。そして死に物狂いで努力しろ。Dクラスからの逆転はそれほど難しい。

 ああ、そうだ。間違っても、そこの鬼龍院のようにはなるな。徹頭徹尾、個人の能力だけで昇り詰めることが可能なあの女は例外だ。率直にバグキャラと言っていい。到底見本にはならんからな」

 

 何というか、会長も結構言うもんである。っていうか、楓花に対する扱いが酷い。……いや、むしろ正当に評価しているからこそなのか?

 

「それと鈴音、端末を出せ」

「は、はい……」

 

 堀北さんの端末を受け取った会長は、自分もまた端末を取り出し、スイスイと指を走らせる。その後、堀北さんに端末を返した。

 

「ッ……!? 兄さん、これ……」

「俺の手持ちから幾らかポイントを振り込んでおいた。遅くなってしまったが、俺からの入学祝だ。あって損するものではないからな。お前が必要と思うことに使え。改めて、入学おめでとう、鈴音」

「に、い、さん……」

 

 感極まったのか、堀北さんは泣き出してしまった。けれど、その表情は笑みを浮かべており、とても綺麗で美しい。美人の泣き顔には華がある。

 会長は、そんな堀北さんの頭を撫でさすっている。その手つきは怖々としており、慣れていないことが一目で分かった。

 それからどれだけ経ったか。

 

「もう、大丈夫です」

「そうか」

 

 やがて堀北さんが声を発し、応じて会長が頭から手を離した。

 

「さて。悪いが鈴音だけに用があったわけじゃないからな。少し離れるぞ?」

「はい、兄さん」

 

 最後にポンポンと頭に手を置いて、会長はこちらへとやってきた。

 

「お前が北郷一刀か。それからそっちが綾小路清隆。揃いも揃って、入学早々から派手に動いているようだな? 鈴音への用事もあったが、お前たちへの興味もあったのでな。情報が解禁されるこのタイミングで尋ねさせてもらった」

「それはどうも。生徒会長に注目されているなんて光栄ですよ。……そちらの可愛らしい先輩を紹介いただいても?」

「やれやれ、聞きしに勝る女好きのようだな。こちらは橘茜。生徒会の一員で、書記を務めてもらっている。……陸と孫も同様に生徒会の一員だ。彼女たちには随分と助けてもらっているよ。ついでに言うと、全員が三年Aクラスに在籍している」

「へえ? 美花は分からないでもないですが、穏も生徒会なんですか? なんかイメージ湧かないなぁ」

「まあ、その気持ちは分からなくはない。だが、普段の雰囲気はあれだが、中々に冷淡な考えをする。試験の中には、彼女の意見を反映されたものもなくはない」

「ああ、それは分かる気がします。……なるほど、そう考えると逆に納得ですね」

 

 何せ、ぽややんな雰囲気を漂わせておいて、その実は呉の都督、陸遜なのが穏である。そりゃあ、見かけに似合わぬ冷徹な手だって打つだろう。

 本来の都督としては周瑜→魯粛→呂蒙→陸遜が正しい順番なのだが、何故だかあの世界ではそこら辺がデタラメだったからなぁ。どうやらそれは、この世界でも同じなようだ。三年に陸遜(穏)がいて、一年に呂蒙(亞莎)がいる時点でそれは明らかである。

 

「そういうわけですので、一刀様も端末をお出しください。私自身は一刀様のメイドではありますが、同時に先輩でもありますので。入学祝を送るのに不都合はございませんでしょう」

「まあ、そういうことなら遠慮なく。ポイントに貴賤はないからね」

「もちろん、私もあげちゃいますよぉ~」

 

 そんなわけで、美花と穏からポイントが振り込まれ。

 

「あー、二人ともずっこい! うちもあげるで!」

「では私も」

「やれやれ、この流れには乗らざるを得んか……」

 

 霞、愛紗、秋蘭もそれに続き――

 

「当然私も乗るしかないな! このビッグウェーブに!」

 

 何故か楓花まで振り込んできたために、俺のポイントは途端に額を増やしたのだった。

 

「……堀北さん?」

 

 そこに堀北さんが近付いてきた。未だ顔には涙の後が目立つが、心なしかその雰囲気は普段より柔らかい。

 

「ちょっと待ってちょうだいね」

 

 言って、堀北さんは端末を操作。直後、清隆の端末が音を立てる。

 

「今日から私もあなたたちのグループに加わらせてもらうとするわ。兄さんに言われたこともあるし、そもそもが櫛田さんに誘いをかけられていたんだから構わないでしょう? ああ、共同生活を送る上での手付金代わりのポイントは、今しがたあやのん? キヨポン? どっちで呼べばいいのか分からないけど、送ったから。あなたたちのリーダーはカズピーのようだから、そっちに送るのが筋ではあるんでしょうけど、私、あなたたちのメンバーだと彼としか連絡先を交換してないから、そこは勘弁してちょうだい」

 

 そして、そんなことを宣った。よもや、堀北さんの口から『あやのん』だの、『キヨポン』だの、『カズピー』だのが出るとは思わなかった。……まあ、これで彼女はストーカー問題の発覚を機に俺たちと帰ることが増えているのだから、それぞれの呼称を知っていても不思議はないのだが。

 

「それと、少し失礼するわね」

 

 おまけに、そう言って少しかがんだかと思いきや、なんと俺にキスをしてきたではないか!

 

「あ~、堀北さん。これは?」

「別に鈴音でいいわよ。あだ名で呼びたいんならそれでも良いけど。

 これは? って言われても、あなたたちのグループに入る上での通過儀礼なんじゃないの?」

 

 そのことを問えば、実にサバサバとした態度で、逆に訊き返される始末である。

 思わずツッコミを入れようとして、思いとどまった。彼女の目線で考えてみれば、別段おかしくはないからだ。何せ、俺は衆人環視の下で桔梗、麻耶、波瑠加の唇を奪っているし、清隆もまた愛里の唇を奪っている。それに加え、恵と美雨は普段から俺にべったりなところがあるし、千秋はここ最近甲斐甲斐しく清隆の世話を焼いている。そのことを踏まえると、鈴音の見ていないところでキスを済ませていると考えるのは、むしろ自然なことだろう。実際、恵と美雨とはキスしてるし。……千秋は誰ともしてないけど。

 

「ちょっと待て、鈴音。だったら俺とでも構わない筈だ。むしろ、普段の交流を鑑みると、そこは俺にこそキスをするべきだと思うが?」

 

 そこで清隆から追及が入った。確かに、清隆の言うことにも一理ある。

 

「まあ、それも選択肢には入ったんだけど、カズピーにした方が櫛田さんが悔しがりそうだったから」

 

 それに対する鈴音の返答がこちらである。

 これには実際に質問をした清隆を含め、メンバーの全員が『ああ……』と納得せざるを得なかった。あの一幕を見ていれば尚更である。

 

「なに、キヨポンもしたいの? 別に構わないけど……」

 

 言って、鈴音は清隆の元へと歩を進める。どうやら、『キヨポン』呼びで確定したらしい。

 

「よし! やれ! 君の技術で堕とすんだ、清隆! やれるやれる! 君ならできる!」

 

 そして、応援ともヤジともつかぬ感じで囃し立てる桔梗。

 しかし残念ながら、桔梗の願いは叶わなかった。今回、主導権を持っていたのは鈴音の方である。俺を相手にしたのと同様、触れたかと思えばすぐに離されたのだ。清隆が攻め手ならば桔梗の願いも叶ったかもしれないが、反撃する暇が与えられなければ、さしもの清隆でも不可能ということだ。

 このキスだが、あくまでも鈴音の中では挨拶の延長線なのだろう。欧米では珍しいことではないし、共同生活という要素が加われば尚更だろう。

 

「って、ちょっと待った! もしかして私、経験済みだと思われてる!? 私ピュアだから! キスだってまだだから!」

 

 そして、よせばいいのに、そんなことを力いっぱい叫んでしまった千秋である。

 

「あら、そうなの? なら、この機会にやっちゃえば? 別に挨拶程度、何を恥じることもないでしょう?」

 

 結果、鈴音から善意の追及が入る。……千秋は思いっ切り自爆した感じだ。

 まあ、そうは思っても、それはそれ。

 この機会を逃すまいと、俺は千秋に視線を向ける。……清隆も同様に。

 千秋は俺たちの間で視線を行き来させ、ついには目をグルグルと回した。

 おそらく、千秋にとってキスというのは恋情の方が勝っているのだろう。そして、清隆相手に向けているのは、どちらかと言えば親愛の情。俺相手だと友愛か。

 どちらに対しても決して愛情がないわけではないが、恋情とも言い切れない。だからこそ、どちらを選ぶか決めきれない。

 

「……ふむ。一刀、ここは妥協案といこう。オレもお前も千秋を狙っている。互いに渡すまいとしている。であるならば、勝敗を決めるのはどちらがより千秋の心を掴み、動かすかだ」

「道理だな。いいだろう、その案に乗った。問題なのは、どちらが先手を取るかだが……」

「普通にジャンケンでいいだろう。どっちが先でも構わんからとっととやれ」

 

 呆れを隠さずに言葉を挿んだのは輝彦だった。ブラブラと手まで振っている。……以前に千秋を渡すまいとしていた男は、果たしてどこにいったのか。

 

「ちょ、ゆきむー!?」

 

 見捨てられた!? と言わんばかりに愕然とした表情を浮かべる千秋。

 

「知らん。第一、こいつらを相手にいつまでも逃げ切れるわけがないだろうが。いい加減、覚悟を決めてしまえ。

 それが嫌なら、俺のように他に相手を見付けることだ。実際、俺は心を見付けた」

 

 一方、冷たく突き放す輝彦。

 さり気ない惚気に、心が頬を赤く染めている。

 それを横目に、先手を取るべく熾烈なジャンケン勝負を繰り広げる俺と清隆。

 

「っし、勝った!」

「クッ、負けたか……!」

 

 果たして、勝負を制したのは俺だった。激戦だったこともあり、思わずガッツポーズを決めてしまった。

 敗北者たる清隆は、ガクリと肩を落としている。

 

「そういうわけだ。俺の愛を受け取ってくれ、千秋」

「んむ!? んむむ!? んむ~~~~ッ!?」

 

 まず俺が。

 

「先手は取られてしまったが、如何に一刀が相手でもお前を渡すつもりはない」

「んん!? ん、んん!? んん~~~~ッ!?」

 

 次いで清隆が。

 俺と清隆という二人の猛者に立て続けに唇を奪われてしまった千秋は、荒い息を吐きつつ、クタリと机に身を任せている。

 

「まあ、何だ。恋愛表現に対してとやかく言うつもりはないが、イジメと受け取られない範囲でな……。

 それと、北郷に綾小路。どうあれ、お前たちが鈴音の唇を奪ったことは事実だ。鈴音自身がしたことであるから我慢するが、蔑ろにした時には覚悟することだ。たとえ公私混同と言われても、俺の持てる限りの手を使ってお前たちを叩き潰す!」

 

 そして、義務感と私情から警告を寄越す生徒会長。

 

「そんな心配しなくても、私は変わらず兄さんが大好きですよ」

「鈴音……!」

「まあ、それはそれとして。後でこの学校に入ってから今までに兄さんが受けた試験問題を送ってください。傾向を掴み、対策を図る上で、過去問ほど便利な物はありませんから」

「鈴音……」

 

 その一方で、実兄を上げて落とす鈴音(妹)。生徒会長の表情が一気に反転したぞ。

 普段から割と混沌としている我がクラスだが、今日は特にその傾向が強いのであった。  




霞の口調が難しい。
ちなみに、南雲もきちんと生徒会の一員で、副会長です。ただし、クラスの逆転劇は起こっていないため、原作ほどの影響力はありません。決して無いわけではありませんが……。
南雲は犠牲になったのです。愛紗、秋蘭、霞を組み込んだことによる犠牲にな。
その一方で、原作以上にエンジョイしている面がないではありません。鬼龍院はともかく、恋姫勢は勝負を受けて立ちますから。
原作同様に現二年生の退学者が多いのはそのためです。嗾けて返り討ちに遭った形ですね。

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